表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/200

37話 ダンジョンの完成形

感想、評価、ブックマーク登録、メッセージ、誤字報告、ありがとうございます

 ダンジョンマスターレベルが5になってしまった。

 俺まだ生後4日目なんですが。

 こんなに急に上がったら運営(かみさま)に気づかれそうでちょっと怖い。


「たった5千程度のDPで大騒ぎするものではないわ」


「うちでは大騒ぎする金額なの」


 これが格差社会というやつだろうか。

 俺がダンジョンマスターとして生きてきた4日間で稼いだ10倍以上のDPがほんの数分間でとは、感覚がおかしくなりそうだ。


「ともかく、入っちゃったものは仕方がない。使ってしまおう」


「貯めとかないの?」


「なんかの拍子でレヴィアがまた瘴気を解放したらやばい」


 本当は帰ってもらうのが一番なんだけど、マグロ貰っちゃったしさ。

 いまさら出て行ってくれとは言いづらいでしょ。


「レヴィアちゃんを眷属にしたらどうかな。眷属なら瘴気を発生させないんだよね?」


「眷属になる時にそれまで溜め込んだ瘴気をマスターに吸収されたはずよ」


「眷属はなしで」


 リヴァイアサンの持ってる瘴気が一気にドカンときたら確実に10レベルは突破する。絶対に無理。

 それに眷属なんかにしちゃったら、結婚一直線になりそうでしょうが。



「DPはまず、レヴィアのここでの生活環境を整えるのに使おうと思う」


 その方が俺の気が咎めないですむ。

 なんか家出した世間知らずのお嬢様からお金を巻き上げてるような気がして、おっさんの繊細なハートが痛いのよ。


「なにか注文はある? さすがに元の姿に戻れるほど大きな部屋とかは無理なんだけど」


「そうね。私の“水跳躍”が使えるような水場を用意して貰えるかしら。移動の度に浴場を使うわけにはいかないでしょう」


 ふむ。どうやら、リヴァイアサンの転移は水から水へとの移動らしい。

 転移スキルと違って転移先に水場が必要だけど、それさえあれば行った事がない場所に瞬間移動できるってのはチートすぎる。


 風呂とは別に水場か。レヴィアの部屋の隣にそれを創った。水は後で温泉作製スキルで溜めよう。


 ついでに貯蔵庫も創る。

 貯蔵庫は部屋だけど、アイテムボックスのように中に入れた物が劣化しない特殊な部屋だ。

 高いことは高いがダンジョン内に固定される分、アイテムボックスよりは安い。

 みんなが使えるというのも大きいだろう。

 俺が邪神ダンジョンや外に出かけている時でもコルノたちが使えるからね。


 3枚おろしされたマグロは今のところ俺のアイテムボックスに収納されているけど、半身ぐらいは貯蔵庫に出しておきたい。

 アイテムボックスの容量には限りがあるしさ。俺のは増量してあるから余裕ではあるんだけどさ。


 ゴブリンや虫、その他の死体も保存できるように、食材用とは別の貯蔵庫も創っておく。

 いくら臭いや菌が移るといった変化はしないといっても、一緒には置いておきたくないって。


 武器やアイテム等を置く倉庫としての貯蔵庫もセットした。

 まだゴブリン産のこん棒ぐらいしか置く物はないが。

 宝物庫とはいわないが、もうちょいマシなものを置いておきたい。


 巨大な部屋が一気に3つもできてしまった。

 コアルーム周辺の間取りも変わる。リビング……コアルームもちょっと大きくなった。

 もう少し人数が増えたらデスクと椅子も増やして、ダンジョンの状態を確認しやすいようにオペレータールーム風にするのもいいかもしれない。

 俺の椅子の正面には大型モニターをセットして、ってなんかロボットアニメの司令室みたいだな。もしくは戦艦の艦橋(ブリッジ)


 そうか、うちのダンジョンの完成形は秘密基地だったのか!

 ロボット(ゴーレム)もいるしさ。

 だから怪獣(リヴァイアサン)に襲撃されちゃうわけね。



 ダンジョンレベルが5に上がってしまったので、5層まで創れるようになったけど、まだ創らない。

 設計イメージが降りてこないというか、今の俺じゃゴーレムがワ○ダバ出撃するためのギミックしか頭に浮かんでこない。

 新設したばかりの2層、3層も使い心地を試していないし、慌てて創ると無駄な出費になる。


「使い切ろうと思ったけど、無理か」


「新しい層だけでも創っちゃえば?」


「フィールドダンジョンが創れればそうするけど、さすがにDPが足りない」


 小人価格で10,000DPが必要だ。

 レヴィアの協力があればすぐに届く額ではあるが、そのつもりはない。


「私に頼ってくれてもいいのよ」


「だから、そんな急に稼いだら目立つだろって。俺は目立つわけにはいかないの!」


 小人の必要DP100分の1をまだ有効活用しきっていない。

 目立ってしまって運営に気づかれて、そのバグを修正されたら困る。

 これ以上急にダンジョンレベルは上げたくないのだ。


 カード契約やギルドに加入してなくてよかったよ。ランキングに表示されないですむからね。


「私の夫となる男がそんな器の小さいことでどうするの」


「うん。君には相応しくないから見切ってください」


「私に養われるだけではない、という気概を持っている貴方を諦めるわけないでしょう」


 レヴィアたん、言ってることが矛盾してるんですけど!


 ……彼女に頼っちゃうとずるずると、俺がなにもしなくなる自信があるんだよな。

 楽な方に流されるのは大得意だ。


 でもそれだとさ、いざという時に対処できないこともありそう。

 スキルもDPで買うだけじゃ駄目で、実際に使いこなせないとマスターしたとは言いづらい。この4日間で実感してる。

 それに、このレア上位種族な新しい俺はスキルの習得や上達も早いようだから、DPで買うより自分で鍛えた方が安くつくみたいだし。

 DPで買うスキルは習得方法がわからないスキルだけでいいよ。


「とりあえずの目標は、まず生き残ることなんだよ」


 レヴィアは「志が低い」と言いたげな視線だが、黙って続きを待ってくれている。


「ダンジョンの外でネズミの異常な群れを見た。モンスターも混じっている。このダンジョンが襲われる可能性がある」


「ネズミ?」


「こまめに来てくれればDP源になってくれるだろうけど、一気に大量にこられるとやっかいだろ。だから今はダンジョンの防衛能力を高めている」


 定期的にやってきてくれるお得意さんになってくれればいいのに。

 戦力を小出しにして攻めてくれるから、ロボットアニメの基地は耐えられるんだよ。基地が破壊されるのはたいてい総攻撃が行われる終盤だ。


「それを耐え切ったらどうするのかしら?」


「のんびりする」


「え?」


「俺はのんびり暮らしたいの。だからこそ、こんな人里離れた場所を選んだんだ。DPも稼ぎにくいけど、ダンジョンを襲撃するやつらも少ないだろ」


 一生懸命DPを稼いで贅沢な暮らしをするというのはありえない。

 小人ならバグのおかげで、そこそこのDPでそれなりにいい暮らしができるんだよ。

 だからこそバグを隠したいんで、稼ぎは地味でいい。


「それでこの妖精島を選んだのね」


「妖精島?」


「知らなかったのね。ここは妖精島。大陸から逃げ出した妖精たちの住む島。この島の周囲の海にはそこそこの強さの魔物が多いから、人間たちが近づくことはないわ」


 妖精島……ネバーランドじゃないのね。妖精が住んでる島か。

 まだ会ったことはないけど、妖精ってどんなやつがいるんだろう。

 人間が近づけないのはありがたい。


「詳しいんだな」


「妖精たちは精霊と仲がいいわ。私は水の管理者。水の精霊たちは私の配下よ。情報も流れてくるわ」


 小人はほとんどが妖精なんだけど、さっき咄嗟に精霊語を選んでしまったのは俺が小人なのもあるのかもしれない。

 リヴァイアサンに精霊語が通じたのにも納得した。

 彼女は水の最上位精霊っぽいポジションなのね。


「ネレイドたちも? ボクの知っている人いるかな?」


 ネレイドは海の女神や精霊(ニンフ)のこと。ポセイドンの妻や娘たちもいるから、コルノの親戚になる。

 ……コルノは珊瑚のニンフなのか?


「どうかしら? 私の記憶ではポセイドンの娘にコルノという名はなかったはずだから、こちらの世界にはあなたを知る者はいないのではなくて?」


「そっか」


 コルノはゲームオリジナルのキャラだもんな。設定集には世界初の血赤珊瑚ヒロインとか書かれてたし、こっちの世界にはいないのが当たり前だ。

 彼女の寂しそうな顔に、話題を戻す。


「まあ、DPが貯まってフィールドダンジョンが創れたら、農業に手を出すよ」


「余計に引き篭もりそうね」


「否定はしない」


 必要がないのに無理に外に出る気はしない。俺はインドア派だ。

 引き篭もってのんびりできたらそう不満はない。

 温泉入って酒も飲める。最高じゃん!


 コルノにプロポーズして結婚してイチャイチャもしたい。

 ……俺にできるかはわからないけどさ。



「と、目標はそんなとこで、そのためにやらなきゃならないことは幾つかある。それをやっていくのが当面のお仕事かな」


「なにをするのかしら?」


「ダンジョンの強化と人員の補充。ダンジョン周辺の確認。食材やアイテムの素材の確保。地味なDP稼ぎ」


 どれも生き残るのに必要なことだ。

 それに加えて、俺自身の強化も行いたい。


「ボク、ゴーレム造りがんばるよ!」


「頼む。あの数に対抗するのは人手が足りなすぎる」


 ガラテアスキルにクールタイムがある以上、人手はコルノのゴーレムに頼るしかない。

 ……猫ならもっと増やしてもいいかな。


「私はなにをすればいいのかしら?」


「えっ?」


 考えてなかった。

 というか、帰ってくれ。無理だろうけど。

 かといって、戦力としては考えられない。強くても瘴気が解放されたら困る。


「……いろいろと教えてくれると助かる。この世界のこととか、スキル関係を」


「そう。フーマの好みは女教師だったのね。服のチョイスを誤ったわ」


「なぜそうなる?」


 レヴィアにこんな知識を与えたのは前のダンジョンマスターか、それとも乙姫か。

 そしてコルノはなぜか嬉しそうで。


「そっか。ボクの服装ってフーマの好みだったんだ」


「はい?」


「ほら、白衣の女教師!」


 合ってるの白衣だけでしょ!

 それに俺は女教師よりも女生徒の方が好きです!


 ……ロリコンじゃないからな。



目標再確認回でした


次回、ついに主人公がはっちゃける?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] リヴァイアサンに精霊語が通じたのにも納得した。  彼女は水の最上位精霊っぽいポジションなのね。 最初に言葉が通じた時に言ってましたよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ