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バースデイ  作者: セキド ワク
12/63

一二話  練習開始



 部員達は、配られたばかりの服へと着替えて集合している。

 縁も防御スーツから薄着の甚平へと着替えていた。


 折紙先生は椅子に座りヘッドホンで音楽を聴きながら、持参したスケッチブックに絵を描いている。



 会館内を三分の一に分け、そのど真ん中を進卵学園剣道部が使う。


「まずは、マネージャーが持って来てくれた箱から、風船を出して、それぞれ二本ずつ膨らまして下さい」縁も見本として風船を膨らます。

「部長。あの、そんな、私達が持ってきたって強調しなくてもいいですよ。なんか恥ずかしいし」

「そっか。ごめん」

 縁は無意識に『マネージャーが』という感謝を込めた説明をしていた。深く意識したわけではないが「持ってきた箱から」というより、その方がしっくりきていたのかも知れない。


「床並君、この風船で何作るの?」

 細長い風船をパンパンとぶつけながら縁の指示を待つ。皆も不思議そうに風船を持つ。


「ああぁ、これ、剣の代わりにするんでしょう」今込が笑う。

「お、俺もそう思った。膨らます前に、もしかって」濱野も気付いたと主張する。


「おしいけど、そうではないよ。それは剣じゃなくて、手、です。それを使って、今から皆で鬼ごっこをしてもらうんだけど。まず今日は初日なので、あまり難しいルールはなしとして」

 縁の言葉を遮るように皆が「鬼ごっこ?」と明るく突っ込む。


「そう。ほら、一応、男女だし、直接手で触られると、ねっ、恥ずかしいというか問題あるかなと思って」

「別に平気だよ。ねっ」女子部員達が頷く。

「そ、そうかも知れないけど、それだけの意味でその風船を持ってもらっている訳じゃなくて、その風船を持つことでお互いの距離が遠くまで伸びるというか、難しい言葉で言うと間合いってことなんだけど。ああ、今のは忘れて。とにかく、そのお互いに手が伸びるということが重要なんだ」


 部員達が「そうなんだぁ」と聞き入る。さらに縁はいくつかのポイントを話す。

「逃げる者は必ず、ケンケンパで逃げること。というか、移動は全てケンケンパ。そして鬼は普通に歩いていいけど、走っては駄目」


「ケンケンパって、これ?」登枝が片足で跳ねる。

「そう、それそれ。常にそれで。あと、この鬼ごっこには関係ない話なんだけど、この合宿中は、できれば一日おきに利き手を代えて欲しいんだけど」

「左手を使うってこと?」

「右利きの人はね。左利きの人は右手。それを一日おきに交互に生活して欲しい」

「一日中かぁ。それは相当きついな」

「危ないこととかは、しなくていいよ。あと、お箸を使うとかそういうこともね。スプーンやフォークで、全然構わないから。要は、細かな指先の作業じゃなくて、物を持つとか、まあ、字を書くくらいなら箸よりは楽だから挑戦してもいいけど、まずは利き手ばかりでなく、逆の手を使う練習をして欲しい。あっ、それとね、皆一斉にそれをやると大変だし、差が出ないから、半分ずつ(グループ)に分かれて欲しい。そうすれば皆でグダグダになることないし、色々な作業とかで、他人と差がついて分かり易いから」


「ほお、何だか分からないけど面白そうだな。俺は結構、元から両方イケるタイプだぜ」またも濱野が胸を張る。

 しかし、剣道部ができてからずっと、濱野のこういった凄いだろという自慢に、部員の誰一人「スッゴイ」と褒めてあげたことがない。一度くらい、凄いと思ってあげてもいいのに。なぜか風に流れる。



「それじゃ、鬼ごっこ始めようか。止まってる時は、両足で立ってていいからね。動く時にケンケンパだよ。じゃあ、ジャンケンは時間がかかるから、最初の鬼は、今込君と濱野君にお願いします。俺は審判として、きちんと出来ているかチェックしてるから。ではスタート」


 女子部員が一斉に逃げ出す。とはいえケンケンパは口で言うほど逃げられない。それどころかまったく距離が取れない。

 そのあまりの感覚と鬼が来る恐怖に、女子部員達がキャーキャー騒ぐ。両サイドで練習している者達も、縁が何を始めたのかと覗く。特に堤が凝視している。


 今込が園江をタッチし、濱野は鼻息荒く女子達を追いかける。


「あっ、言い忘れてた。ストップ。手と手って説明したら、言った気になってた。鬼がタッチしにきたら、風船で相手のタッチしにきた風船を避けていいから。で、ここで重要なのは、むやみに叩いたり振り回したら駄目。これはあくまで手。風船の先端に手があって、この長い部分が腕。そうだっ、ちょっと俺がお手本を見せるから、皆よく見ててね。濱野さん、俺をその風船でタッチしてみてくれる」


「いいの? 俺、結構こういうの空気読めないから、番狂わせちゃうかもよ」

 そういうと歩きというルールを忘れ、一気に縁に走り寄る。そして高速でタッチを試みる。それを縁は、寸前の所でケンケンパしてかわし、濱野に助言する。


「濱野君。そんなに早いスピードでしかも大振りしてるから、風船があさっての方を向いちゃってるよ。もっと自分の手だと思って触りにきて」

 濱野が来るまで一歩も動かない。逃げようともしない。濱野がある距離まで来ると体を傾けたり、片足で一歩だけピョンと飛んだり、風船で上手にかわしていく。


 相手が雑に振り回す風船を、まるで本当の手で掴んだり腕で軽く流しているように見える。一切叩かず、紛れもなく手や腕だ。武器ではない。


「あ、分かったぁ。私。要するに手で避けていいっていう意味なんだぁ」いきなり日野がそう声をあげた。


 なおも動く縁と濱野を見て、皆も何となく遊びを理解していく。

 しかし、濱野だけは縁をタッチすることに必死で、意味どころか、あろうことかもう肩で息をしている。まだ、二分も経っていないのに。とはいえ、濱野にとって全力で二分動いたのは相当ハードだったようだ。

 そのおかげで、上がっていたテンションが疲れと混じって、丁度いい温度へと下がって見えた。



 濱野を簡単にあしらった縁が、もう一度部員達に鬼ごっこのスタートをかける。


 またも襲い掛かる濱野、やはり女子部員は声が出てしまう。しかし、縁の動きの雰囲気を必死に真似て、今込と濱野のタッチを防いでいる。


「あ、これ、逃げなくても平気かも」襲われる百瀬が少し笑う。

 そして強引で乱暴な濱野の腕風船と格闘する雨越も「床並君がさっき言ってた、距離が必要って意味、何となく分かった。このバカのおかげで」と頷いている。

 それを聞いた縁も、確かに、濱野のハチャメチャさで、逃げる側に色々な意味が伝わるかもと思っていた。


 縁の想定よりも、鬼の入れ替わりが遅い。


 仕方なく縁は、横で立っているマネージャーの二人に「風船を膨らませて、鬼として参加してくれるかな?」とお願いした。

「私達ですか? 良いんですか? いいならぜひ。面白そうですし」

「皆、鬼を二人追加します。集中して逃げてね。衝突や怪我しないように」


 鬼が増えると同時に、一気にバトル感が増した。至る所で攻防戦が起こる。


 縁はどれくらいで休憩を入れるべきかを考え、まずは六分、約二ラウンドくらいの長さで休憩を入れることにした。

 時計をセットして時間を計る。


 皆が楽しみながら少しずつ上達していくのを眺めていると、縁の足に重い衝撃が走る。

「あう、ごめんなさいぶつかっちゃった」萌生だった。

 両手に風船を持って、剣道部と同じ遊びを寧結としているようだ。


「大丈夫? 萌生ちゃん。痛くなかった?」

「平気、お尻が当たっただけ。寧結ちゃんに教わった、えびバック、ケンケンパしてたらぶつかっちゃった」

「そう。壁とか周りに気を付けてネ。寧結、萌生ちゃんの後ろとか横とか意識してあげてな。物が置いてあったら、危ないって教えてあげるんだぞ」


「はぁい。――それじゃ、続きよ、萌生王女。私の命は、明日までだって、言われたの、それでもこの戦いは逃げちゃいけないの。親友だけど、お互いに王女。やるしかないのよ」

「分かっているわ、寧結王女。私も明日、光の世界からむかえが来てプリンセスにならなければいけないの。どうしても、どんなに拒んでも、だから私達、戦う運命(さだめ)なの……」

「分かってる。でも、本当は戦いたくない。でも、暗黒魔女に呪いをかけられて、この世界に王女は一人しかいられないの。やるしかない」

「そうね。小さい頃からいつも一緒に遊んできた仲。でも二十歳の誕生日に戦って、どちらか一人、生き残った方が野獣にされた王を戻せる。それがこの国の掟」


 寧結と萌生の意味不明なやり取りに、縁は寄り目になるほど錯乱し、本当に女の子の考えが分からなくなった。一体、どんな意思の疎通をしているのかと。

 だが、女の子同士のお人形遊びの時のストーリー展開は、これよりも遥かに奇怪だとかそうじゃないとか……。


「はい、皆、一回休憩。十分位休む?」縁が部員達を休ませる。

「そんなに休んでイイの」

 汗びっしょりで戻ってくる部員達。女子は少しだけ頬がピンクに染まっている。


「暑くない? 水分補給とか忘れないでね」

「部長~。気を使い過ぎですってば。私達そんなに柔くないですよ」

「うん、分かってるんだけど、なんかね、心配になっちゃうんだよね。妹の面倒を見てるからかな?」

「きっとそうですよ。あれ、ところで、その寧結ちゃんは?」寺本が辺りを見る。


「あ~それなら、皆が居なくなったから、中央で、ほらぁ」

 縁が指さす先で、寧結と萌生が同じように戦っている。

 だが、その二人の戦いぶりに、剣道部員達だけでなく、両サイドで激しく練習していた者達まで見入っている。


 上手にケンケンパをしながら、更に相手の攻撃をかわす。

 どちらが鬼とかはなく、しいていうなら二人共に王女らしい。それが、明日までの命だか、呪いだか、二十歳にあたえられた国の決まりらしき理由で、イヤイヤ戦っているとかいないとかだ。


「部長、萌生ちゃんって、こういうの今日初めてですよね?」

「そうだね」

「なんか上手過ぎません」

 皆が感心する。そして自分達も早く始めたいとソワソワする。


 萌生がうまいのは、相手である寧結が半端なく上手いコトが理由の一つ。あと、萌生はダンスなど、リズムやステップに関する練習をしていること。

 更に、萌生と寧結は日頃から一緒にダンスし、遊び、仲良しで、この合宿にまで来るほど気の合っている親友ということ。

 そんな二人のバトルが息ピッタリでも、なんら不思議ではない。

 だが、それを皆は分からない。



「部長~。もう疲れ取れました。早く鬼ごっこ」今込が子供のようにはしゃぐ。

「ん~そんじゃ、無理はしないでね。ではスタート」

 皆が一斉に中央へと散らばる。


「萌生王女。ついに闇の世界からのモンスター達が」

「どうするの寧結王女」

「うん。今までは敵同士だった、けど。ここは、私達の友情の、パワーとパワーを合わせて」

「て~いうことは、絆のパワーを、この魔法のステッキに乗せて、二人で戦うってこと?」

「そぉぉう。ごめんねさっきまで。倒そう。この化け物モンスター達を。悪の中の闇の怪人を、二人の魔法のステッキで、変身して。魔法少女に変身してさ」


 ど真ん中で話し込む寧結と萌生を、縁はスタスタと歩き、胸に抱きかかえて脇へと運ぶ。


「ちょっと兄ぃ。なにするのさ。モンスターが出たんだから。せっかく萌生ちゃんと仲直りしてその絆のパワーで……」

「寧結、萌生ちゃん。よ~く見て。あそこにいるのは? ほら、二人が鞄に雑誌の切り抜き入れてる凄く有名な、ほら誰? モンスター? じゃないよね」

「あっ! ホントだ」


 寧結も萌生もようやく目が覚めた。

 子供というのは、妄想に入り込むととんでもない集中を見せる。

 鏡の前やお風呂場で、時にはアイドルになってコンサートしてみたり、モデルになってポーズしたり。

 途中で我に返ってもいい所だが、それどころか妄想が上手く行かなかったり気に食わないと、もう一度ストーリーを初めからやり直せるほどのスタミナと集中力を秘めている。


 寧結も萌生もさっきまでが嘘のようにケロッとしている。そして二人でまた別の遊びをし出し、ケラケラと駆けて行く。


 縁は部員達の動きを見ながら、誰がどれくらい運動神経がいいのか見極める。

 登枝日芽が、断トツに動きやのみ込みはいい。普段からアイドルとして、ダンスなどをしているからだろう。



「はい。時間です。一旦休憩」

「部長、あとちょっと」

 皆がもう少しと駄々をこねる。仕方なく一分延長し、その後休憩させた。


「ひやぁ、これ相当足にくるね。ももがパンパン」今込がももをさする。

「私はふくらはぎ」

 部員達それぞれが、疲れた箇所を言う。それこそ千差万別。


「今日の鬼ごっこは、とりあえずここまでで。このあとは、いつもの運動と柔軟をします。今日は自転車はなしですけど、明日は、朝と夕方に五キロくらいかな? 軽く皆で漕いで、それで――」

「あぁ、終わりかぁ。すごく面白い。なんか部活らしくなってきたもんね」

「明日もあるし。部長。明日も鬼ごっこやりますよね?」

「うん、毎日。ただ、今日よりも難易度はあがるけど」

 部員達がワクワクしながら縁の話を聞く。そして、運動を始めた。


「難しくなるって、どんな感じ?」

「まず、逃げる方は、風船が一本、つまり片手で。で、半分の人は約束通り利き手じゃない方で。とか。でも最初だから、いきなりだとあれだし、午前中は両手で、午後から片手かな。ま、明日はまだ、途中で持ち替えてもいいよ、くらいの感じ。二日目だし。ただ三日目や四日目になったら、更に難易度があがって、鬼二人と、風船二本で攻防して貰います。それが出来たら次は一本で。次が鬼三人で」

 それを聞いた部員達は、難易度や方法はまだまだ無数にあるんだと悟った。自分達に合わせた優しいレベルでこれなのだと。


 聞き耳を立てる堤は、縁の話しに愕然としていた。

 たった一日、しかも六分と七分の計二回の鬼ごっこで、自分がしてきた今までの剣道の練習が(くつがえ)って見えた。

 もちろん剣道には剣道の良さや凄さはある。しかし、その道で極みに近づいた堤だからこそ分かる。


 幼い頃、大声を張り上げて、竹刀を横向きに持つそこへ気合いで打ち込んだ。

 テニスや野球と同じで、基本の構えから何度も素振りし、前後のステップを踏んでいた。他にも多くの練習を思い返す。

 そして堤は思う。


 はっきりとした防御の練習はないと。


 まったくないわけじゃないが、縁のしているこの練習は、防御が九で、攻撃は鬼の時の一。

 鬼の時は必死で攻撃し、どうすれば当たるかと悩み試行錯誤するが、結局それもまた、逃げる側になった時の防御に結びつく。


 自分の練習もせずに、堤は、進卵学園の素人同然の部員達の動きを、そんな風にずっと目で追っていたのだった。

 これが合宿初日で、竹刀も持ったことのない子達かと。



「ふぅ、終わったぁ~。明日が待ち遠しぃな」

「合宿って感じ」

 部員達が満足そうに話す中、突然、縁が言いづらさそうに口を開く。


「あの、ちょっと頼みたいことがあって」

「どうした部長、俺で良ければ聞くよ」今込が縁の肩を揉む。

 縁はくすぐったそうにくねる。いつものことだ。


 と――。

「いや、女子部員に頼みなんだ」

「何ですか? 何でも言って下さい」

「汗かいたし、皆この後、食事前にお風呂というか、シャワー浴びてから着替えて集まるでしょ? で、何か変な頼みで悪いンだけど……その」


「な~に。まさか新たな練習とか? 試練的な?」

「いや、その……」

「どうしたの部長、変ですよ。大丈夫ですからはっきり言って下さい」

 女子部員達が可愛い笑顔で、言ってみてと頷く。気にせず頼んでと。


「お風呂に、誰か一緒に入って欲しい。いや、自分で洗えるから、そんな、なんていうか、ただ、ただ見ていてくれるだけでイイんで。それだと俺的には凄く安心というか」

 縁の言葉に女子部員達は真っ赤になって顔を見合わせる。

 後ろで肩に手を置いた状態の今込も「うっそ」と目を見開いていた。


 今日一日で、縁には色々驚かされているが、その中でも、曽和とのバトルと同じくらいの驚きだ。車の運転にも、ホテルの豪華さにも驚かされっぱなしだが、これはさすがに……。


 縁のお願いに女子達が戸惑う。

 寺本、葉阪、園江、三好、君鏡、日野の六名は、ただ照れているだけではなく、自分の体に自信がないので、心の中の答えは無理と決まっていた。ただそれを口には出せない。

 モデルである香咲、百瀬、小峯、そしてアイドルである登枝は、水着やセクシーな衣装も着るし、写真もネットに上がったり、写真集も撮影するので、本気で二択であった。

 ちょっと体に自信があるのだ。もちろんそれでも大いに悩んでいる。

 女優である岡吉と雨越は体の自信が少なく、断り寄りの沈黙。


 すると、登枝がゆっくりと手を挙げる。それに今込が「マジか」と驚く。皆も似たような驚きはあるが、香咲、百瀬、小峯は出遅れた感じで複雑な顔をしていた。

「ほ、本当に? イイの?」

 縁の言葉に登枝が恥ずかしそうに頷く。頬を真っ赤にし少し(うつむ)く。縁ももちろん恥ずかしそうにしている。


「助かるよ。ありがとう。俺、どうしようかと思って。さすがに一年生とはいえ、よそ様の子と入る訳にはいかなし。もう女の子でしょ? かといって寧結と萌生ちゃんの二人だけで入れて、もし怪我でもあったら、それこそ取り返しがつかないから。本当は先生に頼もうかと思ったんだけど、ほら、どこにも居ないし、先生は汗とかかいてないからさ、寝る前にお風呂かなって。寧結も萌生ちゃんも二人共汗びっしょりだし、早く入れてあげないと、夏風邪でも引いたら大変だから、マジで困ってたんだ」


「ん? 床並君それって……。だ、だよねぇ」登枝が理解する。

 周りの女子部員達も一斉に理解した。そして、まるで子供達と入ることを拒んでいたかのような形に見える自分達へのフォローへと向かう。


「いや、やっぱ、ひめタンでしょ。私達と入っても寧結ちゃん嫌かなと思って」

 皆のフォローに縁が「そんなことないけど」と本当に受け取り逆フォローする。

「あ~びっくりした」あらためて登枝がホッと息をつく。


「さっき着替える時に、服とか運んだと思うけど、一応忘れ物とかないようにね。おっといけない。床掃除するの忘れてた」

 会館の床は、部員達の汗などで汚れている。


 縁は、今込と濱野にだけ残ってもらい、モップを取りに行く。

 女子部員達は男子よりも、お風呂や風呂上りに時間がかかると想定し、先に部活を上がってもらうことにした。


 縁は用具室で、会館の床が濡れている状態を考慮し、ダストモップでなく拭きモップを選択した、そして、今込と濱野と共に、使用したエリアの清掃を始めた。






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