13話 魅了
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PKダンジョンマスターは俺たちに敗れ、アキラの血子となった。
「舎弟っす!」
別の意味で鬱陶しくなった気がする。
「さてと、それじゃエージンのダンジョンに案内してもらおうか」
「オイラんちっすか?」
「慰謝料を貰わないとな」
アキラは殺された上に聖剣を奪われて大変だったし、俺も斬られて痛かった。一張羅も酷いことになっている。
ただで済ますつもりはない。
俺の転移先も増やしておきたいしさ。
いったんアキラたちと別れ、ポータル部屋から自分のダンジョンに戻ってくる。
PCの電源が入りっぱなしだった。
ポータルに入る前に電源を切っとけばよかったか。
アイテムボックスから複製キャベツを出し、それを摘まみながらダンジョンマスターの館を見て、連絡を待つ。
『エージンさんからダンジョンへの招待がきています』
エージンからの招待がきた。『はい』を選ぶとコアルームにまた、ポータル魔法陣が輝く。
他のダンジョンマスターのダンジョンに行く場合、招待を受けないと転移することはできない。
そうでなければ入り口から入るしかないのだ。
今回は忘れずにPCの電源をオフにする。
ポータル魔法陣にとび込んだ先は、エージンのダンジョンのコアルームだった。
「どうぞ、狭いとこっすけど」
出迎えるエージンにはまだ両腕がない。
自分のダンジョンに戻れば再生スキルを持たなくても修復能力が働いて欠損部分も再生するが時間がかかる。急いで治すにはDPがかかる。
「俺には十分広いから気にするな」
きょろきょろとコアルームを見回した。
正面に大きなモニター。
中心には大きなテーブル。
それを囲むソファー。
そして天井にはミラーボール。
「まるでカラオケボックスじゃないか!」
「わかるっすか。さすがっすね。1曲歌っちゃうっすか?」
なんだかなあ。
ここマジでコアルームなの?
「あれがダンジョンコアっすよアニキ」
目線で天井を指すエージン。
ちゃんとコアルームのようだ。俺がミラーボールと思ったのはダンジョンコアだった。
へえ、俺のと色や形も違うのか。大きさは同じくらいだけどさ。
運営さん、ダンジョンコアも小人サイズにしてくれませんかね。
「アニキ?」
「姐御を眷族にしてるダンジョンマスターっすからアニキっす!」
ああ、そういうことか。
それで俺にもこんな態度なのか。
「なんかエージン、キャラ変わりすぎじゃね?」
「こっちが地っす。さっきまでは悪いことをするからって、なめられないようにがんばってキャラ作ってたんすよ。イカシてたっすよね?」
「いや、ただのヤなやつなだけだった。悪いことしてたって自覚はあるんだな」
「スンマセンっす。いけないことだってのはわかってたっす。けどいいわけになるっすが、全然DPが稼げなくて焦ってたっす」
うわ、聞かなきゃよかった。
こんなことを聞かなければ気にせずに慰謝料としてDPやアイテムを毟りとれたのに。
「ふん。まさにいいわけだな。結局テメエの都合じゃねーか」
「アキラもきたの……なにその格好?」
アキラは先ほどまでの、ダンジョンマスターの初期装備と思われる貫頭衣ではなかった。
白い半袖シャツにブルマという、昭和の体育着スタイルだ。
吸血鬼だからかブルマの色は黒。マニアックである。
「ほら、オイラ姐御のお召物を汚しちゃったじゃないっすか」
「ああ、落とし穴にゴブリンの血を流してたな」
「落とし穴の槍で穴も開いてたっす。だから代わりを献上したっす。元々姐御を眷属にできた時に使おうと思ってたんすよ」
だから名札もちゃんと『あきら』ってなっているわけか。サイズもぴったりのようだな。
俺はエージンにサムズアップ。エージンも力強く頷いた。
こいつを殺さないでよかった。
俺の一張羅もエージンに刺された時に大きな穴開けられてるけどさ。
血塗れだけどさ。
「なに言ってやがる! おい、他のはねーのか?」
「それ高かったんすよ! 他のっすか? うちの眷属ちゃんたちのだと姐御にはサイズが合わないと思うっすよ」
チッ。舌打ちして外方を向くアキラ。その頬は赤い。
似合ってるんだから照れないでもいいのに。
「なあ、こんな服やカラオケに使ってるからDPが稼げないんじゃないのか?」
「自覚はあるっす」
「あったんですか?」
そう驚いたのは、カラオケボックス風のコアルームにトレーを持って入ってきた女性。
ものすごい巨乳のバニーガールだ。
俺の身長からだと下から見上げる彼女の胸が邪魔して顔がわからないが、きっと美女だと思われる。
「粗茶ですが」
テーブルに持ってきた湯飲みを置き、ついで俺を拾い上げてソファーに乗せてくれた。
タレ目で左目の下の泣きボクロが印象的な美女だった。
「姐御ほどじゃないけど美人っしょ。オイラの自慢の眷属、サキュバスのサッキィっす」
「サッキィです。よろしく」
「俺はフーマ。見ての通りの小人だ」
ニッコリと微笑んでくれる。小人な俺にも優しいいい人みたいだ。
こんな美人さんが眷属か。毎晩楽しんでいるに違いない。
サキュバスはじっと俺をみつめている。
なんだかやりづらい。こんな美女に見られてたら緊張するじゃないか。
小人じゃなかったらガチガチになってたろうねえ。
突然、ぺしーんとアキラがサッキィの頭をはたいた。
「おいテメエ、なにフーマを魅了しようとしてやがる」
「すみません。あまりに可愛らしいので、つい。でも抵抗されました。効いてませんよ」
さすがサキュバス、あざとい。
リアルてへぺろなんて初めて見たよ。
気づかなかったけど俺を魅了しようとしてたのね。
魅了耐性と精神異常耐性の2つのスキルがちゃんと働いてくれたみたいでよかった。
精神異常耐性スキルは、他の精神異常にまとめて対応するスキルでその分効果は低いが個別の、魅了や恐怖等の異常耐性のスキルと重複できる。
「サキュバスだもん、そりゃ持ってるよねえ。油断してた。君が小人サイズならかかってたよ」
「ご主人様ならすぐにかかってくれるのに」
「オイラがみんなの魅了に抵抗するわけないっすよ」
抵抗しないから魅了耐性スキルを習得できなかったのか?
「ふむ。アキラを眷属にできたらその1日の間にサキュバスに魅了させるつもりだったな?」
「そっす。怒らないで聞いてくださいっすよ。サッキィはあっちのテクもすっごいっす。そのテクで姐御をメロメロにさせて、オイラたちから離れられないようにするつもりだったっす!」
「なにそのエロゲー」
「ヴァンパイアの、それもエンプレスを魅了するなんて無理だからやめなさいって私たちが何度も止めたのに。やはりこの様ですか。ごめんなさい、ご主人様が御迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げるバニーさん。目の前にきたウサ耳に触ってみたい誘惑にかられるな。
「私たちって、他にもいんのかよ?」
「はいっす姐御。ラミアのラミィとハーピィのハッピィがいるっす。みんな巨乳っす。ハーレムっす!」
「そのネーミングってことは、現地調達したわけじゃないよな? もしかして転生時のDPで購入したのか?」
「そうっす! DPのほとんどをつぎ込んだっす! だからダンジョン狭いっす」
ある意味俺に近いパターンか。
俺は自分に、こいつは眷属にDPを使ってダンジョンをおろそかにしてる、と。
「もっと先を見てDP使えっての」
「聖剣につぎ込んだアキラが言う?」
「覚えてねえよ! それにオレは聖剣で稼ぐつもりだからいいの! なのにこいつが……」
たしかにアキラは聖剣があれば邪神ダンジョンで稼げるか。
まだ危なっかしい気もするけど俺も自分のダンジョンがあるし、かまってばかりもいられない。
「なら、聖剣を奪われた苦しみをわからせるために、エージンにとっての聖剣である眷属を貰うか? 慰謝料として」
「いらねーよ、そんなの」
「ありがとうっす姉御! 一生ついていくっす!」
エージンは泣いて感動してる。
眷属たちは大事にされているのかな?
「それじゃ慰謝料はDPだな。現在持ってる総DPの半額を貰おう」
「それは……」
「きつ過ぎるか?」
「たしかにきついっすけど、うちDPがほとんどないっす。その程度で済ませたら申し訳ないっす」
エージンの所持DPは321。
ダンジョンレベル5のダンマスのDPとしてはあまりに少ないと思う。
「だから無駄使いを止めるよう、いつも言ってるのに」
「無駄使いじゃないっす。オイラのやる気のための必要経費っす!」
特大のため息をはくサッキィに、ろくな物を買ってないのがだいたいわかってしまった。
「エージン、まずは貯蓄を覚えような」
「わかったっす!」
「ご主人様が貯蓄をしてくれるなんて……ありがとうございます」
涙を拭ってまた頭を下げるサキュバス。享楽的なイメージのあるこの種族にここまで言わせるなんて、どんだけ苦労かけてるんだよお前。
「半額ってことは160DPか。オレとフーマで山分けして80DPずつな。しけてんなあ」
アキラも空気読もうね。
「そうか? 昨日ダンマスになったばかりの俺にとっちゃ大きい額だぞ」
「アニキ超初心者じゃないっすか!」
「マジかよ」
そんなに驚くとこかね。レベルだって1じゃないか。
ダンジョンレベルは今日の儲けで上がっちゃったけどさ。
クイズは引き続き回答募集中です
3章から登場するヒロインを当ててください
1 フィギュア
2 獣人
3 ドラゴン
4 勇者
5 女神
6 その他
7 ヒロインなんていない
正解者には特に何もありません




