148話 コア中継器
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コア中継器。
その名のとおり、ダンジョンの外にもダンジョンコアの力を届かせるアイテム。離れた場所でもコア中継器からダンジョンを延長することができるのだ。
とても便利なアイテムなのだが、かなり高価。おいそれと自分のダンジョンを増やすことはできない。
おっさんは【スクナ】の特性として必要DPを少なくできるのだが、それでも高い。フィールドダンジョン化以上のDPが必要だったりする。
まあ考え方によってはダンジョンコアをもう一つ持てるようなものなのでそれも当然か。
侵入者のこない安全な場所にダンジョンコアを置いて、DPを稼ぐのはコア中継器のある人通りの多い別のダンジョン、というのが理想だろう。もしコア中継器を破壊されたとしても本体は痛手を受けないのだから。
で、このコア中継器、実はダンジョンレベルが11になると運営から一つプレゼントされる。
運営側としてはこれを使って邪神のダンジョンの大本である世界の中心を侵食して攻略させるのが目的のようだ。
多くのダンジョンマスターもレベル11でコアを貰うと、世界の中心にコア中継器を設置して攻略を始めるらしい。世界の中心は危険度も高いが、邪神のダンジョンの大本だけあって放出する瘴気が桁違いに多く、入手できるDPも多いからである。
もっとも、すぐにコア中継器付近の自分のダンジョンを完成させないと邪神のダンジョンのモンスターが侵入してきてコア中継器を破壊されてしまう。
一応、世界の中心攻略の新人向けにダンマスのダンジョンの入り口が並ぶエリアもあり、その奥に設置すればすぐに破壊されることはない。その分、手前のダンマスダンジョンに瘴気を吸収されてDPの入りは悪くなってしまうのだが。
おっさんもレベル11に達した際にコア中継器をプレゼントされている。すぐに世界の中心に設置しなかったのは世界の中心にあまり魅力を感じていなかったからと、もっと調べてからでも遅くはないと思ったからで。
その虎の子のコア中継器を幻夢共和国に設置するか、それとももう一つコア中継器を購入するか現在迷い中。
マブは邪神のダンジョンに潜っていたと言うだけあって瘴気を豊富に蓄えていた。眷属化によって思った以上のDPが入ったが、ドリームランドをうちのダンジョン化するのにもDPを使うだろう。
むう。
ドリームランドに出現した邪神のダンジョンがどれほどのものかわからないから、必要な予算が読めんな。
ここは安全策を取って、持ってるコア中継器を使ってドリームランドをダンジョン化、そして邪神のダンジョンを攻略してDPを稼いでからもう一つコア中継器を購入、の方がいいか。
世界の中心攻略中のダンマスには特別手当という形で毎月一定のDPも支給されるのでいずれ参加するつもりではあるから、コア中継器は所有しておきたいのだ。
まあ、できればうちのダンジョン出張所の前に、知合いの世界の中心での出張所を見てみたい。……そんな知合いのダンマスはいないのだが。アキラも世界の中心攻略を始めたという話は聞かないし。
ヨウセイの穴の連中がもっと強くなったら先に出張所を用意させるんだけど、レベルアップのためのDP稼がせるのも大変なんだよなあ。
特訓によって強くはなってきたけどゴブリナのためにメスゴブリン狩りに夢中になっていて、他のもっと稼げる邪神のダンジョン攻略に行かなくて困ってる。
ん!?
メスゴブリンは数匹確保できたよな。
これをゴブリナに進化させて、オークションに出せばDPが稼げるかもしれん。ついでに進化の条件の調査も行って動画撮影しておけば面白いかも!
あいつらが自分たちの眷属にしたがった場合は、他の邪神のダンジョン攻略を条件にすればいいだろう。
問題はうちで育てて出品すると、うちのダンジョンが注目されそうなことか。リヴァイアサンがまだ力を取り戻していない状態でそれは避けたい。
そうなるとヨウセイの穴で育ててもらうことになるが、ゴブリナ系進化に必須っぽいおっさんの温泉はどうやって与えるかということになる。
うーん、未熟者のダンジョンで出しているジュースに使っている炭酸泉に“妖精神の加護”を弱めに与えておいて、訓練後のメスゴブリンに必ず与えるように言っておくか。
いや、与える個体と与えない個体に分けて調べてもらうことにしよう。与えない子はちょっと可哀想だけど。
「よし、繋がった! 大雑把だけど予定ができたな。あとでエージンたちと相談してくるか」
「考え事はまとまった?」
「ああ。そっちはディアナたちとの再会はすんだか?」
「うん! ディアナちゃんも元気そうでよかったわ」
マブの眷属化をすませ、コア中継器の設置に悩んでいる間にマブをおっさんの眷属と会わせていた。ディアナたちと知合いだしさ。
ゴーレムやフェアリーたち一部の眷属はドリームランド妖精の保護を続けている。マブの奥義がストップしたので眠る心配はないだろう。常若の国が常世の国として復活したことを報告に行って行方不明だったディーナシーたちも保護できたので一安心だ。
かわりに邪神のダンジョンの動きに注意が必要になったが、まだ眷属チャットでの報告はきていない。
「マブまでフーマ様の眷属になるなんて」
「モルガンちゃん、うらやましい?」
こてんと首を傾げてあざとく聞くマブ。モルガンは無表情になってしまった。悔しいのかもしれない。
「ワタクシも妖精神様の眷属にしてくださいませ!」
「モルガンは仕事があるだろ。マブの場合は邪神のダンジョンの手先かどうか確認したいという理由があった」
もちろん眷属化後確認したら、そんなことはなかったが。
ドリームランドをダンジョン化してうちの出張所にするのを反対できなくするという理由もあったが、それを言う必要はない。
だが、それにもモルガンは気づいていたようで。
「ドリームランドのみならず、妖精教国もダンジョンの領域としていただければいいのに」
「まだそっちまで手を伸ばす余裕がないよ」
「それにレヴィアちゃんがおっきくなってからの方が信者の妖精も喜ぶんじゃないかな?」
「それはたしかにそうですけれど」
残念そうにがっくりと顔を伏せるモルガン。コルノの指摘のように妖精教の神はリヴァイアサンだから、シャンバラをダンジョン化してこっちにきやすくなったらリヴァイアサンを見に来る妖精も多そうだ。
……最近はおっさんが主神なんだっけ。
「そうなったら、妖精島を手中にしたも同然であるな、婿殿。まあ、現在もそのようなものであるが」
「私もドリームランドの代表なんてメンドウクサイお仕事から解放されて、ゆっくりとリニアちゃんのママに専念できるわ!」
「いや、大統領は続けてもらうぞ。おっさんだってダンジョンの運営で手一杯だから政治なんて関わりたくもない」
「うむ。ワシだってこれ以上仕事が増えるのはのう。いや、可愛い子が増えるだけならば喜んでやるのだが」
おお、ディアナがお尻に触れそうになるのを邪魔そうにペシッと翅で追い払うなんてマブも凄いな。さすがに慣れているということなのだろうか。
「相変わらずねディアナちゃん。女の尻ばかり追い回して」
「最近はおっさんの尻まで狙う始末でな」
「それは……リニアちゃんの相手をたしかめたのかしら?」
「単なる趣味だが」
おっさんの尻触っても楽しくないでしょうに。反応するから喜ぶと思って最近はスルーするんだけど、時々前まで手を回すようになってくるから困ってる。密着した上でやるからカリストが怒るのよ。
おっさん悪くないのになあ。
「あなたがそんなだからリニアちゃんが苦労するのよ!」
「言ってやって言ってやって!」
「フーマちゃんも! そんな隙を見せてないでもっとリニアちゃんをかまうの! ちゃんとお嫁さんにするのよ!」
うん。それはもちろんだ。
マブを説得し眷属にすることができたのはリニアのおかげだもんな。この功績に応えるとかいうことにすればリニアも断りにくいだろう。
「フーマちゃん? ずいぶんと馴れ馴れしいのね」
ピクリと片方だけ眉を上げるレヴィア。抱っこされたままなので俯いたモルガンがレヴィアの髪に顔を埋めてハァハァしているが、みんなそれは見ない方向でいくようだ。
「リニアちゃんのお婿さんになるってことは、私の息子も同然でしょ」
「ま、ママ!」
「リニア、苦労してるのね」
真っ赤になって慌てているリニアを一瞥して大きくため息をつくレヴィア。おっさんも追随したいが、それをぐっと堪える。
だが、もう一人の嫁さんは違ったようだ。
「ママか。いいなぁ」
「あら、コルノちゃんも私の娘よ。レヴィアちゃんもね」
そう微笑みながらウィンクする妖精大統領。
さっきの泣き顔に騙されそうだったが、ディアナの言うように強かな部分もたしかにあるのかもしれない。
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