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63話 憧れの妖精

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「リニアをしないのかにゃ? 今がチャンスにゃ」


 ニャンシーにそんなことを聞かれた。


「なんでさ? 寝てる子を無理矢理なんて、そんな事をするわけないだろ?」


「ニャンシーの時と扱いが違うにゃ!」


「あの時だって、ちゃんと聞いたじゃないか。合意の上だっただろ」


「騙されたのにゃ」


 人聞きの悪い。そんなことを言ったらニャンシーの姉がどんな反応をするか……あれ?

 なんか急に目をそらされたんだけど。


「どうした?」


「ふ、2人はそ、そんな関係なのか?」


 動揺してるのか、「だね」が語尾についていないミーア。

 よく見ると真っ赤になっている。これって焚き火のせいじゃないのかな。


「帰さないって言われて選択肢はなかったのにゃ」


「やさしくしてあげたじゃないか」


「強引だったのにゃ」


「そ、そのわりには満更でもなさそうじゃないか。その時のことを詳しく話しなさい!」


 フンス、と鼻息荒いミーアがずいっとニャンシーに顔を寄せる。

 日本語も知ってたし、ダンジョンマスターとの眷属化の儀式にも興味があるのか?


「それならミーアもするかにゃ?」


「わ、私が?」


「ミーアもいてくれると助かるのにゃ。でもアシュラ様は渡さないのにゃ」


「さらに別の男が出てくるなんて……ちょっと見ない間に妹がこんなにふしだらに……」


 ちょっと待て。なんか誤解しているっぽい。ニャンシーがふしだらなのは否定しないけどさ。


「ミーア、もしかして勘違いしてないか? ニャンシーが言ってるのは眷属化のことなんだが」


「眷属、化? ……え?」


「やっぱりか」


 思わずため息が出てしまう。

 おっさんはケモナーじゃなくてモフラーなだけだから。猫を愛でることはあっても、そういう対象にはしません!


「紛らわしい言い方をしないでほしいんだね。焦ってしまったんだね」


「勝手に勘違いしたのにゃ。アシュラ様ならともかく、マスターとそんなことになるわけないのにゃ」


「そうかい? 小人化した目で見れば悪くなさそうなんだね」


 フォローされてしまった。やれやれ、ニャンシーとミーアをチェンジしてほしい気分だよ。


「なら本当にマスターの眷属になるにゃ」


「ダンジョンマスターの眷属かい。興味はあるんだね。でも、今は常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の方が気になるんだね」


 ちらりとテントを見るミーア。ティル・ナ・ノーグだけじゃなくて、リニアのことも気になっているんだろう。口ではあれだが友達思いのようだ。


「で、リニアを眷属にしないのかにゃ?」


 妹の方はもうちょっと空気を読んでほしい。またため息が出ちゃうよ。


 リニアが寝ている間に眷属化をすることはできるかもしれない。

 だけど眷属化した時には身体に蓄積された瘴気が変換されてDPが発生する。何百年も生きていて、封印されているとはいえ瘴気を放出する邪神のダンジョンのそばで生活しているリニアはかなりの瘴気を持っているかもしれない。ダンジョンレベルが上がりすぎてしまう可能性があるので危険だ。


 それに、やはり合意してもらってからじゃないと気が引ける。醜い姿になっても、あんな傷だらけになっても戦い続けた女の子だ。その思いを踏みにじるわけにはいかない。

 無理矢理契約したら恨まれるどころじゃすまないでしょ。そんなの怖すぎるっての。


「眷属にする時はちゃんと相談するさ。今のまま眷属にしたって、ダンジョンよりもディアナの方を優先されるだろ」


「そんなもんかにゃ?」


「はははは。うちの妹がすまないんだね。世話をかけるけどよろしく頼むんだね」


 本当にニャンシーの姉か、これ?

 旅に出て戻ってこなかったって聞いていたから、もっとあれな性格かと思ったけど、しっかりしてるじゃないか。

 戦闘力も高いようだし、マジで眷属になってくれないかな。



  ◇◇◇



 しばらくティル・ナ・ノーグの話をミーアから聞く。ダンジョンの方も気になるけど、リニアが寝ている間くらいは戻らないつもりだ。

 ネズミがいつ攻めてくるかわからないからな。


「この湖の底にティル・ナ・ノーグはあるんだね」


「ミーアはそこまで行ったのか?」


「まだなんだね。ラット・キングが片付いたら見に行きたいんだね」


 水中か。レヴィアなら余裕で調べられるだろうな。コルノも水中でのスキル持ってるから問題はあるまい。

 俺はエアーコートを使えばなんとかなるかな?

 でもディアナってアルテミスだと考えるとちょっと怖いんだよね。ギリシャ神話だと処女神だけあって男には容赦ないからさ。

 ディーナ・シーになってこの島にいた理由はわからないけど、12柱はダンジョンマスターたちと戦っていたから、用心した方がいいだろう。


「ディアナってどんな王だったんだ?」


「言い伝えによれば、美しくて強い妖精だったんだね。妖精騎士団を率いて、この妖精島の治安を守っていたんだね。詳しいことはリニアに聞けと言いたいところなんだけど、とても長い話を聞かされるんだね」


 ヘスティアの話だと復活しそうなんだよな。

 リニアを無理矢理眷属にしてたら怒りそうだ。大事にしていた子みたいだし。

 うん。リニアとは仲良くなっておこう。


「自分たちを犠牲にして妖精たちのためにダンジョンを封印したってことは、妖精たちのことが好きだったのか」


「妖精たちもディーナ・シーに憧れていたみたいなんだね」


「将来はディーナ・シーになるって言う幼い妖精は今でも多いのにゃ」


 憧れの職業みたいなもんなのか。妖精なら進化でディーナ・シーになれるのかな?


「……きたな」


 感知(レーダー)に感あり。

 この感じだとネズミだけだ。ビッグラットの大きさじゃあの入り口や通路に侵入できないか。

 だけど数だけは多いな。百前後ってとこだろう。


「ネズミがくるのはさっきの通路だけか?」


「今のとこはそうなんだね」


「それならちょっと始末してくる。ニャンシーはここで待機。なにかあったらリニアを起こせ」


「わかったにゃ」


 ニャンシーの戦闘力も確認したいとこだけど、ネズミにやられて重傷になってたぐらいだから今回はいい。

 ネズミの集団が通路にいる内に倒してしまおう。広い場所で展開されると面倒だ。


「私も行くんだね」


「そうか。転移するから抵抗するなよ」


 俺が差し出した手を握ったミーアとともに地下通路に転移する。

 彼女の手には肉球はなかった。残念だ。


 ◇


「これが転移かい。すごいんだね」


「ミーアの雷は雲がなくても使えるのか?」


「威力は弱くなるんだね。でもここで使うには十分なんだね」


 スプリガンが呼ぶ嵐で発生する雲のおかげで、雷系の魔法は威力が高まるのであっているようだ。


「通路濡らしておくか?」


「できるのかい?」


「湧き出よ、温泉」


 適当な場所を選んで、温泉作製を行う。通路に溢れ出す温泉。湯気で視界を塞がないように温度は低い。

 俺たちも濡れないようにそこから少し離れる。


「温泉? 面白いね。フーマはいったいなんの妖精なんだね?」


「スクナっていう種族だけど知ってるか?」


「初めて聞くんだね」


 学者さんでも知らないマイナー種族なのか。

 まあ、わからなくても不自由はない。


「そろそろくるぞ」


「スパークボール」


 ネズミたちが水溜りができた通路に突っ込んだのを確認したミーアが電光を放つ球体を発射する。電光球は水溜りに命中してバチッと弾けた。


「うおっまぶしっ」


 いや、光も音もさっきの雷の方が激しかったけどね。

 範囲内のネズミはほとんど感電したが、さすがに全滅させることはできなかったようで、後続が動けないネズミたちを踏みつけてやってくる。


「アイスボールズ」


 今度は俺の攻撃だ。気合(CP)は篭めてないので大きくなってはいないが、ネズミ相手には十分な大きさの氷の(ボール)を十個ほど作って発射。

 ネズミに命中し爆発する氷球。バキッビキッと全ての氷球が爆発した後には生きているネズミはいなかった。


「やりすぎなんだね。これじゃ食べにくいんだね」


「すまん。ゴブリン相手に戦ってるつもりでやってしまった」


 ネズミ食うのか。

 ……小人化してるけど猫だったっけ。

 まさかリニアもネズミが普段の食事なの?



 起きたらなにか美味いものを食わせてあげようと決める俺だった。



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