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恋する乙女は禁忌なんて恐れない(仮)  作者: アルティ・メット
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3.始めての友達

 ベッドの上で目を覚ましたオリビアは、喉の渇きを感じ気だるい身体を動かして側に控えてるであろうメイドの方を向く。すると、そこで信じられないものを見た。

 椅子に座り、居眠りをしてサボっているメイド……ではなく、そのすぐ側で浮遊している手のひらサイズの光の球である。

 よく見れば光の中心には、背中から翅を生やした可愛らしい女の子が、頬に手を当てながらメイドを見てうんうん唸っていた。

 

 かつて読んだ御伽噺に出てきた妖精という存在がオリビアの頭をよぎる。

 しかし、スグにソレはあり得ないと自分の思考を否定する。

 いかに自身が幼いとはいえ、御伽噺の存在が実在しているなどと妄信するほど幼稚な頭はしていない。

 だが、何度瞬きをしてみても、依然としてオリビアの瞳には妖精としか思えない少女の姿を映し続けている。

 そこでオリビアは気が付く。そもそも前提が違うのだと。

 ここはまだオリビアの夢の中で、本当はまだ目覚めてなどいないのだ。

あるいは、自分はあのまま――。


 そんなことを考えながら、しばらくぼっーと眺めていると妖精が手を叩いて動き出す。


「うん、決めたわ!」


 愛らしい声で元気一杯に叫ぶと、妖精は指揮棒のように自らの指を振り出した。

 すると、メイドの頭巾が外れ、結ばれている髪が解け出す。そしてティーカップなどを始め部屋中の小物インテリアが浮かびだし、次々とメイドの髪に絡めとられていく。

 やがて出来上がったのは、クリスマスツリーの如くド派手な髪形となったメイドだった。

 

 (フッ、何アレ。あんな姿見られたら絶対コランに怒られるわ)


 メイドが舟をこぐ度にグラグラと揺れる髪を見て、オリビアはそんな感想を抱く。

 他者から見れば酷いセンスだと思われるその髪型だが、妖精はエラく満足気なようだ。そんな彼女自身の髪形を見れば、解くと腰までありそうな赤毛の髪が、オリビアでも憧れてしまうくらいオシャレに編み込まれていた。


「さて、お次はっと――」


 楽しそうな様子で妖精がオリビアの方に振り返った。

 不意に二人の目線が交錯する。

 気が付くとオリビアは、妖精から逃げるように目線を逸らしていた。自分でも何でそんなことをしたのか説明は出来ない。

 後々になってこの時を思い出してみれば、それはただの人見知りという奴なのだが、限られた人以外と接触しないオリビアにはそれが分からなかった。


「今の……偶然?」


 オリビアの奇妙な行動に、妖精は訝し気に眉を顰める。

 一方オリビアは、逸らした視線の先で顔を真っ赤にしていた。


(なんで私が自分の夢の産物なんかに……これじゃ、なんか負けたみたいじゃない。それにそうよ。ここは私の部屋なんだから、私が何をしようと勝手だわ。たとえコランにだって文句は言わせないんだから!)


 深呼吸をして心の準備を整えると、オリビアは視線を戻して妖精の方を睨みつけてやった。

 そして――


「ふっ、ふふ。何その変な顔!」


 爆笑した。

 なんと妖精が、その愛らしい顔を面白おかしく歪ませて渾身の変顔を披露していたのだ。

 完全にツボに入ってしまったらしく、オリビアの笑いの波はしばらく引きそうにない。

 一方で妖精は、変顔を止めて真顔に戻っていた。


「やっぱりアンタ、私の事見えてるでしょ!」


 片手は腰に、そしてもう片方の手はオリビアの方を指さしてビシッと言い放った。

 唖然として妖精を見つめるオリビア。


「プフッ――」

「ちょっと、顔を見て笑うなんてチョー失礼なんですけど!この家はどーゆうキョーイクしてんのかしら!」


 妖精の顔を見ているうちに、さっきの変顔を思い出して笑ってしまったオリビアに、彼女はとてもご立腹なようだった。


「そんなじゃ将来立派に魔族になれないんだからね!」

「ご、ごめんなさいね妖精さん。でも私、魔族に成るつもりはないわ。だって魔族は悪者ですもの」

「ちょっ悪者って。アンタ、アタシに喧嘩売ってるの?なら言い値で買うわよ!」


 なんで怒ってるのだろうと不思議に思うオリビア。

 だが、前に読んだ妖精の出てくる昔ばなしを思い出した。


(そういえば、妖精も一応魔族なんだっけ?)


 あまり悪い存在として描かれることのない妖精だが、有名な勇者と聖女のお話に出てくる妖精は、魔王の配下である魔族の一種として描かれていた。


「だいたい、アンタも魔族のくせに悪者だって何を言ってるのよ」

「妖精さんこそ失礼ね!私はれっきとした人間よ」

「ないない。そんなとんでもない魔力持ってるくせに人間って、そんなの聖女くらいなものよ。……えぇ、ホントに人間なの?」


 妖精は、ジッとオリビアを観察しながら「いや、でも……」などと独り言を漏らしながら考える。

 そして結論として、オリビアを人間として認めたらしい。と言うよりも、途中で考えるのが面倒臭くなって、半ば妥協した感じだ。


「だからあんなに魔力の操作がヘッタクソだったのね。感謝しなさい。このアタシが直々にアンタの魔力を調律してやったんだから!」

「魔力の操作?調律?ごめんなさい。私まだ魔法について習ってなくてあまりよく知らないの」


 オリビアがそう言うと、妖精は驚いたような呆れたような表情を浮かべた。


「あぁ、今度は確信したわ。アンタ人間よ。魔族ならフツーその辺、本能ってゆーか感覚で何となくできちゃうもの」

「そうなのね。――そうだ、その魔力の操作が下手だと何か不都合なことがあるの?例えば、体調が悪くなるとか……」


 魔力と聞いてオリビアは、かつて自分を診察していた医者が魔力について話していたことを想いだした。


「う~ん。人間の感覚はちょっと分からないのよね。でも、可能性としてはあり得るんじゃない?だって体内で生み出した魔力は生命力そのものだもの。まぁでも一番困ると言えば魔法が上手く使えない事ね!」


 その点妖精は~などと、自らの自慢話をしているのをBGMにオリビアは考える。

 

(魔力を調律したって言ってたけど……察するに私の魔力を正常な形に整えてくれたってことよね、たぶん……)


 そのおかげかは知らないが、今日目覚めてからのオリビアの体調は、近年まれにみるほどの絶好調だった。


(医者でも、ほとんど何もできなかったのに……)


 妖精の方をチラリとみる。あの能天気そうな顔で自分語りをする姿からは、とてもそんなに凄い事出来るような存在には見えなかった。

 だがそれはそれとして、


「妖精さん。ありがとう!」

「――へ!?何よいきなりって、あー……。フン、ガキンチョでもお礼はしっかり言えるようね!いいわ、気に入った。アンタには特別にアタシの事をシュピー姉様って呼ぶことを許してあげる!」


 頬を赤らめて、偉そうな語調で言う妖精。だが、その声音には到底隠し切れないほどに喜びの感情が含まれていた。


「はい、シュピー姉様!私のことはオリビアって呼んでね」

「いいわオリビア。今日からアンタとアタシはマブダチよ!」

「マブダチ?」

「友達ってことよ!」


 こうしてオリビアは、初めての友達シュピーと出会った。

 それから二人は、しばらくお話を続けたが、オリビアが疲れて寝てしまったことでお開きとなった。


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