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悪いな勇者、このダンジョンは小人用なんだ  作者: 钁刈洸一
3日目 ヒロインと眷属
32/200

閑話 その日の吸血女帝

感想、評価、ブックマーク登録、ありがとうございます


本日2話目です

今回は主人公視点ではありません


4/14 アキラの聖剣の描写を追加

 ゴブリンの首筋に噛みついているのは全裸の少女。

 銀色の髪と赤い瞳を持つ彼女は、右肩から先が無かった。


 だが、その少女アキラの喉が上下する度に右肩の切断面から血液が溢れ、それがゆっくりと腕の形になっていく。


「まずい! もう1杯!」


 ゴブリンの死体から口を放すと同時に、アキラは次のゴブリンの死体をアイテムボックスから出して再び血を吸っていく。

 ぼやけた輪郭だけだった血の腕が、よりはっきりとした形へと。さらには色も血液の赤からアキラの白い肌の色へと変化しだす。



 アキラの右腕が元通りになったのはそれをさらに2回ほど繰り返してからだった。


「腕1本にゴブ4匹か。くそっ、あん時に気づいていりゃあ……」


 聖剣を奪われた時のことを思い出し、不機嫌な表情になるアキラ。

 しかし次にはニヤリとその可愛らしい唇の口角を上げる。


「フーマの言ったとおりだぜ、オレはもっともっと強くなれる!」


 仏教の法具である金剛杵(ヴァジュラ)。その一種である三鈷杵。黄金の三鈷杵を柄にした三鈷剣がアキラの聖剣である。

 落ちていた三鈷剣を拾い、その刃を左肩に当てて迷わずに引く。

 鋭い切れ味を持つ聖剣によって自分の左腕を斬り落とすアキラ。

 しかし心臓に近い四肢を切断したにしては驚くほどに出血量が少ない。


「へえ。これが『血液操作』か。やっぱ吸血鬼はこっち関係のスキルを覚えるのが早えぜ」


 斬り落とされた左腕を拾い、アイテムボックスにしまう。そしてまたゴブリンの死体を出しては血を吸い、腕を修復していく。

 これも吸血鬼の種族特性スキル、『吸血』と『再生』スキルのおかげである。



 聖剣を取り戻す際に、アキラはフーマに再生スキルの性能を聞かれたがアキラはそれを理解しておらず、逆に説明を受けてしまった。

 前世の記憶がないのだから仕方がないが、「吸血鬼ってのはもっとすごいんだ」と力説された。彼も転生エディット時に吸血鬼系を選ぼうかと迷ったぐらいだと。


「でもなんで吸血鬼を止めて、小人(こびと)なんかになっちまうかねえ? あんなん、前世の記憶が無いオレでも弱えって知ってんのに」


 アキラはまだ、フーマの実力を知らない。あの小人の桁外れの力を知らない。

 ともかく、フーマから吸血鬼の戦い方を聞き、その時はゴブリンの死体が足りるかわからなかったので出来なかった情報の確認を今、しているというわけだ。


 聖剣を取り戻した翌日、アキラは再び“未熟者のダンジョン”へと向かった。

 舎弟を自称するエージンをまだ完全に信用していなかったから1人でだ。


 2層ではなく、1層を再び最初からアタックするアキラ。

 邪神のダンジョンは数時間でモンスターが復活する。


「ポップアップだっけか?」


 再びわいた(リポップした)ゴブリンを狩ってその死体を集め、ボス部屋のキャプテンゴブリンと配下のゴブリンたちに再挑戦した。

 聖剣を取り戻し、レベルアップしたアキラはたいしたダメージを受けずにボス部屋のモンスターを全滅させる。


「レア上位種族はレベルアップが遅い分、レベルアップした時のステータスの上昇がいいってフーマはこーさつしてたけど……」


 合ってるようだな、と頷いてみる。

 彼女は弱いはずのフーマを侮ってはいなかった。


「だけど、あいつは甘え。情報とDPを引き出すためとは言ってたが、エージンは殺っとくのが普通だろ。安全第一とか言うくせに、危ない橋渡ってどーすんだよ」


 いつかその甘さがきっと命取りになるんじゃないかと心配するアキラ。


「ま、そん時はオレが助けてやりゃーいっか。今回の借りも返したいしな」


 そう結論をつけると、辺りに散らばるゴブリンの死体に目をやる。

 このゴブリンは本日2度目のアタックで集めた死体だ。


「問題はこいつらをどうするべきか、なんだよな……」


 これらはダンジョンで実験するのは危険だと判断したアキラが自分のダンジョンに運んでいたもの。

 アキラのアイテムボックスは実はかなり大きい。10数体のゴブリンの死体ぐらい余裕で運べる。


「フーマも持ってってたけど、まさか食いはしねえだろう。どうしてんだ?」


 ゴブリンの肉は臭くて不味い。

 血も臭いのだが、聖剣を失い、DPを稼げなかったアキラは他に食料が無く我慢して吸い続けることで『悪臭耐性』のスキルを習得していた。

 それでも不味かったが。


「あいつが無駄なことやるわけねえだろうし……売ってみっか?」


 裸だったのは服を血で汚さないようにとの配慮からだ。だが、血液操作スキルによって血の汚れはほとんどなかった。

 そばに控えていた眷族のゴブリンから服を受け取り、身に纏う。

 ……纏うというにはあまりにも少なすぎなその衣装を。


 アキラが身につけているのは大きなマント、それのみだった。


「なあ、やっぱこれ、オカシクねえか?」


 主の質問に首を傾げる眷族。

 いくらダンジョンマスターから基礎知識を転写されていても所詮はゴブリン。あまり違和感を受けてないようだ。


 なお、アキラが裸だったのにゴブリンがおとなしかったのは眷属だからではなく、雌だからだ。

 アキラは自分の身を守ろうと万が一の危険がないように、眷属にするゴブリンは雌だけにしていた。


マスター(フーマ)から転写された常識で、吸血姫の定番衣装ならこれ! らしいんだが……前世のオレもそう思っていたみたいだけど、なんか落ちつかねえ! さっきの服よこせ」


 このマントはアキラがダンジョンマスターとして目覚めた時に身に着けていたもの。

 つまり、その時も裸マントだった。

 初期装備である貫頭衣はアイテムボックスに入っていたが、それがなければ困ったことになっただろう。


「こいつか」


 ため息とともにゴブリンから受け取った服は体育着。しかも黒ブルマである。

 アキラの血子となり、舎弟を自称するエージンが用意したものだ。

 フーマからの転写知識でその服がどういうモノかは知っていた。


「男ってのはどうして……まあ、フーマも喜んでたみてーだから、いーっちゃいーか」


 吸血鬼らしく血色の薄いアキラの頬がわずかに染まる。

 本人はそのことに気づいていなかったが。




 コアルームのパソコンを操作する。

 軽快に起ち上がったPC。大きな液晶ディスプレイに情報が表示された。

 この光景をフーマが見たらきっと羨むことだろう。


「んだよ、ダンジョンマスターの館でのゴブリン死体の買い取りは10体単位でしかも、1DPかよ」


 それでも今までさんざん倒していた分を売っていれば少しはDPの足しになっていたと知り、落ち込むアキラ。


「んで、オークションは……相場がわかんねえな。えっと、終了した取引も表示?」


 ゴブリンの死体の取引はあった。


「ダンマスの館より高えじゃん」


 その時の価格は5体で1DP。倍である。

 どうやら、ダンジョンをある程度発展させたダンジョンマスターが情報収集や趣味の一環として冒険者プレイを楽しむ時に使うらしい。

 DPで運営から生きたゴブリンを購入するよりは安いし手間が省けるからこの価格なのだ。


「冒険者……か」


 心惹かれるものを感じるアキラ。

 自分の前世に思いをはせる。


「どんなやつだったんだろうな」


 ステータスウィンドウを開いて、指先である部分をゆっくりとなぞる。


 それは称号。

 最近増えた『ゴブリンの殲滅者』の上の行。

 ダンジョンマスターとして生まれた時から持っていた称号。



「ステータス確認しないように命令しあったから、フーマはこれ見てなかったよな? あいつ、オレが『勇者の生まれ変わり』なんて称号持ってるって知ったら、どんな顔しやがるかな?」


 その言葉に応えるかのように、パソコンデスクに立て掛けていたアキラの“前世からの”相棒である聖剣がチカッと煌いた。



吸血鬼がアイテムボックス持ってたら、スペアの手足や血液をストックしておくよね

という主人公案を採用したアキラ


そして実はアキラの聖剣はDPで購入したものではなく、前世のアイテム

よって本当は80万DPでも買えなかったり

アキラは前世の行いにより、転生エディット時に使えたDPは1万よりも大きかったという

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