54話 電話
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昨日の残りと新たにレヴィアが作ってくれた味噌汁で朝食にする。
味噌はレヴィアたんの持ち込みだ。乙姫のとこで作っているらしい。
どうやらこの世界には大根はないが、大豆はあるようだな。
「シジミの味噌汁とか、酒飲んだ翌朝には嬉しすぎる」
いい出汁が出ていてとても美味い。二日酔い自体は魔法で治療したけど、そんなの関係なくしみる。めちゃくちゃ美味い。
さらにシジミ。やはりレヴィアの持ち込みで配下の精霊が寄越してくれたらしい。小人な俺たちからすれば大きく、人間だったらハマグリぐらいのサイズ?
シジミの味噌汁って貝が小さくて全部食べるのが大変なんだよね。俺は食べる派なんだけど、外食で定食についてきた時なんかはそれがちょっと難しい時もある。店が混んでたりしたら気になってちまちまとゆっくり食べたりなんかできないで残しちゃったり。
だけどこれなら食べやすい。小人になって食べやすくなる食材があるとは思わなかったよ。砂抜きもしっかりされていてやはり美味い。大きい分、数が少ないのが残念なぐらいだ。
「毎日作ってあげるわよ」
……毎日味噌汁作ってくれは、最近の子にはプロポーズとして通用しないでしょ。とスルーを決め込む。
「ボクこの玉子焼き好き! 毎日食べたいよ!」
ナイスだコルノ。これで今のがプロポーズだったとは言いづらくなったはずだ。
レヴィアは無言で自分の玉子焼きの皿をコルノに渡した。怒ってはいないようだ。頬を染めているのは照れてるからかね。
「わあ、ありがとう!」
コルノは甘い玉子焼きが気に入った模様。ふわっと柔らかくできていて、レヴィアの腕がうかがい知れる。
これでなんで結婚できなかったんだろうかね?
性格だって悪くなさそうなのに。みんなリヴァイアサンの姿しか知らなかったのかな。
「ふふっ。また作ってあげるわ」
「わーい。レヴィアちゃんだーい好きっ!」
また一段赤くなるレヴィア。
むう。コルノはリヴァイアサンを防ぐ防波堤にはなりそうにないか。
レヴィアなら自分の他の嫁になってもいいって認めちゃってるもんなあ。
俺よりもレヴィアの方に懐いてきちゃってる気がしてちょっと寂しい。早くコルノにプロポーズしたいところだ。
◇◇
朝食をすませ、歯を磨いて本日の作業を開始する。
まずは届いたばかりの保険の案内のチェック。
ポイントサイトで資料請求したものだけど、小人用サイズになってないんで無駄にでかい。
よく保険の書類は小さい字まで確認しなきゃ駄目というが、その字まで大きい。
「ダンジョン移築する際の保障は……ダンジョンが破壊されて再建不能なのを確認してから、か」
「えっ、引っ越すの?」
「あの巨大空洞次第だ。あんな巨人が棲んでるとこと繋がったままってのは、ちょっとな」
遠目でもあの巨人は10メートル級。小人な俺たちから見たら60メートルだぜ。でかすぎる。
「あとで巨大空間に転移して様子の確認はする予定ではあるけどね。巨人が敵対行動を取らないようだったら、そのままあの巨大空間もダンジョン領域化してDPを貰えるようにしたい」
「フーマ食べられちゃったりしない?」
「あの巨人から見たら俺たちなんて食べ応えのあるサイズじゃないだろ。人間ならともかく」
せいぜいおやつ程度にしかならないだろう。
……巨人って普段なに食ってるんだ?
あの巨大空間には巨人の食生活を支えるほどの生き物が生息してるのか?
やはり調査が必要か。
「問題はこっちの方だよなあ」
「どうしたの?」
「ポイントサイトでDPを貰うためには保険屋と連絡を取らなきゃいけないんだけどさ、ほら、電話で連絡してください、って書かれてるんだよ」
メールよりも直接会話する電話の方が断りにくいからだろうか。
知らない人と電話するのって緊張するから苦手なのに。
まあ、それよりも大きな問題が立ちふさがってるんだけどね。
「電話?」
「このダンジョンに電話なんてあったのかしら?」
「ダンジョンを初めて作った時はPCと同様にコアルームに用意される。……はずなんだけど、見た覚えがない」
ダンジョンマスターになった時にインストールされた知識の中に電話のこともあったんだけど、使うことがなかったんで全く気づかなかった。
もしかして運営の不備?
小人用の電話なんて用意できなかった?
そりゃ確かにPCがあればメールできるから電話なんていらないけどさ。
電話がなければ化粧品会社からの「奥さんいらっしゃいますか?」なんてセールス電話にダメージを受けることもない。なに? 昼間に家にいるのは主婦じゃなきゃいけないの? 引き篭もりもいるでしょ!
もちろんそんな電話には「今ちょっといません」と正直に答えたよ。結婚してないからいないとは言えなかったけど。
前世の電話なんて、家族から以外はろくなのこなかったもんなあ。家族や数少ない友人からもほとんど携帯でやり取りしてたしさ。
電話は留守電専用。相手を確認してからってやってたらほぼ使わなかったっけ。インターネット回線のためだけに契約してたようなもんだ。
ともかく、運営に連絡して電話のことを相談するか。
DPで買うにも電話回線をどうすればいいのか、わからんし。
PCを立ち上げてダンジョンマスターの館の『お問い合わせ』のところからサポートセンターにメールする。
『数日前ダンジョンマスターになったばかりなのですが、コアルームに電話が設置されてませんでした。
どうすればいいでしょうか?
自分の種族は小人です』
こんなもんか?
必要なことは書いたし問題ないよな。送信、と。
「運営も忙しいだろうから、すぐに返事はこないだろ」
「じゃあ、次はゴーレムだね!」
◇◇◇
4層ボス部屋に移動する。すでにコルノの作業部屋化してるけど、やっぱりルームガーダーは設置したい。
「2層のボスにって、おっきなゴーレム造ってたんだけど、巨人が相手となるとちょっと厳しいかな」
「巨大ゴーレムか。巨人と戦うことになったら必要になるだろうけど、そこまで大きいのだと材料もMPも使うだろ。ゴーレムスキルのレベル上げてからでいいよ。今はまず数を揃えることが先だ」
巨人も気になるけど今すぐ対策できない以上、ネズミに備える方を優先する。数が増えればゴーレムの素材の入手もしやすくなるし、造ってるうちにコルノのゴーレムスキルレベルも上がるはずだ。
「そうだね。ただ、ボス用の人間よりちょっと大きいゴーレム製作も続けるからね!」
ゴーレムがボスじゃないのがまだ悔しいらしい。
大きなゴーレムも巨大ロボみたいで悪くないからかまわないけどさ。
……む!
「閃いた!」
「どうしたの? ゴーレムに関係すること?」
「ああ。人間サイズの、フルプレートメイルで全身隠れたようなゴーレムができれば人間の町に行けないか? 鎧が呪いで脱げなくなったとか設定を作って」
今すぐに行く予定はないし、そもそも人間の町なんてどこにあるかわからないけどね。
「うーん、ゴーレムって自分で判断することが苦手だからお使いはできないと思う。ゴータローとレッドは凄く珍しいケースなんだよ。それでも会話はできないだろうし」
「だからさ、俺たちが乗り込めるゴーレムを造って、中から指示を出せばいい。それなら細かい動作もできるだろ。俺たちも町に行ける」
「面白そうだね! ロボ型派の人も喜びそう。……だけど、ボクはそんな鎧作れないから人間の町へ行けるようなのはちょっと無理かな、ごめんね」
ああ、鎧の作製はゴーレムとは別か。武器だって石棍棒みたいなシンプルなのしかコルノは作れなかったもんな。
クロスボウや飛び道具内蔵のゴーレムも出来そう、とか思っていたけどそこら辺は別に武器を準備できてからになりそうだ。
次のガラテアはやはりドワーフかな。鍛冶屋さんも現地調達できればいいのに。
「ノームの鍛冶師が来てくれればいいな」
「そうだね。ニャンシーの友達にいないかな?」
あ、寝起きのショックですっかりアシュラとニャンシーのこと忘れてた。
『掲示板 勇者対策会議』をちょこっと修正しました




