第11話 ジュラとエマ
手にしたナイフから温かい血が伝わってきて我に返った。
ジュラが大声で怒鳴っている。
「今は感傷に浸る時では無い!戦え!!」
弓矢が飛んでくる。
「龍よ力を貸せ!!」左目が深紅に染まる。
「石龍、起きて皆を守れ!!」
(もう乱暴なんだから!そんなとこもスキ!)
地面から大きな壁がが現れる。
「水龍!!敵を分断しろ!!」
同時に水柱が敵の足下から噴き上がる。
(完了しました。)
敵の指揮官が慌てふためいている。
「これは!!なんだ!!見たことも無い!!神の御業か!!」
スキンヘッドの男が何か言っている。
「スゲーな坊主!!とりあえず今のうちに逃げるぞ!!」
(逃げる?僕が?我に仇なす者は・・・・。)
「・・・アレだけは許せない。」
「赤龍・・・力を・・・・。」
(よいのだな。)
頷くと片目が赤く輝いた。
「そのまま消し炭になれ。」
~二日前~
あれから2年神馬歴121年桜の月
帝国が世界を治めていた。
僕はランドールの町に着いた。
「バーン王子の話だと酒場に集まっていると聞いたのだが・・・。」
酒場の店主が酒を出す。
(ガラの悪い店だな・・・。)
客の一人が息巻いている。
「坊主ここはお前みたいのが入ってくるところじゃねえぞ?」
店に笑い声が響く。
「待ち合わせをしていて・・・。」
二階から手を振っている女性が見えた。
「あ~その子は私の客だ。上がっておいで。」
二階に上がると綺麗な女性が二人座っていた。
一人は褐色でもう一人はシスターだった。
「君はリュウかい?」
「はい。これからよろしくお願いします。」
「行儀がいいね~。私はジュラ。で、このシスター擬きはエマだ。」
「坊ちゃんの子守りだなんて聞いてないんだが・・・。」
「まあ、仕事は仕事ですから仕方ありません。」
「今回の依頼は簡単です。これからグランドゼロに向かいます。そこまでの護衛をお願いしたい。」
「わかって言ってんのか?あそこは死だけが待つところだぞ?」
「わかっています。このクレーターには、怪物がいて戻った者はいない。しかし僕はそこに行かなくちゃいけないんだ。」
グランドゼロ・・・
それは二年前僕が、いや、正確には僕の中の何かが作ったクレーターだ。
「報酬は前払いで渡しておきます。」
金貨が入った袋を渡すとジュラが物凄い形相でこちらを睨んでいる。
「少なかったですか?」
「おい!坊ちゃん!こういった事は仕事が終わった後に渡すんだよ!」
「ジュラが言いたいのは逃げたらどうするんだ!気を付けて!ってことだよ?」
「優しい方で安心しました。」
「ケッ!子守りに精を出すとしますか!」
「じゃあ、行きましょうか?」
2人はデカい剣と盾を持って颯爽と酒場を出て行った。




