第10話 誘拐
「王子、本日はこのような場所にお越し頂きありがとうございます。」
「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。町長、馬車を降りて少し歩いても良いか?」
「もちろんです。何か気になる事でも?」
「いや、すまない。少し懐かしくて。」
「ここに来たのは10年振りか・・・当時、大災害の視察に同行していて。」
~10年前~
「ちちうえー!!あにうえー!!」
「こらこらそんなに走ると転ぶぞ!」
ズザザー
「えーん!!えーん!」
「言ったそばから転ぶなよ。バーンお前はどんくさいな~ほら、負ぶってやるから泣き止め。」
「うん。」
「いいか二人とも今日私は王としてではなく一人の男として、ここに着たのだ。」
そう言うと避難民の傍らに寄り添い話を聞いていた。
しばらく何かを話終えると王は頭を下げ謝っていた。
「王様そのような事されては威厳が!!」
「威厳なんぞ捨てておけ!!国民が第一だ!!」
それから至るところで同じ光景を見た。
「父上はなぜ、謝るのですか?」
「この大災害は回避出来たかもしれない。一国を預かる者として、知らなかったでは済まないからだよ。」
「ほら。二人ともこっちにおいで。」
そう言うと王は二人を抱き抱えた。
「いいか二人とも王族が出来る事には限りがある。その中で最善を選ぶのだ。」
「はい!!ちちうえ!!」
あれから10年・・・あの時の言葉を忘れた事はない。
「王子?大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。」
「会談はこの部屋で行います。」
中に入ると覆面をした男が数人いた。
抵抗する間もなく目隠しをされる。
「誰の差し金だ?」
準備が整うまで隣の部屋でお休み下さい。
答える訳ないか。「わかった。大人しく従おう。」
5分ほど経つと馬車に乗せられた。
「どこに行くのか教えてくれないか?」
気が付くと目隠しと猿ぐつわをされ馬車に揺られていた。
そうだった・・・私は誘拐されたのか。
話し声が聞こえてきた。
「しかし今回の任務は楽だったな。」
「帝国領までもう少しだ気を抜くな!!」
「ハッ!!」
敵は少なくとも4人以上か帝国に誘拐・・・。
兄上や父上には辛い選択をさせてしまうな・・・・。
レイモンドとリュウは大丈夫だろうか?
私が誘拐されてからどれくらい時間が経っているのだ?
今の話ぶりから推測されるのはテオドールの東ランドールに向かう所か・・・。
テオドールとランドールを結ぶ道は二つ山道と街道がある。この揺れ方は街道だな。
馬車が止まった。休憩をとるのか?
猿ぐつわが外されると辺りが急に静かになった。
目隠しを外されると帝国の旗と見覚えのある顔があった。
「兄上!!なにおしているのです!?」
後ろから気配を感じる。
「はじめまして。バーン王子。私はクラナダ・・・アラート帝国の第一皇女です。」




