144話 ララバイ(アンコ視点)
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今回はアンコ視点です
「リニア隊長、もっと急いでもいいのでアリますよ。リニア隊長と自分のゴーレムはスピードも出せるのでアリます」
現在、任務遂行中のアンコでアリます。
今回の任務の隊長であるリニア殿にスピードアップを打診したのでアリますよ。
自分のゴーレムは今は亡き姉妹たちの亡骸を使用しており見た目もよく似ていて、リアンたちのゴーレムよりも戦闘を主目的にしておりながら移動速度もなかなかのものでアリますゆえ。
「あまり急ぎすぎても途中の異変を見逃すよ」
「そうでアリますか?」
自分はダンジョン産まれのダンジョン育ちなのでこの妖精島の異変と言われても、元の景色を知らない以上、わかりにくいのでアリます。今回の自分の任務はリニア隊長の護衛でアリますな。
「目的地は幻夢共和国だけど、そこへたどり着く前に襲われるかもしれないだろ。道中も油断は禁物だよ」
「それもそうでアリますね。自分は初めてのダンジョン外での任務で燥いでいたようでアリます」
見晴らしのいい小高い――あくまで小さい妖精たちにとってはでアリますが――丘で休憩中の自分たち。
周囲を警戒しやすい場所なのでアリますが、よく考えたらこの場所は敵からも発見が容易なのでアリます。
リニア殿はドリームランドの方向を向きながらカップに口をつけます。アイテムボックスから出したもので温かいお茶が入っているのでアリますよ。
兜を外さずに器用に飲んでいるのでリニア殿も警戒中なのでアリますな。
「それにあまり急いでドリームランドに夜着くのもマズイんだ。時間を調整しないとね」
「夜はマズイでアリますか?」
「ああ。元々妖精の多くは夜が得意なんだけどね。ドリームランドの連中は特にそうなんだよ」
「国名もそんな感じでアリますな」
なるほど。我らが司令殿には安全第一を厳命されているのでアリます。無駄な危険は避けるべき。
リニア殿は視線をドリームランドの方から自分の妖精馬ゴーレムへ向けたのでアリます。
「ディーナシーも妖精の騎馬行進で夜駆けするから似たようなもんなんだけどね。何騎もの妖精騎士が凄い速さで駆け抜けていくんだ」
「ほう。それは見事でアリましょうな。自分も行進にはちとウルサイのでアリますよ」
「そりゃアリの行進も凄いもんな」
「いかにも。なのでアリます!」
自分たちの進化前の【レギオンアント】は軍隊アリの系統なのでアリます。行進は大得意なのでアリました。
妖精神である司令殿のお力でこの姿に進化こそしましたが、アリの得意分野は残っているのでアリますよ。
◇ ◇ ◇
途中で石化したノームを数体発見。
様子を見る限りモンスターの攻撃で石化したのではなく、日光から逃げ切れずに石になってしまったようなのでアリます。
元に戻してあげたいのではアリますが、自分たちのアイテムボックスには入らないので眷属チャットでこのことを伝え、回収班が向かうことに。
「すまない。必ず戻せるから待っていてくれ」
石化解除薬もあるのでアリますが、これから先も石化したノームに会いそうなのと自分たち用にと使用を控えたのでアリます。
兜でよく見えませんがリニア殿はとても悔しそう。リニア殿の【スプリガン】は妖精たちを守護する種族だとミコ殿が言ってたのでアリます。それもあって無念でならないのでアリましょう。
さらに石化ノームに遭遇、眷属チャットでの報告を繰り返しながらもついにドリームランドの町並みが見えてきたのでアリます。
今は昼ごろ、ちょうどいいのでアリますよ。
「ストップ。いったん停止してここから様子を窺うぞ」
「ここからでアリますか? ちょっと離れすぎなような?」
まだ町の喧騒が聞こえないほど距離があるのでアリます。
けれどリニア殿はじっと町を見つめて動きません。
仕方なく自分も町を観察しますが、さすがによくわからないのでアリます。
「リニア隊長、これではちょっと無理なのでアリます。自分が偵察してくるのでアリますよ。なに、イザとなったら飛んで逃げますゆえ、心配はないのでアリます」
自分たち【ムリアン】はフェアリーたちのように翅はないのでアリますが、鳥に変身することができるのでアリます。
変身すると元に戻った時に身長が縮んでしまうので司令殿に使用を控えるように言われているのではアリますが……。
「だけど……いや、それしかないか。気をつけて行くんだよ。自分になにかあったらゴーレムにすぐに撤退するように前もって命令しておくのを忘れないでくれ」
「了解でアリます!」
敬礼をしてゴーレムを町に向かわせるのでアリます。もちろん、異常時の撤退命令もしておいたのでアリますよ。
やっと町がよく見えるようになってきました。
ノーム大工の手によるものなのでしょう、町並みは常世の国に近いのでアリますな。
倒れて石化しているノームたちの服装も似たようなものです。
『
アンコ>倒れて石化しているノームを発見
リニア>アンコに異常はないか?
アンコ>自分は問題ないでアリます。これよりノームを調査するのでアリます
リニア>気をつけてくれ。異常があったらすぐに撤退だよ
アンコ>わかっているのでアリます
』
大声を出せば届くでアリましょうが、敵に見つかりやすくなるので眷属チャットにて連絡を行い、石化中のノームの調査。
複数のノームが倒れて石化中であります。ふむ。これは日光で石化したのでアリましょうか?
『
アンコ>どのノームも苦しそうな表情はしてないのでアリます。むしろ安らかな表情で寝ているようにも見えるのでアリます
リニア>急いで戻ってくるんだ、アンコ!
アンコ>りょ、了解でアリます
』
なんだかよくわかりませんが、リニア殿は焦っておられる様子。上官の命令に逆らうはずもなく自分は撤退するのでアリます。
……おや、なんだか聞こえてきたのでアリます。
女の妖精の声?
これは歌でアリますな。キレイな歌ご……。
◇
気づいた時には心配そうに自分の顔を覗きこむリニア殿の顔が近くにあったのでアリます。
「よかった、目が覚めたか」
「自分はいったい?」
「寝ちゃったんだよ。アリゴーレムが運んでくれたんで、状態異常の回復薬を使ったんだよ」
「そうでアリましたか。面目ない、お手数をかけたのでアリます」
まさか自分があんな簡単に眠ってしまうとは。不覚なのでアリます。リニア殿の指示に従ってゴーレムに命令していて正解だったのでアリます。
「イビキがすごかったよ」
「じ、自分はそんなイビキなんてかかないのでアリます!」
「ふふっ、冗談だよ。眠る前になにがあったかわかる?」
「ヒドイ冗談でアリますよ、リニア隊長も妖精が悪いのでアリます! ……自分が眠る直前に歌声が聞こえたのでアリます。女の声でとてもキレイな歌でアリました」
そう報告すると、リニア殿はしばし無言に。
すぐに撤退を促したり、ゴーレムへの指示といい、なにか心当たりがあるのでアリましょうか。
「リニア隊長?」
「マブが町を眠らせている。言わば眠りの結界。その範囲内にアンコは入っちゃったんだよ」
「眠りの結界でアリますか?」
ゆっくりとリニア殿は肯いて説明を始めたのでアリます。
ドリームランドの頂点である妖精大統領について。
「マブは夢の女王。夢の中ではディアナ様だって敵わないんだ」
「そ、それはスゴイでアリますな」
あのリニア殿がディアナ殿以上と言うほどとは!
とてつもなく強い、ということなのでアリましょう。
「普段眠らせる時は眠りの砂を使うんだけど、歌声が聞こえてきたというのなら奥義を使ったんだろう」
「奥義でアリますか?」
「うん。あたしも話にしか聞いてなくて実際に目にした、いや耳にしたことはないんだけどね」
リニア殿の話によれば自分が聞いたあの歌こそマブの奥義、“夢の女王の子守歌”なのでアリます。
昔、妖精島でおこった戦争を止めたほどのすさまじい威力なのだそうでアリます。
「まあ、戦争を止めたってのはたぶん誇張が入ってるんだろうけどね」
「妖精は話を盛ることが多いのでアリますからね。ですが、自分が眠らされたあの威力は本物でアリますよ」
「ああ。でも、ゴーレムは無事に戻ってこれた。元々寝ることのないゴーレムには効かないみたいだからなんとかなる、かな?」
ディアナ殿はこれを予想していたのでリニア殿をこの任務に推薦したのでアリますか。自分もパートナーゴーレムが完成していなかったら任務から外されていたのでアリましょうな。
眷属チャットで司令殿に報告、指示を仰ぐとすぐに司令が〈転移〉してきたのでアリます。
たくさんのゴーレムを引き連れて。おお、ゴータロー殿もいますな。
あまりにも速すぎるのは待ち構えていたからでアリましょうか?
「よくやったリニア、アンコ。石化したノームや眠っている妖精たちはゴーレムたちで救出しよう」
「あ、ありがとうフーマ」
「自分はリニア隊長がいなければやばかったのでアリます」
「そうか、無事でよかった」
司令殿と話をしている間にもゴーレムたちが妖精たちを運んできたのでアリます。かなりの数がいますな。
石化したノームだけではなく、眠っているだけのノームやフェアリー、ケットシーにブラウニー等いろんな妖精が寝ていたのでアリますよ。
「フーマ、妖精たちもそうだけど、邪神のダンジョンから出てきたモンスターもいるんじゃないかな? マブはそいつらを眠らせるために夢の女王の子守歌を使っていると思うんだ」
「それもそうか。……ん? だとするとマブって起きているのか?」
「ああ。でもモンスターをなんとかしないとマブが子守歌を止められないから」
さすがでアリますなリニア殿。
司令殿がモンスターを運んでくるように指示すると、ゴーレムたちがすぐにインプを発見。インプも眠ったままでアリますな。
ゴーレムたちはさらには眠りこけるゴブリンの大きな体も数体で引きずってきたのでアリます。
「こりゃたしかに邪神のダンジョンがありそうだな」
「うん。妖精島にゴブリンなんていないんだから」
「あ……司令殿!」
自分が指差した先にはゴーレムに運ばれるゴータロー殿の姿が。
全く動きません。やられてしまったのでアリますか?
「あー、寝ちゃったか。さすがゴータローだな」
「城の方に近づきすぎたみたいだよ。そろそろマブに連絡した方がいいかもしれない。あの妖精もあたしたちに気づいているだろうからね」
「そうでアリますな。なんだかまた歌声が聞こえてきたような気が」
ま、また眠くなってきたのでアリま……。




