表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/755

今日はウサギと対決だ

 小屋を出てジンの小屋に向かう。ジンはオレを見るとニヤニヤしている。

「なんだ、ジン、オレの顔に何かついているのか?」

「聞いたぞ、夕べは大変だったてな。オマエの小屋の隣のギンがうるさくて眠れなかったってな」

「そりゃ、済まなかったな、睡眠の邪魔をして」

「あぁ、それで今日は森に行きたいとアンから聞いたが?」

「そうだ、ジンが行くとき一緒に連れて行ってくれないか?」

「済まないが、今日は森に行かないんだ。もうすぐ雨が降ってくる。今日の雨は結構強いから、森に行くと危険だ。だから今日は小屋にいろ」

「そうなのか、ジンは天候が分かるのか?」

「分かる。ナゼかは分からないが、小さい頃から、今日明日くらいまでの天気が分かる。だから、大雨や大風が来るときは、みんなを避難させたりしている」

「すごいな、天気が読めるというのは、オレの世界にもいたが、そんな正確な天気を読めるのはいなかったぞ(天気予報も局地的には外れることが多かったし)」

「そうなのか(どこか嬉しそうだな)、奥までは行けないが近くなら行けるぞ。あの胡椒の木くらいまでなら行けると思うから、行くか?」

「そうか、それなら連れて行ってくれ。実をわんさか取ってきて、みんなで処理しよう」

「そうだな、たくさん取ってきて、みんな食べれるようにしよう。なら、みんなに声を掛けてくる」

 そう言ってジンは小屋を出て行った。


 オレも小屋に戻り、カゴを背負い、万が一のため剣を持つ。万が一、どころかこの世界に来て外に出ると100%の確率で獣に遭遇しているから、絶対必要だ。

 広場に行くと、すでにジンを含めて10人ほどがカゴを担いで集まっていた。

「オマエら、これからマモルが見つけた胡椒の木の実を取りに行くぞ。胡椒の実は乾燥して、すりつぶしたものを食い物にかけると食い物が旨くなるんだ。もしかしたら売り物になるかも知れん。カゴに詰めれるだけ詰めてきてくれ。

 今日は、もうしばらくしたら雨が降ってくるから、さっさとやるぞ」

 ジンはそう、みんなに告げて前にも入った道を先頭に立って進む。


 胡椒の木の辺りに着いて、ジンがオレに説明するように顎をしゃくる。

「みんな、オレはマモルだ」

 みんな、そんなことは知ってるよ、と言う。そりゃそうだな。

「胡椒の木はこれだ。この緑色の実と赤色の実が食べれるから、房ごと持って帰る。乾かすと小さくなるから、できるだけカゴに詰めて持って帰ってくれ。最後に枝をスパッと切って持ち帰りたい。枝を地面に差しておくと、成長して木に育つんだ。そうすると実が成るから、村の周りで胡椒の実が採れる。よろしく頼む」

「みんな、分かったか。これは、みんなの生活のためでもあるんだからな。ただ、言うまでもなく、周りには獣がいるから注意しろよ。森の端っこと言っても、何が出ても不思議じゃないぞ。カゴにいっぱいになったら、ここに集まってくれ」

「そうだな、マモルがいるから獣が寄ってくるかも知れんな」

「「「「「「「あははは、そうかも知れん」」」」」」」

 やめてくれ、フラグ立てるのは。

 

 みんなは、胡椒の木を捜しに散らばって行く。「ここにあったぞ」という声があちこちに聞こえる。ここら辺の気候はきっと胡椒の生育に合っているんだろうな、オレの田舎よりは暖かいような気がするし。


 あっという間に、みんなカゴを胡椒の房でいっぱいにして戻ってきた。やっぱり森で生活している人だからかな?オレはカゴに半分くらいだけと、みんな戻ってきたから、もう帰っていいかな?

「みんな揃ったな。おっとマモルが半分くらいしか入ってないが、雨が降りそうだから帰るぞ」

「「「「「「「おぅ」」」」」」」

 ジンが先頭で、バウが殿になり一列になり村へ帰る。


 帰り道、胸がザワザワする。聞き耳を立てると、奥の方で何か音がするような気がする。

「ジン、何かおかしくないか?奥の方で音がするぞ」

「本当か?マモル。みんな、耳を澄ませ!」

 みんな黙って耳を澄ませる。

 何か草をかき分けるような、ガサガサという音が聞こえないか?何かが近づいているぞ。

「ジン、何か来ている」

「そうだな、近づいている。マモルが森に来ると必ず獣が寄ってくるな。今日は何だ?」

 またかよ、またオレが戦うのか?

「戦えるヤツは前に出ろ。向こうのほうから来ている。最前列はマモルとオレとバウだ。さあ、やるぞ!」

 ジンが真ん中でオレとバウが左右に立ち、音のする方を見る。何か茶色い物が飛び跳ねてこっちに向かってきている。

「大ウサギだ。珍しいな、こんな所で見るのは」

「そうだな、群れで向かってくるぞ。マモル、角に気をつけろ!」

そうか、目を凝らすと額に20㎝くらいの角がある50㎝強のでかいウサギがジャンプジャンプして向かって来る。

 先頭のヤツがポーーーンとオレに跳んで来る、またオレ?ジンじゃなくオレ(;.;)。

 

 意識をギューーーンと集中すると時間がスローモーションになる。この感覚はもう慣れてきた。剣を振りかぶり、跳んで来たヤツを斬る。スパっと音がするように大ウサギの首が斬れ、例によってまた血を浴びる。その後ろから、次々に大ウサギがジャンプしてなぜかオレの方にくる、おかしいジンやバウの方に行けよ!

 とにかくオレは剣を振って、飛び込んで来るヤツを斬る。一度血を浴びているから、もう二回も三回も四回も同じだ。あんまりオレの方に大ウサギが飛び込んで来るものだから、ジンとバウは笑いながら前に出て、途中カットしてくれる。

 

 大ウサギの群れが終わるのはアッという間だった。思わず、尻餅を着いてしまった。

「マモル、大丈夫か?今日もやったな!」

「あぁ、何ともないけど疲れた」

 バウも少し呆れたような顔で

「マモルが獣を呼ぶ、というジンの話は本当だったな。こんな所で大ウサギの群れに遭遇して、おまけに向かってくるなんて滅多にある事じゃないぞ」

 他の奴らも口々に言う。

「そうだな、あの数を見たときは、どうなるかと思ったが、みんなマモルの方に向かってくるし、マモルが殺ってしまうんだから驚いたよ」

「ジンやバウは見てただけだろ笑」

「何を見てたって言うんだ、オレとバウは2頭ずつ殺ったぞ!」

「じゃ、マモルはいくつ殺ったんだ?1,2,3,4,5,6。6頭か。これはすごいな。今晩はまた肉を食べられるぞ!」

「そうだな、オレはウサギの肉が一番好きなんだよ!」

「おまえもそうか、オレもだよ。かあちゃんや子どもも喜ぶぞ」

「マモル様々だよな」

「さあ、集めてとっとと帰るぞ」

 みんなは満面の笑みで大ウサギを持って、村に向かう。血を浴びたのはオレだけだった。村に着く少し前に雨が降ってきたので、浴びた血が流れたのが幸いだった、みんなは困ってたけど。ジンの予報の通りだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ