55話 瘴気進化
感想、評価、ブックマーク登録、メッセージ、誤字報告、ありがとうございます
3層ボス部屋に行ってみたら、アシュラとニャンシーは気持ちよさそうに寝ていた。
昨日の宴会の後片付けも済んでいる。どうやらコルノとレヴィアがやってくれたらしい。よくできた娘さんたちである。
昨日気になっていたにゃんこたちのステータス確認。
うん。どうやら状態異常にはなってないようだ。酒も料理も問題なかったらしい。
ニャンシーの後肢も順調に回復中みたい。このペースならあと2、3日で治るんじゃないかな。治ったらノームを連れてきてもらおう。
それとステータスを見てわかったことがある。ニャンシー、風魔法持っていたのか。鍛えれば化けるかもしれん。
いや、猫だけに種族進化して化け猫になるって意味じゃなくてさ。どうせなるなら猫耳美少女に……なってもアシュラが困るか。
もふりたかったが完治前に起こすのも可哀想なので諦めた。トイレの猫砂を複製で新品にし、エサの皿にプレーリーウルフの死体を置いてボス部屋を出る。
しっかり者のアシュラのことだから、なにかあったらちゃんと起きてくれるはずだ。
4層ボス部屋でゴーレムを量産。コルノも順調にゴーレムスキルとMP倍増スキルが上がってきているので、造れるゴーレムの数も増えている。
「高い所からの着地ができるように改良したいよ」
「アマゾン川の地下基地襲撃するんじゃないんだから、ゴーレムをいくつも落とすわけにはいかないでしょ。それはまた今度。サスペンションつけてもあの巨大空洞の高さはちょっときついから、空挺部隊みたいにパラシュートとか考えなきゃいけない」
パラシュート広げたゴーレムたちが空から降ってくる。……なんかいいな。
まあ、俺が転移で運ぶのが確実なんだよね。
「投石機でゴーレムを飛ばしたかったよー」
「投石機だから間違っちゃいないだろうけどさ。城攻めするわけじゃ……常若の国になら城ぐらいあるのか?」
「どうだろ? 飛んできた大きな石がゴーレムってのはカッコいいでしょ」
さすが元魔王軍四天王。考えることが時々物騒だ。
そのうちカタパルトゴーレムとか造りそう。
話しながらも俺がゴーレム素体を複製、コルノがゴーレム化という作業を行う。
「今回はこれぐらい?」
「そうだな。一気に新人が増えてもゴータローが大変だろう。MPをあげる都合もあるから俺たちだって面倒が増える」
完成した量産型ゴーレムたちに稼動用のMPを譲渡した。
コルノも順調にゴーレムスキルとMP倍増スキルがレベルアップしているので、量産のペースも上がっている。
『魔力操作スキルがLV4になりました』
『MP倍増スキルがLV4になりました』
『MP再生スキルがLV3になりました』
何十ものゴーレム素体の複製とMP譲渡するために4000ほど一気に消費したら俺の関連スキルもレベルアップした。これで譲渡時のMPのロスももう少し減るだろう。
CPも使うようになったんだからCP関連スキルもこれぐらい上がってくれると助かるんだけどな。
コルノに魔力譲渡して新人ゴーレムたちをゴータローの元に運ぶ。
うわ、また侵入者の死体が増えてる。
しかもちっちゃいモンスターのも混じってる。
警報はウィンドウだけじゃなくて音が出るようにしないと寝てる時は気づかないよなあ。設定できるようなら警報音も出るようにしよう。
……レベルが足りない。
警報に音をつけるにはもっとダンジョンレベルを上げなければいけないようだ。
ダンジョンマスターは睡眠が不可欠ではないからって、低レベルダンマスは寝るなってこと? 寝具も高級品扱いだし……。
なんというブラックな職場だ。
昼まで寝てられる環境を早く作りたい。
警報音が駄目なら非常時に俺を起こしてくれる人がいればいい。やはりメイドさんだろうか。有能な執事さんも捨てがたいが、残念ながら執事キャラのフィギュアはない。執事ができそうな妖精っていないかな?
俺が考え事をしていると、ゴータローが新人ゴーレムたちとともにランニングを始めている。あいつ、こけやすいのに一緒に走るんだよな。
上半身が大きく、足が短いパワータイプとしてコルノがイメージしてたみたいだから走るのはあまり得意じゃ……あれ?
全然転ばない。よく見ると少しスリムになってきてる?
ゴータローのステータスを確認してみたらレベルが2つも上がっていた。
種族ランクが低いからレベルアップしやすいんだったな、あいつは。
動きが良くなっているのもその影響か?
「コルノがゴータローの改良する前に、進化しちゃうんじゃないか?」
「それはそれで楽しみかなー? 改良は進化した後からでもできるし」
進化か。ゴーレムが進化するって、どんな感じなんだろうね。
他のモンスターみたいに瘴気を吸収させてれば戦闘なしでも進化できそうな気もするけど、ダンジョン内にいると、ダンジョンの方が瘴気を吸収しちゃうからそれができないんだよな。
そもそもダンジョンマスターやその眷属は瘴気を吸収してもDPに変換しちゃうから進化には使えないしさ。
「進化ね。したことはないけれど、どんな感じなのかしら?」
リヴァイアサンは1種族1人しかいない上位のランクみたいで進化はできないし、進化で辿り着くこともできない種族だ。
だから瘴気をかなり溜め込んでいるのに変化はないらしい。
「知り合いに進化したやつはいないのか?」
「いるわよ。瘴気が溜まってしまって、したくもない進化をしてしまった者も多いわ」
「したくない進化?」
「瘴気による進化は、戦闘等の経験による進化と違って進化先も選べず、一定量が身体に溜まると勝手に進化してしまうのよ。拒絶することはできないわ」
それは困るな。進化先は選びたいし、自分で選ばせてやりたい。うちのダンジョンは大型化する進化なんてされたら役立たずになってしまう。
「そして、瘴気による進化先はなんて言ったらいいのかしら……そうね、グロテスクなものが多いの。まあ、好みにもよるのだけど、それを嫌う者も多いのよ。人魚たちだって瘴気での進化が嫌で、乙姫の“竜宮城”で働いて瘴気を吸収させて進化しないようにしているわ」
「人魚の働くダンジョンか」
やっぱり竜宮城なんだな、乙姫のダンジョン。海底にあるんだろうか。
人魚が嫌がるグロテスクな進化先って妖怪っぽい人魚になっちゃうのかな。それともインスマス面になっちゃうとか?
むこうの方から瘴気を落としに来てくれて、しかも働いてくれるなんて、乙姫ってダンマスも上手いこと考えたもんだね。海底なら人間もそうはこれないだろうし、瘴気吸収のためにも人魚たちに襲われることもない。俺の発想の上をいかれてるよ。
「瘴気ではない、レベルやその他の条件を満たした進化なら進化先を選べるし、進化“しない”ことも選択できる」
「なるほど。神様が瘴気を集めさせるのもその辺が原因なのか?」
「さあ? 神は」
突如、ダンジョンが揺れた。そこそこの揺れだ。震度2くらい?
前世なら珍しくもないが、ダンジョンマスターに生まれ変わってから初めての揺れ。
咄嗟にコルノとレヴィアを抱きよせてコアルームに転移した。
巣穴に偽装して土壁な1層よりも、壁がしっかりしている下の層のが安全なはずだ。
「地震か?」
「いえ、これは外が原因のようね」
「外? ちょっと見てくる」
「待ちなさい」
レヴィアにぐいっと引き寄せられて、唇を奪われた。
くっ、俺の隙をつくのが上手くなってる。逃げ出せない。
「いってらっしゃいのキスよ」
唇を離して頬を染め、そう告げるレヴィアたん。
こんなタイミングでズキュウウウンしてきたのは、いってらっしゃいだけではなかった。MPを使いすぎた俺を心配したのだろう、MP譲渡してくれたのだ。
「ありがとうレヴィア」
「やっと私を妻と認める気になったのかしら?」
「そうじゃなくて」
ずん。
また揺れた。
監視画像のウィンドウでダンジョンを確認するが、どこも崩れてはいないようだ。
ただ、視界に微妙な表情をしているコルノがうつったので、焦った俺は彼女の頬にそっと口付ける。
レヴィアだけとキスして出かけるわけにはいかないでしょ。
本当は唇にしたいけど、拒否されたら俺がショックを受けるのと、拒否されなくてキスしちゃったらそのまま我慢できなくなりそうなので、ほっぺたにした。
「いってきます」
「い、いってらっしゃい……」
キスした頬に手を当てて真っ赤な顔で見送ってくれたコルノ、可愛かったなあ。
今度はちゃんとしたキスをしたい。よく考えたら奪われてばかりで、俺からキスしたのってあの時だけかも……。
◇◇
ダンジョンの入り口付近に転移した俺は信じたくない光景に出くわした。
少し離れた場所に巨人がいたのだ。
「あれって、地下にいたやつか? ……あんな巨大なやつが出入りできるような穴があるのか?」
ダンジョンの付近の確認はまだ全然進んでないのが悔やまれる。
下にいたのと同じ巨人かどうかを確認するためによく観察しないと。
薄暗かった巨大空間より、地上の方がよく見える。
身長はやはり10メートル級。左手が鉤爪で右足が義足。っつうか棒。
まるで海賊のようだが顔は……頭のほとんどに包帯を巻いていてよくわからない。包帯の隙間から覗く目は右目のみ。片目なのかもしれない。
なにかと戦っているようだけど、その振動でダンジョンが揺れているのか。
あっ、棒の方の足で蹴り上げたのは……巨大ネズミ?
1メートルは軽く超えてそうな蹴り飛ばされたネズミの首を右手に持ったナイフで切り裂く巨人。その足にネズミたちが集っている。
どうやら海賊巨人はネズミたちと戦闘中のようだった。
援護した方がいいのかな?
魔力操作LV4(up)
MP倍増LV4(up)
MP再生LV3(up)




