プロローグ
誰かが言った。どんな悪人だろうと最後に勝った者が英雄になると。
誰かが言った。この世に一つだけ平等があるそれは死であると。
誰かが言った。力なき正義は悪だと。
四月も終わろうというのに、まだ桜が蕾で良く晴れた午後だった。
ごく普通の家に生まれ、普通の生活をし、目立った特技もなく、成績も普通、外見も可もなく不可もなく、これから先の人生はただ平坦で退屈だが平和な人生を送ると思っていた。
高校に上がりこれまでの平坦な僕の世界は暗闇に落ちた。
何故か虐めの対象になった。理由はわからない。
毎日のように繰り返される暴力、しかし僕は学校を休まなかった。
正確には休めなかった。
休めば家に来る。家族には知られたくない。
初夏を迎えた頃爽やかな風と土の匂いが僕を現実に引き戻す。
いつものように他愛無い理由からサンドバッグ代わりに殴られ校舎裏でただ世界を恨み空を見上げていた時だった。
空に幾つもの光が見えた。
殴られ過ぎて頭がおかしくなったのかと思ったが暫くすると爆発音が鳴り響いた。
その日ミサイルの一つが学校に直撃・・・。
これまで感じたことが無い強い痛みが深い闇の中でまだ生きていることを実感させた。
始めは皆誰かが助けてくれるだろうと思っていた。
二日、三日・・・五日が過ぎた頃、救いがない事を悟った。
瓦礫の隙間から隣のクラスの女子が襲われているのが見えた。
助けを求め泣いていた・・・。
しかし無力な僕は何もできず、何もせず、見ている事しか出来ない。
ある日一人の生徒と目が合った。
声が出ない。何も言わずに穴を塞がれてしまった。
僕が何をしたと言うのだろう。
誰かが言った。どんな悪人だろうと最後に勝った者が英雄になると。
誰かが言った。この世に一つだけ平等があるそれは死であると。
誰かが言った。力なき正義は悪だと。