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152話 夫婦喧嘩

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 おっさんは気合い入りのアイスミサイル(ミッソー)一撃でレッドキャップをしとめた。

 残りのレッドキャップは3匹。他の連中に任せてもいいだろう。


 ディアナは安定の弓使いっぷり。今度は連射、というか一射しかしていないモーションなのに飛んでいった矢は五本。それぞれが頭と手足を撃ち抜いてレッドキャップは倒れた。


 雷獣モードになったミーアとそれに跨がるリニアはアシュラと共に素早い動きでレッドキャップを翻弄し、頭上のポジションを取った時点でリニアがミーアから離れて巨大化。人間サイズとなったリニアが落下しながらレッドキャップを自慢の血塗れ帽子ごと縦斬りに真っ二つ。


 そして残る一匹。

 ディーナシーとフェアリーたちの組はフェアリーパートナーのゴーレムの攻撃をディーナシーがサポートする形で戦っていた。

 しかし相手にしたレッドキャップが(うま)かった。もしかしたらリーダーだったのかもしれない。


 年寄りじみた外見からは想像できないフットワークで攻撃を回避し、長柄の戦斧を巧みに操って攻撃していく。

 まず狙うのがゴーレムというのもさすがだ。防御力は高いが動きがやや鈍いのを見抜かれたのだろう。一番重装甲でその分遅いルカンのパートナーゴーレムが右腕を粉砕された。


「やるのう」


「コルノが張り切りそうだ」


 防御力重視のやつがやられたってなると、ねえ。

 あと問題点はやはり大きな相手には攻撃力不足といったとこか。ゴブリンぐらいならともかく、上のやつらと戦うには小人サイズだとウエイト差がありすぎて物理ダメージがショボイのはまずい。

 ディアナの弓ぐらいに鍛えなければ。


 ゴーレムを破壊されて慌てたフェアリーたちをフォローするためにディーナシー二人が本気を出したのか、それまでよりも速度を上げてレッドキャップを攻撃、その足に剣を突き刺す。


「おお、あやつの小指殺し(キルピンキートー)は久しぶりに見る。妖精島には大きな生物はいなかったからのう」


「なにその痛そうな名前の必殺技」


「対巨人用の技だよ」


 なるほど。巨人相手に戦った経験があれば体格差のハンデも逆に有効に使えると。

 痛かったのだろう、レッドキャップは目に涙を浮かべていた。だがそれでも歴戦の勇士っぽく叫びもあげずに歯を噛みしめて堪えている。契約できにくいフロアボスじゃなかったら眷属にスカウトしたいとこだ。


 足をやられて動きが悪くなったレッドキャップの隙を見逃さず、ディーナシーが目や首筋を切り裂いていく。もしかしてこいつら、ディアナ配下の中でも強い方なんじゃと思うほどに見事な連携でダメージを与えていく。

 さっきまではフェアリー男子を鍛えるために手加減してたんだろうなあ。


 結局、レッドキャップは声を上げないままに沈んだ。

 そして出現する宝箱。


「これがダンジョンで一番の罠という宝箱だね」


「いや、罠はなさそうだぞ」


「存在自体が罠なんだ。これ目当てにダンジョンを目指す者が多いんだろう?」


 ふむ。小人形態に戻って宝箱をメモにスケッチするミーアのいうとおりかも。でも邪神のダンジョンは瘴気を集めるわけでもないのに、なぜ敵を誘き寄せる?


「邪神のダンジョンは瘴気をばら撒いているのは強き化け物を創るため。強き者を誘き寄せて濃い瘴気に曝すというのはありえるのう」


「そんな目的だったのか。それならたしかにダンジョンのモンスターを倒せばその身に蓄えた瘴気を浴びることになるし、強いやつはどんどん瘴気漬けになっていく、か。でも邪神のダンジョン側の目的なんか考えたこともなかったような。その対策に創られたダンジョンマスターが瘴気を吸収しDPにするのはわかっているんだけどさ」


「うむ。十二神たちのような神は瘴気の影響を受けなかったが、それを利用する力を持っていなかった。だから邪神のダンジョン討伐は面倒なだけでな」


 その反省を活かしてダンジョンマスターのDPはご褒美的なものまで入手できるようになっていると。

 だがそこまでして瘴気をなんとかしたいんなら主神が自分でなんとかすればいいような気もする。


「なんで主神が直接自分で対処しないんだ? やっぱり面倒なのか?」


「主神クラノスが直接出しゃばると邪神ガイアも出てきて、全面戦争になって世界が滅ぶ。主神も邪神も力は拮抗しているから手加減などできぬのだ」


「ああ、代理戦争なワケね。って邪神ガイア!?」


 いや、ガイアってアレだろ? おっさんでも知ってる大地母神の。

 地球じゃないのにガイアって……深く考えるだけ無駄かも。

 まあ、この世界の名前がクラノガイアスだからクラノスだけでなくガイアがいるのは当然なのだろう。

 ため息まじりにディアナが続ける。


「そうだ。知らなかったのか? 邪神であり、主神の妻。ゼウスやヘスティアたちの母であり、つまりは我が祖母でもある。それもあって世界が滅ぶ以前に祖父は手が出せん」


「知らんかったよ。それぐらいダンジョンマスターの基礎知識にあってもいーだろうに。それとも夫婦喧嘩の代打ちさせるのが恥ずかしいのかね? だいたい夫婦喧嘩の理由ってなんなのさ?」


「隠している理由は知らん。人間たちはガイアが邪神だと信じたくなくて邪神の正体が広まってないようだがな。そして喧嘩の理由はわかっている。クラノスは人間贔屓でガイアはそれが気にくわない。もっと化け物じみた外見の生物が好きなのだよ、邪神らしく」


 ガイアが自分好みのクリーチャーを創るために瘴気を撒いていること自体が喧嘩の理由なワケなのね。

 それを旦那は止めきれずに子供やよその人に投げちゃっていると。はた迷惑な夫婦だ。

 あ、十二神が真面目に邪神のダンジョン攻略をしなかったのも、母や祖母であるガイアと戦いたくなかったというのもあるのかな。


 宝箱の中身は小人サイズの真っ赤なベレー帽という予想どおりの物だった。これはレッドにでもやろうかね?

 階層(フロア)ボスを倒したのでさっそく第1層をうちのダンジョンに書き換えておく。

 レッドキャップは訓練相手には良さそうではあったが、幻夢共和国(ドリームランド)の防衛が優先。


 それに、この部屋には入り口と階段へと続く扉だけでなく、他にも通路が延びていた。こちらのものになったので使えるようになったダンジョン機能で確認すると、この通路は長く長く延びている。

 どうやらマブの奥義を避けるため、その範囲外に別の出口を造ろうとしていたらしい。ほっといたら瘴気やモンスターが妖精島に拡がっていただろう。


 うちの領域になった第1層をどんどん書き換えていく。部屋は大きくてもいいが、通路は小人サイズに変更、そしてボス部屋は地上口そばに移動させて、と。

 通路を小さくするのだから差分DPが貰えるようなことはないが、必要なDPはここで稼げた分で足りている。

 ダンジョン出入り口にセットしていた壁ゴーレムは、場所を移動しダンジョン内の壁と一体化してもらう。これで邪神ダンジョン側のモンスターがやってきても迎撃できる。


「しばらくはここで階層(フロア)ボスを頼む」


「了解した」


 ボス部屋にアスカとたまを〈転移〉で連れてきた。

 通路を小さくしたのでどちらか片方だけでも負けはしないと思うが一人だと不安かもしれんしな。

 なにかボス部屋に設置してほしいものはないかと聞くと、要求されたのは大きな姿見とトイレだった。

 ああ、うん。迎撃部屋なんだけど……。まあトイレは長時間いる覚悟したからと思えばいいのか。


 うちの領域を増やすとそのエリアを守るガーダーが必要になってくる。

 新しい領域が増えるごとに前線にアスカを移動させてもいいが、もう少し大きな眷属を増やす必要があるかもしれない。

 この邪神のダンジョンを完全攻略した後も、他の邪神のダンジョンとの戦いで使えるだろうし、どうしようかな。



 ◇ ◇



 ゴーレムも傷ついたのでフェアリー男子を戻すついでに、ボス部屋の二人を残しいったんダンジョン(うち)に戻る。

 回収した幻夢共和国(ドリームランド)の住人の様子も知りたいし。


「手遅れな妖精がいた?」


「ええ。あなたが捕まえたインプの中に邪神のダンジョン産ではなく、幻夢共和国(ドリームランド)生まれの妖精が瘴気で進化してしまった者がいたの」


 そう言って目をふせるレヴィア。妖精を可愛がる彼女もツラいのだろう。

 街で眠っていたモンスターは眷属にしてもいいかなと連れてきていたけど、殺さないでよかったよ。


 けど、瘴気進化してしまったフェアリーはどうしよう。フォーチュンブラックの浄化技で元に戻るといいんだけど……。



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