第19話 エレノア
ここアムーダの城ではの月に一度祭りが開かれる。
森に囲まれたこの城は魔族領との国境にあり絶えず兵士が常駐していた。
月に一度は死者を弔う祭りが開かれていたここはそれほど死が身近にある。
城下町はお祭り騒ぎだった。そこらかしこで音楽が鳴り響き、出店がたくさん出ていた。
小腹が減り屋台で骨付き肉を買い食べながら歩いていると一人の女性が絡まれていた。
おい!嫌がっているじゃないか!
なんだてめえは?」ガラが悪いいかにもチンピラだ。
なんだ!どうした?」一人だと思っていたらあっというまに囲まれていた。
これはまずいな・・・咄嗟に手を取り走って逃げた。
あ・・・あの!!もう大丈夫みたいです。ありがとうございました。
「いえ・・・。はい・・・。」
一目で恋に落ちた。
綺麗な黒髪が印象的でその瞳に吸い込まれていた。
これはあのチンピラに絡まれても仕方ないくらいの魅力だ。
「あの?聞いてます?」
「あ!!すいません。何ですか?」
「お名前は?と聞いたのに「いえ・・・はい・・・。」あなたは、いえはいさん?」
「これは失礼しました。お・・いや僕はロズ・ウェルと申します。」
「私はエレノアお礼に私の家でお食事していって下さい。」
良からぬ妄想が頭を過ったが理性が働いた。
「急に自宅にお邪魔するのも申し訳ないので・・・。」
「あの、家そこの食堂で」顔を赤くしながら慌てて説明された。
「春風亭といってこの町でも指折りの食堂なんですよ!」
「ただいま~!!お父さんこの人私を助けてくれたの!!」
「大丈夫か!エレノア!!」店のサイズと名前に似合わない大柄な男が厨房から出てきた。
「娘が世話になった。そこのカウンターに座って待ってろ。」
出てきた料理はとてもあの男が作った物と思えない繊細な盛り付けと味だった。
「どう?うちのお父さんの料理は?」
「凄いうまい!!こんな料理は初めてだよ!!」
たらふく食べた所で不愛想におやじさんが出てきたデザートを持っていた。カワイイ熊のケーキの皿を置きそっぽを向きながらボソボソ話した。「今日はありがとよ。だがこれ以上娘と親しくするなよ!」
「もう!!お父さん!ごめんなさいね。」
ふと後ろを見ると店は満員だった。
「今日はどうもありがとう。こんなにごちそうになってしまってすいません。」
「こちらこそ今日はありがとうございました。また、いつでもいらしてくださいね!」
天にも昇る気持ちで仲間と合流予定の酒場に向かった。




