浄化最後の夜にトラが現れる
気まずい空気が漂っている館の玄関前。オレと、サラさん、そしてマヤさんの浄化チームが揃っている。
さっきのオレたちのイチャラブを外で聞いていたマヤさん。オレにしてみれば、最初に降りた村では娯楽としてオレのイチャラブが存在していたので、まぁ、気にならないということはないけど、サラさんとマヤさんは、お二人とも顔を真っ赤にしている。イチャラブを聴講されていたマヤさんは、イチャラブの当事者と顔を合わせているということが気まずいようで。サラさんももちろん、マヤさんに聞かれていたことが恥ずかしいというわけで。
「さあ、行きましょうか?
「「......」」
サラさんとマヤさんは口の中でモゾモゾ言ってるけど、よく分からない。2人ともいい大人なんだし、恥ずかしがっていても仕方ないのに、と思うけど、それを2人に、特にサラさんに言うことなんてできないし。まぁ、そのうち元に戻るでしょ。と言いつつ、2人ともオレに話かけるけど、互いに空気のような感覚でスルーしているんだよなぁ。
これからもまたありますよ。だからそんなに気にしても仕方ないです、と思っても言えないし。
大聖堂の中に残っている魂は1日目に比べるとホントに少なくなって、1階はチラホラという具合になっている。元々上の階の魂密度はそんなに高くなかったので、2階以降はスイスイ進む。そして夜明け前には浄化が済んだ。
最後の打ち上げ代わりに、マヤさん夫婦が暮らしていた部屋で食事会をすることにした。
いつも通り、テーブル、椅子、テーブルクロスを出し、鍋、皿、フォーク、スプーンを出す。鍋を出した所でサラさんがピンと来たようで、
「マモル様、今日は最後だし特別ですね!?」
と声を上げた。それにつられたマヤさんが、
「何が特別なんですか?」
と聞いて、ハッとしたようだけど、気を取りなし、
「鍋の中身は何ですか?」
と聞くので蓋を開けた。中にはカタリナ特製の牛肉を煮込んだ濃厚スープが入っている。トマトスープで煮込まれていて、オレはこれが大好物なのだ。
この世界の牛ってものは、農耕に使うことが前提となっていて、年取って働けなくなると食肉となる。そのため、肉が硬くて美味しくない。それで村に食肉用の牛を持ってこさせて「まだ若いのに......」という声に耳を貸さず、食べることにした。
1頭目は村のみんなで分けたら、美味しいと大好評だったけど、食肉用ということは当然農耕用の牛に比べるとコストは高いわけで、年に2回だけ村人が食べれることにしている。
村人たちも、畑を耕して働いている牛と牧草を食べながらプラプラ遊んでいる牛を見ると、当然コスト差というものを理解してくれる。しかし、遊んでいるなら少しでも働かせよう、という考えは起きてくるわけなので、勝手に農耕用に転用されるのを防止するため、大公様(牧場を作ったときは公爵様)に献上する牛という名目にして農耕に使わないようにしている。
そして時期が来ると解体して、ロースとヒレをオレが取ってポケットに入れ、残りは村で食べるということにしている。
マヤさんが村に派遣されてくると言っても、しばらく間があるだろうし、最後にごちそうを出すことにしたんだ。
サラさんが肉を取り分け、皿に盛って食事を始める。とっておきの蒸留酒も出した。
「すごい......美味しい......なに、これ?ポツン村に行くと毎日、こんな美味しいものが食べれるんですか?」
マヤさんが喜んでくれる。
「そんなわけないって。今日で浄化が最後だから出したんだって」
「申し訳ありません、私のためにこんなことしていただき」
「いやいや、村に来てよろしくねって言う気持ちを込めているから」
「分かりました。村ではお任せください」
マヤさんは飲める口だったようだ。出したのはアルコール度数の結構高い酒で、ゴダイ帝国で仕入れた酒である。小さいコップで一杯だけのつもりだったのだが、マヤさんがあんまり美味しそうに飲むもんでお代わりをし、さらにお代わりをしたところ、真っ赤っかになってしまった。要は1人できあがってしまった。サラさんも結構酔っているので危ないけど、シャキッとしてはいる。
しかしマヤさんはかなり怪しくなってきた。というのは、さっきのオレの部屋の中の出来事について質問してきたからである。この世界では、平民では至ってオープンなように思えるけど、何をどうしているってのは、会話としてはゼッタイない。あったのは、あの名もなき村くらいで、タチバナ村でもポツン村でも婉曲に聞かれたりはするけど、直球で聞かれることはない。ましてや教会関係者がそのようなことを口にするなんてことは禁忌に近いことだ(と思う、オレは)。
それなのに酔ったマヤさんはサラさんに、
「ねぇ、サラぁさん~。さっきぃ、サラさんの声が部屋の外にまで、聞こえてきましたけど、あれは、どーしたらぁ、あんな声が、でるんですかぁ?」
と聞いてきた。マヤさん、目が据わっていますな。サラさんはもう顔が赤いから、顔色変えず赤いまま、
「さぁん、そんなこと、しりましぇん。マモルさまに、きいてくださいませぇ」
と返した。サラさんも危険帯に入ろうとしているようだけど。マヤさんは一瞬の真顔をしてオレを見たけど、すぐに目を逸らして、
「サラさーん、ね、どうして、あんな鼻にかかったぁ、甘ーい甘い声が出るんですかぁ?いつものぉ、サラさんとぉ、じぇんじぇん違うこえ、でしたよぉ?あたし、外できいててぇ、違う人の、声かなーって思いました、もーん」
まぁ、そうだろう。オレもそう思ってるから。ちょっと鼻に掛かって、少し音程が上がって、やたら甘酸っぱくなるんだよなぁ。いつもの凜としたサラさんからは想像できない、すごく甘い声だもの。
マヤさんがサラさんに絡む。
「ねえ、サラさん~~~!おしえてぇ~~、アタシはあんな声出したことがないよぉ、ダンナの相手しててもぉ、あんな声、出なかった、と、思うよぉ~~」
「知りませぇんーー!!わたしはぁ、されるがまま、なんだからぁ、分かりませんんーーー!!」
サラさんがぴしゃりと蓋をするように言い放った。これで終わりかなぁ?と思ったオレがバカだった。
マヤさんが椅子ごとオレに寄ってきて、酔ってることをいいことに、肩にもたれかかってきた。それを見たサラさんが、ライバル心が燃えたんだろうか、椅子ごとオレの横に座り、これまた肩にもたれかかる。両肩に女の人がもたれ掛かるという嬉しい展開なのだけど、一つ残念なのはマヤさんがサラさんよりさらに貧乳なこと。腕のどこにも当たるものがない。その点、サラさんは分かってて、オレの腕を取って両方のおっぱいに交互に当てている。カタリナくらいのおっぱいがあれば、当たって嬉しいのだけど、サラさんではあまり気持ち良さが高まらない。むしろ、手がサラさんの下腹に当たって、あともう少し、もう少しって気分になるんだけど、スカート履いてるし、直接触れることはないんだけど。サラさんを真似してマヤさんもオレの腕を揺らすけど、あんまり気持ちいい事象は起きていない。
でもサラさんの息が怪しくなってきている。それに比べて、マヤさんの方は飲んでる割には呼吸が荒れて無くて、もしや酔ってるふりか?と勘ぐるんだけど。そう思うとオレの酔いは覚めてきて、この状態をどうやって収集しようか?と思い始めていた。
しかし、オレの腕を抱えていたサラさんが、突然手を離してオレの頰を手で挟み、キスをしてきた!?さ、さらさん、ひとまえ、人前、ですよ?マヤさん、見てます!が、構わず舌が入って来た。横目で見たマヤさんが目を見張っている。驚いてますよね?当然ですよね?
サラさんの息が酒臭い、うへっ!?でも、サラさんは構わず、舌がオレの口の中を蹂躙する。そしてオレの手を取り、胸に、おっぱいに押し当てる。はぁぁぁ、揉めってこと?ええっ?ボタン外して、生になりましたよ、それを触れと?
「もっと、おねあい、もっとぉーーーー!!」
ろれつも回ってないのに要求は苛烈で、マヤさんは両手で口元隠しているけど、目はこれ以上開かないってくらい開いて凝視している。視線で穴が開くんじゃないかってくらい強いよぉ?
オレが胸を揉むと、
「あぁん、うぅ、んんん、もっとぉ......うん、そぉ、んんん......あぁん、はっ、はっ」
もうそれ用の声が出始めたんです。
トラ、大トラが出た。




