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67話 新たな? 猫

感想、評価、ブックマーク登録、メッセージ、誤字報告、ありがとうございます

 翌朝、嫁となったばかりのコルノとレヴィアは、俺が目覚めてもぐっすりと眠ったままだった。

 よほど疲れたのか……おっさん頑張りすぎちゃったからなあ。慣れてない二人にはきつかったか。俺も初心者ではあるのだけどさ。

 がっつくだけの前回とは違い、ちゃんと相手を気遣いながらだったから嫌われてはいないはずだ。


 今度こそ俺は“魔法使い”を廃業してやったぜ。

 ふふふ。生まれ変わった俺はいわば“おっさん2”。ラット・キングごとき屁でもないわ!

 これが童貞を捨てた時に感じるという万能感だろうか。……いい歳したおっさんが……いや、でもこの身体は転生したばっかでまだ若いから無理もないよな、うん。

 調子に乗って油断しないように意識だけはしておこう。


 昨日のお返しにと新妻の寝顔を眺めていたが、ムラムラしてきたので断念。寝かせたままセーフルームを出る。入り口は初期のようにパソコンデスクの下ではなく、コアルームの壁にしたので出入りは苦労しない。出入り口も以前のようなカーテンではなく扉になった。

 扉っていうか襖だけどさ。セーフルームが四畳半だからかね?


 コアルームには誰もいなかったが、PCは起動したままだった。つい今まで作業してくれていたのだろう。小人さん(レプラコーン)に感謝だ。

 緊急時にはレプラコーンに指示を出してもらう予定だったけど、それもなかったようだ。監視モニターのウィンドウを確認しても異常は見当たらない。


「まあ、眷属は増やさないといけないけどな」


 レプラコーンにどこまで任せられるかも不明だ。交代要員というか、俺が外出中や休憩中にダンジョンを任せることができる眷族を増やさないといけない。

 そうしないと、おちおち新婚性活もできん。


 やはりリニアとミーアをスカウトするしかないか?

 ガラテアが再び使えるようになるにはまだ三ヶ月以上のクールタイムが必要だもんなあ。

 ラット・キングを始末できたら、当初の予定通りニャンシーに避難民の妖精たちを連れてきてもらって、使えそうなのがいたら眷族に……妖精は性格的に難しいかな?

 ワーカホリックなノームなら真面目に働いてくれそうだから候補としておこう。


 まだ二人は起きないかな? 一っ風呂浴びて、朝食の準備しておくか。



 ◇



「おはよう」


「おはよ、う……」


 目覚めたコルノはセーフルームを出て俺の顔を見た瞬間、耳まで真っ赤になってしまった。初夜のことを思い出したの……いかん、俺もなんだか照れくさくなってしまう。コルノの顔がまともに見れない。


「レ、レヴィアはまだ寝てるのか?」


「う、うん」


「そ、そうか」


 レヴィアも疲れたのだろう。最中に何度か堪えきれずに大海魔龍小人ミニマムリヴァイアサニアンモードになるぐらいだったし。セーフルームで初夜して正解だったよ。でなければダンジョンレベルは10を超えていたかもしれない。


「いい天気だな」


「そうだね」


 かっ、会話が続かん。ダンジョン内じゃ天気なんてわからないってツッコミがほしかったのに……。

 コルノの希望だとベッドで寄りそってモーニングコーヒーとかなんだろうな。おっさんには無理みたいだけどね。第一、ベッドじゃなくて畳に敷いた布団だから様にならないしな!


 ともかく、コーヒーだ。コーヒーを淹れよう。

 前世アイテムのインスタントコーヒーはまだあるよな。ドリップコーヒーパックのもあるけど、小人(こびと)となった今だと使いづらくてインスタントの方が楽だ。複製はまだだがたいして減っていない。

 コーヒー複製の素材に向いているのはなんだろう。タンポポコーヒーってあるから、タンポポ探してみるかな。


「はい、コーヒー」


「あ、ありがと、うぁっ!」


 マグカップを渡す時に指先が触れ合って、二人で過剰反応してしまった。どこの思春期だ。

 笑って誤魔化すしかできない。


「は、はははは」


「え、えへへへ」


 ふう。コーヒーでも飲んで落ち着こう。


「アチっ!」


「だ、だいじょうぶ?」


「高温耐性スキルがレベル1程度じゃ俺の猫舌は治らないのか?」


 あ、でも火傷した感じはないから耐性スキルの効果はあるのかな。

 自分の持ってたマグカップをテーブルに置いて、俺のマグカップを両手で持つコルノ。ふー、ふー、っと息を吹きかけて冷ましてくれている。


「はい、フーマ」


「ありがとう」


 照れるな。新婚さんというか、子ども扱いされている気がしないでもないけどさ。

 レヴィアが起きてくるまで、二人でゆっくりとコーヒーを飲んだ。


 起きてきたレヴィアはやはり赤面。コルノを連れて風呂へと行ってしまった。



 ◇ □ ◇



 会話の少ない朝食を済ませる。チラチラとお互いの顔を伺うが話題がない。思い切って愛を囁く方がいいのだろうか?


「コルノ」


「う、うん。今日のごはんもおいしいよっ!」


 失敗した。コルノには今は無理だ。彼女はまだテンパっている。


「レヴィア、あの」


「おかわりね。はい」


 トーストが追加されてしまった。ツーカーにはまだ遠そうである。

 食事中に愛を囁くのは無理っぽいな。

 そろそろお米が食べたいと思いつつトーストにかじりつくことにした。


 食後、本日の予定を相談。


「新婚旅行には行けそうにないけど、その分ここでのんびり新婚気分を味わうために邪魔なラット・キングを排除しておきたい」


「新婚旅行かあ。ダンプゴーレムに空き缶たくさんつけて、雰囲気だけでも出しておく?」


「空き缶がそんなにないから無理だ。ダンジョン内だとやかまし過ぎそうだし」


「それもそうだね」


 新婚さんの車に空き缶たくさんつけて音を出して厄除けするなんて、今の若い連中は知らないだろうに。コルノが知ってるのはやっぱり俺からの転写基礎知識なのかな?


「ラット・キングのものと思わしきネズミの巣穴を攻撃してくる。留守を頼む」


「一人でだいじょうぶ?」


「ダンジョンコアが無事なら俺は復活できるから平気だよ。それにネズミなんかには負けないって」


 まだ無料期間だしさ。逆にダンジョンコアが破壊されたらそれでお終いなので、そっちの防衛の方が重要だ。


「その前に婚姻届を提出しなさい」


「ああ、そうだった。昨日は時間が遅かったから記入だけだったんだっけ」


 メールに添付ってどうやるのかな?

 ヘスティアに貰ったメールソフトもインストールしないとな。

 あっ、海賊版っぽいってことは前世のメールソフトのペットが使えるか試さないといけないな。


 4層の空き部屋に移動してアイテムボックスから前世のノートパソコンを出す。

 でかいな。6倍サイズってこんなに大きいのか。昔、巨大なコントローラーで操作するゲーム漫画があったのを思い出したよ。


「大きいね」


「普通はこれぐらいよ。ここにきて小人サイズの方を初めて見たわ」


 前世ノートパソコンを立ち上げて、無線LANを設定。むう、ちゃんと認識するな。電波じゃなくて魔法を使っているもんだと思ったけど、違うのか?

 まあいいや。ともかくこれでデータのやりとりはできるようになった。小人サイズのノートパソコンも出して、ネットワークの設定をして前世ノーパからデータをコピーしておく。メールソフトのデータは前世メモリーカードの方にあった。小人用のパソコンでは使えないのでこっちもコピーして準備完了。


 前世ノーパをしまって、小人用ノートパソコンにメールソフトをインストールする。IDの入力がないのは楽でいいな。インストールが終了したら、起動させて〔バックアップのリストア〕を選んでコピーしたデータを指定すると特に問題もなくデータが引き継げてしまった。

 マジで海賊版?


 起動したメールソフトを確認していく。

 あ、前世の家族や知り合いからのメールも残っている。やばい、見たら泣きそう……。

 前世のメールはすぐに見ないようにフォルダ分けしておいて、っと、設定も変えないとメールできないな。


「あれ? 名前が〔こーが〕ってなってるよ」


「ああ、それが前世の俺の名前」


 万川(まんかわ)光河(こうが)。今のフーマって前世でよくゲームに使っていた名前は、本名の読みが忍者の流派っぽいからその流れでつけた名前だったりする。


 メール設定は名前をフーマに変えたぐらいで、ほとんどすることがなかった。設定する項目自体がないのだ。ダンジョンネットワークの回線の認識ってどうなっているんだろう?

 ちゃんと設定できているのか自分にメールを送ってみて確認。文章は適当に書いて、〔ペットにわたす〕を選んで送信する。


「ちゃんと送信できたか」


 これで〔メールチェック〕をクリックすれば俺のとこにメールが届くはずだ。そう思いながらクリックすると、俺の目の前に一匹の猫が現れた。

 アシュラやニャンシーとは違う、小人サイズの小さな猫だ。口に封筒をくわえている。


「わあ、かわいい!」


「これがあなたのペット?」


 猫から封筒を受け取った。中の便箋にはさっきの文章が書かれている。封筒と便箋は内容を確認するとすぐに消えた。

 猫はちょこんと空中に座っている。真っ黒い猫だ。メールソフトのペットの猫はツートンカラーだったはずだけど。


「お前、ロディなのか?」


 こくんと頷いたあと、どこからともなく封筒が現れてそれを俺に渡す。

 中の便箋に書かれていたのは。


〔はい。無事に付喪神になることができました〕


「前世と柄が違うんだけど?」


 俺の手の封筒と便箋が消えて再びの手紙。


〔ご主人がつけてくださった名前に因んだ姿をとっております〕


 ああ、ロディの名前は某黒豹型不定形生物をもじってつけたんだっけ。言われてみれば似ている?


「そ、それじゃ、婚姻届を運営(ヘスティア)に運んでくれるか?」


〔婚姻届って胸キュン?〕


「なんか混じってるっ?」


 そっちはスシネタのような名前の猫の台詞だろ!


〔冗談です〕


 そう書かれた手紙を残して、婚姻届をレヴィアから受け取ったロディは消えた。あいつ、あんな性格だったのか。

 消えた手紙はメールソフトのメールフォルダにあったので、後で確認したくなっても問題はないようだ。


「ロディ、かわいいね」


「私もあれでメールを送りたいわ。乙姫への連絡もお願いね」


 私たち結婚しました、のメールか。もしかしてロディなら前世の世界に送れたりしないだろうか?



括弧の使い分け


『ウィンドウ』

〔PCその他画面〕

[鑑定内容]

【種族名】

〈スキル〉


に変更します。

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