19話 息子よ
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昨日、さすがに日曜はカウントが伸びるなあと思っていたのに今日のはさらにびっくり
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そろそろ食事にしたい。
俺とコルノは移動するが、ゴーレムには作業を続けてもらう。
掘った土が溜まったら穴底の中央付近に纏めておくように命じた。
「ゴ?」
「運びやすいようになにか入れ物がほしいって」
それは思いつかなかった。俺ってば気が利かない。
アイテムボックスからちょうどよさげな前世アイテムを探す。
見つかったのは金属製のマグカップ。俺たちサイズで説明するならドラム缶よりはちょっと小さいといった感じの大きさだ。
「持てる?」
「ゴ!」
「余裕だって」
「さっきから通訳してくれるけど、コルノはゴーレムの言ってることがわかるんだね」
俺はイマイチわからない。なんとなく嬉しそうだとかはわかる気がするんだけど。
「そりゃね。ボクの作品だもん。子供みたいなもんだよ。あ、フーマも手伝ってくれたから、ボクとフーマの子供かな」
ふぉっ?
結婚も子作りもしていないのに、子持ちにされてしまった。
でもそれってコルノが俺の……なんか嬉しい!
「息子よ!」
「ゴゴー!」
ひしっ。テンションが上がってゴーレムと抱き合ってしまう俺。
息子は力強く、カッチカチだった。
卑猥な意味に思えるのは気のせいだ。
「今のは、パパーだって」
「それはなんとなくわかった」
ゴツイ見た目のわりに子供っぽいな、こいつ。癒し系ゴーレムだ。
せっかくだから名前ぐらいつけよう。
プロトゴーレム、それともゴーレム零号か?。
ストーンゴーレムだからシュタインってのもカッコイイな。あ、でも石ちゃんもありかもしれん。
「どうしたの?」
「いや、ゴーレムの名前を考えていてね」
「あ、ネームドにするんだ。それならフーマの国風の名前の方がこの子も喜ぶと思うよ」
俺の国って日本風ってこと?
最近どんな名前が多かったっけ。キラキラネームはちょっとなあ。
「……ゴータロー」
「え?」
「一番目に出来たゴーレムだから、ゴーレムのゴーと太郎でゴータロー」
悩んだ挙句に出た名前はそんなのだった。すまん、転生しても俺にネーミングセンスはつかなかったようである。
「ゴ!」
「ちょっと変と思ったけど喜んでるみたいだしいいのかな」
「ゴゴゴーン!」
ゴータローが右手を天に突き上げた。指を1本立てている。
またわかった。今のは「イチバーン!」だ。
ゴータロー、中に誰か入ってない? それともそれも必要な知識だったの?
名前をもらったせいか、やたらに張り切って壁を掘り出したゴータローを残し、俺たちはコアルームへ転移する。
自分以外と一緒に転移するのは初めてだったので再びコルノに密着してもらう。下心はちょっとしかない。
平常心とはとてもいえない浮かれた精神状態だったが、失敗することなくコアルームの入り口の扉前に転移する。
扉を開け、入り口で靴を脱ぐ。コアルームは土足厳禁なのだ。
フローリングにしたんで絨毯代わりのバスタオルは片付けてある。
「ここがコアルーム。ダンジョンコアは今は俺と同化している」
「あれがパソコン? あとでちょっと、いじっていいかな?」
「いいよ。……操作方法は教えるから分解するのはやめてね」
なぜかパソコンを材料にゴーレムを作ってるコルノのイメージが浮かんだので注意する。そんなことはしないだろうけどさ。
「じゃちょっと待っててね。ごはんの用意するから。あっ、苦手なものってある?」
好き嫌いはいけないなどと言うつもりはない。どうしても食べられないものってのはあるものだ。
「あんまり変なものじゃないなら、ボクは食べられると思うよ」
「よかった。なにかリクエストはある?」
「うーん。おいしいもの!」
また難易度の高いクエストが発生したね。
ここは引き篭もり……いや、一人暮らしの長かったおっさんの料理の腕を見せてやろう。
こんなこともあろうかと料理スキルも取ってるあるしさ。
料理のためにコアルームから移動する。コルノもついてきた。
「ここが台所?」
「いや、ここは風呂場だよ」
「お風呂? ……ま、まさか食べるってそーゆー意味? ボクおいしくいただかれちゃうのっ!?」
「違うから! 台所でやったら後始末が大変そうなことをするだけだから!」
それはすごくしてみたいけど否定して、アイテムボックスから食材を出す。
昨晩獲れたてのモンスターの死体だ。
アイテムボックス内は時間経過しないらしいからゴブリンの死体でもいいんだけど、ちょっと大きすぎる。
「これを解体しようと思ってここにきたんだよ」
「ああ、なるほど。これを食べるのか。おいしいの?」
「こいつの味はわからないけど、大丈夫だよ」
これをそのまま食べるわけじゃないしさ。
DPで購入した包丁を出して、モグラモンスターを解体する。
もちろん、解体作業なんて初めてでちょっと緊張してる。……魚の三枚下ろしはできるんだ。きっとできるさ。
塗料皿を並べて、部位ごとに分けてそれに置く。
塗料皿は10枚セットで売っていて、高いものでもないので多く持っている。
プラモの塗装をする時に色を混ぜて使うこともあるんだけど、その色を使い切らなかった時はそのまま乾かしておく。乾いた塗料は溶剤を足せばまた使えるので、何枚あっても困らないのだ。
今回は未使用の塗料皿を使うので汚れも気にならない。
適当に解体はすんだ。
既にほとんどバラバラだったので、やったことは皮をはいで、さらにバラバラにして、内臓を分けただけだ。
正しいやり方なんて知らないし、その必要もない。
皮も綺麗にはげなかった。モグラの毛皮ってなにかに使ったって気がするけど、そもそも傷だらけだったしさ。
解体したモグラモンスターを全てアイテムボックスにしまい、浴槽の温泉で塗料皿や風呂場の床を軽く洗う。
解体場も必要なようだ。大物でもバラせるような大きな部屋が。
血塗れの俺はコルノのクリーンで綺麗にしてもらった。
「ありがとう」
「血の汚れは落ちにくいからね。お母さんの血から生まれたボクがいうのもあれだけど」
「コルノは汚れなんかじゃないだろ」
自虐的に笑うコルノの頭を軽く小突く。
「ネガティブは俺とキャラがかぶるから止めなさい!」
「そんな理由!?」
痛くもないだろうに小突かれた頭を両手でおさえているコルノ。やばい、それも可愛い。なんてズルい生き物だ!
台所に場所を移し、アイテムボックスから切り分けたモグラ肉と、その横に1枚塗料皿を出し、前世の肉を取り出す。味付け済みの冷凍鶏モモ肉だ。
セール品の鶏モモを大量買いした時に、切り分けてファスナー付きの密閉ビニール袋に調味液ごと入れて冷凍庫に入れただけ。
作るのはそれほど手間ではなかった。
一度に大量に作れば後が楽だし、買い物に行く数も減る。その分長く引き篭もれる。
それを考えれば全然手間ではない。
おかげでこっちに食材をいろいろと持ち込めたのだから不思議なものだ。
出したのは焼き鳥用に味付けしたもの。
酒、醤油、砂糖と生姜の薄切りと鶏肉を袋に入れて、軽く揉みこんで冷凍してある。
俺が小さくなったので相対的に大きくなった袋のファスナーを開いて、凍ったままのそれを袋から出す。ここでもSTRとDEXの高さが活躍したようで、あっさりと目的の一欠けらだけを取り出せた。残りはすぐにアイテムボックスにしまう。
それを塗料皿に乗せて、さらに砂糖と塩の袋をアイテムボックスから出す。どちらも使いかけで100円ショップで買った袋口に付けるキャップを装着済み。
そのキャップをパカッと開けて別の皿に出す。袋を持って傾けて出すのは零しそうだったので、さっき土を掘ったのとは別の前世スプーンを突っ込んでかき出した。結局少し零れてしまったのは些細なことだ。
名無しイネ科雑草も出して……残るは水か?
シンクにおいた温泉(水)ポリタンクの蛇口から水を出し、前世の湯飲みに汲む。それを零さないように皿たちの横に置いて準備完了。
上手くいってくれよと祈りつつ。
「レプリケーション!」
複製スキルで味付け鶏モモをコピーする。
本当は醤油と酒も出して素材に並べた方がよかったんだけど、零しそうだったので、水と植物、塩で試してみた。
「できちゃった?」
見た目は同じっぽい。どちらもまだ凍っている。
『冷凍鶏肉(調味済)
異世界の鶏の肉の複製
味付けされている
凍っている 』
鑑定結果にも問題はなさそうだ。
醤油と酒は水と植物と塩でできそうだな。砂糖も植物からなんとかできるかもしれん。あとは塩か。
「これでモグラがどんな味だろうと、たとえ毒があろうと問題なし!」
「面白いね。錬金術?」
「いや、そっちも持ってるけどこれは複製スキル。俺の3大高DPスキルの1つだよ」
錬金術に見えないこともないのかな。
あ、錬金術スキルの相乗効果で複製キャベツの味がそんなに劣化していなかったのかも。それとも農業スキルのシナジー?
凍ったままでは切りにくいので、しばらく放置。
その間に使ったMPを確認する。
うわっ、かなり減っているな。謎植物も一気に減ったし、変換効率が悪いみたいだ。醤油には豆類が必要なのか?
青銅の巨人タロスのイーコールって、メデューサの血だったよなという勘違いから
ゴーレム + タロス でゴータロスというのが初期案でした




