番外編 フェアリーライダー
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今回は番外編
155話の続きのようで違います
4コマなみに内容薄いです
幻夢共和国上空を泳ぐように飛ぶ巨大魚。
怪魚というか金魚なバハムートと蛇というか龍というかな長い身体を持つリヴァイアサン。
どちらも無駄にバカでかい。片方はうちの嫁さんの写しなんだけどさ。あっちのバハムートも写しなんだろうか?
「バハムート、この妖精島になんの用かしら?」
「それはもちろん、リヴァイアサンお姉さまに乗ってもらうためです!」
現地の眷属が見聞きしている情報をダンジョン機能でウィンドウに表示させているが、声まで聞こえているってことはよっぽど大きい声なんだろーなー。
「乗って?」
「はいお姉さま!」
いや待てって。乗ってもらうためにってどゆこと?
バハムートは大きいけどリヴァイアサンの方が長いように見えるのだが。
「じゃ、いきますよー!」
「バハムート?」
空中でくるんと金魚が縦に一回転した。それもキラキラとしたエフェクトを振りまきながら。
そして、消えた。
「あの巨体が消えた?」
「ハムちゃんはここです、お姉さまー」
「ウィンドウ、切り替えます」
声は空中ではなく別の場所から聞こえてきて、それに合わせてオペレーター役のムリアンメイドが映像を切り替える。
どこに……ってか、マジでここどこよ?
新たなウィンドウに映っているのはどう見ても幻夢共和国には見えなかった。しかも金魚も映ってはいない。
「サーキット?」
そう、前世の競走用のコースそのものの場所。そこにぽつんと置かれた一台のオートバイ。それがライトを明滅させながら微妙に動いている。
「1枠1番シスターバハムート号です!」
あのバイクが喋ってるの? って、あれがバハムートなの?
なんでバイクになっちゃってるのさ。
どうツッコむべきか迷っている間にウィンドウの映像に一人の人物が入ってきた。
「小生の出番ですね」
あれ、ミーアいつあっちに? それにいつもと違うような。
一目でわかる違い。彼女は大きなベルトをしていた。
どこかで見たような大きく細長いバックル。手には三枚の円盤。あれは人間サイズのボタンかなにかだろうか。
そのボタンを三枚全てベルトにセットしていくミーア。そしてベルトのサイドについていたさっきのボタンより大きな円盤を外して、セットしたボタンの上を滑らすように動かす。
「変身!」
『ミケネコ! トラネコ! シャムネコ!』
変身はミーアが言ったんだけどその後のこの声ってやっぱりベルトから聞こえているのだろうか。
『ケ! ト! シ! ケットシー!』
ミーアが光に包まれて本当に変身してしまった。それも雷獣形態ではなく、前世の日曜朝のテレビヒーローのように。
「2枠2番ミーワrideニャングラー号」
「リアンスリー、いきなりなにを?」
あ、ミーワって三ー輪ってことか。じゃ、にゃんぐらーって。
……ウィンドウにはミーア、いやミーワの横にバイクが増えていた。見覚えのある色と知合いをイメージさせるデザインの。
「ニャングラーってなんなのにゃ!?」
やっぱりニャンシーだったか。なんであいつまでバイクになってんのさ。
だが、残念なことにおかしいのは風雷猫姉妹だけではなかった。
「3枠3番アンコ隊長rideオートアリン号」
「アンコまで?」
「やっとわがパートナーゴーレムの活躍する時なのでアリますよ!」
「お前のアリゴーレム、バイクになんか変形できたっけ?」
聞こえていないのか、返事はない。
しかも枠とか番とか競馬じゃないんだからさあ。
なに、ドッキリなの、これ?
「4枠4番リニアrideバーサークベアー号」
「あ、リニアはゴーレム馬のままか」
「バーサーカーってクマの毛皮の戦士ですよ。クマの毛皮を纏うクマっておかしいような?」
ミコちゃんがリニアの馬のネーミングにクレームをつけていた。もっと他にツッコむとこがあるだろうに。
だが、次にウィンドウに映ったのはさらにツッコみどころが多いやつらだった。
「三人乗りって! サイドのやついる意味ないよね! しかも曲がれるのか、それ!」
「5枠5番カルコ、チェト、ルカンrideフェアリバード号」
フェアリーボーイズが珍妙な三人乗りのバイクに乗っていた。真ん中はともかく左右の二人はサイドボードに寝そべっていて、見ていて心配になるマシンである。
あとロケットカウル懐かしい。
「なんで乗れないのだ?」
テリーがバイクに乗ろうとしているが、なぜか乗れない。
だってあれ、たぶんもう乗ってる。
「6枠6番スケさんrideスパイチェイサー号」
「あ、やっぱり」
「リオちゃんはスケさんの方がいいようですね」
「えええ!? 相棒を寝取られたのだ!」
やめろテリー、透明人間と蜘蛛の濡れ場なんて想像させんでくれ。
つか、テリーは免許持ってないからダメだろー。なんて現実逃避しかけたのだが。
「さあ行くぞフーマ、某ことアクロフロッガーで勝利をもぎ取るのだ!」
そう宣言したハインリヒがにじり寄ってくる。おっさんにもアレに参加しろと言うのか?
じりじり近づいてきたハインリヒがいきなり吹き飛んだ。
「なっ?」
「カァ!」
おっさんの前に大きく翼を広げたカラスがいた。助けにきてくれたのかクロスケ!
「止めろ、突っつくでない。ん? フーマの愛車はホワイトクロウに決まっているだと? なんだその、格好いい悪役が使ってそうな名前は!」
クロスケ、お前もか!
いやクロスケだけではなかった。再びハインリヒが自分の意思以外で空中に打ち上げられる。
「ナウナウナウナウナウナウナウナウ!」
「がっ、がっ、ごっ……ね、ネコパンチ連打もやめ……マシーンアシュラこそ相応しい?」
アシュラまでもがおっさんを乗せてあっちに参戦したいようだった。あの攻撃は初めて見る。さすがに味方相手には爪は出していなかったが。
「どうやら、誰がフーマに騎乗されるのが相応しいか決着をつけねばならぬようだな」
「カーカカ!」
「ナーウ!」
おっさんモテモテ?
嬉しいようなそうでもないような。
「フ、フーマに騎乗って!?」
「そこは聞こえるんだ」
ウィンドウではリニアが真っ赤になっていた。それだとおっさんが乗られてしまうのだが。
前世で実家の猫に乗られたことはあったなあ。寝てる時とか。
「だいたい貴様らはコルノ様に乗ってもらえばいいではないか!」
「ナゥ」
ハインリヒっておっさんは呼び捨てなのにコルノとレヴィアは「様」をつけるんだよね。蛇属性だからってことなんだろうか。
ついと鼻先でアシュラが指したウィンドウにはコルノとゴータローが並んで立っていた。
「チェーンジ、マシーン・ゴターロー!」
「ゴ! ゴ!」
「ゴータローの腕が引っ込んでお腹から車輪が出てきた?」
「いまさらそんなことでは驚けないんだけど」
ゴータローがバイクに変形したが、やはりかとしか感想がわいてこない。頭にハンドルがついたようなデザインはインパクトが大きいが。
「いったいなんなのこれ?」
「え? 今日はレースの日ですよね?」
「レース?」
レースってハルコちゃんがやる編み物じゃなくて競争の方だよな。
妖精にはそんな日があるのか。
ああ、妖精の騎馬行進ってやつか。でもそれならディアナも出そうなもんだが。
「賭けも行うと」
「はい?」
競馬?
妖精って競馬もするんだ。
「馬連多インディの日と伺っております」
ああ、インディカーレースね。ってそれ違うから! バイクじゃなくて車だから!
そもそもバレンタインデーはレースじゃないから!
おっさんは妖精たちにチョコレートを広めようと誓った。
はい、バレンタインネタでした




