42話 サイズ調整
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4月からは忙しくなりそうなので、毎日更新はできなくなりそうです。
さすがに自分から見たら巨人サイズの大きな下着を見せられてもあまり興奮はしない。2人が着用したのを想像してしまい、ちょっと焦るだけだ。
起ち上がったままのPCを操作してダンジョンマスターの館のサイズ調整のページを開く。
「わっかりにくいなぁ、このページ……」
人間用をドワーフ用に、ハーフリング用をエルフ用にが参考例になっている。
小人用や巨人用はあまり想定されてないようだ。
ちょっとわかりづらい。俺の服や装備は運営のとこで小人用を買うことにしよう。
運営のDPで買える物で最初から小人用のを買った方が安いんだけど、今回はDPを減らしたいのと、運営の用意した衣類はあまり種類がない、という理由で女の子のは通販サイトで買ってもらったのだ。
「服のサイズはちゃんと6倍で計算して選んだ?」
「うん。たぶんあってると思うよ」
通販サイトのは人間以外用のも豊富にあったので――小人用は種類がなかったが――この2人でも子供服以外も選べたようだ。
そのせいであんな下着も買っちゃったんだろうけどさ。
サイズ調整のページをいじってると、コアルームに修復の時同様、大きな箱が出現する。
「柄はちょっと違うのか」
間違えないようにか、修復の箱と模様が少し違った。
その箱に買った物を入れてもらう。
下着も混じっているんで俺は見ないようにしないといけない。
ちらりと目に入ったあのブラジャーはどう考えてもサイズあってないよね、なツッコミも絶対に入れてはいけないのだ。
……まさかツッコミ待ちじゃないよね?
「服は全部入れたわ」
「じゃ……ええと、変更先のサイズを小人用(1/6)にセットして、と」
確認のために表示された必要DPも問題ないので作業を進める。
先程の修理箱とは違う色にサイズ調整の箱が輝いて数分。修理の時より時間がかかるな。量が違うからか?
「あ、おわったみたい」
光がおさまったので、サイズ調整の完了した服を出して確認する。もちろん俺じゃなくてコルノとレヴィアがだ。
本当に小さくなっている。重さも大きさに合わせて変わっているみたいなので、単純に圧縮したわけではないのだろう。
複製スキルと同じだったら小さくなった時に余った分が残るのだけど、それはないようだ。
まさか原子レベルで構成物質を小さくしてる?
わからん。理屈がわかれば練習してスキルとして入手できるかもって思ってたんだけど、ちょっと無理そうだ。
修理よりも時間がかかったし、きっと難易度の高い魔法なんだろう。
小人製品が1/216じゃなくて1/100のDPなのも納得しそうになってしまった。
「箪笥はどうするの?」
「え?」
箪笥もすでに買ってあるけど、大きいので4層のボス部屋に置いてあったらしい。
買った時にコアルーム以外にも出現場所を選べるのね。DPでモンスター召喚の時だけじゃなくて通販でもそれができたのか。
「たしかにでかい……」
和箪笥だけじゃなくて洋箪笥もあった。
どちらも巨大で、俺たちなら引き出しの中に隠れることや、ハンガーパイプにぶら下がることもできる。
なんかこのままにしておいて遊びたくなってくるな。
「さすがにこの大きさでは使いづらいか。ちょっともったいないけど小さくするよ」
ノートパソコンを取り出してサイズ調整のページを開き、さっきよりも大きめになるように選んで箱を呼び出す。
問題はどうやって箱に入れるかだが。
STR(力)の数値のおかげで持ち上げることはできてしまった。自分でやっていて呆れてしまう状況である。
だけど、サイズ調整箱の高さが俺よりも高いので、いったんアイテムボックスに収納して箱の縁に俺が乗ってそこから出すことで、なんとか入れることができた。
サイズ調整実行。
やはり数分かかって光が消える。
縮小が完了した箪笥を出すとそれでも大きな物だが、さっきのを見た後だと物足りない。
「これは部屋に運べばいいんだな」
「うん。お願い」
コルノとレヴィアの部屋にそれぞれを運ぶ。
やっと家具を置いたけど、まだ殺風景だな。もっと女の子らしく……ぬいぐるみでもあればいいのか?
「腹減ったな。そろそろ昼食を用意するか」
「それならば私が作るわ」
「……いっしょに作ろうか。夕食の準備もついでにしたいから」
リヴァイアサンが料理なんてできるのか不安だ。
それにマグロの兜焼きを食べたいので、下拵えが必要。塩を塗りこむだけだけどね。
小人用ではない普通サイズのシンクでマグロの頭を洗う。といっても俺よりもでかいので、けっこう大変だ。車の洗車に近いだろうか。シンクの中に立っての作業となる。
塗りこむ塩の量も多い。また複製塩を作っておかなければ。
全身を濡らしてなんとか作業をおえ、レヴィアを見ると彼女は目玉焼きを焼いていた。
……普通サイズのコンロとフライパンで。
卵はさっき俺が複製したもの。フライパンは台所の更新時にいっしょに買って、壁にぶら下がっていたはずだ。
「そろそろいいわね」
コンロの火を止めて片手でフライパンの柄を持ち、皿を置いた普通サイズのテーブルへと飛ぶレヴィア。
浮遊したままフライパンを傾け、皿へと目玉焼きを落とす。
「黄身は固めの方がよかったかしら?」
「い、いや、これぐらいが好きかな?」
「そう。よかったわ」
再び飛行してフライパンをシンクに運ぶレヴィア。
手馴れた感じだ。
「その姿で料理したことあったのか?」
「いつ結婚してもいいように乙姫のところでちょくちょく練習したわ」
「なるほど。だから大きな方の調理器具に慣れているのか」
俺はてっきりブレスで魚でも丸焼きにするんじゃないかと心配してたんだけど、杞憂だったようだ。
ただ、サラダを作るための野菜の切断にフィンブレードを使おうとしたので、それは勘弁してもらった。あのモードはDPが怖すぎる。
昼食は目玉焼きとサラダ、それに乙姫がレヴィアに持たせてくれたという葡萄だ。
「乙姫なのに海ぶどうじゃないのか」
「あれはデザートではないでしょう」
それもそうか。
葡萄は小粒の物だったが、それでも俺たちには大きかった。
種も手に入ったから、これを植えれば増やせるかな?
ワインはどうやって造るんだっけ……。
「ごちそうさま。おいしかったー!」
「ごちそうさま。ドレッシングまで作れるなんてすごいな」
「ええ。食材と調味料さえあればもっと作れるわ。肉ジャガも鯖の味噌煮もマスターしているのよ」
あからさまに独身男性をターゲットにしてそうなそのチョイスは乙姫だろうな、きっと。
どっちも食いたい。日本酒が合うよなあ。
「夕食はさっき準備したマグロの頭を焼くから」
「頭を食べるの?」
「美味いんだって。お酒もすすむ」
ダンジョンに問題がなければだけど、今夜は飲む。
酔っても大丈夫だ。
だってさ、よく考えたら酔うのも状態異常だから、回復魔法でなんとかできるんだよね。キュアドランクか、駄目ならオールキュアで治せばいい。
マグロの兜焼きだから、発泡酒でも日本酒でも合いそうだ。ハイボールや焼酎でもいいだろう。
久しぶりの飲酒に心が躍る。
これからもう1度、“未熟者のダンジョン”1層でゴブリン狩りをしてきたら、今度はダンジョンの外で植物素材集めの予定だ。
飛べるようになったんで、移動距離も伸びるし視界も確保できるから、イネ科謎草以外の素材もゲットしてこようと思う。
お酒の複製素材をがんばって集めてくるぞ!
……酔って暴走しないように気をつけよう。
フラグじゃないからな。




