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メタャメタャな世界  作者: きづかと
13/14

君のすべて

翌朝、二人はそそくさと村をあとにした。村民は朝が早いようで、出口にはもう人が見張り役として立っていた。二人のことはもう知れ渡っているのか、見張り役は白んだ顔でそっぽを向いた。

「あのときとは大違いですね」

「そうだな」

 二人は村を出て、ひたすら森をさまよった。

「こっちであってるのか?」

「おそらくですけど」

「あいまいだな」

「まぁ、それくらいがちょうどいいってやつです」

「そうだな」

 森はあちこちに根を張り、足場をかなり悪くさせていた。二人は協力しながら険しい道を進んでいく。いつのまにか、二人の体は泥だらけだった。

 しばらく歩くと、開けた場所に出た。そのことにコウはホッとする。

 目の前には灰色の煉瓦でつくられた大きなトンネルが口を開けて待っていた。しかも二つ。重なりあうようにして。

 左のトンネルの中はとても暗かった。なので奥までは見えない。

 右のトンネルの中は光輝いていた。光りが強すぎてこちらも奥までは見えない。

「どちらへ進もうか」

「コウさんにお任せします」

 コウはドンネルの前で腕を組んで悩んだ。そのとき、後ろから足音が聞こえた。

「これかオカシ! あの魔王城へと続くトンネルというのは!」

「はい」

 コウとフシギは振り向いた。そしてセイギとオカシと目が合った。

「うわ! こいつらまさか俺たちが今日ここに足を運ぶことを昨日盗み聞きしてたんじゃねぇか! まじきもくね!」

「きもいですね」

 セイギとオカシはコウとフシギを煙たがるような目を向けた。あいかわらず被害妄想が激しい二人だった。セイギが叫ぶ。

「おいてめぇ! こそこそと盗み聞きして挙句の果てに先回りなんて変態みたいなことしやがって! そんなに俺が好きか! ほんときめぇな!」

 セイギはキスでもするのかと思うほど顔を近づけて、つばを吐きながら顔をしかめた。

「どけよ偽物が!」

 コウを突き飛ばし、セイギはトンネルの前に仁王立ちした。そのとき、オカシが二人をみてくすりと笑った。

「おいオカシ。どっちに進んだらいい?」

「そうですね。右の方がいいんじゃないですか? あの光の輝きはセイギさんにぴったりですよ。そして左はあの二人組にぴったり」

「言えてるな! 勇者ってのはそれ自体が光り輝いてるようなもんだからな! 根暗どもは暗黒の世界がお似合いだ!」

 セイギはくるりと向きを変え、睨みつけた。

「おいてめぇ。ついてきたら殺すからな。脅しじゃねぇぞ? 俺は本気だ」

「……わかった」

 その言葉に、ほんとかよとつぶやきながらも、セイギとオカシは右の光の道へと進んでいった。

「そっちのトンネルに入って死ね! この偽物が!」

 セイギはダメ押しとばかりにトンネルに入った瞬間顔だけこちらを向け、中指を突き立てた。

 そして二人は見えなくなった。

「どうやら私たちは左の道に進むしかなさそうですね」

「そうだな」

 コウは体を起こし、左の道へと進んだ。中は真っ暗でなにもみえない。

「真っ暗だな」

「なにか出てきても対処できませんね」

「そうだな」

 二人はとりあえずひたすらまっすぐ歩いた。トンネルの入り口から横を覗いても、終わりは見えなかったので、かなり長いトンネルなのだろう。道中なにもないことを信じて、二人は足音を響かせながら歩いていった。



 歩き疲れるくらい歩いたそのころ、ようやく薄ぼんやりとした光が見えてきた。あれが出口で間違いないだろう。コウは肩の力を抜いた。ここに来るまで常に気を張っていたので体が疲れてしまった。

「案外当たりだったのかもしれませんね。ほら、普通トンネルって暗いものじゃないですか。だからなにごともなく無事に出口までたどり着いたんですよ」

「そうかもな」

「そうなるとあっちは修羅場かもしれませんね。滑稽です」

「それはわからないだろ」

「そうかもしれません。でも、そうじゃないかもしれませんよ?」

「まぁな」

 出口はもうすぐそこだ。光は強さを増し、コウは目を細めた。

 二人はトンネルの外へみごとたどりついた――のだが。

「ここはいったい?」

 出口の先には、真っ白な世界が広がっていた。てっきり森が見えてくると思っていたので、コウは驚いていた。

「どうなってるんだ?」

 しばらくまるで雲に包まれたような世界を見渡していると、その世界の中心から影が噴き出した。その色はおぞましいほどの黒だった。見ているだけで吸い込まれそうだった。

「なんだ?」

 影はアメーバのようにぐにゃぐにゃと体を動かすと、人型の人間になった。背丈はコウと同じくらいで、髪の生え方までもそっくりで、まるでコウの写し鏡のようだった。

「なんですか、あれ?」

「さぁな」

 コウは影と対峙した。

 すると――

「よぉ、コウ」

 と、影が喋った。

「どうやって喋ってるんですかね? 見たところ口はないように見えますが」

「知らん」

「俺の名前はコウ――だとごちゃごちゃになる。コウダッシュでいい」

「そうか。俺はコウだ」

「知ってる」

「お前はなんだ? 人間ではなさそうだが」

「俺は勇者ダッシュだ」

「俺は勇者だ」

「それも知ってる」

「なにか用か?」

「お前を殺しにきた――魔王を倒したことがないお前をな」

「どういう意味だ」

「俺は魔王を倒した勇者なんだ」

「魔王を倒した勇者?」

「そうだ。俺はこのまえ魔王を倒したんだ。激戦の果てにな」

「魔王は生きてるぞ」

「この世界ではな」

「お前は違う世界から来たのか?」

「そうだ」

「それで、俺を倒しにきたのか?」

「あぁ」

「なぜだ?」

 コウダッシュが笑った気がした。

「この世界で勇者になるためさ。俺はこの世界でも勇者になりたいんだ。だからお前を殺す」

「勇者になるために俺を殺すのか?」

「そういうことだ」

「勇者になってどうするんだ?」

「魔王を殺すのさ。勇者になるんだからな」

「勇者になるから魔王を殺すのか?」

「そうだ」

「それはおかしな話だな」

「は。魔王を倒すことで勇者は本当の名誉を得られる。それはとてもすばらしい。だから俺は勇者になる」

「逆だ。勇者は魔王をたおすために勇者になるんだ。勇者になるから魔王を倒すんじゃない」

「押し問答だな」

「そうなるな」

「ならば戦って決めるしかない。勇者とは勝者だ」

「そうだな」

 コウは刀を引き抜いた。それと同時にコウダッシュも刀を引き抜いた。

「魔王と戦ったことすらないお前が、俺に勝てるはずがない」

「一つ言わせてもらおう――コウダッシュ」

「なんだ?」

「お前はもう勇者じゃない」

「なに?」

 ――その瞬間、コウダッシュの体が真っ二つに裂けた。

「な――!」

 ごろりと上半身と下半身が真っ白な地面に転がった。コウダッシュは体を小刻みに震わせていた。その度に影が呼応しうねうね揺れる。

「こんなばかなことがあるわけない。俺は魔王に勝った勇者だ」

 コウはそっと刀を鞘に納めた。そして転がった上半身をみつめた。

 そして言った。

「お前はただの英雄だ。勇者じゃない」

「英雄は勇者に勝てないのか?」

「追った人間と追う人間、どちらが強いかなんて簡単な話だ」

「そんな単純なことで、俺は負けたのか」

「そうだ。もうお前は一生勇者には勝てない。のんびり余生を楽しむといい。コウダッシュ」

「そうだな。帰りを待つ者もいるわけだしな」

「あぁ。きっと魔王を倒したなら、笑顔で出迎えてくれるはずさ」

「お前はその世界を望まないのか?」

「いまはまだ。俺には魔王を倒す使命があるからな」

「そうか。ならばがんばるといい。いつかお前が英雄になったそのときは、杯でも交わそうじゃないか」

「そうだな」

 コウダッシュはそう言って、風に乗るようにしてさらさらと消えていった。また会おうと、言われた気がした。

「おみごとです。コウさん」

「勇者が負けることはない。英雄ならまだしもな」

「そうですね。コウさんが英雄になる日を私は楽しみにしていますよ」

「あぁ」

 ふと気がつくと、二人は森の中にいた。振り返るとそこには、あのトンネルがあった。

 コウは前を向こうとしたが、光のトンネルのところで視線を止めた。

「セイギは大丈夫だろうか」

「大丈夫ではありませんよ」

 フシギが自信ありげにそう言った。

「そうなのか?」

「はい。だって彼らは――ここで死ぬんですから」

「なんでわかるんだ?」

「それはもちろん私が物語の紡ぎ人であるからです」

「なるほどな」

 コウは前を向き、歩き始めた。もう振り返ることはない――はずだった。

「ふはははは! みごと討ち取ったぞオカシ!」

「さすがセイギさんです」

 聞こえてきたのだ。二人の声が。

「うそ……」

 フシギは大きく目を見開いていた。フシギがこんな驚いた表情をするなんて初めてのことだった。コウは出てきたセイギとオカシを見た。

 二人は身の毛がよだつような笑みを浮かべていた。

 その目は――人間のそれではなかった。

「さぁ進みましょうセイギさん」

「ふはははは!」

 コウは体全体が震え始めた。それはフシギも同じだった。

「どうやら私に似せすぎてしまったようですね」

 フシギはコウをみた。その目は酷く怯えていた。

「このままだと物語が崩壊し、私たちは混沌の渦に呑まれるかもしれません」



 時が遡っていく。



 そこは黒い世界だった。なにもかもが真っ黒で塗りつぶされていて、まるで墨でもぶちまけたかのようだった。

 そんな世界の中心に、彼らはいた。それはセイギとオカシだった。そして絶えず光を放った少年が一人、セイギの頭を踏んでいた。

「うあぁぁぁ!」

「ほらほら泣けよ! 叫べ! わめき散らせ! この偽物勇者が!」

 セイギの体はまるでボロ雑巾のようにボロボロだった。五体満足なのが不思議なくらいだ。

「なぁどうだい今の気分はよぉ! 本物だと思っていた自分がまさか偽物だったなんてさ! 実に滑稽だよなぁ!」

「なんで――なんで俺は本物じゃねぇんだ!」

「簡単だ。お前はここで死ぬただの噛ませ犬。脇役だからだよ! 本物の勇者はかすり傷一つつかずに向こう側で事を終えてるよ」

「そんな――そんなことあるわけ」

「あるんだよ! ったく低能だなお前! いいかげん殺すか。もうお前を痛めつけるの飽きたし。うーんどこをぶすっといこうかな」

「くそくそくそ――くそぉ!」

「なんだよお前泣いてんのぉ! うわきっしょ! きも! ありえねぇ! 死ぬのが怖くて泣くとか! まぁお前偽物だからしかたないよなぁ!」

 セイギは心の中で思うのだった。怖くて泣いてるんじゃないと。そんなことで泣くわけがないと。ただ自分が本当に惨めで、滑稽で、返す言葉もなくて、情けなくて、ばかばかしくて、あほらしくて、どうしようもないばかだから。だからこそ泣くのだ。決して死ぬのが怖いわけではない。

 叫びたかった。喚きたかった。怒鳴りたかった。

 だがそれは余計に惨めになるだけだ。ここは歯を食いしばり、黙って死ぬのが勇者の務めだ。たとえ偽物であっても、それがセイギの正義だ。

「セイギさん」

 涙に濡れた視界に、オカシが映った。ぼやけてよく見えないがきっと悲しそうな顔をしているにちがいない。いや、いつものように知ったような顔でセイギを見ているのかもしれない。そうだとしたら、涙を流しておいてよかったと思える。そんな顔、今は見たくない。

「ごめんな、オカシ」

「あきらめるんですか、セイギさん」

「え?」

「偽物だからあきらめるんですか、セイギさん」

「なにを――」

「死ねぇ!」

 光り輝く少年が、同じく光に包まれた剣を、セイギの心臓に突き刺さんとする。

「偽物が本物に勝つ物語、つくりたくないですか?」

「偽物が魔王を倒す物語、きっと楽しいですよ」

「さぁ、セイギさん。今こそ立ち上がるのですよ」

「偽物が偽物として終わる物語を――ぶち壊しましょう」

 セイギの胸に深々と剣が突き刺さった。

「偽物の終わりなんてこんなもんさ」

 光り輝く少年は、鼻を鳴らして剣を抜いた。どろっとした血が彼の背中からあふれ出す。

 そして――彼は蠢いた。

「――は?」

 光り輝く少年は、仰け反った。そして剣を両手で握った。

「どうなってんだこいつ! 心臓を貫いたんだぞ!」

「心臓を貫いたら死ぬって誰が決めたんだよ、おいセイギダッシュ」

 セイギは背中からどろどろと血を流しながらも、ゆっくりと起きあがった。

「よくもやってくれたな、おい」

「うそだろ……ていうかお前その目」

 セイギダッシュと呼ばれた光り輝く少年は、気づけば一歩引いていた。それくらいに、気味の悪いオーラを放っていた。

 セイギの目は黒ではなかった。まるで汚水のように濁った目をしていた。目は虚ろで、セイギダッシュのほうを見てはいるが、直視はしていないようだった。

「殺す。魔王も勇者もこの世界も! なにもかも俺は殺す! そしてお前はその一人目だ!」

「――は! いい気になんなよこの濁り野郎! 目が濁っただけで俺に勝てるわけ―――」

 すべてを言い切る前に、セイギダッシュの体は真っ二つに縦に裂けた。そして地面に倒れる前に、その光は霧散して消えた。

「ふはははは! どうだよ本物! お前は俺を偽物だからといって甘くみていたようだが、結果はこうだ! 俺は本物に勝った! 次は勇者だ! そして最後に魔王を殺す! みておけよ本物どもが!」

 セイギはこれでもかというほどに大声で叫んだ。それを、にこやかな笑みでオカシは見ていた。そしてそっとオカシへと近づく。

「さぁ、参りましょうセイギさん。物語はこれからですよ」

 気づけば二人は森の中にいた。


 刹那――世界が歪んだ。



          3



 フシギは世界の歪みを感じ取っていた。セイギとオカシは、まだこちらに気づいていなかった。

「隠れますよコウさん!」

「わかった」

 二人は逃げるようにして近くにあった茂みに身を潜めた。セイギとオカシは気づいていないようで、二人はそのまま森を直進していった。

「どうするんだ、フシギ」

「と、とりあえず作戦を練るしかありません。今日はここから離れずにテントを張って野宿しましょう。そうすればかちあうことはない……はず――ですが万が一のことを考えるとなるとこのさい一度街へ……でもでもこのトンネルをまた通らなきゃいけないわけですし……八方塞がりです」

「おちつけ」

「こ、こんな物語を想像していなかったので……悔しいです」

 どうやらフシギはけっこう気が動転しているようだった。いつものように知ったような態度ではなくあたふたしているのは、見ててちょっとかわいかった。そしてそう思ったのが初めてフシギにばれなかった。

「とにかく今日はここで野宿だな。テントを張ろう」

「ほ、ほんとに大丈夫ですかね?」

「心配するな。俺がついてる」

「……まぁ、はい」

 フシギが不満げなのは置いておいて、さっそく近くにテントを張ることにした。そして近くから焚き木を持ってきておく。水や食料はあるので問題なかった。

 まだ夕日が顔を出している時間なので、火は焚かずにテントに入り作戦を考えた。

「夜二人が寝静まったときに殺しましょう」

「だめだ」

「なら起きているときに不意打ち」

「だめだ」

「では罠を」

「だめだ」

「なら縄」

「だめだ」

「……ならコウさんはどんなのならいいんですか?」

「正々堂々たおす」

「そ、それはだめですよ! もしコウさんが死んだらどうするんですか!」

「それをお前が言うのか?」

「……墓穴を掘りましたね」

「そうだな」

「と、とにかく違う方法を考えてください! それは却下です! ありえません!」

「話し合うのはどうだ」

「話が通じる相手だと思いますか?」

「思わないな」

「なら言わないでくださいよ。余白ばかりだとちんぷにみえますから適当なことを言わないでください」

「余白?」

「なんでもありません。それよもっと他の作戦を考えてくださいよ」

「もうない」

「えぇー」

 フシギは不満そうだった。コウが使い物にならないと悟ったのか、フシギはどこからかノートとペンを持ってきて、なにやらひたすらに書き続けた。それは夜が更けるまで続いた。

「おいフシギ。もう寝るぞ」

「も、もうちょっとだけ作戦を練らせてください」

「もういいだろ」

 コウは電球を消した。とたんに辺りが暗闇に包まれる。

 フシギはえぇーと小さく声をあげたあと、ぱたんとノートを閉じた。

 そして――

「あの、コウさん」

「……わかった。入れ」

 フシギが言わんとしたことがわかったので、コウはそう言った。

「ありがとうございます……襲わないでくださいね」

「そんな趣味はない」

 コウはフシギがちゃんと入ったことを確認すると、布団をかけなおした。

「おいフシギ。しがみつきすぎだ」

「で、でもですねコウさん。いまこのときにもあの二人が襲ってくるかも――あ、いまなんか足音しませんでしたコウさん!」

「空耳だ」

「ほ、本当ですかね? ちょっと見てきてください」

「……はぁ」

 コウは疲れたと言わんばかりにため息をつくと、外を確認しようとした。するとフシギが抱き着いたまま離れない。

「おいフシギ」

「ど、どうにか私から離れないようにして外みれませんか?」

「手が伸びなければ無理だ」

「なら伸ばしてください!」

「あのなぁ……いいかげんにしろ」

「う……うぅ……だってぇ……」

 フシギは本当に怖いらしく、ぽろぽろと泣き出してしまった。コウは慌てた。

「おい泣くな」

「コウさんのせいですよぉ……」

「わかった俺が悪かった」

「なら手、伸ばしてください」

「それは無理だ。あきらめろ」

「そんなぁ」

 コウはここで、さきほどからずっと疑問に思っていたことを口にした。

「なぁフシギ。ならこの物語を戻せばいい。そうすればお前は怖い思いをしなくてすむ。違うか? お前にはおそらくだがそういう力があるんじゃないのか?」

「……」

 フシギは押し黙った。

「どうして使わないんだ?」

「そんな当たり前のこと私に聞かないでください」

「――つまらなくなるからか?」

「そうです。というか、するならとっくにしてますよ」

 フシギはふてくされたように言った。

「そうか。ならばフシギに一つ言いたいことがある」

「……なんですか?」

「命がけで寝ろ。命がけで起きろ。命がけで――生きろ。そうすればお前は寝れるし起きれるし、生きることができる。わかったか?」

「ぜんぜん一つじゃないじゃないですか。コウさんのばか」

 フシギはコウの布団をはぎ取り、体全体を丸め込むようにして寝る態勢をとった。

「はぁ……」

 こんなにコウがため息をついたのは生まれてはじめてかもしれない。

「おやすみ、フシギ」

 二人はこうして眠りについた。


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