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77話 せいぎマフラー

 フィールドダンジョンを設置した翌日。

 新妻(レヴィア)が作ってくれた朝食を食べながら今日の予定を相談する。

 この場にいるのは俺とコルノとレヴィア。

 ミーアは新婚家庭に気を使ってか、食事はニャンシー、アシュラとか、リニアと一緒にしていることが多い。ハルコちゃんは家族のところから通っているので、当然別だ。


「念願だったフィールドダンジョンもやっと導入したしな。軽く見回って問題なければそろそろのんびりしたい」


「農業をするんじゃなかったのかしら?」


「フィールドダンジョンの気候にもう少しトレントたちが馴染んでからでいいかなって」


 トレントたちは農業の、というか植物のプロ。彼らがフィールドダンジョンの環境をつかんでくれてからの方が栽培もスムーズにいくと思う。

 そろそろお米が食べたいのは確かなんだけどね。

 レヴィアの献立は家事の師匠らしい乙姫の影響で和食がメイン。それだけにお米がほしくなるのよ。


 ちなみに本日の朝食は卵焼きと切り身の焼き魚にサラダ。

 魚はレヴィアが出張のついでに獲ってきたカジキマグロに似た巨大魚。嘴というか、鼻先の長い部分が簡単な加工で武器になるらしい物騒なやつである。シャケ代わりに切り身を塩漬けにしてみたが、これがなかなかに美味い。


「今日は未熟者のダンジョンに行かないの?」


「飽きた、ってわけじゃないけどゴブリンの在庫がはけるまでは行かないでいいかな」


 昨日、長老トレントのバイカンの案内で栄養のあるという土をゴブリン死体で<複製>してきたけど、それが肥料として使えるかはまだ確認できていないので、余ってるゴブリン死体を全て土にしたわけではない。


「律儀に全部持ってくるからよ」


「殺してしまった以上、無駄なく使ってやらなきゃ」


 それは建て前でホントはただの貧乏性なんだけどね。

 ダンジョンマスターの館でも買い取ってくれるけど、ゴブリンの死体って10体で1DPにしかならないんだよね。それだったら素材用にとっておいた方がお得感があって、半分は売って半分は保管しておいたんだけど、これ以上増やすのはちょっとストップだ。


 未熟者のダンジョン、順調に攻略していくと第4層のボスと戦う前辺りで百以上のゴブリン死体が手に入っている。最近は最下層の第7層まで攻略するのが日課になっていたんで、一日で二百近いゴブリン死体が手に入ってしまって、そりゃ始末に困るってわけだ。


 さすがの俺のアイテムボックスもいっぱいになりそうなんで、第4層のボス戦後、いったんダンジョン(うち)に置きに戻ることにしていた。ダンジョンの貯蔵庫も大型化した上に数も増えているよ。

 前世の肉類や卵にも<複製>済み。貯蔵庫には一年分ぐらい貯まっている。変換効率は悪いんだけど、死体の数が多いからたくさんできちゃっててね。


 フィールドダンジョンも手に入ったことだし、次はアイテムボックスの増量するかな。コルノもほしがっていたから、眷族たちにも持たせるのもいいかもしれない。高いけど小人系の眷属なら100分の1バグが利くしさ。


「ボクたちも未熟者のダンジョンに行ければスキルレベルを一気に上げられそうなのにね」


 <転移>スキルでコルノやゴータローを未熟者のダンジョンに一緒に連れて行こうと試したことがあったが、転移できたのは俺だけ。ダンジョンレベルが10を超えないと<転移>でも眷属を邪神のダンジョンに連れて行くことはできないのかもしれない。


「訓練じゃ上がらないもんなあ」


「実戦でなければスキルレベルは上がりが悪いわ。実戦中に別の戦闘とは関係ない作業をして、そのスキルが上がるとは思わなかったけれど」


 ゴーレムたちに模擬戦を行ってもらって、その間にゴータローとレッドに反復横跳びを試してもらったけど、一日続けてもスキルが増えることはなかった。

 その翌日、両腕が完治したエージンを呼び出して未熟者のダンジョンで実験。エージンはゴブリンに(ボコ)られながらも一時間ぐらいで<反復横跳び>スキルを入手した。

 種族ランクの違いもあるだろうけど、やはり練習や訓練では駄目。実践、実戦でなければスキルの入手、レベルアップはできないと俺は見ている。


「うちのダンジョンには侵入者がこなくなってるし、常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の邪神のダンジョンを解放して、そこのモンスターを使ってスキルレベル上げをするしかないかな」


「楽しみだね」


「……笑うなよ。ちょっとアレな光景なんだから」


 だからこそ、実験にはエージンだけでアキラは呼ばなかったわけで。爆笑しそうだもんな。

 アキラは最近、別の邪神のダンジョンで稼いでいるらしい。そっちの方が儲かるからって俺も誘われたけど、目立ってしまって100分の1バグがばれるのが嫌なので、不人気な未熟者のダンジョンを利用していたのだ。



 ◇ ◇ ◇



 食後、フィールドダンジョンをみんなで回る。


「おはよう……ございます……フーマ様」


「おはよう、バイカン。調子はどうだ?」


「とても……いいですじゃ」


 調子がいい証明なのか枝をわさわさと揺らすバイカン。だが、そんなことをされても俺にはよくわからんのだが。


「うん。動きにキレがあるね」


「わかるのか?」


「まあね」


 さすがつきあいの長いミーアといったところか。

 俺もそのうちわかるようになるのだろうか?


「ここの土や気候でトレントたちは大丈夫そうか?」


「……いい感じ……問題……ない……ですじゃ」


若木(こども)たちもはしゃいじゃって、様子を見にきたクロスケと遊んでいるよ」


 ミーアは昨日はこのフィールドダンジョンに泊まったようだ。


「そうか。クロスケなら第1層の泉関係ないもんな」


「マスター、巨大空間の妖精たちもこれるようにしてほしい。フェアリーはともかく、飛べない妖精たちはこの第2層にくるのが大変だ」


 第2層に繋がる階段は、周りが大きな泉に囲まれた小島にある。泳げたり飛べたりしない限り、先には進めないようになっているのだ。

 避難民妖精たちが居住する巨大空間は第1層と繋がっているので、泉を越えないと第2層にくることができない。


「そうか。あの辺も構造を変えなきゃいけないか。妖精たちがこのフィールドダンジョンで暮らすようになっても、ダンジョンの外に簡単に出れないようだと困るな?」


「ノームたちみたいに狩りをする妖精もいるからね」


 日光に弱いくせに、ノームは狩猟や採取も行う。現にこのダンジョンで暮らすノームたちも、夜間外出してることがあるのだ。


「邪神のダンジョンを解放する前に大幅に構造をいじる必要があるかもな。注文があるならまとめておいてくれ」


「了解したよ」


 ミーアは学者として歴史に詳しいだけでなく、意外と人付き合いがよく顔が広い。俺の持ってる部屋に閉じこもりっきりな学者のイメージとは大違いの猫だった。

 フィールドワークのために人見知りでは駄目なんだそうだ。


「フーマ様、寒いの?」


 若木のトレントが聞いてきた。

 この子は……楓かな? メープルシロップが採れる種類かも。あ、でも血や汗といった体液って考えるとちょっとアレか。


「いや、ここは風も強くないし寒くはないかな。どうして?」


 フィールドダンジョンは地下なのに空があって陽がさして、さらには風も流れている。雨を降らせることすらできるのだ。


「だって、すごい長いマフラーしてるよ」


 別の若木トレントが俺の首を枝で指差す。そこには長い長ーいマフラーが巻かれていた。


「これはね、正義マフラーっていうんだ。カッコイイだろう?」

 ここの風では弱かったので、無詠唱でエアーコートを纏い操作すると、その長いマフラーが大きくたなびく。


「カッコイイ!」


「正義マフラーすごい!」


 はしゃぐ若木トレントたちは可愛いなあ。前世のヒーロー物でも見せてあげたい。


「マスター、純真な子供たちを騙すのはいけないよ」


どうしたの(なじょした)?」


 首を傾げるハルコちゃん。このマフラーもハルコちゃん作なだけに気になるのだろう。


「あのマフラーはね。マスターが昨晩どれだけ頑張ったかを隠すための物なんだよ」


 ぶっ!

 なにハルコちゃんにふきこみやがりますか!


「その証拠に、ほら、コルノとレヴィア様もしているだろう?」


「ペアルックでねえのけ?」


 たしかにコルノとレヴィアもマフラーをしている。俺のほど長くはないけどね。



 ……ごめんなさい。

 ミーアの揶揄するとおり、あれはキスマークを隠蔽するため。

 コルノが俺につけたら、レヴィアが自分も所有者の証をつけるって、首だけじゃなくて肩や胸の辺りに内出血がたくさんできちゃった。

 俺も調子にのって二人の首筋に一つずつ、キスマークをつけちゃったんだけどさ。


 ダンジョンの治癒機能もあるし、頑丈でチートな俺たちだから何日も残るってことはないだろうけど、今日はマフラーを外せないのよ。



性戯マフラー


これぐらいならR15の範囲内だと思うのですが、マズいようでしたらすぐに修正します

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― 新着の感想 ―
正義マフラー? うーん、滝沢国電パンチ?
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