51話 掘削時の注意
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『11話』と『閑話 その日の吸血女帝』のアキラの聖剣の描写をちょっと変えました
「よくやった。怪我はないな」
「ゴー、ゴゴ」
3層ボス部屋にアシュラとニャンシーを残し、1層に転移してゴータローたちを軽く褒め、ケロタウロスの死体を検分する。ん? ……これだと下半身がカエルのモンスターっぽいか。それも気持ち悪いな。
手足の指の間には水掻きがあり、指先には吸盤がある。こんなとこはカエルっぽいのか。頭と背中さえ変えれば河童で通用しそうだ。これが進化したら河童になるのか?
小さい河童か。いるかもしれないな。もしいたらリヴァイアサンの婿に薦め……なんか嫌だ。
会ってちょっとしかたってないのに、もう情がわいてしまったんだろうか。おっさんそんなに惚れっぽかったっけ?
アニメやゲームのキャラならともかくリアルでは……やさしくされたらすぐに勘違いしそうになってたような気もする。そんなわけないんで惚れはしなかったけどさ。
このまま済し崩しに嫁になってそう、というのも怖いかもしれない。どうしたもんか。
でもマグロ貰っちゃったからすぐに帰れとは言いづらいんだよなあ。コルノも仲良くなってるし……。
カエル頭人間は気持ち悪いだけでそこまで脅威ではないようだ。
この分なら防衛はゴーレムたちに任せておけば問題はなさそう。
せっかく創った2層、3層が役に立つ日は遠そうなのがちょっと残念だけどさ。
迷ったのが眷属だけってのは、ねえ……。
「異常があったら、すぐに知らせるように」
「ゴ!」
ゴーレムたちにあとをまかせて集積場にて土を回収する。穴を掘るゴーレムの数が増えた分、かなり溜まっているなあ。
掘られて拡がった箇所はダンジョンの領域とする。DPがかかるが、DPだけで拡張した時よりは安くすむ。これで瘴気を吸収できる量が増えて、なんにもしないでも手に入るDPもちょっとだけ増えるはずだ。
「これだけあれば大きなゴーレムも造れるね!」
「大きなゴーレムか。量産型の数をもっと増やしておきたいんだけど」
「まだ造るの? そろそろ3層のボス造っちゃダメ?」
「ネズミの数が半端なさそうだからなあ」
あいつら少なくても千単位でいそうなんだよな。だからエサの確保であんな巨大な芋虫すら捕まえていたんだろう。
このダンジョンにも現れる可能性はやっぱり高そうだ。
「あのカエル頭は水辺にいるって言ってたな。水場ってここから近いのか?」
アシュラのボス部屋に戻ってニャンシーに聞いてみた。
「この辺のことなんてそんなに詳しくないのにゃ」
「それもそうか」
ニャンシーは山向こうの国の出身だもんな。
「ただ、ミィアは常若の国は水の底にあるって言ってたにゃ」
「ミィア?」
「さっき説明した姉にゃ」
水の底か。
……まさかディーナ・シーがカエル頭に進化したわけじゃないよな?
「ネズミもティル・ナ・ノーグを探してるのかな?」
「ネズミが? そこまで知能があるのか?」
「ラット・キングは頭がよくて、ネズミの軍隊を率いるってミィアが言ってたにゃ。この島に現れたことはなかったはずにゃけど、大陸に出た時は人間の村を滅ぼすぐらいになるそうにゃ」
軍隊って、まさにくるみ割り人形のネズミの王だな。人間を襲うネズミの大量発生か。パニック映画でありそう。
「それだけ詳しいなら生きてる可能性はないか?」
「……ミィアは強かったけど、あのネズミの数は無理だと思うにゃ」
「そうか。残念だ」
モフモフは増えないか。学者なら、エージンとこのサキュバスほどじゃないけど、アドバイザーになってくれただろうに。
……アドバイザーか。目玉のあの人なら妖精やモンスターにも詳しいからいい助言をくれないかな。フィギュアは持ってないけど、あの造形なら資料がなくてもなんとか造れる気がしないでもない。サイズはそのままだとちょっと怖いかもしれないけどさ。
まあ、次も女の子にする予定だけどさ。
ハーレムってわけじゃなくて、手持ちのフィギュアがそうなだけなんだよ。
もしも男のフィギュアを持ってればガラテア候補に……しないだろうな。コルノを寝取られたら困る。
「水の底って、レヴィアちゃん知ってる?」
「何百年か前にそんな話を聞いたことがあった気がするわね。どこだったかしら?」
「最近は聞かないのか?」
「そうね。たしかあの精霊は……寿退社したんだったわね」
あれ? また地雷踏んじゃった?
レヴィアの嫉妬メーターがまた1つ上がった。
寿退社って、精霊も退職するのかね。
「次はダンジョン周辺の水場を探してみるか」
「そうだね。ちゃんと調べとかないとゴーレムたちが掘ってる穴がそこに繋がって、水が流れ込んでくるかもしれないもんね」
「やばっ! それは考えてなかった!」
うかつすぎる。そうだよ。川や湖に繋がっちゃたら困るじゃないか。井戸みたいに地下水を掘り当ててしまうことだってありえる。
慌ててゴータローとレッドにチャットする。
『
フーマ>掘削中に水が出てきたり、掘ってる土が湿ってきたら、掘削は中止してくれ。
ゴータロー>ゴ!
レッド>ドリ!
フーマ>他のゴーレムにも徹底してくれ。
』
「ふう」
「水脈を操るのに、水の場所はわからないの?」
「俺は温泉専門なんだよ。それに温泉の気配だって……スキルレベルが上がればわかるようになるのか?」
俺の種族、スクナの持つ温泉作製ってのもよくわからないスキルだ。
水の支配者であるリヴァイアサンによれば、水脈を召喚してるらしい。それなら作製じゃないよなあ。
水場か。地下水以外ならダンジョンの外に出て、上空を旋回して調べればいいだろう。地下水は……ダウジング?
感知スキルのレベルを上げたら地下水の場所もわからないだろうか。
今のとこ、穴掘り中に注意するしかなさそう。
野生動物やモンスターたちの巣穴もあるから、だいじょうぶだと信じたい。あいつらならば水源に巣穴を繋げるなんて、きっとしないだろう。
「レヴィア様は水の場所もわかるのかにゃ」
「もちろんよ。私は水の支配者よ」
ちょっとドヤ顔のレヴィアたん。よかった、嫉妬メーターが下がった。
得意気にこの付近の水場について語る。
「ダンジョンのそばには……あら? 地下に大きな水場があるわね」
「えっ?」
なにそれ、フラグ?
ゴーレムたちはそんなとこにダンジョンを繋げない、よね。さっき指示を出したし……。
「おかしいわね。水脈の異常を調べた時は、このダンジョンの1層の泉しかみつからなかったのにこんな近くに……距離が近くなったから発見できたのかしら? 私の目を誤魔化すなんて……」
「ば、場所は! そっちに掘るのを止めさせるから!」
「水場は1層よりも深いところにあるから大丈夫よ」
その時、ゴータローからチャットが届く。
『
ゴータロー>ゴゴ、ゴゴゴ!
コルノ>それ本当?
レッド>ドリドリ
コルノ>わかった。作業はいったん停止して、ボクたちが行くまで待ってて
』
えっと、なに?
チャットでもゴータローの言葉はわからないんだけどコルノはわかるの?
さっきは異常を知らせろって言ったがチャットだと俺にはその異常の内容がわからないようだ。
「たいへんだよ! 掘ってた穴が大きな空洞に繋がって、量産型が1人落ちちゃったって」
やはりあれで通じていたのか。ゴーレム語すげえな。
コルノに精霊語を覚えさせるより、俺がゴーレム語を勉強した方がいいかもしれない。
ダンジョンのマップのウィンドウを部外者であるレヴィアにも見えるように設定、大きく表示して確認してもらう。
「これが1層のマップ。ここが階段の泉で、ゴーレムたちが見つけた空洞はこっちなんだけど」
俺が指差したマップウィンドウに頷くレヴィア。
「そうよ。この方向に水の気配がするわね」
マジですか。
フラグ回収早すぎでしょ。
感想で水攻めや豪雨が弱点との意見がありましたが
穴掘って水が出ることにも注意しなければいけなかったり




