17話 時代を先取りした男
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ガラテアに成功し、フィギュアから俺の眷属になった美少女に状況を説明する。
「ここはボクのいた世界じゃないんだね?」
「うん」
緊張するので後ろをむいたまま俺が答えた。
背中で語る男。
ちょっと違うか。
「元の世界には帰れないの?」
「ごめん……」
君が元いたゲームの世界ってフィクションの世界なんだよね。とは言えない。
フィクションかぁ。2次元に行けるスキルがあればよかったのに。
あれ? 今の俺やダンジョンマスターたちの造形も2次元っぽいから、もしかしてここが2次元? 前世の望みが叶ってる?
「そう……。フーマがダンジョンマスターで、ボクはその眷属にされちゃったんだね?」
「うん。ステータスを確認してみて」
「ステータス? わ、なんか出てきた」
ちゃんとステータス表示のウィンドウが開けたみたいだ。
「便利なのがあるもんだね。あっ、フーマの眷属ってなってる」
「そうか。スキルはちゃんとある?」
「……あるけど、なんか弱くない? レベル1なんだけど」
「ええっ?」
俺が振り向くと、彼女は可愛らしい指先で目の前の空間を指差していた。あの辺りにスキルレベルが表示されているのだろう。
でも見えない。
「ちょっと待ってね」
彼女を鑑定してみる。
『コルノ
小人血赤珊瑚 』
これだけか。早く鑑定レベルを上げないと不便だな。あとで使いまくってレベルを上げよう。
そうだ、たしか眷属のならステータスを見れたな。
コルノ
小人血赤珊瑚 女 LV1
フーマの眷属
STR 80
INT 201
AGI 187
DEX 206
VIT 193
MIN 289
HP 273/273
MP 490/490
CP 482/482
スキル
ギリシャ語LV1、日本語LV1、ダンジョンマスター語LV1
水中活動LV1、水泳LV1、ゴーレムLV1
格闘術LV1
地魔法LV1、水魔法LV1、生活魔法LV1
魔力操作LV1
感知LV1、再生LV1、毒LV1、石化LV1、石化解除LV1、髪操作LV1
知識LV1、頑丈LV1、気骨LV1
毒耐性LV1、石化耐性LV1、空腹耐性LV1
呪いLV-3
称号
魔王軍四天王
ゴーレムマイスター
スキルをけっこう持ってて強いと思うけど、たしかに全部レベル1以下になってしまってるな。呪いはたぶんマイナスのレベルってことなんだろうし。
「もしかして俺のガラテアのスキルレベルが低いから?」
「ガラテア? もしかしてフーマはアフロディーテの関係者?」
「え? 違うけどなんで?」
聞いたらガラテアって女神アフロディーテが人間にした像の名前らしい。それがスキル名の由来だったのか。
「ボクは人形から生まれたってこと?」
「う、うん」
隠すつもりだったのにいきなりばれてしまった。
ショック受けないといいなあ。
「ふうん、面白いスキルだね」
「あっさり受け入れるね」
「そりゃ、ボクはメデューサの血から生まれた血赤珊瑚。それが人形からに変わったぐらいじゃ気にもならないよ」
「そんなもん?」
コルノが登場するゲーム“グレートマキア”シリーズは、ギリシャ神話をベースにしたRPGだ。あくまでベースであって、けっこう無茶苦茶なストーリーなんだけどさ。
彼女はそれの2作目の中ボス兼隠しヒロイン。
「そっか。フーマのスキルレベルが低いから、ボクの胸もちっちゃくなったんだね」
「それは原型師のせいだよ」
ゲームでも胸が小さいのを気にしてたっけ。
俺のステータスからスキル名をクリックしてガラテアスキルの解説を確認しようとすると、『次に使用可能になるまであと100日』と表示されている。クールタイムは3ヶ月ちょいか。長いな。
「種族が小人血赤珊瑚になったのもそのせい?」
「スキルレベルじゃなくて、元にした人形が小人のサイズだからだと思う」
他のフィギュアもガラテアしたら、小人なんとかって種族になるんだろうか?
「ボク、小人になっちゃったんだ。面白そうだね」
「面白そう?」
「だって、小人なら小さくても精巧なゴーレムを作れるよ!」
コルノはゴーレムマイスター。
ただしゲームではゴーレムよりも、倒した後に出てくる彼女本人の方が強いのでファンからは“ゴーレムマイスター(笑)”だの、その必殺技から“ワイバーン三段蹴り”だのと呼ばれている。あ、“真ヒロイン”ってのもあったな。
「そう言ってもらえると助かる。協力してくれるかな?」
「もちろん。ボクをこんな身体にしちゃった責任をとってもらうよ」
「せ、責任!? 責任とって、結婚しろって言うのか?」
「だってそのつもりでボクをガラテアにしたんだよね? ガラテアは像を作ったピュグマリオンの妻になったんだし」
そうなのか。
時代を先取りしすぎてるよ、ピュグマリオンさん!
「き、君はいいのか? 会ったばかりの、しかも女性と目を合わせて会話も満足にできないようなヘタレといきなり結婚なんて?」
「冗談だったんだけど……」
そうか、そりゃそうだよね。
こんな拗らせた男が結婚なんてできないよな。
がっくり。
おっさんのピュアなハートをもてあそばれたよ!
「そ、そんなにボクと結婚したかったの?」
「はっきりいって俺は結婚というものに憧れている!」
「なぁんだ。別にボクじゃなくてもよかったのか」
「コルノを選んだ理由に下心がなかったと言えば嘘になる」
ついうっかり、正直に答えてしまった。
だいたいさ、好きじゃなきゃフィギュアなんて買わないわけで。あのゲームの嫁はコルノだったんだよ、俺。
「そう?」
「そ、それよりも! 協力してくれるんなら頼みたいことがある。ゴーレムを造ってほしいんだ」
なんか見つめられてしまい、このままだと俺はさらに余計なことを言いそうだと思ったので誤魔化した。
こんなことならコミュ力の高まるスキルをとっておけばよかった。
「わかったよ。このダンジョンを護るゴーレムが必要なんだね。まずは材料がほしいよ」
「材料? この周りの土じゃ駄目か?」
穴の壁を指差して聞く。
これが使えれば楽なんだが。
「うーん……使えそうだけどいいの? ダンジョン壊れない?」
土壁を手で触って確かめながらのコルノに確認された。
「いいよ。ここの土なら使っちゃっても。拡張しちゃってもいいし」
「そうなんだ。じゃあ……」
土壁からちょっと離れて立ち、両手を土壁にかざして詠唱を始めるコルノ。
正面の壁に魔法陣が光って、そしてすぐ消える。
「……ごめん。なんか抵抗された。ダンジョンの壁から直接は今のレベルだと無理みたい」
気まずそうに謝られた。落ち込んだ表情をされると、なんかこっちが悪いことをした気になってくる。
「直接じゃ駄目ってことは、壁を掘ってできた土ならできる?」
「うん。それなら多分」
「わかった。ちょっと離れて」
通路の壁に触る。力を入れてみると、すんなり指先が壁に刺さっていく。結構軟らかい? こりゃモグラに掘られるわけだ。
それとも俺が力(STR)を強化してたせい?
レベル1の人間20人分ぐらいの力を持っている計算だもんな。
「いけそうだから待っててもらえる?」
「ボクも手伝うよ」
「汚れちゃうからここは俺にまかせて!」
買ったばかりの服が汚れるのをちょっと気にしながらも、いいとこ見せようと張り切って穴を掘る俺。
器用さ(DEX)も強化しているからか素手でも簡単に掘れるけど、効率が悪そうなので道具を使うことにした。
スコップを買うDPも惜しいので前世のアイテムからティースプーンを取り出して使ってみる。
「これだ!」
意外と使い勝手がいい。最初からこれを使えばよかった。
10分ぐらいでかなり掘れた。俺が2人分くらいの量だろうか。
「これだけあれば試せるかな」
コルノは床に置かれた土をこね出した。彼女の白衣が土に塗れていく。俺の努力は無駄だったのか……。
なんか粘土細工をしてるようで楽しそうだったので俺も手伝う。
趣味のプラモで模型用の粘土を使うこともあった。それとは感触も違うな。
「太さはそれぐらいでいいよ」
コルノの指示に従って、円筒状に土を形づくる。2人とも土塗れだ。
形成されたのは長さ、太さの違う5本の円柱。
「それは、こっち」
一番大きな円柱を寝かせて、その左右に1本ずつ長い円柱を、下側に短い円柱を2本配置する。バランスは違うが大の字である。
それから再び詠唱を始めるコルノ。今度は大の字の下に現れた魔法陣もすぐに消えない。
「……ゴーレム、起動!」
寝ていたそれが彼女の命令でゆっくりと起き上がる。
頭と胴体が一体型で、長い腕、短い脚の人体としてはアンバランスなゴーレムだ。土が少なかったのか、身長は俺よりも小さい。
俺が製作に協力したものが動いているのを見ると感動するね。思わず強く拍手してしまった。
「ありがと」
へへっと鼻を指で擦るので、土がコルノの鼻の頭についてしまう。
無言で鼻を指差してあげたら、へへへっとさらに苦笑いして生活魔法を使った。
「クリーン」
コルノの頭上に魔法陣が輝いて、回転しつつ彼女の足元まで光りながら移動。魔法陣を通過したコルノからは汚れが落ちて綺麗になっていた。
「あ、ごめん。ゴーレムに夢中になっていてフーマの汚れにも気づかなかったよ。クリーン!」
今度は俺の頭上に魔法陣登場。すうっと降りてくる。通過した時は特に違和感を感じなかったが、やはり汚れが落ちていた。
「ボクはゴーレムを造るときにけっこう汚れちゃうからね。この魔法があればお風呂に入る時間もゴーレムに使えるんだよ! すごいでしょ!」
お風呂にはちゃんと入って下さい。
それは温泉作製を持つ我が種族への挑戦です。
コルノの名前はアクセサリーから
赤サンゴ製のはトウガラシみたいです
サンゴなので初登場は3/5でした




