戦い済んで
目が覚めると、小屋の中は薄暗かった。
起き上がって、小屋の中を見るが誰もいない。身体が全体に気持ち悪いので『Clean』と唱えると、ずいぶん気分が晴れた。どれだけだろう、ずいぶん寝たような気がする。ベッドから降り、外に出る。戦った門の方に行くと、そこは地面に血は残っておらず、両側の塀に残った血の跡が戦った痕跡を残していた。門の向こうが明るくて、火を燃やしているのが分かった。肉を燃やす臭いがする。
門を出ると、駐屯場の真ん中で大きなたき火が焚かれていた。ジンたちが集まって火を見ている。
「お、マモル、起きたのか?」
ジンの声に頭を下げて、
「すまない、やっと目が覚めた。片付けは手伝えなかったみたいで、済まなかった」
ジンは笑って手を振りながら、
「いや、マモルの働きからすると、これくらい寝ていても十分だ。それに初めて人を斬ったんだから仕方ないさ」
「これは、死んだヤツを燃やしているのか?」
「あぁ、村の人間は死んだら墓地に埋めるんだが、凶賊はまとめて焼いているんだ。柵の外に出しておけば、狼や野犬が処分してくれるが、人の味を覚えられても困るから、燃やして始末するんだよ」
なるほど、凶賊の死体の燃やす臭いか。食べるなんてこと、言われなくて良かった。いくら飢えてるからと言って、そこまではしないようだ。
「それでだ、マモル。明日くらいには領都から騎士様が来るんだよ、たぶんな。そのときに凶賊の生き残りを渡せばいいしな。2人いれば、ちゃんと話しやがるって。ヤツらは生き残っても、まぁ騎士様が話を聞いた後に首を切られるだけだから、少しだけ長く生きたってだけだな」
「領都から騎士様が何しに来るんだ?」
「不思議か、ははは?そりゃ、凶賊出るから危ないぞ、こっちに来るかも知れないぞ、って警告しに来るんだよ」
「警告?凶賊はもう来ちまって、死んでるのにか?」
「そうだ、凶賊が殺されたか、退治されたか、それとも隣の国に逃げていったか、要は事が済んでから様子を見に来るんだな」
「わざわざ、ずらして来るのか?」
「当たり前じゃないか。事が始まる前や戦ってる最中だったら、自分もまき込まれて一緒に戦わないといけないだろ?そうすると、ケガするかも知れないだろ?そうなったら損するから、終わってから来る!これが肝心なんだな、はっはっは」
「はぁ、偉い人は大変だな。ちゃんと頃合いを見はからないといけなくて」
「そうさ、騎士様と言っても、一番下の貴族だから色々と大変なんだよ。イヤな仕事は上から押しつけられるし、部下の平民たちからブーブー文句言われるし。オレはなりたくないな、ははは」
あーーー、中間管理職の悲哀ということか。オレの会社の課長とおんなじだ。部長が社長の息子だけど、ぼんくらだから、成果は取り上げられるし、失敗は押しつけられるし、部下は文句ばかり言うし。オレだけはちょびっと同情してたけど、あの人は今頃どうしてるんだろ?今日も苦労してるんだろうな。部長が社長になるのと、髪の毛なくなるのとどっちが早いかって、みんなで賭けしてたしな。
「それでな、マモル、騎士様が来たときに、オマエのことを報告する」
「え?オレを報告する。何を?」
「そうだ。領主様にオマエが来たことを報告しないといけないから、騎士様に伝えてもらうんだ。ちょうど良かったよ、騎士様が来てくれれば」
「なにせ、とにかく領主様に報告しないといけないんだ、降り人が来たって。そのとき胡椒の見本も渡さないといけないし、な」
ジンとバゥが交互に喋る。
「オレのこと、黙っておくわけには行かないのか?」
「いかないな。マモルが来たことは、たぶん領主様は知っている。婆さまのような予言者が領都にきっといて、たぶん予言している。だから、隠しておいても必ずバレる。それならさっさと報告した方がいいだろ?」
それもそうか。
「オレはその時に連れて行かれるのか?」
「そんなことはないだろう。たぶん、騎士様が領主様に報告して、領主様がマモルを見たいと思うなら、呼ぶだろうな。オレらは隠しておいても何もいいことないから、正直に言うだけだよ」
大きいたき火は赤々と空を染めているが、誰も何も言わず黙って火を見つめている。
「ジン、村の人で犠牲者はいなかったのか?」
「1人死んだ。槍で突いたとき、隙間から剣を差し込まれ、身体を切られたんだ。でも15人も賊がいて死んだのが1人だけというのは奇跡に近い。
もっと乱戦になっても不思議じゃなかった。村の中に入り込まれる可能性もあったしな。入り口の所でマモルが3人斬ったのが大きかったな。あの3人が凶賊の中で強いヤツらだったようだ」
「そうなのか。それが被害が少ないと言っていいのか、よく分からないが」
「あぁ、いいんだよ」
「ヤツらは、街道の方の門に囮を出して、そっちに村の男を集めようとしたらしいが、柵を出て門に移動する途中で狼に襲われて、4人やられたようだ。それで15人になっちまって、仕方なくあそこの門を攻めることにしたそうだ。火をかけるつもりだったようだが、簡単に門を開けれたんで、オレらが油断していると甘く見て中に入ってしまい、そこでやられたと言っていた。最初から火をかけていれば、オレらにもかなり被害出ていただろうが、食料も燃えちまうかも知れないから、火をかけるのは最終手段だと考えたらしい」
「そっか、それなら良かったな」
「あぁ、食料も女たちも無事だったしな」
「山賊たちの荷物は残っていたのか?」
「ははは、領都から逃げてくるようなヤツらだから、ろくなものを持っていなかったよ。武器もひどいものばっかりだったし、せいぜい馬くらいさ。ここで食料を調達して隣の国に逃げて行くつもりだったんだな」
「まぁ、食料と薬がほんの少し持ってたくらいだな。それでもオレらからすると、ないよりマシさ、薬があるからな」
「あぁ、そうだよ。さぁさ、夕飯を食おうぜ」
山賊の始末はみんな終わったようで、生き残ったヤツは縛って、小屋に入れてあるそうだ。万が一、ここから逃げ出しても、狼の餌になるだけだそうだし。
いつもと同じマズい夕飯を小屋で、ノンとミンと食べる。気持ちがまだささくれているのか、胸の中に何か溜まっているような感じがして、何も喋りたくない。それがオレの表情に出ているのか、ノンもミンも何も言わず、夕飯は終わっていく。
夕飯が終わると寝るだけなので、一昨日の夜と同じ、オレはベッドでノンとミンは床で寝る。オレはたっぷり寝ているから、さほど眠くないけど横になって、天井を見ていた。ため息だけが繰り返し出る。ミンは少しグズグズと言っていたが、いつの間にか眠ったようだ。
「マモル、寝た?」
「イヤ、起きてる」
「少し、話をしていい?」
「あぁ、いい。昼間ずっと寝ていたから眠くないし」
「そうなの。マモルはスゴかったって、みんな言ってた。マモルが3人斬ってくれたお陰で、この村が守れたと言う男の人もいたよ」
「そうなのか?オレは無我夢中で分からなかったけど、気が付いたら3人斬っていたけどな」
「そうなの?アタシたちは、もし凶賊が村の男の人たちを斬って、村の中に入ってきたら、アタシたちも殺されると思って、納屋に隠れていたけど。でももし、村に火を付けられたら納屋から出なくちゃいけないし、そうなったら犯されて殺されてしまうんだろうと思ってたよ」
「そうか、何もなく済んで良かったな」
「うん、アタシもミンも一昨日と同じ夜を迎えられて良かった」
「......」
「でも、帰ってきたマモルは本当にひどそうだったね」
「そう見えたのか?」
「顔が真っ青で、目がおかしかった。とっても怖かったよ。今はだいぶ良くなった」
「......そうか、ごめんな。気持ちがおかしかったんだ」
「ううん、大丈夫。後でジンから聞いた。マモルが初めて人を斬ったんだって。初めてのときは、あんなふうになるんだって、言ってた」
「そうなのか。ジンも初めて人を斬ったときは、そうだったのかな」
「うん、そうだと言ってたよ。大変なんだって。アタシは女だから分からないけどね」
「ノンもミンも怖がらせて悪かったな」
「それで、そのときジンに言われたんだ。マモルに抱かれろ、って」
「え?なんと?」
「ジンが言うのはね、人を斬ったときは心がささくれてしまって、誰かに慰めて欲しくなるって。その時、女を抱くとナゼか気持ちが穏やかになるんだって言ってたよ。だからね、マモルがアンにこだわらないなら、アタシを抱いてよ。ジンにアタシの方から誘えって言われたよ」
「......いいのか?」
「うん、いいよ。そのために来たんだし」
「そうか......すまないな」
「何も気にすることないから。アタシは何をされてもいいから。アタシ、アンから聞いてるよ、マモルが変なことするって」
アンさん、何を伝えているのですか?
「え?変なことするって......」
「ふふ、うん、アンが想像したことないことばかり、マモルがするって言ってた」
「......アンはノンに話したのか?」
「うん、アタシがアンの代わりにマモルの世話をするって決まったとき、こっそり教えてくれたよ。何があっても驚いちゃ、ダメだって。じっとガマンして、マモルのしたいようにさせておけばいいんだって」
アンさん、あなたはイヤイヤだったんですか?あ~~~ぁ。確かに、アンさんは、ほぼお地蔵さんでしたね。
「マモルのしたいようにさせておけば、たぶん慣れるから大丈夫、って言ってた」
はぁ......。
「マモル、どうしたの?ため息ばかりついて?」
「いや、何でもないよ」
「ため息はつくけど、少し明るくなったかな?さっきより口調が軽くなったもの」
「ノンのお陰だわ」
「アタシはともかく、アンのお陰もあるかな」
「そうだね、アンのお陰もあるし」
「何それ、アンはいないのに何があるんだろ?」
自分から言っといて何を言うんだろう?
「まぁ、いいや。じゃあ、こっちに来てくれ」
「うん、じゃあ、よろしくね」
と言って、横に入って来た。
ノンを抱きしめ、背中に指をそっと当て、聞こえないようにして『Clean』とつぶやく。ノンの身体に『Clean』がかかり、臭いか消えた。
「あれ?」
「どうした?」
「今、何かしたでしょ?」
「何もしてないぞ。抱いただけだろ?」
「違う、アタシ分かったもの。マモルがアタシを抱いた瞬間、マモルからアタシに何か流れてきたような気がしたもの」
「分かるのか?」
あちゃ!
「やっぱり何かしたんだ。今、身体が軽くなったような気がする。さっきまでと違うもの。何をしたの?」
「ダメだ、言えない」
「どうして?」
「これはミンのことと同じなんだ。だから簡単に人に言えない。言うと悪いことがノンに起きるかも知れないからな。ノンも黙っていてくれ」
「そうなんだ......でもミンにも、明日の朝にコレをやってみてくれないかな?たぶん、喜ぶと思うから」
「分かった、分からないようにする」
「もしかしたらミンも分かるかなぁ?ミンは鋭いから」
顔を近づけ、黙らせようとキスをする。キスをして舌を入れると
「え~~~、アンの言った通りだった! マモルはこういうことするんだ。アンがとにかく慣れることが大事、と言ってたのは、こういう事だったんだね」
「スミマセン......」
「あ、ゴメンね。謝ることないもの。でも、ミンを起こしちゃうかも知れないから、あんまり変なことしないでね、驚いて声が出ちゃうかも知れないから。アタシは声が出そうになったら、布を咥えるね。声でミンが起きちゃうかも知れないし、万が一だよ、アタシは声を出さないけど、万が一」
ノンは何をしなくても、話をするだけでうるさい。でもこの明るさはありがたい。今はこの明るさに救われる。今夜、ノンを抱けて良かった。女のおっぱいというモノは不思議なモノだ。手で包み、ゆっくりと揉み口に咥えるだけで、気持ちが安らいでいくのが分かる。
「マモルはホントに舐めるんだね、えへへ」
とノンが言うから、
「ダメか?」
と聞くと、
「ダメじゃないよ。でもこの村でそんなことする人はいないよ」
「どうして?」
「だって、人の肌って汚いし、舐めると変な味がするからね。苦かったり、垢が口の中に入ったりするから、誰もそんなことしないもん」
「そっか」
「でも、さっきの変なのでアタシの身体がキレイになったんでしょ?マモルの身体も」
「まぁ、そうだな」
「だからさ、アタシは死んだダンナから身体を舐められたことは一度もなかったよ」
「ホントに?」
「うん、たぶんアンもそうだと思うよ」
「そうなのか?」
「そう。さっきも言った理由で舐めるなんてことはしないしね」
「そうか、ならオレが何をしようと嫌がらないでくれ」
「うん、好きにして」
ノンはそう言ってオレの頭を抱えて胸に押しつけた。胸のとんがりを口にして転がすと、最初は驚いたようで、くすぐられているような感触だったのか、少し身をよじったりしていたけどすぐに
「あ......うん、気持ちいい、続けて、お願い......」
と言われ、鼻にかかるような声が漏れてくる。そのまま右から左に移ると、
「マモルって、おっぱい好きだね?赤ん坊みたい」
「ダメか?」
「ううん、ダメじゃないよ。とっても気持ちイイ。おっぱいがこんなに気持ち良くなるなんて思わなかったよ、あぁん」
と身をよじる。手を動かして、下の方にやると、すでにお姫さまは湿っていた。いや、渾々と温泉が湧いていた。
「スゴいな!」
と独り言のつもりだったけどミンは、
「バカ!そんなこと、言わないで、あん!ねぇ、どうして、すぐに入れないの、あぁん!」
「だって、楽しいこといっぱいだから」
「えぇん、なにが、なに、が、たのしい、の、あん!」
指をあそこに当てたり、中に入れたりすると、いろんな声が出てくる。
そして下のお姫様に口をあて舌で舐めると、
「え、汚いよぉ......ねぇ、そんなことするのぉ?あ、あぁ、あぁぁぁ、ダメだよぉ、ねぇ、変になっちゃうよぉぉ、あん!!」」
と嫌がりながら頭を押さえつけて、もっともっとと催促された。
これをして、と言えばやってくれ、あれをしても嫌がらず、言うままに身体を動かし、声を上げた。途中からミンが起きていたかも知れないけど、そんなの関係なくなっていたようだ。「初めて、こんなの初めて」というのと「あぁ、いぃ!」というフレーズを繰り返していたし。




