戦うマスター:マツリ誕生!
初めて描きました。
面白かったら、ブクマ、評価をお願いします。
「ムムっ……俺ともあろう者が……」
真っ白で果てのなさそうな部屋の中、それは目の前の横たわった青年を前に呻く。
それは老人のようにも、青年のようにも、はたまた女性のようにも見える者だった
「ダンジョンハートを戦闘用に作ってしまうとは……」
その者はしばし悩む。
ダンジョンハートとは言わばダンジョンの心臓だ。
当然、死ねばダンジョンは潰れてしまうため、ダンジョンハートは基本ルームで指揮をする将軍のようなものだ。
それが前線に出て戦うのはこれまでに前例がない。
その者――創造主――は思いついたように言った。
「そうじゃ!前例がないのならば、こいつで作れば良いのじゃ!面白そうだしな。」
とにかく面白いことと『未知』が好きな創造主は新たな前例を送り出すことにした。
とある星――地球――へと
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「うぐっ、んんん?」
創造主の部屋と似たようで、しかし壁が見える部屋の中央で青年は目を覚ました。
青年は自身の整えられた黒髪を嫌がらせのようにぐしゃぐしゃと掻き回す。
そして宝石のような翡翠色の瞳を瞬かせながら、辺りを見回す。
「ここはダンジョン?俺は…………マツリって……これ、名前なのか?」
頭に不意に浮かんだ情報を口に出しながら、マツリは考える。
「んーと?俺はマツリという名前を持ったダンジョンハート?で、【合成】とか言うよく分からん能力を持っているキメラゴーレムってことでいいのか?あれっ?こんなに思い出ってないもんだっけ?なんか抜けてるような……」
マツリはそんなことを考えていると、虚空に映像のようなものが浮かび上がった。
「うわっ、なんだこれ。」
マツリが数秒眺めていると、ノイズのような音をたてながら、創造主が投影された。
『あ、あー、聞こえるかな?聞こえたら返事が欲しいんだけど。』
「俺に言ってんだったら、聞こえてるぞ。お前は……創造主って言うのか?」
『よかった……そうだよ、私が創造主。君を造った張本人さ!』
ずっとあったように見える大きめの胸を張りながら、創造主は答える。
「創造主ってのは女なのか?どっちかってーと男のようなイメージが……って何だこの記憶?」
『ふんふん、まず一つ目だけど、私はその人それぞれで見た目が違うらしいんだ。その人の想像が反映されてたりするっていう噂もあるけどね。ソースは私。』
「そうか……ん?それって俺が創造主と言えば女~とか考えてるってことなのか?」
マツリは微妙そうな顔で質問する。
自分が創造主を女と考えている可能性がある事があまり嬉しくないらしい。
『質問が増えるね……まぁそうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。』
「曖昧だなー」
その返答に創造主は苦笑して答える。
『ふふっ、そうだね。詳しいことは私にも分からないや。で、二つ目だけど、その記憶は君の記憶さ。』
その答えにマツリは首を傾げる。
「?俺はお前に造られた。とか言ってなかったか?」
どうやら、さっきの言動と今の言葉が微妙に矛盾しているのが気になるらしい。
『そうだね。言ったけど……ってもう持たない?魔力が?そうか……じゃあ中途半端だけど、じゃね。あぁ、ダンジョンに関しては説明書があるからー。』
創造主がそう言うと、映像は元の薄灰色に戻り、少しして消えた。
「うーん……一番気になることだけお預けで帰っちまったなぁ……まぁ、また会う気がするし、その時でいっか!」
そう言って気分を切り替えるとマツリは説明書とやらを探し始めた。
「説明書って言うぐらいだから、紙だよな……これか?なになに?『ダンジョン取説』?」
その『ダンジョン取説』とやらを要約すると、
・ダンジョンは人の生命力に近いエネルギーを魔素とやらに変換して吸収する。
・魔素は感情の動きが激しいほど多く吸収できる。
・魔素はダンジョン内の様々な物に変換できる。
・ダンジョンはダンジョンハートの作る、コアオーブとやらを壊されると、ダンジョンがリセットされ、ダンジョンハートが大きいダメージを負う。
・あとは中央の機械に任せろ。
読み終えたマツリは改めて部屋を見渡す。
すると、中央にさっきまでは無かったものが置いてあった。
「中央の機械?これか?さっきまでなかったような気もするが……」
その機械は円柱を斜めに切った様な見た目をしている。
「これをどうすればいいんだ?……ってうわっ!」
マツリが機械の周りをペタペタと触っていると、断面のような部分を触った瞬間にさっきの映像が青くなったようなものが虚空に浮かび上がった。
「なんか書いてある……『登録しました。ハート名マツリ』ふーん。」
その文字を口にすると機械は次の文字を浮かばせた。
「ん?『これは、ダンジョン管理システム[DP]です。』次は?」
「『音声ガイドを有効化しますか?』ええと、はい?」
すると、マツリの脳内に声が響いた。
『こんにちは、私はダンジョン管理システム[DP]ダンジョンハート:マツリ様』
「うわっ!……こいつ……直接脳内に!」
『えぇ、音声ガイドを有効化したため、テレパシーに近い会話をすることが可能となりました。無効にするには「音声ガイド、キャンセル」などと考えれば無効化致します。』
「なるほど、俺は最初に何をすればいいんだ?」
『マツリ様はダンジョンを作っていないため、まずは土台作りからすることを推奨致します。画面モードをカスタマイズへと切り替えました。』
「優秀だな……土台作りってこれか?えーっと、[入口作成]っと。」
すると、どこからが地鳴りがして、一番右に新しいモニターが追加され、外の様子が投影された。
「えっと、ここは……お、太田区……だと……」
そこに写ったのは、都会とは言えない、東京の太田区の蒲田駅西口の前のちょっとした広場だった。
「何故こんな田舎に来てしまったんだ?……なんで俺は太田区が田舎だって知ってんだ?」
マツリは再び首を傾げる。
『それは、明言は避けますが、創造主より、いずれ分かるとの事です。』
それに対してDPは淡々と無機質な声音で応対する。
「……なんのこっちゃ。それで次は?」
『ダンジョン公開は五日後ですので、それまでに完成させることを推奨致します。』
「なるほど、まずは?」
『……多少自分で考える事を推奨致しますが……助手を創るなどをすれば良いのではないでしょうか?』
マツリはプログラムに諭されて、微妙な表情だった。
だが、納得はしたような表情をしている。
「……なるほど、助手か……ポチポチっと《モンスター》の……なるほど!【合成】ってこういう時に使うのか。」
【合成】
様々なモンスターの魔石(心臓)をかけあわせ、高性能なモンスターを創り出すことができる。
難点は二、三体をかけあわせ、一体のモンスターを創るため、魔素の消費が多い点。
「じゃあ、[ヴァンパイア]と、[リッチー]と[サキュバス]で……」
そう言うと、虚空に三体の魔物の立体映像が浮かぶ。
「そして、【合成】」
すると、立体映像のモンスター達が中央に集まり、一体のモンスターがカラーで生まれた。
肩甲骨辺りまである薄暗い紫の長髪に、魅惑的な桃色の瞳、そして妖艶な起伏に富んだ肢体。
あまりの美しさにマツリはしばし絶句した。
『すいません、マツリ様?』
もしかしたら、プログラムが声をかけなければ、マツリは見蕩れたままだったかもしれない。
「……はっ!み、見蕩れた……[生成]」
自分の中から何かが抜けたような感覚の後に光とともに現れた。
「どうも、マスター。ご命令を、なんなりと。」
合成種は、丁寧に言うが、マツリは何かを耐えるように目を逸らしながら一言。
「ふ、服を着ろぉ!」
一週間に二、三回出せたらなーと思います。
後、太田区は誤字ではないのであしからず。