39話 TPP
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<壁歩>
レベル1:壁を垂直に歩くことができるようになる。止まると落ちる。
レベル2:壁を走ることができるようになる。
レベル3:止まっていても壁から落ちることがなくなる。
レベル4:天井を歩くことができるようになる。
レベル5:天井を走ることができるようになる。
レベル6:止まっていても天井から落ちることがなくなる。
壁歩スキルのクチコミ
・ダスケ (ハイヒューマン 男 29歳)
ニンジャには必要だよな。
・反蔵 (アーマードオーガ 男 56歳)
罠を避けるのにも有効。
・シャド子 (アラクネ 女 ?歳)
レベルが低くてもその場で足踏みしてれば落ちることはありません。
・……
せっかくとったのに全然使っていなかったこのスキル。
これを有効活用してゴブリンを駆逐する。
この“未熟者のダンジョン”1層の通路や部屋の天井までの高さは3メートルぐらいある。対してゴブリンの身長は130センチほど。
天井付近の壁にいればやつらの攻撃は届かず安全なのだ。こっちは魔法で攻撃すればいい。
試しに通路の壁を歩いてみる。
普通に歩けてしまう。若干横方向に重力を感じるがそれほどでもない。
で、歩みを止めると急に感じる重力が大きくなって、下に落ちる、と。
慣れるまで感覚が狂いそうだが、けっこう面白い。
『壁歩スキルがLV2になりました』
感覚を馴染ませようと壁をゆっくり歩いていたらゴブリンに遭遇するまでにもうレベルアップしてしまった。これで走れる。
ダッシュで移動していると、通路を歩くゴブリンを1匹発見。こちらには気づいていない。速度を落としながら魔法を使う。
「アァイスゥゥ、ニィィィドル!」
CPを使うため、スーパーロボットアニメの攻撃風に叫ぶ。
おおっ、いつもよりも氷の針がでかい。長さ15センチ以上、太さは2センチぐらいのサイズとなった。もはや針ではなく杭である。
氷の杭は俺のシャウトに気づき上を向いたゴブリンの頭部に見事命中し、その命を奪った。
『水魔法スキルがLV3になりました』
「一撃か」
ステータスを確認するとCPが1減っている。たったの1の消費でこの威力?
氣のパワーはすげえぜ!
問題は気合の入れ方だな。絶叫しながら攻撃すれば確実に使えるし気持ちもいいけど、奇襲はしにくくなる。
それに人に見られると恥ずかしい。
声に出さないでもCPを使えるようにしないと駄目だ。
ゴブリンの死体と武器をアイテムボックスに収納し、先に進む。
次は部屋だ。扉はないので天井付近を歩きながら静かに動く。
『壁歩スキルがLV3になりました』
『隠形スキルがLV3になりました』
なんか忍者に近づいている気がするな。
部屋にはゴブリンが2匹いたがレベルアップした隠形スキルのおかげで気づかれていない。
ゆっくりと気合を篭めて魔法を準備する。今度はファイヤーニードルだ。
草原や自分のダンジョンと違って延焼や酸欠を気にしないで使える。ここでレベルを上げたい。
俺のそばに2本のファイヤーニードルが形成されていく。レベルの違いからか、大きさはさっきのアイスニードルよりもちょっと小さい。
その2本をすぐに発射せず、じっくりと狙いをつける。少し熱いが我慢だ。
よし。
「発射!」
いかん、つい声に出してしまった。注意しないと。
1本は命中し、その1匹をしとめたが、もう1本は俺の声でゴブリンがビクッと大きく反応してその動きでかわされてしまった。運のいいやつめ。
「ファイヤァァ、ニィィィドル!」
『火魔法スキルがLV2になりました』
今度はしっかり命中して倒した。ついでに火魔法のレベルも上がった。
やはり実戦はレベルアップできる。
訓練だけじゃどんなにスキルを使っても上がらないのかはわからないけど、効率が悪い。安全に戦えるなら実戦の方がよさそうだ。
その後、サクサクとゴブリンを駆逐していく。
土魔法と風魔法も使い、レベルを上げた。
壁歩と隠形も上がっていき、ゴブリンは俺を認識できない。
暗殺者になった気分だ。暗殺者……殺し屋か。
そして俺はあることを思いついてしまう。
「俺、飛べるんじゃね?」
形成してすぐに発射せず、目の前で停止してる時に乗って、それから発射すれば俺は飛べるかもしれない。
そう。投げた柱に乗って飛んだあの殺し屋のように!
「ストォーン、ニィィィドル!」
床に降りてからCP篭めのストーンニードルを形成する。土なアースニードルと違い、石なのでその分余計にMPを使うが土より固くダメージも大きそうだ。
その石杭にゆっくりと乗ってみる。ちょっと細いな。
「発射」
びゅんっと俺を乗せたまま飛んでいく石杭。
すげえ! って、もう壁?
慌てて石杭から飛び降りるが、勢いは殺せずに壁と激突してしまった。
痛い。
やはり飛行実験には犠牲はつきものだったのか。
減ったHPを回復魔法で治しながらそんなことを思った。
石杭はダンジョンの壁に深々と刺さっている。かなり強力だな、これ。
ん? この石杭ってゴーレムの材料にならないかな?
まあ、コルノがいるから石には不自由しないか。
何度かニードル飛行を試してるうちに、誘導できるミサイル系ならもっと思いのままに飛行できるんじゃないと気づく。
消費MPはニードル系よりも大きいけど、その分サイズも大きいし。
レベル4から使えるようになる。
属性魔法の攻撃はレベル2でボール系、レベル3でボルト系、レベル4でミサイル系が増えるのだ。
土魔法を集中して上げるか。
ゴブリンを土魔法で倒しながら進む。無言でCPを篭めるのにも慣れてきた。命中率も上がってミサイル魔法がいらないような気もするが、俺が飛ぶためには必要だ。
ボス部屋につくまでに土魔法がレベル4に上がった。水魔法と同じく、こっちも上がりやすいのかな?
ボス部屋には扉がある。
ここは奇襲できないので、素早く敵の攻撃が届かない高さに移動する必要がある。
扉を開ける前にすぐに発射できるように準備しておかなくては。
「ストーンミサイル」
おお、CPを篭めないのに長さは50センチ以上、太さは6センチ以上で十分すぎるサイズだ。
ゆっくりと音をたてないようにボス部屋の扉を開けるが、やはりゴブリンたちには気づかれてしまった。
「発射!」
ひと際大きな、ボスであるキャプテンゴブリンを狙って準備していたストーンミサイルを発射する。
チッ、キャプテンゴブリンのやつ、盾で受けやがった。
俺は壁を走って天井付近の高さに移動する。これで敵の攻撃は届かない。
「ストーンミサイル」
あとは1匹ずつゴブリンを確実に殺していくだけだ。キャプテンゴブリンは最後に……ん?
逃げ惑うゴブリンを指揮していたはずのキャプテンゴブリンが妙なポーズをって、あれは!
すごい勢いで俺に迫る円盤。
それはキャプテンゴブリンの使っていた盾だった。キャプテンだからそんな使い方もするのか。天井付近の壁を走って回避する。
危なかった。石杭が刺さったままで回転のバランスを崩してなかったら、当たっていたかもしれない。
油断は禁物だ。真っ先にやつを倒す!
「ストォォオン、ミサァァァイル!」
『土魔法スキルがLV5になりました』
CPを使ってストーンミサイルを形成する。長さはもう1メートルを余裕で超えてしまった。
盾を拾おうと走ってくるキャプテンゴブリンに発射する。
とっさにかわそうとするキャプテンゴブリンだが、クイッとストーンミサイルの進路が変わり、キャプテンゴブリンに命中。あまりの威力に命中した頭部はぐちゃぐちゃになった。即死である。
残りのゴブリンで他の属性魔法を上げよう。
こん棒等を投げてきてもいいように壁や天井を走りながらだ。
「アァイスゥゥ、ニィィィドル!」
氷の杭が直線状にいた2匹のゴブリンを貫通する。1匹目は頭に、2匹目は胸に穴が開いて死亡した。
『水魔法スキルがLV4になりました』
「ラァイトニングゥ、ボルトォォ!」
バチバチバチバチッという音と、直視できないほどの光を放つ雷撃がゴブリンたちを襲う。命中時にはドガンっと轟音がして、ほとんどのゴブリンが倒れていた。
『風魔法スキルがLV4になりました』
「ファイヤァァ、ボォォオル!」
生き残った1匹のゴブリンを直径1メートル近い火球が襲う。あ、命中したら爆発するのか。
『火魔法スキルがLV3になりました』
ふう。もう生きているゴブリンがいないな。
火も4レベルまで持っていきたかったけど仕方ない。
ここだけでここまで上げられただけでも良しとしよう。いろいろ試せたしさ。
ライトニングボルトが一番派手だった。
他の魔法もCPを篭めないでも十分に強いかも。ゴブリン相手にはCPは必要なさそうだ。
CPを使ってるせいか、お腹も空いたし。
気合を入れてる分、エネルギーの減りも早いのかな?
武器やゴブリンたちの死体を回収していると、ボス部屋中央に宝箱が出現しているのに気づく。
「そういやこれがあったっけ」
罠はないようだな。
中身は今度は剣だった。キャプテンゴブリンのものと同じようだ。ただし小人サイズのだが。
『小人用キャプテンソード
キャプテンソードという名前の鉄の剣
攻撃力 +5
耐久値 8/10
小人用 』
ふむ。今の鑑定レベルでこれしか出ないってことは特殊効果はないのかな?
まあ、ありがたいっちゃありがたいな。
前回同様、宝箱もまとめてアイテムボックスに収納しておく。宝箱は蓋を外しておけば、アシュラが喜びそうだ。猫だからきっと狭いとこが好きそうだもんな。
さ、2層は攻略しないでいったん帰ってリポップを待ったらもう1回稼がせてもらいますかね。
今回上がったスキル
壁歩LV4(up)
隠形LV4(up)
火魔法LV3(up)
土魔法LV5(up)
風魔法LV4(up)
水魔法LV4(up)




