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68話 クロ(仮)

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「結婚報告のメールもいいけどさ、結婚式はどうしたい? 招待できそうな相手なんて、俺にはいないけどさ」


 ラット・キングとの戦いの出発前に気になっていることを聞いてみた。

 初夜は先に済ませてしまったとはいえ、花嫁っていうのは憧れるもんじゃないのか?

 俺もコルノとレヴィアのウェデングドレスを見たい。

 だがしかし、招待客のあてがない。前世の俺の家族を呼びたいけどそれは不可能だ。猫しかいない。同業者(ダンジョンマスター)の知り合いだって、アキラとエージンしかいないし。


「ボクも呼ぶ人はいないかな? ゴーレムスレの人とは仲良くなったと思うけど、直接会ったわけじゃないし」


 コルノはフィギュアから小人になってからダンジョンから出てないんで俺以上に呼ぶ相手がいない。

 この世界の父親(ポセイドン)はすでに死んでいるし。いや、生きていても「異世界のあんたの娘だから結婚式に出てくれ」なんて言えないだろう。


「結婚式なんて面倒なだけよ」


 レヴィアの場合はリヴァイアサンとして結婚式をしようとすると招待客の数が多すぎるらしい。長く生きている上に、水の支配者なのでお偉いさんの知り合いもいるとか。女神様(ヘスティア)も友人みたいだもんな。

 彼女だけならまだしも、他の神様や残りの七つの大罪とかなんかきたら結婚式どころじゃないだろう。妻の交友関係が怖い。


「わかった。ウェデングドレスの用意ができたら撮影だけでも済ませよう」


 DPで買おうとしたら花嫁衣裳も高いんだよね。俺のメイキング時に取って以来、全く使っていない裁縫スキルを鍛える時がきたのかもしれない。……ゴブリンと戦いながら雑巾でも縫ってレベル上げすればいいのかな?



 ◇ ◇ ◇



 以前に見つけたラット・キングのものと思わしき巣穴の付近に転移した。

 隠形スキルもしっかりと使っている。CP使用で強化したいけど、さすがにこのスキルは絶叫強化はできないので刀印を結んで行った。

 ……地味だ。いや、誰に見せるわけでもないというか、見られないようにするんだけどさ。


 妖精(アワ)の原種らしい謎草に隠れるようにしながら巣穴に近づく。広く刈り込まれている部分があって隠れづらい。

 誰だよまったく、こんなに広く刈り取ったのは!


 感知スキルで巣穴の入り口にネズミが少ないのを確認した。リニアとの戦いで数が減りすぎたのか、それともそれを補うための繁殖で必要な餌を取りに行ってここには少ないのか?

 ネズミは繁殖力が強い。成長も早いからそれこそネズミ算式に増えていく。邪神のダンジョン解放もマズイが、ネズミたちの餌による被害も怖い。


 まあいい、とにかくチャンスだ。

 見張りなのか入り口の外にいた二匹のネズミをアイスミサイルでしとめ、一気に近づいて勝負をしかける。


「湧き出よぉっ! 温っ泉んんんっ!」


『温泉作製スキルがLV4になりました』


 気合を入れて入り口に温泉を湧かす。温度は最高温度。湧出量も最大。ぐらぐらと煮え立つ温泉がものすごい勢いで巣穴へと流れていく。毎分100リットルぐらい……もっとあるかな? 湯気が立ち込めていてよく見えない。


 ラット・キングがこれで死んでくれれば楽なんだけど、それが失敗してもモンスターじゃないネズミはお陀仏だろう。感知スキルの反応がどんどん減っていく。


 ゴブリンを殺した時もそうだったが、命が次々と消えていくのにあまり葛藤はなかった。子育て中の母ネズミとその子供と考えると可哀想な気もしないでもないが、おっさんがのんびりと新婚生活を送るためと簡単に割り切れる。

 思うことといえば、これがうちのダンジョンだったら少しはDPが入っただろうに勿体ない、といった損得のみ。


 やはりダンジョンマスターになった時にそのあたりの感覚や感情を細工されたのかもしれない。人間を殺すことになってしまった時もこんな落ち着いていられるのだろうか?

 まあ、うちのダンジョンじゃ人間は入れないから関係ないかな。


 ◇


「……暇だ」


 ネズミが逃げてくるかと待ち構えていたが、温泉の勢いが強すぎてここからは出れないようだ。他の出入り口はクロが探してくれている。


 クロは新たに眷属となった温泉カラスだ。小人さん(レプラコーン)が昨夜のうちに里親募集のサイトで申し込んで、今朝うちにやってきていた。

 ペンギンでないのが残念だが温泉好きのカラスで、烏の行水どころか長湯を楽しむらしい。うちに里子に出されたのも温泉があるからが決め手になっている。

 その性質上、温泉カラスは温泉に敏感で、他の出入り口があっても温泉の臭い等で見つけることができるかもしれない。


 クロという名前はむこうでつけられたもの。黒いのとクロウからきているのだろう。こちらで名前を変えてもいいとのことだけど、どうするかな?

 見た目はちょっと大きい普通のカラスだ。あんな感じのカラスで……あれ、クロか。


「カァ」


 なにかを見つけたようだ。俺の前に着陸して報告なのか、一声鳴くクロ。


「出入り口を見つけたのか?」


 首を横に振る。違うのか。

 知能は高いようだけど、喋れないのは不便だな。コルノのゴーレム語みたいにおっさんがカラス語を使えればいいのに。


「カァァァ」


 俺に背をむけて姿勢を低くし、チラチラとこちらを振り返る温泉カラス。俺よりも大きく、コルノぐらいなら乗せて飛べるかもしれないけど。


「もしかして俺に乗れと?」


 クロがこくこく頷いた。なにかを見つけた場所へ運んでくれるのか。

 でもなあ、ここから逃げ出すやつを迎え撃とうとしてたんだけど……入り口を塞げばいいか。

 アースウォールで巣穴の入り口を完全に塞いだ。これでここからは逃げ出せないだろう。初めからこうしておけばよかった。


「それじゃ乗るけど、本当にいいのか?」


「カァ」


「そうか。つらかったらすぐに降りるぞ」


 返事もなくクロが飛び立った。

 おお、問題なく飛べてる。こいつもアタリの眷属なのかも。

 普通のダンジョンマスターじゃ愛玩用にしかならなくても、うちでは活躍してくれそうだ。


「あとでちゃんと温泉に入れてやるからな」



 ◇ ◇



 クロが案内してくれたのは黒ジソの群生地の近くだった。

 感知スキルには動物、虫やモンスターの反応はない。ほとんどがネズミに食われてしまったのだろうか。

 だけど、そこにはたしかにおかしな物があった。


「石像?」


 20センチぐらいの小さな女の子の石像が転がっていた。レヴィアたんよりもさらに小さい。赤いとんがり帽子をしていて顔はかなり可愛い。

 その造形は見事でまるで生きているかのよう。


 これってもしかして石化した妖精ではないだろうか。

 コカトリスやバジリスクでもいるのか?

 けど感知に反応はなかったはず。

 それに石になっているのは生身の部分だけで服や帽子は石化していない。

 ならばと鑑定してみた結果、やはりただの石像でないことがわかった。


[【ノーム】

 働き者の妖精

 長命種

 夜行性で日光に当たると石になってしまう

 昼間は地面の下にいる

 石化している             ]


 日光に当たると石化するってニャンシーも言ってた。過敏症よりも大変だ。とすると、この子は日光に当たってしまって石になっちゃったのか?


 付近を調べてみると他にも数体石化したノームが見つかった。怪我をしているような者もいたので、ネズミに襲われて逃げているうちに朝になって石になってしまったってとこだろう。


 どうしたもんかな。ノームはほしかったからダンジョンに持って帰るべきか? 石化を戻す方法ならあるし……。

 石ノームをまとめて、アイテムボックスに入れようとした時、急にウィンドウが開いた。眷属との連絡用のチャットウィンドウだ。


『ニャンシー>ニャンシーより緊急連絡

 フーマ>なにがあった?

 ニャンシー>ラット・キングがあらわれたにゃ!

 ニャンシー>今戦ってるにゃ!        』


 しまった!

 巣穴に数が少なかったのは総攻撃を仕掛けていたからか!

 ネズミたちがあれだけの数で負けてたから戦力を整えるまでしばらくは攻撃してこないんじゃないかって油断してた。


『ニャンシー>ピンチなのにゃ

 ニャンシー>ゴータローも大ケガしてるのにゃ!

 フーマ>すぐ行く!             』


 石ノームのことは持っていってから考えよう。



温泉作製LV4(up)

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