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新・南極物語  作者: 足立 和哉
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1)黎明の時

  今から46億年前、世の中のすべての物質が混沌としており、あれかこれかの区別もつかなかった。やがて、何かが小さな塊りを形づくった。塊りは次第に増えていき、塊りと塊りでないものとの区別が明確につくようになってきた。混沌とした世界に区別が現われるようになった。


40億年前。

 原始的な大洋と共に陸地が出現した。陸地には太陽からの強烈な紫外線が降り注ぎ、大地は火山活動で揺らぎ、焼け焦げていた。大洋の海底ではプレート移動が起こり、大陸の集合と分離が数億年単位で繰り返されていた。


38億年前。

 環境的に安全な海の中でようやく生物の起源というべき物体が誕生した。核をもたない単細胞生物、いわゆる原核生物と呼ばれるものだ。自分と同じ個体を複製できる遺伝子が細胞の中にそのまま収納されている生物だ。


35億年前。

 原核単細胞生物の仲間から光合成ができる生物が現われ、酸素が作られるようになり、大気に酸素が増加してきた。酸素が増加してくると酸素を利用してエネルギーを作って生きようとする単細胞生物が出現した。酸素を利用するエネルギーの産生効率は、今までいた生物を遥かに凌駕した。十数億年という歳月をかけて原核細胞は海中で着実に進化をとげていく。


20億年前。

 いくつかの大陸が小規模の集合と分離を繰り返していたが、初めて大きな集合体大陸が出現した。超大陸ヌーナ大陸の出現である。この頃も地表には生物は存在していない。


15億年前。

 原核単細胞生物の仲間から細胞内に遺伝子を膜で包み込んだ生物が誕生した。真核生物の誕生だ。遺伝子を包む膜を核膜とよび、遺伝子を含んだ核膜の構造体を核と呼ぶ。あたかも原核細胞が他の種類の原核細胞を飲み込んだような形だ。真核細胞が原核細胞同士の喰い合いの結果できたのだと言っても誰も否定はしきれないだろう。


10億年前。

 それまで単細胞だった真核生物が次第に集合し始めて多細胞生物が誕生する。多細胞生物は機能的に生物を維持できたために生き残り、かつ次第に体を大きくしていった。


5億5000万年前。

 これまで数十種しかいなかった生物が一気に1万種以上にもなった。現代人がカンブリアの大爆発と表現する生物進化だ。とても奇天烈な形をした生物がたくさんいる時代だ。しかし、生物はまだ海の中だ。


5億年前。

 光合成が進み、酸素が大気中に増えて、紫外線と酸素が反応してオゾンとなり、オゾンが上空へと昇り、オゾン層が形成される。すると太陽からの紫外線がかなり遮断されて、地表に降り注ぐ紫外線の強烈な照射が緩和されて生物が地表で生きていく環境が整ってきた。それと同時に生物は地上へと移動を開始した。まず植物類が地上に現れた。こけ類だ。さらにシダ類が続く。同じころ動物世界では海中に脊椎動物が現れる。やがて魚類が出現する。


4億年前。

 動物ではまず昆虫類が地上に姿を現し始める。同じころ、オウム貝などに追われた一部の魚類が淡水の川に出現する。


3億6000万年前。

 淡水魚類から進化した両生類の祖先が地上へと進出していく。脊椎動物初の地上への進出である。しかし、両生類は常にある程度の水を必要としていたので水辺の近くを離れられなかった。本当に地上へ進出したのは、その後に進化して出現する爬虫類、鳥類、ついで哺乳類になる。


2億5000万年前。

 ヌーア超大陸出現以降も集合と分離を繰り返していた大陸が、再び超大陸を形成する。パンゲア大陸だ。今のユーラシア大陸、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、現在は大陸の一部だがインド半島、そして、南極大陸を含む超大陸パンゲア大陸の出現である。赤道をまたいだ三日月状の形をした超大陸だ。


2億3000万年前。

 恐竜時代が始まる。恐竜時代は6500万年前まで続き、1億6500万年の長きに渡って恐竜たちは地上に君臨した。この頃、世界はパンゲア超大陸で一つながりになっていたので、南北の極端に寒い場所を除いて、世界各地で恐竜がいたとしても不思議ではない。


2億2500万年前。

 初めて哺乳類の祖先が姿を現す。当時は巨大化した爬虫類の影に隠れるような生き方をしていたはずだ。


2億年前。

 パンゲア超大陸は再び分離活動を起こす。南北に分かれ、南側は南アメリカ大陸、アフリカ大陸、南極大陸、オーストラリア大陸を含むゴンドワナ大陸、そして、北側は残りの大陸を含むローラシア大陸と名付けられる。


1億6000万年前。

 今度はゴンドワナ大陸が東西に分かれ始める。東ゴンドワナ大陸には南極大陸、オーストラリア大陸、インド部分があり、西ゴンドワナ大陸には南アメリカ大陸、アフリカ大陸が存在している。この時期に哺乳類は有胎盤類動物と有袋類動物に分かれた。有袋類動物の祖先は南アメリカという説があり、当時の地理では有袋類動物は南アメリカ大陸から南極大陸を通過してオーストラリアへ移動したと考えられる。タイミングとしては間もなく南アメリカ大陸が分離していく時代なので、ぎりぎりの移動といえる。後にオーストラリア大陸は他の大陸とは隔離された環境になるため有袋類動物の天下となる。そして、南極大陸にも彼らはいたのだ。


1億2500万年前。

 東ゴンドワナ大陸からインド部分が分離し、ユーラシア大陸の方へ移動していく。


6500万年前。

 この頃、南極大陸とオーストラリア大陸で構成された東ゴンドワナ大陸は熱帯もしくは亜熱帯地域であった。この地域では有袋類動物が中心の動物種へと発展していく。カンガルーの祖先もこの頃すでにいたと考えられている。

 同じく、この頃、北アメリカ大陸を中心にして、最初の霊長類の祖先が姿を現す。残念ながら最初の霊長類は絶滅するが、その後もこの系統の種族は進化と絶滅を複雑に繰り返しながら、環境に適応した一部の種族が生きながらえていく。その内の一つが、アフリカを起源とする現代人ホモ・サピエンスだが、彼らが地上に現れるには、まだ6千万年近い時間を要する。

 くしくも、この時期に恐竜時代は終焉を迎える。メキシコのユカタン半島に直径10kmの隕石が衝突し、その影響で地上が塵に覆われ天候が悪化、その環境変化に恐竜達が対応できなかったため絶滅したという説が主流だ。恐竜だけでなく、巨大化してきた多くの哺乳類も絶滅し、小型の哺乳類が生き延びることになる。いろいろな現象が同時多発的に起きたこの時期をKT境界という。


4000万年前。

 オーストラリア大陸と南極大陸が分離して、ついに南極大陸は名実共に南極に向かって移動することになる。そして、両大陸が分離する遥か2500万年前には恐竜時代は終わっていた。


3400万年前。

 南極大陸の所々に氷が形成され始める。


1500万年前。

 南極大陸は完全に氷で覆われた大陸となり、それ以降、大陸は氷で閉ざされた大地となる。


700万年前。

 霊長類から進化を遂げた初の人類がアフリカに現れる。サヘラントロプス・チャデンシスだ。彼らはその後100万年間を生き抜くが、やがて絶滅する。その後も進化した人類が現われては絶滅する過程をたどる。


450万年前。

 更に進化した人類が現れる。アルディピテクス・ラミダス。彼らの地上での生存期間は30万年程度だった。


180万年前。

 この頃、現代人にかなり近い人類が現れる。ホモ・エレクトスだ。彼らはつい3万年前まで地上で暮らしていた。


35万年前。

 ホモ・ネアンデルタレンシスが現れる。ネアンデルタール人ともいう。彼らはホモ・サピエンスより体格はがっしりとしており、脳の容積も同じ位か、むしろ大きな個体もいた。そして、ホモ・サピエンスと交配をしていたという遺伝子レベルの研究結果も発表されている。


20万年前。

 現代人のホモ・サピエンスがアフリカに登場する。その10万年後にホモ・サピエンスの一部は生誕の地アフリカを出る。8万年前から5万年前にかけて中近東からヨーロッパを出たり入ったりしていたようだ。当時、ヨーロッパにはホモ・ネアンデルタレンシスたちがいたので、彼らの動きに合わせて出入りをしていたようだ。当時のホモ・サピエンスの実力ではホモ・ネアンデルタレンシスを排斥しきれなかったようだ。アジアには5万年前に移動してくるが、そこにはホモ・エレクトスがいた。そこで両者の間で何が起きていたのか興味深いところだ。オーストラリアには4万5千年前に到達している。ホモ・サピエンスの移動は更に続く。


3万年前。

 ホモ・エレクトスが絶滅する。彼らは177万年という人類史上類をみない長期間を地上で生き抜いていたが絶滅した。気候変動のためか、後から侵略してきたホモ・サピエンスのためか、定かではない。


2万8千年前。

 ホモ・ネアンデルタレンシスが絶滅する。ヨーロッパを中心にして生活をしていた彼らをようやくホモ・サピエンス達が殲滅したのかもしれない。そして、人類は1種類だけとなった。


2万年前。

 ホモ・サピエンス達の旅はなお続く。アジア北東部へ、さらに当時は地続きだったベーリング地峡を渡り、北アメリカへ、さらに南アメリカまで到達したのは1万5千年前になる。


 人類は1種類、果たしてそうだろうか。であるならば私は誰だ。私は歴史学者の一人で、人間だと信じて疑わない。



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