冒険者の裏切り2
「でも・・・助けるって言っても!エマは裏切ったんだ・・・。」
「幸い馬は近くに居ました。これで彼女を追いましょう。」
悲痛な顔で馬に跨り裏切ったエマを追う彼女の心境を考えると切なくなった。
「彼女の行き先は、グランドゼロです。」
「行けばわかる事ですが、本当に彼女が裏切ったならそこでも敵です。もし違うなら正気に戻っているでしょう。」
何のことかわからず不思議そうな顔をしている。
~二年前~
「ここからは我の時間だ!!」
背中からは赤い羽根が生え、両目が赤く光り、その魔力は大地を震わせた。
「そこの女。貴様人ではないな?」
「貴方こそ!!覚悟なさい!!」
皇女を指差し笑いだした。
「それで我を敵に回すのか?命知らずだな。嫌いじゃない。だが!!報いを受けなくてはな?ハハハハハ!!」
その笑い声ですら魔力を帯び木々が燃えた。
「悪魔か?」
「悪魔の様な下等生物と一緒にするな!我は全ての龍の頂点に君臨する赤き龍、赤龍帝だ!!」
「ふむ。面白いでは、その神が全能ならば我の一撃に耐え、貴様らを助けてくれよう?」
「天に地に我の力を!!我に敵対する者には死を!!我が友には癒しを!!」
その時青い炎が雨の様に降り注いだ。
眼も開けられない。驚きの声と断末魔が交差する。
「熱くない。傷が癒えていく。」
帝国の兵士は燃えている。
「助けてくれ・・・・。」
「ぎゃあああああ!!」
この凄まじい魔力の中あの第一王子と皇女は結界を展開して耐えている。
「流石だな。普通なら死んでるんだが・・・ならば、神が消えたらどうだろう?」
薄ら笑いを浮かべ天に向かい魔法陣を描いた。
大きな魔法陣の上に幾つもの魔法陣が重なる。
「幾ら魔力が高かろうが無駄ですわ!神は死にませんもの!!」
「そうか・・・神は死なないんだっけな・・・まあ良いか。炎の刻印をこの地に刻み宣戦布告とするか。」
「エッ?魔法が!?」
「結界が消える!!」
その日世界中の人が青い火柱を見た。
ずっと見ていたんだ。自分が止められなかった。
沢山の人が死んでしまった。この大地も死んでいる。
二年前僕は助けたいが為に力を暴走させた。あの時の僕は、世界の理を無視していた。
「もうすぐ着きますよ?準備は良いですか?」
ジュラは小さく頷く。
僕は知っている。
深淵を覗く時また自分も深淵に覗かれているという事を。




