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ついに届いた......

いつかはマモルに稲作をさせたいと思っていますが、稲作をやっている当事者(兼業農家)として稲作は本当に大変です。他の作物が簡単というわけではありませんけど。

よく、有機農法・無農薬栽培を謳っておられる農家さんがありますが、真剣にやっておられるのならさぞかし大変だと思います。うちは中部地方の米どころの平野部で稲作をやってますが、10kg3500円で玄米が売れればいいな<くらいの感じですけど、無農薬・有機農法だと、うちの5倍の価格でも割りに合わないのでないでしょうか?

有機農法だとまず肥料作りから始まりますが、肥料の元となる家畜の糞だって、家畜の餌、とうもろこし等の生産の所から押さえないとウソになるでしょう?とうもろこしが遺伝子組み替えで作られたものとかだとNGになると思いますから、そこを考えると、自分ちで家畜を育てるか、協力畜産農家さんで無農薬で牧草育ててるところを捜して、なんて気が遠くなる話で。

以前、近くの田んぼで周りが普通の稲作するなか、一枚の田んぼだけ無農薬で稲作されたのがあったのですが、周りはじゃんじゃん農薬使うので、その田んぼも周りから農薬が入ってきて、農薬のかからない真ん中の方だけ、草ボウボウ、虫いっぱいになってました。

無農薬で稲作するときは、辺り一面で無農薬で稲作しないとできないと思うのですが。

とにかく有機農法・無農薬栽培はコストがかかります。米の売値が10kg2万円でも合わないんじゃないかと思います。

あ、10kg3500円というウチの米も、人件費を「ゼロ」、農機具の償却が全部終わってる、という前提の値段ですからね。稲作って多くの農家にとって未来ないんです。

 ブカヒンに帰ってみると、ロマノウ商会から「荷物が届いてますよ」という案内が届いていた。うーーん、何だろう?ちょっと、心当たりがないんだけど。カタリナに聞いても、頭を傾けて、さぁ?と言うし。あぁ、今日もかわいい♪


 考えていても仕方ないので、カタリナと2人でロマノウ商会に行く。久しぶりだから馬車でなく、テクテクと歩いて。カタリナはブカヒンに住んでいたときは、町を歩くということは少なく、安全面のこともあって馬車で移動することの方が多かったというけど、タチバナ村に来てから、毎日ノンとミンに連れられ、歩く歩く歩くという日々だったそうだ。

 危なくないのかと聞いたら、リーナさんとオレグがお供だったそうで。お守りを持っていたので、獣が寄ってくることはなかったらしく、街中にいるよりはよほど安全、だったとのこと。


「おはようございます」

 門番に声を掛けると

「おはようございます」

 と満面の笑みで返してもらい、ドアを開けてもらう。

 さっそく奥から支店長が出て来た。

「タチバナ様、おはようございます。わざわざ、お越し頂き申し訳ありません。以前、タチバナ様がザーイで注文されていたものが届きまして、送られて来たのですが、これがマモル様の意図された物かどうか確認して頂きたく、ご連絡致したのです」

 ん、ザーイで注文したもの?もしや?


 店の中を通り、どんどん奥に入って行き、店を抜け倉庫に入ると、麻袋が2袋置いてあった。これってもしかして、あれじゃん!


「タチバナ様、ザーイからの話によると、これが米というものらしいのですが、中を確認していただけるでしょうか?」

 と支店長さんが、部下に袋の口を開くよう指示した。


 心臓、バクバク言ってます。いやぁ、忘れていたけど米だといいなぁ、ハズレだと立ち直れないよ?長粒米でもいいから、ジャポニカ米なんて贅沢は言いません!


 袋の中から、取り出されたのはなんと、ジャポニカ米の玄米だった!!スゴい!?

「おーーーーーーー!!」

 思わず、おっきな声が出てしまいました。なんてことだぁ、ついに米が入手できるなんてぇぇぇ!

 あ、すんません。みんな、オレを呆れたような顔で見てますね。なんで、こんなものでそんなに喜んでいるんだって。コホン。


「間違いありません。これが頼んでいた米です、ありがとうございました」

「おぉ、それは良かったです。マモル様の反応で、そうだとは思いました、ははは。いや、安心しました。船で60日くらいかかる所から運ばれて来たそうですよ」

「そうなんですか、遠い所を、よくぞ無事に着きましたね。あぁ、できるなら今後も仕入れて頂きたいのですが。できれば、麦と同じように殻のついたままの粒、いや種も入手したいなぁ。栽培したいんですよ。

 あ、でも、お金がないんだった。すんません、どうしようか?ちょっと、待ってください、今度入って来るまでにお金の都合は付けておきますので、手配だけお願いします!」

 頭を下げると、

「マモル様、頭をお上げください。代金については心配しておりませんので、結構ですよ。うちの会頭はマモル様に請求することはないと思いますから」

 と言われるとカタリナが、

「いえ、かかった費用についてはリファール商会でお払い致しますので、どうぞご請求くださいませ。夫がこんなに喜んでいるものを、ガマンさせるわけにはいきませんから」

 とにこやかにおっしゃいます。ありがとうございます、カタリナ様。

 支配人さん、にこやかに微笑んで

「了解致しました。それでは、これは後でお届けさせますね」

 と言うから、思わず、

「いいえ、これは持って帰ります『Store』」

 と仕舞ってしまった。

 見ていた人は皆唖然。あいた、人前で見せてしまった。オレが使えることを知ってる人は多いらしいけど、公衆の面前でやっちまった。


 しばし沈黙のあと、カタリナが口に手を当て頭を下げた。

「皆さま、申し訳ありませんが、今ご覧になったことは他言されませんように、お願いいたします」

 本当に申し訳ありません、ご迷惑をお掛けします。


 リファール商会に戻って、すぐに米を炊きたいと思ったけど、お店の台所を貸してくれなんて言えるわけもないし。


 日本では、田舎の母親が電気釜を使うよりガス釜の方が美味しく炊けると聞いてきて、ガス釜を買ってきたっけ。それで、しばらくしたら薪で炊いてみますと宣言して、どこからかお釜を買ってきたけど炊くのはオレに丸投げしたのを思い出した。

 始めチョロチョロという諺を頼りに炊こうかと思っていたら、たままた隣のばあちゃんがウチの母親の暴走ぶりを心配して様子に見にきて、そのばあちゃんに炊いてもらったのが美味しくて。

 母親は「これから毎日薪でご飯炊きましょう!!」と言ったけど、父親、兄、オレが「自分ですれば?」と突き放したので、あきらめてくれたけど。たまーーーに、ばあちゃんに炊いてもらったご飯はごちそうだったな!

 

 どこか邪魔にならない所で炊こうかと思ったけど、町の一等地にあるリファール商会の敷地内にはどこにもそんな場所がないわけでして。

 カタリナに相談したら、義母のハンナさんがペドロ会頭の朝食を作る台所を借りることになりまして。

 せっかく炊くから、精米しようかとおもったけど、まずは玄米で食べてみようかと思います。


 田舎の母親が玄米はミネラルが豊富だから玄米を食べましょう!!と言い出したとき、父親が稲作なんてものはあんだけ農薬使ってて、表面に残ってるかも知れないんだから、精米した方がいいんだ、とケンカになったのを思い出した。ま、結果は一度玄米炊いてみて、歯の弱い母には向いていないということで上白米を食べることになったけど。


 それはともかく、隣のばあちゃんと炊いた記憶を頼りにやってみた。何事も経験してみるもんだなぁ、と母親に感謝。一緒に住んでたときは、言うだけ言って、やるのは人任せの性格にほとほと困っていたけれど、今は助けられることが多いな。


 薪で炊く米は、とにかく火加減が大事。キャンプの飯ごう炊さんなんて、失敗して当たり前、みたいなところがあるけど、今はそうはいかない。米の貴重さが違う。

 何とか、そこそこのものを食べたい。飯ごうと鍋という違いは大きくて火の廻りとか、火加減が難しくて、薪と『Fire』の併用という摩訶不思議な調理となって、見物の人たち(ハンナさんとかね)は唖然としているし。

 そうこうしてる間に、なんとなく炊けたようで、玄米だからって水を多めにしたら、多すぎたようでちょっと柔らかくなりすぎた。ま、めっこになるよりはマシだろう。でも、米は米で飯は飯。この世界の人にとっては、初めて食べるから大丈夫。味噌もなければ醤油もない、魚もないし卵焼きもない、漬物もない、ご飯だけ頂きました。

 ご相伴にあずかった、みんなは味がないので不思議がっているけれど、これでいいんです!!


 織田様、食べて頂きたかったです。一緒に食べて、ご感想を伺いたかったです。美味しいでしょう?と聞きたかったですぅぅぅぅ。


 オレが泣きながら食べているのを見て、こんなべちゃべちゃなものが美味しいの?と思ったようだけど、ちょっとだけ日本の味に浸れた。誰か、味噌や醤油を発明してないかなぁ?すぐに次のチャレンジしてみたいけど、もったいなくてやれない。やったとしても、自分へのご褒美で記念日に一人分、最悪?カタリナと2人で食べることに決めた。大事に大事にとっておいて、ちまちまと食べていくんだ。


 またザーイに行って、魚を買って来ようと強く思ったのでした。シュールストレミングは武器として買ってこようと合わせて思いました。

 


 そうそう、変な男が訪ねて来ました。名前はベンゼと言います。

 ある日の午後、結構汚い風体でリファール商会にやってきて「タチバナ村の領主のタチバナ様はいらっしゃいませんか?」と言ったそうです。

 おれはたまたま留守にしていて、いないと言うと「待たせてもらいます」と言って入り口の前の門番の近くに座ったそうです。さすがに中に入れるわけにはいかず(汚いから)、かと言ってオレの客かも知れないので、無体に扱うわけにも行かず、そのまま無視することにしたそうです。


 オレが帰って来て、ベンゼという者が来てますよ、と言われたけど、誰か分からない。名前に覚えがない。とにかく顔を見てみようと思ったけど、会ってみたけど分からない。

「失礼ですが、オレはあなたとどこでお会いしましたか?」

 と聞いてしまった。ベンゼという男は、あぁやっぱり、と言いながら、

「タチバナ様とはハルキフでお会いしました。ヒューイ様ともお会いしたことがあります」

 と言うんだけど、どこで会ったのだろう。戦いのときか、サラさんを連れて行った時なのか?

「私がマモル様とお会いしたのは、領主様の館の近くの塀の上ですよ、覚えておられませんか?」

「あーーーー、あのときのぉぉぉ!」

 覚えておりますが、暗かったので顔も見えませんでしたよ。でも、良く来てくれたなぁ?

「分かりました!けど、しばらく護衛の仕事もないですが、いいですか?」

「はい、寝床と食事をいただければ何でも致します。使ってやってください」


 ということで、ベンゼが仲間にくわわりました。当分はリファール商会の手伝いをよろしく。


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