第15話 次元の狭間
なにから話したらいいものか・・・。
そうだな、俺は剣として生きているんだが元が何だったのか思い出せない。
幽かにある記憶を辿るといつも同じ人が出てくるんだ。
「それは男?女?」
いやそれはわからねえ。ただ優しかったことだけは確かだな。
思い出すとなんか、こう胸が温かくなるんだ。
「胸ってどこ?」
いま重要なのはそこじゃねー。
もちろん剣だけどな俺は主を選ぶんだと。
「へ~」
ホント興味が無いんだな。そもそも触れる事がビックリなんだが。
お前は何者でどうしてここに来たんだ?
奴隷の事、赤龍帝の瞳の事、帝国の事、父さんの事、王子の事、エマとの事を話す。
剣が泣いてる。
すまねーな辛い過去を思い出させてしまって、お詫びも兼ねて俺の事も話すよ。
まずスゲー剣なんだぞ。
勇者と邪神を倒しに行ったり。
俺の一振りは大地を裂き、魔力を込めれば数十倍の威力を放つ。
折れる事も曲がることも無い。
そして何より持ち主以外が触ると触れた者は消滅する。
「それで?」
あと、話せる!!
ちょっ!その目をやめてくれ!!なんかひどく自尊心を削られるから!!
「ちょっと試して良いですか?」
剣を振ると衝撃が飛んで行った。
魔力を込める?こうかな?
「あっ!!知ってる魔法が無い・・・。」
それやべーじゃん!!どうなんの?ねえ?俺どうなんの?
「めっちゃ光ってる。」
そうか~光ってるか~。うん。ヤバいやつだなこれ。俺が教えるから同じように言え!
「天に請う我が誓いは光になりて悪しき闇を払う剣とならん。地に請う我が願いは我の物だけに非ず。」
「悪しき者を払い退ける力とならん!!」
「我が願いは刃となりて敵を穿つ!!」『サウザンドブレイク』
空間に亀裂ができた。
すぐに閉じたけど希望が見えたな。
どれくらい時間が経ったかわからないくらい一人だったんだが、お前が来てくれて希望が見えた。
入ってこれるんだから出る事も出来るって事だ。
それにお前と一緒じゃないと動けないしな!
白銀。
俺の名前だよ!これからよろしく頼むぜ相棒。
じゃあもう一度やってみようか!
亀裂に飛び込めばここから出られるはずだ。
「あっ!!レイモンドさん!父さんが見える!」
じゃあ行くぞ!
亀裂に飛び込むと父さんがいた。
「父さん?」
「ああ!!リュウ!!無事ですか!戻りましたね!心配したんですよ!!」
頷くと父さんは大きく頷き返した。




