第12話 冒険者の裏切り
この世界には様々な職業がある。
地道に働きたい者もいれば、一攫千金を狙う者もいる。
働く理由は人それぞれだ。
今回の依頼は簡単だ。グランドゼロまでの護衛
この街から一本道で馬車に乗れば二日で着く。
本来ならこんなにおいしい仕事は無い。
冒険者たちの仕事のほとんどは死と隣り合わせだ。
採取、調査、護衛、討伐、時には汚れ仕事もある。
そんな世界で生きてきたからこそ、信じられる仲間が人生の中でどれほどの価値があるかわかっている。
私とエマは初めは喧嘩ばかりだった。
エマはシスターだった・・・孤児院を救うために冒険者になったお人好しだ。
私はジュラと呼ばれていた。
物心ついた時には殺しをしていた。
暗殺者と恐れられ知られていたが誰も捕まえには来なかった。
あの頃は、世界が灰色に見えていた。
エマと出会ったのはそんな時だった。
仕事でミスを犯し瀕死の状態のところを助けてもらった。
恩返しのつもりでパーティーを組んでいたが相性が良かった。
前衛の私と後衛のエマ、仕事を幾つも熟すうちに二つ名が付いた。
『ダブルクロス』
ダッセー二つ名だが近頃じゃ気に入っていた。
今回の仕事は最後の仕事・・・エマの目的は孤児院の再建、念願かなって冒険者になってから5年死なずに目的を達成できる奴はそうはいない。
エマは最高のパートナーで、最高のシスターで、最高の友達。
エマは私の誇りだ。
そのエマが・・・裏切るなんて!!これは嘘だ!!夢なんだ!!
何度も自分に言い聞かせた。
何度も!何度も!何度も!何度も!
しかし現実は変わらない。
馬車が燃えている。燃え盛る炎の中に坊ちゃんが見える。まだ生きているだろうか?
せめて依頼主の坊ちゃんだけでも・・・。
自分の血で滑って歩くことも出来ない・・・這ってでも助けて見せる!!
最後の力を振り絞り馬車の扉を開こうとするが熱くてまともに触る事すら出来ない。
決意を固めドアノブを握る・・・。肉の焼ける臭いがする。
何とか助け出せた・・・あとは天に委ねるしかないね・・・・。
血を流しすぎたようだ・・・。
金髪のイケメンが見える。
これが最後に見る死神なら、もう死んでもいい・・・。
「起きて下さい!!大丈夫ですか?傷口は塞いだのであとは安静にしていれば大丈夫ですよ?」
「貴方は?」
「私はレイモンド、あなたが助けてくれた子の父親です。」
「リュウ!!起きて下さい!!」
「すいません。まさか初日に奇襲をかけてくるとは思わなくて。」
「この方が助けてくれたのですよ?ちゃんとお礼を言いなさい。」
「助けて頂いて、ありがとうございます。」
手を握られるとただれていたはずの手が元通りになっていた。
「あんた・・・一体なにものだ?」
「それは、もう一人の方を助けてからにいたしましょうか?」
評価のほど宜しくお願い致します。




