24話 板
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『ダンジョンマスター生活1日目までのまとめ』に<ニードル系>を追加しました
反省会終了後、落とし穴にかかったプレーリーウルフの死体を放置していたことに気づき、罠まで転移して回収してきた。
「かかったのこいつだけなんだよな。落とし穴はまだあるのに」
「壁や天井を走っていったんじゃないのかな?」
「その手があったか」
壁と天井にも仕掛けが必要。
おっさん覚えた。
2層への階段も、天井走られたんじゃ水溜りも無意味だしな。
「せっかくの分岐も迷わず奥にくるし」
「ウルフっていうぐらいだから匂いをたどったんだよ、きっと」
「匂いか……」
分岐で匂いを消したり変えたりするなにかがほしいな。これも温泉作製で成分調整ができれば……。
「でもダンジョンが大きくなったら、罠にかかったのをいちいち運ぶの大変だよねえ」
「ダンジョンレベルが上がれば自動回収ができるように……そうか、コルノ、次のゴーレムに求める能力がわかった。それは輸送力だ」
「輸送力?」
「ゴータローのマグカップよりも搭載できる荷台をつけよう」
ダンプカーのような荷台を運ぶゴーレムだ。
そうなるとそれに土を盛るショベルアームを持つゴーレムもいるな。折り畳み式にして、天井も高く掘れるようにしよう。
土を掘る場所も穴の底ではなく、1層の通路と部屋を増やすことにする。
侵入者もここまでこれることがわかったし、もう水を張っちゃいたい。
マップウィンドウをコルノたちにも見えるように調整して、新しい作業場を決める。
「ここは泉にしちゃうんだね」
「そう。天井にもなんかする必要がありそうだけど、簡単には2層にいけないと思う」
「ゴーレムの移動はどうする? ボクは泳げるからいいけど」
「ダンジョンレベルの6か7あたりで眷属も使えるダンジョン内移動用のポータルが設置できるようになるはずだ」
それまでは俺が転移で運ぶしかなさそうだけど。
この穴の底から上に出るのも無理そうなので、新たな作業場への移動も転移するしかない。
「湧きでよ、温泉!」
MPを多量に消費して穴の底に温泉を湧かせる。といっても、温度の低いただの水だけど。
『温泉作製スキルがLV3になりました』
もうレベルアップしたか。
それでも穴が大きいんで、すぐにはいっぱいにならない。
その間に俺たちは転移で脱出した。
ゴーレムに密着されても嬉しくないが、それを止めさせるとコルノも転移の時に密着してくれなくなりそうなのでそのままだ。
MPは余計に消費したが無事全員で転移できた。距離も近かったしな。
「ゴーレムたちは、あの通路の先に小部屋を作ってくれ。掘った土はこの部屋に集めて。あとで回収しにくる」
「ゴ」
「ドリ」
了解したと頷く2体のゴーレム。
コルノによればゴーレムは巨大になると建築物扱いになり、“台”や“基”って数えるらしいが、このサイズだとそんな感じじゃないので2人って数えていいよな。
俺とコルノは作業のために2層のボス部屋に転移。
建機ゴーレムの案を詳しく説明する。
話しながらコルノは余っていた複製粘土でゴータローの武器を、俺は使ってなかったオリジナルの石粉粘土をボス部屋の床を使って板状に大きく延ばしていた。
この平らな床がほしくてここに転移したんだよね。
「輸送にもアイテムボックスが使えれば一番なんだけどさ、基本ボーナススキルはボーナスってだけあって、転生エディット時以外は高いんだよね。似たような機能のアイテムバッグも高DPだし」
「ボクもほしいな」
「DPが貯まって余裕ができたらね」
アイテムバッグも小人サイズのは100分の1のDPで買えるけど、収納量も100分の1になってないか確認しておかないとな。いや、100分の1ならまだいいか。6分の1×6分の1×6分の1で216分の1の収納量だったら嬉しくない。
「期待しとく。それで、ゴーレムの方は大きな籠を運ぶんだね」
「その籠も車輪をつけて運びやすくする」
「ゴーレムももっと大きくした方がいいかな?」
「そうだな。材料次第でそれも考えよう。で、ゴーレムの方にも車輪を付けよう。車輪で移動する方が早い。もしくは馬のように4本足のゴーレムにするか」
作る手間を考えたら車輪の方が楽なんだよな。
円をきっちりつくるのは大変だけどさ。1ついいのができたらそれを複製すればいい。ん? それなら脚も複製すればいいのか?
「車輪を持つゴーレム……ドリルの回転もできたし、いけるね。ゴーレムスレの人型派は嫌がるだろうけど」
「そんな派閥あるんだ」
「名乗ってるだけみたいだけどね。動物型派やロボ型派もいたよ」
ロボゴーレムか。前世のお台場の実物大のあれみたいなのをゴーレムにしちゃったやつがいそうだ。というか、きっといるな。
俺のとこはプラモを石化してゴーレム化で小さいのならすぐにもできるかも。もったいないからやらないけどさ。
「ボクはレベルは下がっちゃったけど新たな発想も吸収できてるから、もっとすごいゴーレムができるよ」
「楽しみだ」
前世アイテムのヘラを出してファンドを延ばす。使いかけのファンドを全部使ってしまうが、まだまだ持っているので問題はない。元々安いものだし。
これなら20センチ四方ぐらいにはなるかな。
コルノの方はやはり棍棒のようで、ちらっと見た感じゴツいバットみたいだ。
よし、なんとかファンドを延ばし終わった。
コルノはすでに2本の石棍棒を完成させている。
棍棒二刀流?
その石棍棒2本は土を回収しに転移したついでに渡してきた。
嬉しそうに両手に持った石棍棒をふるゴータロー。
しばらくして満足したのか、その2本をマグカップに持ち替えて、土運びに戻っていった。
あ、マグカップで粘土をくり抜けば、車輪ができるかもしれないな。
別にマグカップじゃなくてもいい。ちょうどいい大きさのを探そう。
「そっちは石化しなくていいの?」
「うん。これは乾燥させてしっかりした板にした方が使いやすい。接続は乾いていないファンドを使えばできるから」
板があれば運搬ゴーレムの荷台も作りやすいだろう。どう見ても足りないが、これは複製するつもりで最初からオリジナルのファンドを使用している。問題はない。
「そろそろ、晩御飯の用意をしようか」
「そう?」
コルノに自分と俺にクリーンをかけてもらい、俺たちはコアルームへ戻る。
ゴーレムたちはずっと仕事。がんばってもらいたい。
パソコンでさっきのスレの続きを見るというコルノを残し風呂場に移動、さっきのプレーリーウルフの死体を出した。
1匹じゃたりないかな? もう2、3匹出しておくか。
今回は死体を解体せずに隣に空き皿と見本の味付け肉、イネ科名無し草を並べる。
「レプリケーション」
おおっ、解体しないでもいけるもんだな。
試したのはブロックの豚バラ肉が安かったので買った時に厚切りの大きめに切って、葱と生姜をいっしょに茹でただけで、冷めたら煮汁ごと冷凍したもの。
脂が適度に落ちていて、いろいろと使い道があるし、そのままマヨネーズやカラシ醤油だけでも美味しく食べられる。
味付けして角煮にした方はまた今度。
コルノがよく食べそうなので、少し多めに複製しておく。
臭み消しに使った葱と生姜は袋から出さずに肉だけ皿に載せて見本にしたので、謎草の消費は少なかった。
プレーリーウルフは毛皮の部分は使われなかったのか、中身だけを吸われたように奇妙にへこんだ、さらに怖い死体になってしまった。
毛皮か。けっこう良さそうな毛皮だけど、こう傷だらけじゃ使えない。
複製の見本になりそうな毛皮の製品なんて持ってきてなかったよな?
……毛皮が駄目でも皮なら使えるかな?
見本と複製した肉をアイテムボックスに収納して、かわりに前世の長財布を出す。皮製の未使用品だ。それを見本にする。
「レプリケーション!」
財布も複製できてしまった。これをばらして使えば、小人サイズの革製品が作れる。
レザーアーマーにはちょっと柔らかいかな?
皮ジャンならいけるかもしれない。裁縫スキルで作れればいいけど。
それこそ小人さんに革靴を作ってもらうのもいいか。
皮を失った死体はさらに怖く……もないか。なんか慣れてきた。逆に作り物みたいに見えてくるから不思議だ。
前世でゾンビ物の映画をけっこう見てたおかげかな?
台所に場所を移し、凍ったままの複製茹で豚を昼と同じく前世出刃で力ずくで切断。
プロパンガスを節約するために鍋にあっつい温泉を作製。適当な量になったら止めて、複製食塩を少しと切った冷凍肉を投入する。
うー、電子レンジがほしい。魔法でマイクロ波とか作れないかな。
上手いこと構造を考えれば、ガスを消費しないで温泉だけで茹でたり蒸したりできるようになるかもしれない。時間的余裕ができてきたら試してみよう。メモメモ。
今夜は寝る前に冷凍保存食をいくつかアイテムボックスから出しっぱなしにして解凍しておくか。その後アイテムボックスにしまえば傷むこともあるまい。
複製記録と謎草を使ってキャベツを複製する。
明日は謎草を採取しに行って、他の野菜の複製も試そう。今は早く作ることを優先だ。
適当に手でちぎった複製キャベツを皿に並べて、温まった複製肉をのせる。味付けにマヨネーズをかけた。チューブから直接は怖かったので、一回別の皿に出してから使ったよ。
本当はサンドイッチにしたいところだがレタスは使い切っていて、こっちに持ち込めなかったし、食パンも8枚切りのが2枚しか残っていない。
アイテムボックスの謎草も少なくなっているので、今回は見送り。
おかずだけじゃなくて主食がほしい。
いや、米もパンもなくてもお酒があればそれでも構わないんだけど、ダンジョン防衛がもっとしっかりするまでは酔えないのさ。
早く晩酌したいなあ。
プラ板を使えば早いのにまだ複製できないのでケチってる貧乏性の主人公




