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帝都に着きました

 ゴダイ帝国の帝都ブロジに向かう道中でもずっと練習させられている、レーダーを。


 ベンゼと2人でいるときだけで良いのか、と思っていたら、ヒューイ様からも「いつもずっと頑張ってね♪」と言われ、やってないとベンゼに分かるらしく、馬に乗って移動中でさえ催促され、練習している。


 食事の時間でさえ行っており、しなくてもいいのは睡眠中だけ。これが習慣になれば、睡眠中でも無意識にレーダーを働かせていることが可能になるそうだ。

 確かに、異世界ノベルなんかじゃ、主人公がずっと練習していたら、みるみる上達するというのが、ごちゃまんとあるけど、あんなことはなかった。日々、眠る時間も惜しんで練習して、少しずつレーダーの範囲が広がっているかな~~?というくらいのもので、せいぜい50mくらいの範囲に人がいるということが分かるくらいにまでなった。ベンゼ先生みたいに、その人の感情まで分かるなんて、とてもとても。

 ふにゅ~~って感じで魔力をレーダーにつぎ込んでいくと、ものすごい情報量が入ってきて、脳の回路が焼き切れてしまいそうになる。頭の中は1MB/sくらいの処理量なのに、情報は光ケーブルで送られてきているような?

 たぶんきっと、いるのといらないのを分けていけばいいんだろうけど、それの仕方が分からない。ベンゼ先生に聞いても「さぁ?」というだけで、気が付いたらそうしていた、というものらしいし。

 

 こういうスキルというか、レーダー探知って言うモノが呪文で行うモノかと思っていたけど、呪文を使わず魔力を意識して使うだけ、というのは新鮮だ。

 他にもこういうことがきっとあるんだろう。と思ったら、タチバナ村の周りの堀を掘削したとき、鍬の先まで魔力を流して掘ったことがあったことを思い出した。あのときは、マンガにあるスコップにオーラを流せば、豆腐を掘るようにトンネルが掘れる、というチートさを思い出してやってみたんだった。

 その効果はオレ的には微妙だったけど、村のみんなからは絶賛されていたと思うけど。あのマンガのように、身体の周りにオーラを張り巡らせて防御したり、オーラを武器にまとわせると何でも切れたりするようになるのか?前に、岩を斬るときやってみたけど、あのときは付け焼き刃だったから、もっと集中すれば威力付くのかなぁ?

「マモル様、休んでますよ?」

 はい、ベンゼ先生に注意されました。まずはレーダーの練習を続けます。まずこれを習得しないといけませんね。

 昔、ジンが天気予報してたのは、スキルだったのか呪文だったのか?ふと思った。



 最初、ヘルソンから帝都ブロジまで20日くらいの日程と言われていたけど、18日で着いた。もう馬に乗っているのも厭きてしまっていたし、歩く方がオレには向いているから、ベンゼに代わりに乗ってもらいたいくらいだったもの。


 遠くから耕作地の向こうに、都市らしき物が見え、お決まりの石の壁がぐるりと周りを取り囲んだ大都市が見えた。

 オレはヨーロッパの城郭都市というものは見たことがないけれど、中国出張のときに先輩に無理矢理、西安や平遥に連れて行かれたけど、ああいう感じに近いと思う。


 ヤロスラフ王国の都市やルーシ王国の領都カニフなんて、まるで規模が違うような気がする。もしかして、オレの見ている面だけが大きくて、他の3面はしょぼいなんてことはないだろうし。

 この偉容に圧倒されているのはオレだけなのか、誰も何も言わず、行列は粛々と進み、なんの問題もなく都市の中にはいった。城壁の厚みってなんなんだろうな、10m以上はありそうだし、城壁の上に道路があって馬車が通行してそうだし。

 あまりのスケールにお上りさん丸出しで、キョロキョロと見ながら進んでいると

「マモル様、落ち着いてください」

「そうだよ。マモルは公爵様の隊列の一員という自覚が足りないよね」

 と注意されまして。大変申し訳ございません。


 門を通ってから1時間以上かけて、やっと迎賓館に到着した。

 4階建ての豪奢な建物で、ヤロスラフ王国の建物に比べて、金属(鉄?)やガラスが多く使われていて、直線主体だけど、窓とかに植物の模様みたいのが金属で飾られている。こういうのって、国の余裕というか財政の裏付けあってのことなんだろうな。帝都に来るまでの農作業している人たちや、道に行き交う人たちも服装が貧乏たらしくなくて、ツギだらけの服を着ているなんてことなかったし、生活が苦しそうには見えなかったな。

 まさか、日本と海をはさんだ近くの国みたいに、外国人に見える所だけ立派にして、舞台裏は貧困の極みなんてことはないだろうし。この国は富国強兵だし富民強国なんだろうなぁ。


 先を進んでいたチェルニ領主のポドツキ伯爵一行も迎賓館に入っておられ、調印団はのべ200人を越えるというのに、すっぽり納まったそうだ。迎賓館なんて滅多に使うもんじゃないと思うけど、こういうものを用意してあるというのはスゴいなぁ、と感心してしまう。え、ヤロスラフ王国にはこんなでかい入れ物はない?そうですか、やっぱり。


 迎賓館の2階の一角に部屋を与えられて、外を眺めて見る。

 道を行く人はヤロスラフ王国と明らかに違う民族で、イタリアやフランス南部からベルギーやオランダに来たというか、広州から瀋陽に来た感じみたいなくらい違う。後者はちょっと例えば悪いかも知れないけど、背の高さが違うし、丸顔が長い顔になって、肌の色も白くなって、髪の毛が黒や茶色が金や銀が多くなっている。骨の太さからして違うもんな。いやーー山を一つ越えただけでこんなに違うのね。この国だと、オレの背の高さが目立たないように思う。

 ヤロスラフ王国の貴族の皆さんに金髪の人がいるのは、ゴダイ帝国から移ってきたということなのかしら?それとも他から来ているのか?そもそも地続きだから、血が混じるのは当たり前だろうけど。


 ヒューイ様によると、これからイズ公爵様たちは色々と行事があって、忙しいことこの上ないそうだけど、下っ端のオレたちは、公爵様の行事が終わって帰ります、と言われるまでは自由行動だそうである。自由行動と言っても街を自由に歩けるわけでなく、迎賓館で待機するだけなんですけど。ま、許可をもらえば外に出られるらしい。

 ヒューイ様から「キレイなお姉さんの所に行きたいなら、調べておいてあげるよ♪」と言われたけど、オレは何でもかんでも行きたいわけじゃありませんって!まだ3週間ほどですから!なに?公爵様承認の店があると?こういうものは必需品だから、安心安全明朗会計のお店を選定中だと?

 いえいえ、いいんです。オレは新婚なんですから遠慮致します。可愛い妻を残してきたのですから。


 帝都に着いてしまうと、オレにすることはないもんで、ペドロ会頭から預かってきた品物を渡そうと、係の人にグラフさんと連絡を取ってもらうようお願いした。

 そうすると、その日のうちにグラフさんから「明日、迎賓館に行くから」と連絡があり、夕食を外で食べようと思うから上の人に了解もらっておくようにと付け加えられていた。

 ヒューイ様に相談すると「私が了解取っておくから。ただし、私も同行することになるよ。オレ1人で外に出すなんて、あり得ないからね。いくら帝国の要人だって、ね」と釘を刺されました。ま、そりゃぁ、そうですよね。


 朝から何もすることもなく、ずっとレーダーの練習をしていると(今は100mくらいまで索敵範囲が広がってます)、昼過ぎに玄関に何か知っているような人がやって来たのが分かった。

 しばらく待っていると、案の定グラフさんが来たと案内があった。

 暇を持て余してレーダーの練習もうんざりしていたので、喜んで玄関に行くとグラフさんと同じくらいの背格好の男と小さい女の子が2人後ろにいた。よく見ると小さいというのはグラフさんに比べて、ということで160㎝ほどはありそうで、これが日本人の女の人(子?)だ!?


「久しぶりだね、マモル。遠い所、よく来てくれた。歓迎するよ」

 グラフさんが大きな右手を出してきたので、握手する。手が大きいなあ、ブラウンさんといい勝負だわ。

「こっちは私の副官でシュレジンガー。そして、彼女がチカコ・ホリタ、彼女がケイコ・サイトウだ」


 キターーーーーーー!!

転移して初めての日本人!!

それも女性!!

ゴダイ帝国に来てすぐに会えた!!


何コレ、何のイベント♪♪♪♪



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