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シュークリーム作り

 今日はルビアが家にくる記念日ということで、今まで泊まっていた宿――精霊の宿り木の1階の食堂で夜ご飯を食べることにした。


 「本当に私もご一緒に頂いてもよろしいのでしょうか」

 「セラやリリーにも言ったんだけど、きっかけは奴隷商会での引き取りだけど、仲間と思って接するから、食事とかも基本的には一緒に取るよ。注文も好きな物注文していいし、ビールも飲んでいい」

 「奴隷にそんな待遇いいのでしょうか……」

 「ご主人様がいいと言っているのですから、いいんです」

 「いいニャ。リリーもビール飲むニャ」


 ルビアが遠慮しつつも食事は進み、食事も終わりかけた頃、珍しくリリーがデザートを注文していた。


 「俺も何かスイーツ注文しようかな……ん? フルーツしかない?」

 「スイーツって何かニャ?」

 「フルーツではないんですか? ルビア聞いたことありますか?」

 「いえ、私も存じません」

 「甘いデザートって言えばいいのかな。そんなのって無いの?」


 3人がそんなデザートは聞いたことが無いと否定した。デザートと言えばフルーツのことが一般的みたいだ。

 悠真はスイーツを諦め、ビールをグイッと飲みほして、おかわりを注文した。




 翌朝、悠真は日本にいた頃に見たテレビ番組で紹介していたシュークリームを作ってみようと、キッチンで奮闘している。


 「まず中に入れるカスタードクリームは、卵黄と砂糖を混ぜるんだったっけ……。量がわからんから、とりあえずメモしながら後で改良するか。」


 古い記憶を頼りに作るため、作り方はなんとなく覚えていても、分量が全くわからない。ダマになってしまったり、甘すぎたりして、当然のように失敗を繰り返している。


 「申し訳御座いませんご主人様。何か御座いましたら私にお申し付け下さい。お料理なども私のお仕事だと思っておりますので」


 ルビアがキッチンに来たところ、家事スキルを理由に購入されたにもかかわらず、悠真が朝食を作っていると思い、慌てて謝罪するルビアだが、悠真はそうじゃないと否定する。


 「色々と試したいことがあるからキッチン使ってるだけで、ルビアの仕事を取ってるわけじゃないから安心して。あ、でももし時間があるなら一緒に手伝ってくれると嬉しいな。家事スキル持ちの方が上手く作れるかもしれないし」

 「はい。何でもお申し付けください」


 それから悠真は、こっそりとルビアの家事スキルをDからCに変更した。エディットのスキルを秘密にしたかったのと、いきなりSに変更することで、ルビアが自身の能力に戸惑うことを避けたためだ。その後、悠真とルビアの2人で試行錯誤しながらカスタードクリームに挑戦し、昼前にはなんとかカスタードクリームが形になった。


 「最適な分量もわかってきたし、あとは評判聞いてから改良でいいかな。ちょっとこれをセラとリリーに少しずつ食べてもらって、感想聞いてきて」

 「かしこまりました」


 少量のカスタードクリームを持ってルビアがリビングへ向かおうとすると、壁に隠れて2人は見ていたらしく、飛び出してきた。


 「匂いに惹かれてそこの壁で見てました」

 「見てたニャ」

 「見てたのか。声かけてくれても良かったのに。まぁ、ちょうどいいからここで食べて、感想聞かせて欲しい」


 そんな2人にルビアが少量のカスタードクリームを渡すと――。


 「なっ、何ですかこれは! 甘くて滑らかで……もっと、もっとないですか?」

 (こんなに素晴らしい物を生み出す頭脳と手腕、さすがです神様)

 「美味いニャ! 濃厚ニャ! クリーミーニャ!」


 ひそかにリリーがどんな評価をするのか楽しみにしていた悠真だが、ビール以外はあまり期待できないみたいだ。


 「カスタードクリームって言うんだけど、残りは後で使うから」


 そう言って悠真は、冷却の魔法陣が描かれた冷蔵箱の中にカスタードクリームを片付け、それを見ていたセラとリリーは肩を落としていた。




 ルビアが作った昼食を食べ終えてから、早速シュー生地の試作に取り掛かる悠真とルビアだが、シュー生地が膨らまず失敗を続けていた。

 記憶を頼りに、焼いてる途中でオーブンを開けない、生地を冷やさない、乾燥させないなどの注意事項をいくつか思い出し、試行錯誤を続けること数時間、ついにシュー生地が完成した。


 「ルビア、さっきのカスタードクリームを取ってきて」

 「かしこまりました」


 ルビアがカスタードクリームを取りに行っている間に、シュー生地を真ん中でスライスし、ルビアが取ってきた冷蔵箱の中にあるカスタードクリームを挟む。

 ついにシュークリームの完成だ。


 「できたぞー!」

 「おめでとう御座いますご主人様」

 「セラとリリーも待ってるだろうし、とりあえず4個リビングに持って行くか。残りはまた冷蔵箱に入れといて。入れたらリビングね」

 「かしこまりました」


 シュークリームを持ってリビングへ行くと、午前中に食べたカスタードクリームを忘れられないのか、目をキラキラさせて2人が待っていた。


 「ルビアを待って試食するぞー」

 「ルビアを呼んできます」

 「直ぐに来るから座って待ってればいいって」

 「早く食べてみたいニャ」


 セラもリリーも早く食べてみたいと落着きの無い様子だ。

 しばらくすると、冷蔵箱に残りを入れ終えたルビアがリビングに到着する。


 「皆様お待たせしました」

 「ご主人様、早く食べましょう」

 「早く食べるニャ」

 「わかったわかった。1人1個だぞ」


 そう言って全員にシュークリームを手渡すと、セラとリリーは1口で食べ、目を閉じて味わっているようだ。セラは涙を流しているようにも見える。


 (これが神々が食している食べ物ですか……)

 「ご主人様、先ほどの黄色いクリームだけよりもこっちの方が優しい感じがして、私はこちらが好きです」

 「俺もルビアと同じでカスタードクリームだけよりこっちがいいね。というより、本来はあのクリームだけで食べることはあまりしないね」

 「そうですか。ところでこのシュークリームですが、これが先日ご主人様がおっしゃっていたスイーツという物ですか?」

 「そうだね。他にも色々あるから、また今度作ってみようか」


 悠真がそう言うと、セラとリリーの目が開き、悠真を見た。


 「他にもまだあるのですか!」

 (まだ他にも、下界の人々への施しがあるということですね)

 「食べたいニャ!」

 「また今度ね。ところで、残りのシュークリームを他の人にも食べてもらって、宣伝を兼ねて感想を聞きたいんだけど……王都に知り合いいないしなぁ」

 「冒険者ギルドの受付嬢とかはどうでしょうか。彼女達は顔が広そうですし、宣伝に最適かと思われます」

 「それいいね。スイーツはやっぱり女性の意見を聞きたいし、しかもそれが宣伝も兼ねるから一石二鳥だね」

 「それでは今のアイデアの代わりにもう1個……」


 セラがもう1個食べたいとリクエストしてきたが却下した。

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