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52話 巨人

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 ゴーレムたちが掘り当ててしまった謎の空間へと急行する。

 コルノ、レヴィアも連れて転移した。


「ここか」


「ゴ、ゴゴー!」


「ドリドド」


「さっき注意されたことをゴーレムたちに指示して回っていたら、量産型の1人が掘ってた穴が急に広がって、その子が落ちちゃったんだって」


 通路の先に大きな穴があり、そこが広い空間に繋がっているようだ。

 ちょっと覗いて見ると、ここから天井は近いようだが、床は遠い。ここから下まで3、40メートルはありそう。もっとか?

 空間自体の面積は向こう側が見えないぐらいに広い。地下世界?


「あっ、量産型がいたよ、手を振ってる」


 俺の隣から覗き込んでいたコルノが指差した方を見ると、たしかに下になにか動いているのが見える。この身体は視力もいいな。


「ちょっと回収してくる」


 穴から飛び降りる俺。

 ちっちゃい分、床への距離が長く感じる。


「私も行くわ」


 レヴィアも飛び降りてきたみたいだ。彼女なら飛べるから問題はないのだろう。

 落下しながら空間の様子を見る。

 広い。真下付近には床があるが、奥の方は泉になってるようだ。いや、湖サイズ?

 あれがレヴィアが気配を感知した水場だろう。


「着地はどうするつもりなのかしら? あなたはまだ飛べないのよね?」


「途中で壁を走るのに切り替えるか、魔法でクッションを作るからダイジョーブだよ」


 そう言ったのに、レヴィアが俺に抱きついてきた。

 空中なので、俺に逃げる術はない。……エアーミサイル飛行は、静止状態からスタートしないと乗りにくいんだよ。


「その必要はないわ。まかせなさい」


 抱きついてるので表情は見えないが、落下の風圧で揺れるツインドリルの隙間から見えるレヴィアたんの耳は真っ赤だ。抱きついたことを照れているのだろうか?


 壁を走ると俺が言ったせいかレヴィアの飛行で壁から離されてしまい、抱き合ったまま着地を待つしかできない。地下巨大空洞の床が近づいてきた辺りで落下速度がゆっくりとなっていき、ふわっと着地できた。


「あ、ありがとう」


「……もっと高さがあればよかったのに」


 レヴィアの言葉は聞こえなかったことにする。あれ以上抱き合っていたらおっさんの理性が、って、まだ抱きついたままなんですけど。


「レヴィア?」


 小さく舌打ちしてやっと離れてくれた。

 量産型ゴーレムはすぐに見つかった。脚が両方とも外れちゃってるようだ。

 落下の衝撃で外れて遠くにいってしまったゴーレムの脚を探し出し、アイテムボックスに収納する。


「ほら、脚も回収したし、いったん戻るぞ」


 量産型は喋らないので反応がないのは寂しいよな。そう思っていたのにゴーレムが反応した。

 ただ、ゴータローのように敬礼や両手を合わせて感謝の意を示したわけではなかったが。

 ゴーレムは俺の背後を指差したのだ。壁の反対側、空間の中心方向を。


「なんだ?」


 振り返った俺の目に飛び込んできたのは、人の姿だ。

 まだ距離があるのにもかかわらず、見えてしまうその巨大な姿。

 人間ではない。それよりももっと大きい。巨人だ。


「10メートル級? ……転移する。レジストするなよ!」


 レヴィアと量産型に声をかけて、コルノたちが待つ通路に転移。


「この穴を塞ぐ。大至急だ!」


 アイテムボックスに残ってた土を出して、ゴーレムたちとともに穴を埋めた。かなり長い距離を埋めた。


「どうしたの? 慌ててたみたいだけど」


「コルノは見えなかったのか? 巨人がいた」


「巨人? なにそれ?」


 コルノはずっと俺たちのいる真下しか見てなかったので、巨人は見てないようだ。


「レヴィアは見たよな?」


「ええ。普通の人間よりは大きかったわね」


 そんな感想?

 そりゃリヴァイアサンの方が大きいんだろうけどさあ。俺から見たらビルが動いているようなもんだってば。


「見つかったかな? 巨人の身長よりも穴の位置は高いし、大丈夫なはず……」


 それに穴が埋まってなくても小さいから巨人は入れないだろう。

 ふう、と息を大きくはいて、肩の力を抜く。


「晩飯の用意、するか」


「ボクはこの子を直すね」


「脚もちゃんと持ってきてるぞ」


 ゴータローとレッドに塞いだ穴の方の警戒をするように告げ、みんなで3層ボス部屋に転移。壊れたゴーレムも連れて行く。コルノの作業場である4層のボス部屋でないのは、ニャンシーに話を聞くためである。


「はい、これ」


「ありがと」


 量産型の脚をコルノに渡すとさっそく修理を始めるコルノ。

 正しい位置に持っていって手をかざしている。


「球体関節はよく動くけど、その分外れやすいのかもしれないねー」


「サスペンションでもつけるか?」


「なにそれ詳しく!」


「……あとでな」


 冗談だったのにコルノがくいついてしまった。サスペンションの説明なんてどうしよう?


「そ、それよりニャンシー、妖精島には巨人もいるのか?」


「にゃ? そんな話は聞いたことないにゃ。ミィアもそんなことは言ってなかったと思うにゃ」


 ふむ。学者であるニャンシーの姉も知らないか。ニャンシーに言ってないだけかも知れないけど、一般常識ではいないことになってるみたいだな。


「なら、ティル・ナ・ノーグに出現したっていうダンジョンから出てきたモンスター?」


 しまった、焦ってたんで鑑定してなかった。

 小人が妖精が多い種族なら、巨人は神に近いのが多いんじゃなかったっけ?

 種族だけでも確認しておくんだったか。


「まあいい、焦って動くのも危険だ。調査は明日にしよう」


 いい加減マグロが食いたい。お酒も飲みたい。




 キッチンに移動し、準備していたマグロの頭に熱湯をかけて塩とそれが吸った臭みを洗い流す。それからまた塩。今度は軽く振りかけるだけ。

 そのマグロヘッドをオーブンで焼く。このために人間用の中でも大き目のにしたんだもんな。


 焼くのには時間がかかるので、その間にお酒の準備だ。解体場に移動し、水を入れたコップとさっきむしった黒ジソの茎と根っこを並べる。

 複製するのはなんにするかな? アイテムボックス内のリストをウィンドウ表示しながらしばし悩む。


「よし、いつものやつにするか」


 選んだのは前世、死ぬ前辺りで愛飲していたハイボール。金色の缶のやつである。

 これは安いのもいいけど、甘くないのがいい。

 他のハイボールは糖質ゼロといっておきながら別の人工甘味料を使っていて変な甘さがあるのが多い。だが、これは甘味料もゼロなので本当に甘くないのだ。

 ドライとレモンをよく飲んでいた。前世から持ち越したのもその2種類だ。今回は魚だからレモンにしておこう。


 缶は残念ながらスチール缶ではなくアルミ缶だった。ゴブ剣では複製できない。アルミホイルでいいか。ホイルとラップは少し多めに持ってきてあるし。

 素材にアルミホイルを追加し、水の入ったコップを温泉産の炭酸水のに変える。そしてアイテムボックスから出したハイボールレモンを缶を開けずに置いて、と。


「レプリぃぃ、ケぇぇぇションんん!」


『複製スキルがLV6になりました』

『錬金術スキルがLV5になりました』

『酒造スキルがLV2になりました』

『調合スキルがLV2になりました』


 つい、気合が入ってしまった。そのせいか上がったスキルも多いな。

 酒造はまだわかるとして、調合は……お酒も薬扱いなのか?

 錬金術は缶のせいだろうか。


 複製もちゃんと缶ごとできている。

 やっぱり素材の、特に黒ジソの消費が多いな。ネズミたちにやられる前にもっと植物を集めないといけないか。

 サイズ差があるので1本でいいかとも思ったが、素材がまだ足りそうだったので、もう1本複製した。俺たちの大きさで考えれば400本以上。十分だろう。


 キッチンに戻ると、レヴィアがカエル頭を唐揚げにしている。そういやさっき俺は回収してなかった。

 人間サイズ用のまな板の上にいるカエルの生首と目があってしまい、ちょっとびびった。


「こいつらとはちょっと違うけど、さっき話した乙姫が紹介して、気絶したカエルもこんな感じだったわ」


「毒はないんだよな?」


 カエルって毒持ってるのいたよな。

 カエルだとか、人型だとかは置いておいてそっちの方が心配な俺。カエル食うぐらいは気にならないのは前世からである。

 トラウマを刺激するといけないので、紹介されたカエルのことはもちろん聞かない。


「大丈夫よ。ニャンシーに聞いたら妖精たちも食べるそうだから」


 妖精を襲う危険なやつじゃなかったのか?

 それでも食うのか。肉食な妖精ってのもちょっとイメージが違うんですけど。花の蜜だけとかじゃないのかね。


「……いい匂いだな」


「期待してなさい」


 料理の都合上、今回は小人サイズのコンロと鍋で料理しているレヴィアたん。こっちのサイズの調理器具も問題なく使いこなしている。これが女子力か。

 黒セーラーの上からつけたエプロンというのもポイント高い。ぐっとくるおっさんも多いはずだ。

 小人化じゃなくて人間化をちゃんと覚えられたらすぐに結婚できただろうに。





 夕食は3層ボス部屋で宴会。

 みんなの歓迎会も兼ねている。


「ニャンシーはお酒、平気か?」


「ケット・シーはお酒も葱も問題ないにゃ」


「そっか。じゃ、乾杯!」


「かんぱーい!」


 アシュラとニャンシーにはコップではなく皿にハイボールを注いだ。アシュラも飲めるか聞いたら頷いたのでたぶん大丈夫だろう。やばそうだったらキュアすればいい。


 大皿に敷いた黒ジソの葉の上に置かれたマグロの兜焼き。ちょっと焦げたので皿の上は黒一色だ。でも中までは焦げてないので美味しく食べられる。オーブンから出した時の油もすごかったよ。


 別の皿にはカエル頭の唐揚げ。ちゃんと小人用のサイズに切って揚げてある。


「大根をおろしておけばよかったか」


「大根があるの?」


 レヴィアがビックリしている。

 そんなに驚くとこ?


「大根ってなんにゃ?」


「え?」


「この世界、クラノガイアスには大根がないのよ。乙姫もよく残念がっていたわ」


 大根がないか。異世界だからそれもありえるだろうけど。

 俺の前世から持ってきた大根、なんとか増やせないかな。



「魚の頭なんてって思ってたけど、おいしーね!」


「目の周りも美味いぞ」


 コルノはマヨネーズで兜焼きを食べている。ゆずポンも用意したのに。

 久しぶりの魚ということを考慮しても格別に美味い。脂が乗っていてジューシーだ。黒ジソの風味も合う。ハイボールが進む。


「このお酒も美味しいわね」


「いけるクチか?」


 空になったレヴィアのグラスに、小人サイズのピッチャーに移しておいた複製ハイボールを注ぐ。

 こう見えてもレヴィアは未成年じゃないので問題は無い。リヴァイアサンの成人年齢なんて知らないけどさ。


「私を酔わせてどうするつもりかしら?」


「うん。唐揚げもウマい!」


 レヴィアがなんか言ってたようだけど、この唐揚げもいい。とてもあんな材料からできてるとは思えないほど美味い。カエルは鶏肉に似ているっていうけど、それよりも淡白? あっさりしていて歯応えがあって、レヴィアの味付けもいい。いくらでも食べれそう。




「フーマ、ボクもおかわりぃ」


「はいはい」


 コルノは酔ってるな。それでも食べる量は相変わらず多いようだ。

 マヨネーズも複製しておいてよかった。


「マスターの眷族になってよかったと初めて思えたにゃ!」


「……念のために塩分は控えておけよ、アシュラも」


 ニャンシーはもうかなり酔ってるようだ。大丈夫かな?

 猫には塩分も駄目なので、一応プレーリーウルフの死体も出しておいたけど2人とも手を出していない。

 眷属だから平気と信じよう。明日の朝、ステータスチェックしないと。メモしとくか。


 それにしても久しぶりのお酒は本当に美味いなあ。

 せっかくだから、他のお酒も複製しちゃおうかなっ!





 ……あれ?

 ここはセーフルームか。いつ潜り込んだっけ?

 潰れるまで飲んだのなんて久しぶりだな。

 いや、転生したから生まれて初めてか。


「ふぁあああ、……トイレ行くか」


 ぷに。


「え?」


 左腕にあるこの感触はまさか……。

 ゆっくりとそっちを向くと、恐れていた事態が発生していた。

 全裸のレヴィアが眠っているのだ。



 もしかして、やっちゃったのか?

 嘘だろう……。


 おっさん覚えてない!



酒造LV2(up)

調合LV2(up)

複製LV6(up)

錬金術LV5(up)


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