ポツン村の神官派遣決まる
読んでいただきありがとうございます。
主人公の周りのキャラが結構死んで行きますので、それはそういうものだと思ってご容赦くださいませ。よろしくお願いいたします。
神官長の部屋を出た途端、マヤさんがフーーーと息を吐いた。そしてオレの方を向き、
「タチバナ様、私でよろしいのでしょうか?私のような未熟者で」
心配そうに聞いてくるから、
「知らない人やゾイさんよりは、マヤさんの方が全然良いです。マヤさんは気心知れていて、安心できます。もし未熟なところがあれば学び成長して頂ければ良いのです。村人とともに信仰を高め合って頂ければいいのですから」
とオレが言えばサラさんも、
「一緒に信仰を深めましょう。実は大公様のご指示により、福音派の人たちが村にいるのです。ですから他の村のように、キーエフ様の言葉を広めるだけでは足りず、いかに分かりやすく伝え、マヤさん自身がキーエフ様と共にあるということを示す生活をしなければなりません。もちろん、今のマヤさんの姿勢であれば問題ないと思いますので、是非ポツン村においでくださいませ。ゾイさんでは、信仰を体現するということが難しいように思います」
と率直に言う。サラさんってかなり深いことを考えていたのね。オレは簡単にゾイさんよりはマヤさんがしっかりしているから良いだろう、くらいのつもりだったんだけど。
部屋に向かって歩いていると、ゾイさんがいた。ニコニコと笑いながら話しかけてきた。
「タチバナ様、サラ様、よろしくお願いいたします」
と頭を下げ、マヤさんを見てニマッと笑う。これってポツン村派遣のこと?ここは知らん顔すべきでしょう?
「なんのことでしょう?」
ゾイさんは「分かってるくせにぃ~~えへへへ」という風を吹かせながら、
「イヤですぅ。ポツン村の神官の件ですよぉ」
お尻ふりふり、胸をたゆんたゆんさせながらおっしゃいます。目はたゆんたゆんに行ってしまうけど、
「ああ、そのことですか。それはさきほど神官長様からマヤさんを派遣して頂くという話を伺いましたよ。ゾイさんも心配して頂いたのですか?それはどうも、ありがとうございます」
とお礼を言うと、ゾイさん、顔色がパッと変わり、喜色が消え怒色に染まった。あ~ら、怖ろしい。
「えぇ!?何ですってぇ!!マヤがポツン村に行くことになりましたってぇ!?」
すっからかんに怒っておられますがな。
「はい、神官長がおっしゃられましたよ。いろいろと考えられたようですが、そのように決められました。何かご不審の点があれば、神官長に直接お伺いくださいませんか?」
「うぅぅぅ、分かりました!?聞いてきます!!」
頭からブースカ湯気を出しながら神官長の部屋に向かって行った。
3人でクスッと笑ってしまった。
「マヤさん、ゾイさん怒らせてしまいましたけど、大丈夫ですか?マヤさんにとばっちり来たりしませんか?」
「大丈夫です。これがゾイの薬になれば良いのです」
「ねぇ」
「はははははは」
3人で大笑いしてしまった。
「しかしタチバナ様。さっき神官長様に出された供物、ものすごく高価なものだったのではありませんか?」
とマヤさんが聞いてくるから、
「まあ、2つで金貨30枚ほどじゃないかな?」
「さ、30枚!?そんな高価なものを渡されたのですか?」
「あれ?マズかった?マヤさんが来てもらえるなら安いものだと思うけど」
「い、い、いやいやいや、そんな出されるならもっと偉い神官が参ります。私ごときにあんなに費やされるなんて、なんともったいない」
「そう?」
「はい、これはタチバナ様の4番目の妻となって身も心もお仕えしないといけません!!」
「「え!?」」
マヤさん、ホントですか?それで良いのですか?オレはいいですけど?
「冗談ですって!?こんな貧相な身体の女をマモル様が喜ばれるはずがございませんから」
マヤさんがそういうと、サラさんが自分の胸と尻を探ったけど。
マヤさんがちょっと困り顔で言うのは、
「ただ心配なのは、上納金です」
「ああ、上納金。それってどう決まるの?」
そう言えば、昔、上納金って大変だと田舎のオヤジが言ってたなぁ。いや、オヤジが大変じゃなくて門徒になってる寺が。ただでさえ門徒が年々減っていて、おまけに集まるお布施も減っているのに上納金は変わらないから、寺の経営苦しいって。
鐘撞き堂が台風で壊れた時、昔みたいに建設費を門徒に丸投げすると、門徒はみんな他の寺に行っちゃうから、寺が半分、門徒が半分建設費を負担することにしたそうな。それでも建設費を数年積み立てしてやっと修理したって言ってたよなぁ。寺も住職が高齢化するのに、娘たちはみんな嫁に行って跡継ぎがいないし、廃寺も近いと嘆いてたそうな。
この世界はそんな世知がないことはないと思ってたけど、そうでもないようで、
「普通、上納金は信者の数に応じます。それに貴族の数、商家の数、など様々なことを勘案して決められ言い渡されます。それで、さきほど白胡椒と白砂糖をマモル様が無造作に出されましたので、ポツン村は富裕な村であると神官長は認識されましたでしょう。そうなると上納金の割り増しがあって、信者の皆さまから頂いたもので足りるかどうか?そういう意味で私がマモル様の妻になれば、上納金の心配もなくなります」
マヤさんの言葉に、オレの腕を握るサラさんの手に力が入ります。怖くてサラさんの顔が見れない。ここは色情抜きで話をしないといけないわね。
「分かりました。いや、妻になることが分かった、というのじゃなくて、なるべく上納金を満たせるよう協力しましょう。その代わり、村の学校で教鞭を取ってください。オレは村から文盲をなくしたいし、村人に計算もできるようになって欲しいんです。
どこに行っても、村の出身者が損しないように生きて欲しいので、そこは最低限のスキルと思っています。今は先生の絶対数が不足してます。協力して頂ければ、その分の報酬を支払いますし、上納金の協力も前向きに考えます。
忙しいでしょうが、頑張ってください」
「はい、分かりました。よろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。ごゆっくりお休みください」
と深々と頭を下げられた。話は済んだので、ゾイさんが戻ってくる前に部屋に入ることにした。遠くてゾイさんの泣き叫ぶ声が聞こえるような気がする。
「ふぅ、これで良かったでしょう、サラさん?」
「マヤさんがいらっしゃることですか?それは良かったです。けど、冗談だと思いますが、マヤさんが色目使っておられたでしょう?あれは本気になさらないように」
あれを色目というのだろうか?それはともかく、
「うん、それは大丈夫だから。いくらなんでも村の神官と関係持つなんて、村人に対してマズいでしょう?」
「それが、そうでもなくて。領主が村に派遣された女神官を愛人にしてしまうというのは、ないわけではないので」
「そうなの?」
「はい、なんでも神官服を着た女性というのが良いようです。教会の演台の上で説教する神官を我が物にするのが良いとか、聞いたことがあります」
「あーーなんとなく分かるなぁ♪」
「え、分かるのですか?でも手を出されてはいけませんよ?」
「大丈夫だって。それと同じようなの、経験しているし」
「え、そうですか?それは誰のことですか?
「それってサラさんのことだって」
「は?私ですか?私のどこがそうなるのでしょうか?」
「やっぱり自分のことって分からないんだねぇ。学校の教壇に立つ美人教師って萌えるものなんだけど。生徒に厳しく教え指導するのに、ベッドの中では甘え、淫乱に悶える定番のおかずネタなんだよなぁ」
「えぇ、萌える?淫乱?悶える?おかず?ネタ?」
「まあまあ、そんなこと気にしなくていいから、オレたちはすることしようよ」
「うぅっ、ダメです。外に声が聞こえっ!」
サラさんの口をキスで塞ぐ。沈黙は金ですがな。いや、サラさんの嬌声も金ですけど。村の生徒たちにサラさんの甘い溶けるような声を聞かせたい、聞かせてみたいって思うよなぁ。先生もこんな声が出るんだよって教えたい。




