30話 死亡フラグ
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コルノの誘惑に1日耐えた俺だが、決定打をもらってしまい、防波堤は決壊。
前世からも溜め込んだ魔法使いの思いを暴走させてしまう。
夢だと自己暗示をして彼女を……。
コルノを泣かせてしまった。
焦りすぎてしまったようだ。
反省。
「フーマなんか怖かった」
あんだけ小悪魔のように俺を誘っていたコルノであったが、最中に激しく泣かれてしまった。
さすがに俺も途中で止めることにするしかない。
もうちょいだったのに。
これって、魔法使いを卒業できたってことにしていいのだろうか?
「ごめん。俺も焦ってて、コルノのことを気遣う余裕なんてなかった」
「……もう、怖いことしない?」
ついさっきまでむこうからべったりだったのに、今は距離をとられてしまっている。
喪失感が半端ない。
「そんなに怖かったか?」
「うん。まるっきり別人みたいでフーマじゃないみたいだったよぉ」
ひっくとしゃくり上げながら言われる。
ショックだ。
いくらなんでも、そこまでがっついていたのか、俺。
「あんなに俺を誘っていたコルノに怖がられるなんて、相当だったんだな。ごめんな」
「さ、誘ってたなんて……」
え、もしかしておっさんの勘違い?
お風呂に一緒に入ろうとか、一緒に寝ようとか……あれは誘ってるんじゃなかったのか?
キスまでされちゃったから浮かれすぎて……って。
「キスしてくれたよね。あれで誘ってないなんて言わないよな?」
「ち、違わないけど。……思ってたのとちょっと違ったから怖くって」
「思ってたの? どんなのを期待してたんだ?」
「もっとこう、甘ーいムードで、やさしくボクをリードしてくれるかな、って思ってた!」
なにその無理ゲー。
知識はあっても実戦経験のない新兵には不可能なんですが。
やっぱりコルノは性的に接触というよりは、俺に甘えたかっただけみたいだ。
そんな子にあんなことを……。
「期待に応えられなくて悪かった。だけど、それは超初心者のおっさんにはベリーハードなんですが」
「そ、そうなの?」
「俺も初めてだった。……コルノが怖がるならもうしないから、赦してくれないか?」
本当のことを言えば、まだしたい。今度は最後まで。
だけど、無理矢理やってコルノにこれ以上嫌われるのは避けたい。
涙に濡れた美少女が驚いた顔になる。
「ほ、本当にもうしない?」
「したいけど我慢する」
「したいんだ……」
「我慢するから、コルノも俺の眷属をやめるなんて言わないでくれると……」
それ以上、言葉が出てこない。
もし、コルノが俺の眷属はもう嫌だなんて言ったら、このダンジョンから出て行ってしまったら……そう考えると頭が真っ白になってしまう。
「ボ、ボクはフーマの眷属、やめたりなんかしないよ!」
「でも、俺のこと怖いんだろ? 嫌いになっちゃっただろ?」
「そんなことないよ! さっきはちょっと怖かっただけで……ちゃんと途中で止めてくれたし、嫌いになんかなってないよ! ボクはフーマが好きだよ! ……あ」
自分の告白に気づいたのか、泣顔が一転、耳まで真っ赤になってしまったコルノ。俺の視線を避けるように後ろを向いてしまった。
俺も顔が熱い。彼女以上に顔が赤くなっている自信がある。
「す、好きって、俺のことを?」
「う、うん」
チラリと振り返って、すぐにまた後ろを向く。
今のは「ううん」じゃないよな? 「うん」だよな?
コルノがゆっくりと1度だけ頷いてくれたのでホッとした。
「お、俺もコルノが……コルノのことが……」
さっき以上に顔が熱い。
自分の心臓の鼓動がうるさい。
緊張で台詞が出てこない。
「ボ、ボクのことが?」
うわっ、コルノが急に振り返ってきた。
なんかイジケて説得された時のゴータローの動きに近いものを感じる。やっぱり創造主に似るってやつなんだろうか。
って、そんなことを考えてる場合じゃなくて!
「す、……好き、だ」
ふう!
なんとか言えたぜ!
俺は難局を乗り切った。
「あ、愛してる?」
ほゎぁっ?
コルノさん、さらに難易度を上げるのはやめてくれませんか?
「う、うん」
そんなこと恥ずかしすぎて口にできないので、頷くだけの俺。
だいたいさ、会った翌日に「愛してる」なんて言ったら、どんだけ節操がないって気がするってもんなんですが。
俺の言葉がなかったせいか、コルノから再び、ポロリと大粒の涙が落ちる。
さらに慌ててしまう。
「ご、ごめん。いつかちゃんとコルノの期待に応えられるように、甘いムードってやつをマスターするからさ、それまで待っててくれ!」
「え? ……ち、違うよ、この涙はうれし涙だよ。フーマがボクのことを……だから、うれしくって」
コルノももう一度あの言葉を出すのは恥ずかしいらしい。
嫁や結婚とか言うよりも、恥ずかしいよね。
「泣くほどのことはないんじゃ」
「だって、ちゃんとボクのことを思ってくれてるのがわかるのはうれしいよ。さっきは肉欲だけだったから怖かった」
「肉欲ってのは酷いな」
美少女の口からそんな言葉が出てくるのは……ちょっとクるものがあるよね。
「痛いのは我慢できたけど、フーマがほしがってるのはボクじゃなくて快楽だけに思えて、それが我慢できなかった。すっごく怖かったんだよ」
「それは……ごめん」
あの時の俺は魔法使いを卒業するのに夢中で、相手は誰でもよかった気がする。
相手の立場だったら赦せるものではないだろう。最低だ。
どう詫びればいいんだろう。
「うん。もう怖いフーマじゃないみたいだからいいよ。ボクのこと……好きだって言ってくれたし」
えへへっと鼻の頭を擦るコルノ。
それが愛しくてつい、なでるために近づこうしてしまったが思い止まる。
また怖がらせてはまずい。
「コルノは俺の眷属でいてくれるんだよな?」
「もちろんだよ! あと、およ」
「そ、そっちは! ……責任はとる。とるけどプ、ププ、プロポーズはもう少し待ってくれないか。ちゃんと俺の方からするから」
コルノがお嫁さんと言い切る前に、切り出す俺。
やるだけやって――完遂してないけど――責任をとらないというのはありえない。ありえないけど、プロポーズは男の方からしたいと思うのは、俺がおっさんだからだろうか。
「ホ、ホントに?」
またも頷くだけの俺。
だって、これ以上はなに言っても嘘くさくなりそう。
「待ってるね」
待たせるつもりはない。
こんな死亡フラグ立てたままでいられるか!
さっさとプロポーズして、今度こそ最後までする!
「ボク、がんばるから! ゴーレム造りも、あっちの方も!」
ぐっと握りコブシをつくるコルノ。
あ、あっちの方も?
これは期待していいんだろうか。
「あ、ありがとう。ゴーレムは多い方がいいよな。さっきもたくさんのネズミを見かけてさ、それで慌てて帰ってき……」
そうだよ!
魔法使いを卒業してる場合じゃなかった。
このままじゃマジで死亡フラグになってしまうかもしれない!
「コルノ、ゴーレムの追加は?」
「素体がだいたいできたとこかな」
「ちょうどいい。そいつを量産しよう。今は数が必要だ」
あのネズミの群れがもしこのダンジョンを襲っても、耐え切れるようにしなければいけない。
ダンジョンも改装するけど、人手もほしい。
戦いは数だよ。
心配していたゴーレムたちは無事だった。
リヴァイアサンは入り口から入ってきたわけではなく、直接泉の水を使って写しを作ったようだ。
ゴーレムたちはコルノの指示で泉には近寄らず、作業を続けていたらしい。
「ほら、これだよ。ゴーレムスキルのレベルも上がってたから今回はゴータローの強化のテストってことで、球体関節を使った普通のゴーレムにしてみたんだ」
「ドリルと爪のないレッドってとこか」
コルノの作業場であるボス部屋に行くと、ゴーレム素体が関節ごとにバラされて並べられていた。
その横にアイテムボックスから出した土を並べて複製する。
「レプリケーション!」
ゴーレム素体の横にそっくりの複製ゴーレム素体が出現する。
再度複製しようとしたらコルノに止められた。
「まず1つ完成させて問題がないか確認してから、たくさん造ろうよ」
「それもそうか」
問題点が見つかったら改修して、複製しまくってゴーレム隊を造りたい。
俺の死亡フラグなんてへし折ってやる!
今回は難産でした




