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国王との対面

『王都アルトリア』


 初代国王ユウト・ウィル・エトワールが建国した多種族が暮らす国である。魔物が大量発生した際に最前線に立ち数々の功績を残したユウトという人物が「みんなが笑顔で過ごせる場所が欲しい」ということで与えられた領地が発展し国となった。その国の中心地である王都では多種族が住んでおり比較的平和な場所である。


 そんな国の第二王女であるフィオナ・ウィル・エトワールは今至福の時を過ごしていた。


「もふもふです~♪」


「おお、気持ちええわ」


 膝にイナバを乗せ頭を撫でているフィオナはとろけた顔をしていた。出会ったときの王女然とした姿は見るも形もなかった。


 馬車の中に乗るときイナバは座りやすそうなフィオナの膝の上に座った。そのことに多少驚いたフィオナだが途中からイナバの可愛さにメロメロになった。


「姫様、そろそろ王都です」


 外の騎士がそう伝えてきた。


「おお、これが・・・」


 馬車から顔を覗かせたイナバが王都を見る。そこには大きな城壁があり王都全体を囲っているのがうかがえた。王都アルトリアは中央にある王城を中心に街が広がっている。


 その光景を見たイナバはちょっと感動していた。


「ようこそ、アルトリアへ」


 フィオナが笑顔でそう言う。


 馬車は門の場所まで行くと門はすぐに開かれる。そして、中に入るとそこはかなりの人で賑わっていた。


「おお、うわぁ、すごぉ」


 イナバはきらきらした目で街の様子を眺める。


「はわぁ、イナバ様かわいいです」


 そんなイナバをフィオナはほんわかした目で見ていた。


 そして、しばらくして中央の王城の前まで来た。そこでいったん馬車を止めた。すると、門番が馬車のほうに近づいてきた。


「おお、姫様御無事で!」


 どうやら先駆けを出していたようでフィオナが襲われたことは伝わっているようだ。


「心配かけました。それでお父様は・・・」


 フィオナはさっきまでのふにゃふにゃな顔から王女然とした雰囲気になっていた。


「国王様は中でお待ちになっています。それでそのウサギは?」


 フィオナに抱かれたままになっていたイナバに門番は不思議そうな顔をした


「こちらは私たちを助けてくれた恩人です」


「イナバや、よろしゅう」


「は、はぁ」


 門番はイナバがしゃべったことに驚いた顔をしつつイナバが王女を助けたということに不思議に思ったのだろう首を傾げた。


 そして、門を抜け王城に入った。


「おお、これが城の中か」


「・・・かわいい」


 メイドに案内されつつ城の中を興味深く見渡すイナバを見たとたん先ほどの門での雰囲気から一変したフィオナ。


「姫様がこのような顔をなさるなんて」


 フィオナの変わりようにルナリアは驚きを隠せなかった。


 長年フィオナに仕えてきたルナリアはいつも王女として気を張っていたフィオナの緩みきった顔をここ数年見たことがない。なので、フィオナにそのような顔を向けられるイナバに驚き、そして感謝を覚えた。


「こちらで国王様がお待ちです」


 少し歩いてメイドは扉の前で立ち止まった。


「国王様、フィオナ様をお連れしました」


「入れ」


 メイドが扉を開け中に入ると中は執務室のようになっており机に向かい仕事をしていたであろう男性とそのすぐそばに執事服を着た初老の男性が控えていた。


「おお、フィオナ。無事であったか」


「はい、お父様。ご心配をおかけしました」


 フィオナにお父様と言われた男性は豪華な衣装を身にまとい黒みがかった短髪と堀の深い顔をしており国王というだけあり威厳がある。


「まさかS級魔物が出るとは・・・して、その魔物を倒した者はどこに?」


「こちらにおりますよ?」


 フィオナは胸に抱いていたイナバを掲げた。


「は?」


 どうやら先駆けはイナバがウサギだと伝えていなかったようだ。なので、国王とそばに控えていた執事は驚いた顔をした。


「イナバや。よろしゅう」


 イナバは手をあげ挨拶する。


「あ~、フィオナ」


「はい、そうですよぉ」


 手をあげたイナバが可愛かったのだろうフィオナはでれっとした顔をした。


「そ、そうか」


 そんなフィオナに国王は驚きつつイナバに顔を向ける。


「イナバ殿、我はオーキッド・ウィル・エトワールという。フィオナを助けてもらい感謝する」


 国王は少しだけ頭を下げた。国王として容易に頭を下げることはできないので軽く下げる程度にとどめたのだろうがその行為から国王、オーキッドがイナバに感謝していることが伝わった。


「この親にしてこの子ありやな」


「は?」


「いや、気にせんでええよ。フィオナを助けたのはわいの都合やし」


「・・・ふむ」


 オーキッドは顎に手をあてイナバを見た。


「その都合とは?」


「あいつは生きるためにフィオナを殺そうとしとんちゃうかった。ただ、自分の快楽のために自分より弱いやつをいたぶって遊んどったんや。そこがわいの矜持に反したんや」


「なるほど」


 イナバの言葉を聞いたオーキッドは安心した。


 このS級魔物、国の軍隊が出撃して多くの犠牲を払い討伐しなければならない魔物を一撃で倒したと聞いたオーキッドは国王としてイナバが危険でないかを確かめねばならなかった。


「心配せんでもええで。わいは無用な殺生は好かん」


 オーキッドの真意を読み取ったイナバはオーキッドに向けて安心するように言った。


「・・・感謝する」


「ええって」


 感謝を表すオーキッドに向けて気にするなっというように手を仰ぐ。


「ふわぁ~。イナバ様、かっこかわいい(かっこいいと可愛いが合わさった言葉)です」


 オーキッドとイナバのやり取りを聞いていたフィオナは緩み切った顔をしてイナバに頬をこすりつけた。


「うにゅ。フィオナくすぐったいわ」


 イナバはくすぐったそうであるが楽しそうである。そんなイナバとフィオナにより先ほどまでの緊迫した空気が和らいだ。


「ほう、フィオナがそのような表情をするとはな」


 オーキッドは驚きとともに嬉しそうフィオナを見つめていた。

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