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私(カタリナ)とノンとミン(1)

3人の話です、

サブストーリーです。

 私が初めてタチバナ村に着いたとき、マモル様はすでに戦に出発した後だった。

 でも、村の人が総出で出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、カタリナ様」

「お待ちしておりました、カタリナ様」

「ようこそいらっしゃいました、カタリナ様」

 みんなは口々に歓迎の言葉を言ってくれました。

 でも、最後におずおずと2人の姉妹が私の前に出て来たとき、みんなの空気が変わったことが感じられました。

 それで、あぁ、この2人がノンとミンなんだわ、って分かりました。

姉妹かと思ったけど、姉だと思った方がノンでちょっと大人っぽく、妹に見えた方はミンでした。


 2人は黙っていて、私から何か声を掛けようかと思ったとき、ノンの大きな目からポロポロ涙がこぼれ落ちてきた。涙は止まらず、どんどん溢れてきて、つられたのかミンも泣いて。

 2人とも声を出さず、ただ泣いているだけ。

 どうしようと困っていると、ノンが話しだしました。

「ごめんなさい、ぅ、ぅ、カタリナさま、ごめんなさい。ぅぅぅ、アタシ、たちが、いて、イヤなら、アタシ、ぅぅ、たちは、ぅぅ、出て行きます、ぅぅぅ、から。ゴメン、なさい。ほんと、にゴメン、ぅぅぅ、なさいぃぃ」

 2人は涙を拭きもしないで、やっと話してくれた。

「ぅぅ、マモル、さまが、ぅぅ、いない、ときに、ぅぅ、出て、行こう、って思って、いたけど、ぅぅ、出て行け、なかった、の。ゴメン、なさい、ほんとに、いて、ゴメン、なさい、ぅぅぅ」


 あぁ、この2人は、そんなことを思っていたんだ。2人は何も悪いこと、していない、のに、ぅぅ。私も、涙が、溢れて、きた。こんなに、いい子で良かった。

 私も、もしかしたら、村の人を味方につけて、私を追い出そうとしたりするんじゃないかと心配していたから。



 私もやっと、2人に話ができた。

「いいの、ノンとミンのこと、知っていた、から。この村、にいてくれて、いいの。ずっと、いて欲しい、から、私と、仲良く、ぅぅ、してね。お願い、ね」

 と私も泣きながら、やっと言えた。

 後ろを見ると、お父さまも泣いていたし、ネストルさんもサラさんも村のみんなも泣いていた。

「ありがと、ございまず、カタリナ、さま。よろしく、お願い、しますぅぅぅ」

 泣き崩れるノンをミンが抱きかかえて、後ろに下がって行った。

 ネストルさんから、村に入るとき、村の人に一言、言わないといけません、と言われていたけど、これでみんな忘れちゃった。


 夕方、村の真ん中にある広場で、村のみんなが集まって、一緒に夕食を食べました。もう一度、一人一人挨拶に来てくれたけど、ノンとミンは隅の方でじっとしていたのが見えました。お父さまは、2人がまだ、カタリナに対して遠慮しているんだよ、とおっしゃっていましたから、きっとそうなのでしょう。


 次の日の朝、食事の後、ノンとミンを呼んでもらいました。だって、どこに2人がいるか分からないんだから。

 呼ばれて、おどおどしながら私の前に来たノンとミンに、

「ねぇ、ノン、ミン。今日から3人で魔力の練習をしましょう。マモル様にノンとミンから魔力の使い方と呪文を教えてもらうように言われていましたから」

 と言うと、ノンが首をプルプル振って、

「カタリナ様、それは無理!アタシなんかと練習したら、ダメになっちゃうから!」

 横のミンが、プッと笑って、

「ねぇ、ノン。何を言ってるか分かんないから。マモル様に言われたでしょ。3人で練習するように、言われていたのに、何がダメなんだようぉ笑。カタリナ様、よろしくお願いいたします」

 あ、ミンの方がよっぽどしっかりしているかな?


 毎朝、私とノンとミンの3人で手を繋いで、魔力の流し合いをします。

 魔力を流す前に、気持ちを落ち着かせるため、ノンとミンが代わりばんこにお茶を入れてくれます。

 ミンがたまにお茶をちょっぴりこぼしたりすると、ノンが、

「ミン、今の10点引き笑」

 と笑います。するとミンがほっぺを膨らませて、

「何!ノンだって夕べ、失敗したじゃない!!」

と怒ります。

「10点引きって、なあに?」

 私は聞いたことがない言葉を聞いてみます。ときどき、二人だけの言葉を使うときがあるので、気がついたら聞くようにしています。

「マモル様が言ってたんです。100点満点でちょっとした失敗なら10点引き、大きな失敗なら30点引きって」

「100点満点って何?」

「マモル様のいた世界で、学校で試験というものがあるんだそうです。紙に問題が書いてあって、答えを書いて、先生が答えが合ってるかどうか調べてくれるんだって。それで点数が100点になれば満点と言って、褒めてもらえるんだって」

「へぇー、マモル様のいた世界には、そういうことがあったんですか?」

「そうなの、いろいろ聞いたけど、忘れちゃった笑」

「ノンの忘れっぽさが20点引き!!」

「ふん、ミンは偉そうに!」


 魔力の流し合うまでは、どことなくぎこちないような所があったりするけど、終わってみたら、すっごく仲良しになっている。ノンとミンはこの村で生活するまで大変だったと聞いているけど、魔力は本当に澄んでいて、私に流れ込んでくる魔力は本当に気持ちいい。

「どうして二人の魔力って、こんなに気持ち良いのかしら?」

「えーーーカタリナ様の魔力もすっごく気持ちいいよぉ」

 とノンが言うとミンも、

「そうです、カタリナ様の魔力は暖かいんですよ」

「そうかな?私はからすると、二人の魔力の色っていうのかな、すごく似ている気がするんだけど、身体の中の何かつかえている物が、みんな流れて行くような気がするんだ」

「あぁ、それはそうしているから、ねぇミン」

「ウン、カタリナ様はまだ魔力を使い始めてから、時間が経っていないので、魔力の流れが時々、つかえるところがあるんです。だから、ノンからぴ!ぴ!と合図が来て、アタシが応えるんです。カタリナ様の魔力がうまく流れますように、って」

「ほんとに?」

「ほんと。マモル様の言うには、一日中魔力の流れを意識しているようにすればいいんだって。それで、それが自然にできるようになって、意識しなくても身体の中を流れているようになればいいんだって」

「そうなの?」

「うん、マモル様は異世界ノベルっていう本に書いてあった、って言ってたから」

「異世界ノベル?初めて聞きました」

「マモル様の異世界ノベルという物には、魔力がなくなるまで使うようにすれば、だんだんと魔力の量が多くなるから、魔力を使いきって、寝て、また使い切って寝る、という繰り返しが良いんだって。でも本当かな、ねぇミン」

「そうです。そんなに魔力を何に使えばいいのか分かりませんから」

「そうなの。魔力を使うのって、毎日木に「大きくなあれ、育ちますように」ってお願いしながら、魔力を流すくらいしかないのに、ねぇ」

「そう、だから中々魔力を使い切るって難しい」

「木に魔力を流すときって、何か呪文を言うかしら?」

「何も言わない。ただ、そう思いながら、木に触れて魔力を流すだけ」

「えー、それで木に伝わるのでしょうか?」

「う~~ん、なんとなく伝わっているよね?」

「うん、伝わっていると思う。カタリナ様、やってみましょうよ」

 木に触れながら、3人で木に魔力を流すのが日課になった。もちろん、雨の日は休み。


 3人でいるときにネストルさんがやって来た時があります。

 ノンとミンは「またかぁ....」と小さい声で言うから何かと思ったら、ネストルさんは「魔力研究会」なるものの有力メンバーだそうで、呪文がどのような効果をもたらすか日夜研究しているのだそうです。

 前任のハルキフにいたときは、身近に誰も魔力持ちがおらず、サラさんのおばあさまが魔力持ちであることは知っていたけれど、近づくことができず、残念に思っていたそうです。

 しかし、タチバナ村に来て、マモル様、ノン、ミンの3人も魔力持ちがおり、さらに私が加わるという、夢のような環境だそうです。これで自分が女ならマモル様に魔力を開発してもらうのに、と本当に残念そうな顔をしていました。

 後でノンとミンから、いつかカタリナ様にネストルさんが「私の魔力を開発して頂けないでしょうか?」って言ってきますよ、と教えてもらいました。二人は一度言われたことがあったそうです。あまりに気持ち悪いのでサラさんに相談したところ、次の日サラさんに首根っこを掴まれて、ネストルさんが謝りに来たそうです。ノンの言うには、一途な中年男は面倒臭い、そうです。

確かに、父もそうですから。


 ノンとミンはよく笑っている。初めて会ったとき、二人は母娘というより姉妹のように見えた。それを言ったらノンが、

「アタシは、ほら、年を取らないから笑」

 って言うから、

「どうして?」

 って聞いたら、

「アタシは領都の孤児院に捨てられていたから、いつ生まれたのか分からないもの。それに、村に移ってからは、時間が止まって、あの村にどれだけ住んでいたのか、思い出せないんだから」

「そうなの?」

「そう。他の人も言ってるけど、あの村って毎日同じことの繰り返しだから、今日がいつで、明日が何って、分からなくなっちゃう。だから、アタシが何才だったか、分からなくなっちゃった。ミンだって何才だか、わかんないし笑」

「二人とも分からないの?」

「うん、そう。たぶんだけど、アタシは25才くらいで、ん?もしかしたら27才くらいかな?ミンは10才くらいか、12才くらいかもしれないね笑」

「えぇ、私は18才だから、ノンは私より10才も上になるの!?」

「う~~ん、そうかなぁ?」

 その話を聞いていたミンが、

「カタリナ様、そんなこと考えていたって、一つも良いことないですよ。悩むと顔にシワが増えるだけだって、サラさんが言ってましたから」

「そうね、いくつだって、ノンはノンだし、ミンはミンだもの」

「「そう、そう!!」

 3人で笑ってしまった。


 そう、毎日3人で笑っていられて、嬉しいもの。


 


読んでいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか?まだ、ありますので、近いうちに載せます。

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