【スーパーショートシリーズ 3】流行りモノ
私は水月稚奈。大阪でモデルをやっている。
大阪の女子高生の間でも、私の人気は絶大だ。
「あ、ワッカーや!!」
女子高生の間ではワッカーというニックネームで親しまれている。
そんな私は大の流行好き。私が取り入れた流行を、大阪の女子高生たちは真似をする。
言ってみれば、私は女子高生にとっての流行の発信源。
流行りものは、私が全て発信しているといっても過言ではない。
チーズケーキのPAULO、ニーハイのブーツ、ショーパン………全て私が取り入れた流行だ。それらが今や大阪の女の子たちに大人気となっている。
私には親しい歌手がいる。北田ゆかちゃんという、ギター弾き語りのシンガーソングライターだ。
この歌手のことをツイートすると、瞬く間に路上ライブの客足が上昇したらしい。
「ワッカー、ほんまにおおきにな!うちがメジャーデビューしたら、CD真っ先にワッカーにプレゼントしたるで!」
ゆかちゃんも今や大阪の女子高生たちの間で知らない人はいない。
やはり今の時代、Twitterの影響力は絶大だ。
Twitterで何でも簡単に流行を発信することができる。私はその影響力に助けられて、モデルの仕事も増えていき、日夜寝る時間も取れないほど大忙しだった。
ある冬の12月。私は体調を崩した。
熱を計ってみると、39.5℃の高熱だった。
これはヤバい!私はすぐに近所の病院でお医者さんに診てもらった。
「インフルエンザですねー。1週間は外出禁止です!………最近、流行ってますからねー。」
まさか、流行好きの私が、あろうことか病気の流行まで取り入れることになろうとは。
私は家に帰って、こうツイートした。
―――インフルエンザになりました。流行ってるから、みんな注意してね
私は女子高生から、お見舞いのリプが来てくれることを期待した。しかし、期待は大きく裏切られた。
―――へ~!今度の流行はインフルエンザかぁ。
―――ワッカーがなってるんだから、私もなってみたい!
―――さすが、流行のカリスマ!インフルエンザまで取り入れちゃうなんて、ステキ!
お見舞いリプなど皆無だった。
むしろ、流行に敏感な私が、今流行っているインフルエンザをも取り入れたことに、女子高生からは狂喜乱舞のリプで埋め尽くされた。
この炎上は1ヶ月以上も続き、大阪の街から女子高生の姿がしばらく見られなかった。インフルエンザで大阪のほとんどの高校が学級閉鎖になったからだ。
そして私はその炎上の責任を取り、モデルを辞めることを余儀なくされた。
今は人里離れた山あいの村で、実家の韮農家を手伝っている。