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64話 準備不足

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 通路に散らばったネズミの肉片をアイテムボックスに回収する。

 俺のアイスボールの爆発で細切(こまぎ)れになりすぎて食いにくくなったとミーアから苦情があったけど、放置して腐っても困るだろう。

 腐肉食い(スカベンジャー)が集まっても大変だしな。ここに出るとしたらスライムか蟻あたりか? Gだったら嫌だな。


 うちのダンジョンでは今のとこは俺の複製スキルで無駄なく使ってるけど、そのうち処理用のスライムがいるかもしれない。

 それともフィールド層を手に入れて使わないやつは肥料の材料にするか?

 ……死体の形に草が生えそうで怖い。


「全部なくなるとは凄いんだね」


「今まではどうしてたんだ?」


「ネズミたちが餌にしてるんだね」


 共食いもするとはね。

 でっかい芋虫も捕まえていたし、増えるために餌を集めているのだとしたら、早めになんとかしないとダンジョンの外で草を採るのもできなくなるかもしれない。


「食い残しと糞の掃除が面倒なんだね」


「掃除してくれるスライムとかいないのか?」


 死体はまだしも糞はいらん。いくら複製スキルで変換できるとしても、それを素材にするのはちょっと避けたい。せいぜいがアシュラたちの猫砂(トイレ)ぐらいにしてほしい。

 うちのダンジョンに侵入した連中の排泄物はゴーレムたちがちゃんと始末してくれてるんだろうか?

 してなかったら、処理用の穴を掘って土かなにかに複製するのが無難だろうな。


「この辺りはわずかながらダンジョンからの瘴気が漏れているからスライムなんていたらすぐに進化するんだね。瘴気による進化をしたモンスターは危険なんだね」


「スライムは弱いけどすぐに進化しちゃうんだっけ」


「進化の段階が低い種族は少しの瘴気でも進化しやすいんだね。……リニアがあんな姿になったのも瘴気の影響があるかもしれないんだね」


「怪我のせいじゃないのか?」


 リニアはディーナ・シーの頃だったら美少女騎士だったんだろうな。

 あの怪我が治ればどんな顔になるのかは気になる。


「わからないんだね。この島でも他のスプリガンは聞いたことがないんだね。スプリガンという種族は醜いけれど妖精の守護者だと伝わっているだけなんだね」


「守護者か。進化の時にディーナ・シーの美しさよりもスプリガンの強さを求めたっぽいな」


「リニアならそれもありえるんだね」


 俺としてはディーナ・シーの上位種なリニアも見たかったな。そっちを選んでたら、ネズミたちに負けて会えなかった可能性も高そうだけどさ。


「ミーアはいいのか? ここにいたらミーアも瘴気の影響を受けるだろう?」


「たぶんもうすぐ進化できるんだね。それでしばらくは瘴気での進化は避けられるはずなんだね」


「レベルアップによる進化の方か。危険を冒してまでここにいたいんだ?」


常若の国(ティル・ナ・ノーグ)を見てみたいんだね。それに街にいても、軍のやつらがうるさいんだね」


 ミーアはケット・シー最強らしいから軍に誘われているんだっけ。さっきの雷系の攻撃を見たらそれも納得だ。飛行できるフェアリーでもリニアの存在は脅威だろう。


「ノャンスィの方が心配なんだね」


「そっちは大丈夫だ。ダンジョンマスターやその眷属は瘴気を吸収はするけど、溜め込むことはない」


 DPに変換されるからな。

 眷属にしてなければ瘴気で進化できるから、弱いモンスターを購入してダンジョン外で瘴気進化させるというのも有りか?

 でもグロいのはちょっとなあ。

 それにこの島は瘴気が薄いからそれもしにくいのか。


「ふむ。瘴気を吸収するダンジョンも興味深いんだね」


「無理強いはしないけど眷属になってくれると嬉しい」


 攻撃力もそうだけど、その知識こそアドバイザーとしてうちにほしい人材……猫材だ。


「魅力的なお誘いだが……そうだね。リニアも一緒なら考えるんだね」


「ずいぶん仲良しなんだな」


「ふふん。彼女も眷属になっていれば、常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の調査も邪魔されないんですむんだね」


「邪魔されてるのね」


 常若の国(ティル・ナ・ノーグ)って湖の底だろ。ミーアは泳げるのかな?

 光ってるのが結界とかだったら泳げても無意味かもしれないけどさ。


「だが、いいのかい? ダンジョンに敵対することになっても。今だってラット・キングの配下のネズミたちを始末してしまったんだね」


「そこまでは知らないのか。瘴気を吸収するダンジョンと瘴気を放出するダンジョン。どちらもダンジョンではあるけど敵対関係にある。むしろ、俺は封印されたダンジョンを攻略しなけりゃいけない立場なんだよ」


 面倒だから封印されたままにしときたいけどヘスティアはこのことを知っているようだし、このままってワケにはいかないんだろう。

 メールで相談しろってこと?


「なるほど。そんな文献もあったけどそれが正しかったんだね」


「それにネズミたちが増えすぎて草原がメチャクチャになると困る」


 もうすでに巨大キリギリスとか見なくなってるしさ。このままだと島の生態系、破壊されちゃうんじゃないか?



 ◇◇◇



 テントに戻ってもリニアはまだ眠っているようなので、俺もいったんダンジョンに帰ることにする。

 ネズミたちの襲撃が気になるので、連絡用としてニャンシーは置いていく。


「あとでまたくる。連絡はチャットで。使い方はわかるよな?」


「まかせるにゃ」


 どんと胸を叩くニャンシー。ミーアと違い人型ではないので巨乳かどうかもわからない。

 ……ミーアの小人化のレベルが低くて中途半端な変化になっても、複乳にはなってないことに気づいてちょっとほっとした。


 ミーアが進化したらもっとちゃんとした小人になるんだろうか。猫耳がなくなったら残念だな。ケット・シーが進化してなんになるのかは興味があるけどさ。化け猫や猫又だろうか。


「リニアが起きてきたらさっきのことを相談してくれ」


「ラット・キングとの戦いに協力してくれるんだね?」


「ああ。そのためにできればこの周辺をダンジョン化したい」


 うちのダンジョンはすぐ隣なんだけど、それはまだ秘密。ここをダンジョンの領域にできればリニアやミーアからだけでなく、邪神のダンジョンから漏れているという瘴気も吸収できる。

 邪神のダンジョンになにか動きがあってもダンジョンの監視機能でわかるようになるし。


「まあ、ダンジョンなんて信用できないかもしれないけど検討だけでもしてみてくれ」


「そうだね。さっきの戦いからしても、フーマと戦うことになるのは避けたいんだね」


「それじゃ、またあとで」


 駄目にしちゃったネズミの代わりにビッグラットの死体をアイテムボックスから出してミーアに渡し、俺は転移した。


 ◇


「ただいま」


「おかえりなさい」


「おかえりー。あれ、ニャンシーは?」


 コアルームに戻った俺をレヴィアとコルノが出迎える。


「スプリガンのとこにニャンシーの姉もいたから置いてきた。今頃はゆっくり話しているんじゃないかな」


「ニャンシーのお姉ちゃん生きてたんだ。よかったね。どんな子だった? ニャンシーに似てた?」


「それがさ、レヴィアと同じで小人化のスキルを覚えて小人になってたんだよ。まだレベルは低いみたいだけどさ」


「小人化を覚えるとは生意……なかなか見所がありそうね」


 レヴィアたん今、生意気って言おうとしたの?

 小人化ってそんなに難しいスキルなのかな。


「スプリガンはディーナ・シーの騎士だった。他のディーナ・シーたちは女王と一緒にダンジョンを封印しているらしい」


「ダンジョンを封印なんてできるの?」


「なんかしてるっぽい。ディーナ・シーの女王ディアナはアルテミスのようだから、それぐらいはできてるのかも」


「アルテミス? あの女が生きていると言うの?」


 あれ? この反応ってアルテミスとも因縁があるの?

 海のリヴァイアサンと森のアルテミスだと接点はなさそうなんだけど。

 アルテミスは処女神だし、嫉妬スイッチが入る理由がわからん。


「……同じ海に住まう者同士だからと、配下が変に気を利かせてヨルムンガンドに私との結婚を持ちかけたことがあったわ」


「ヨルムンガンドってやたらにでっかい蛇の?」


「ええ。あれなら私と釣り合うとでもその者は思ったのでしょう。けれど、ある女に懸想しているからと断られたらしいわ。その相手が兄であるフェンリルに重傷を負わせたアルテミスよ」


 ヨルムンガンドとフェンリルもいるのかよ、この世界。

 エージンがウルフサルクだから北欧神話系がいてもおかしくはないけどさあ。

 んで、フェンリルに重傷を負わせた?

 そんな物騒なのがお隣さんって怖すぎる。ミーアの勧誘はああ言ったけど、リニアの眷属化はしない方がいいのかも。


「当時はすでに神と呼ばれなくなり、行方不明だったアルテミス。それも元処女神でヨルムンガンドが望みを叶える可能性はゼロだったわ。なのにそれ以下だと言われたのよ、この私が!」


「それってただ単にそのまま断ると角が立つから、好きな人がいるからっていいわけしたんじゃ?」


 じゃないとしつこく付き纏われそうって思ったのかもしれない。


「……それはそれで腹が立つわね」


「そうだね。レヴィアちゃん可愛いのにね」


 レヴィアはたしかに可愛いけど、リヴァイアサンは怖いでしょ。ヨルムンガンドもびびったんじゃないか?


「ヨルムンガンドがもし受けたとしても、その組み合わせだととんでもない子供が生まれそうだから、きっと神が邪魔したよ」


「諸悪の根源ね」


「それに、もし結婚してたら俺とコルノはレヴィアに会えなかった。それは悲しいかな」


「フーマ……」


 最初はレヴィアと結婚すると厄介事に巻き込まれそうって思ったけど、そうでなくてもダンジョン(うち)の隣は邪神のダンジョンで、さらにそれをアルテミスが封印しているという、とんでもない状態。

 もう受け入れちゃってもいいよね。

 粘り続けて逃げれるよりも、レヴィアがらみの苦労だったら我慢できる気がする。それだったら、さっさと結婚して死亡フラグを折っといた方がいい。


 そう、おっさんは二人と共に生き、二人と共に死す。今さら何のためらいがあろう!



 無事に戻ってこれたらコルノとレヴィアにプロポーズしようって決めてたけど、どう切り出せばいいんだろうか?

 あ、指輪も用意してないや……。



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