第3話 生贄の少年
調査団がテスの町に来て1週間が経とうとしていた。
二人の男が酒場の窓から外を眺めている。
「見ろレイモンド。か細い腕で必死に自分の倍の荷物を運んでいる。」
「次は鞭で叩かれる。」
バシッ!!空気を裂くような音が町に響き渡る。
「しかし・・・彼が生贄の少年で間違いありません。」
「本当にそうなのか?」
「間違いありません。魔力が違い過ぎます。」
「レイモンド。こんな世界は間違っていると思わないか?国の命運を生贄と訳も分からない神に委ねるなんて。」
「王子・・・・本当に宜しいのですか?」
「構わん!!このままではどちらにしろこの国は無くなる。そうなる前に手を打つのだ!」
「ですが国王の命令に叛くのです。それ相応の・・・」
「構わん!!私は国民の為に生きる。私が王になる。」
「そうですか・・・わかりました。私も覚悟を決めました。では彼を助けに行きましょう。」
「おい!!お前その辺でやめておけ!」
「これは俺の奴隷だ!どう扱おうが貴様には関係ない!」
「では私が買い取ろういくらだ?」
「へへへ。金貨3枚だ!」
「貴様!奴隷の相場は銀貨5枚どういうつもりだ!」
「払えないなら帰りな!」
「よいレイモンド。払ってやれ」
レイモンドと呼ばれた男は渋々支払いをした。
「へへ。まいどあり。」
「まだ奴隷紋を消していないぞ!」
奴隷紋?初めて聞くそんなもの何処に?
小太りの男は僕の左手に触ると手の甲に模様が浮き出し消えた。
「これでよろしいで?ヘヘ。」
「君名前は?」
「リュウと申します。」
「リュウか良い名だ。」
馬車が横に着くと辺りが静まり返った。
誰でも知っている。馬車に描かれた双頭の竜の紋様この国の旗と同じだ。
「へへ。先ほどは失礼を・・。」
「もうよい。二度と会う事もないだろうからな。出してくれ。」
馬車に乗ろうとすると仲間たちが親指を立てていた。
その姿にリュウは涙した。
「ゴメン!!俺・・・」
そこから言葉が出なかった。
馬車がテスの町から離れる。
「落ち着いたかい?」
「はい。あの・・・ご主人様どうして僕を金貨3枚も出して僕を買ったんでしょうか?」
「金の事は気にするな。と言っても無理な話だな・・・では、こうしよう。将来この選択が間違いじゃなかったと君が証明してくれ。」
「あと私は夜のお務めはできません。それでも良いですか?」
「勤務時間はレイモンドに聞いてくれ多分大丈夫だと思うぞ。」
「最後にご主人様は何者ですか?」
二人とも少し困った顔をしている。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はサンガー国の筆頭魔道士のレイモンドと申します。そしてこちらが第2皇子のバーン様です。」
「すいません!失礼な事を聞いて!」
「これは良い逸材が見つかりましたな王子。ちなみに二つ目の質問は夜伽は出来ないと言われたのです。」
レイモンドさんは終始笑っていた。王子は耳を真っ赤にして外を見ていた。僕は気まずくて下を見ているしかなかった。」