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142話 プロポーズ失敗

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 第2層、ダンジョン機能で移動させた修復中のティル・ナ・ノーグ城。

 ノームや他の妖精が手入れをしているの見るために城内を見学中なんだけど。


「婿殿、孫はまだか?」


 さわさわとおっさんの尻をなでながら、背後から耳元に囁くように告げるディアナ。

 この人、いや、この妖精、いつのまにか背後を取られてしまうから困る。

 おっさんだって鍛えているのに。

 たぶん、元狩猟の女神だから気配の消し方の極意を心得ているのだ。


「今のダンジョンレベルではまだ子供は作れないと説明したろう。だいたいだな、それどころじゃないし」


「なんだと、リニアに不満があるとでも言うのか!」


「いや、あのね」


「カリストゆずりの美少女であることもさることながらあの、圧倒的な巨乳でありながらバランスの悪さを全く感じさせない美乳! 尻派のワシでも思わずムラムラして手がのびそうになる逸品なのだぞ!」


 あんたが尻派だってのはよおっくわかっているけど、おっさんが言いたいのはそういうことじゃない。

 そりゃリニアの胸は素晴らしいものであることは否定しないけどさ!

 コルノとレヴィアのちっぱいも大好きだけれど、あの存在感と柔らかさは次元が違った。うん。

 あれは、いいものだ。


「じゃなくてだな、リニアの様子がなんかおかしい」


「なに?」


「あからさまにではないけど、避けられてる気がする」


「考えすぎではないのか? あれが婿殿を避けることなどあるまい。もうメロメロではないか」


 そんな呆れた顔をせんでも。

 確かにおっさんだって手を出しちゃった直後は、自惚れではなくそう思ってたんだけどね。

 これはもう、コルノ、レヴィアに続く新たな奥さんをゲットだ! ってさ。

 なのに……。意識せずに出てしまった大きなため息のあとに続ける。


「おっさんが責任取るためにコルノとレヴィアに許可もらったから結婚しようって告白したら、自分は愛人でいいって断られた」


「ふむ」


 右手を顔の高さぐらいにまで上げて指パッチンするディアナ。それを合図にすぐにディーナシーが集まってくる。

 あ、おっさんの眷属になってくれた子まできちゃってるな。


 ほとんどが輝く鎧姿の美女たちだ。城内でありディアナの前であるためか兜をしてる者はいない。

 フェアリーやノーム、シルキーの少女もいたりするが、やはり美少女ばかり。もしかしてディアナのお手つきの子たちなのだろうか?


「お呼びですか、ディアナ様?」


「うむ。じゃが、皆きてくれなくともよかったのだがのう。集まりすぎたから場所を変えるか」


 で、謁見の間。

 玉座の間のように大きく豪勢な椅子があるが、これは現在玉座の間が修復中なのとたくさんの妖精たちにディアナが会うことが多いのでこうしているためで、必ず置いているわけでもないらしい。

 その大きな椅子におっさんが座らされ、なぜかその上から横向きに座ってくるディアナ。


「お、おい」


「気にするな、婿殿との親子のスキンシップじゃ」


 んなこと言われてもね。性格はエロオヤジだが美人でプロポーションのいいディアナにこんな密着されたら意識もするわけで。

 ほら、集まったディーナシーたちだって微妙な表情になってるじゃないか。カリストなんて思いっきり睨んでいるし。


「そうむくれるなカリスト。なんならくるか」


「はぁい!」


 ちょいちょいと手招きされたカリストがディアナの膝の上にダイブしてきた。

 重! ……くもないか。鍛えられたおっさんの身体と豪華で頑丈な椅子なら余裕で耐えられそうだ。


「よしよし。他の者はあとで可愛がってやるからのう」


「はぁい」


 嬌声じみた美少女妖精たちの返事が怖い。うちの眷属たちより統制が取れてません?

 これがアルテミスの処女ハーレムか。


「誰かリニアのことに心当たりのある者はおるか?」


「きっとぉ、こいつのアレがぁ、ヘタすぎてぇ、嫌になっちゃったんだと思いますぅ」


 ディアナの頭を抱えて甘えるようにスリスリしながら間延びした声で回答するカリスト。その尻をなで回すディアナ。おっさんのすぐそばで、んなコトをせんでほしいんだけど。「やぁん」なんて甘い声出さんでくれっての!


「それはないわ。リニアは満足している。というより、すぐにダウンしてしまうぐらいだもの」


「ほう。そこんトコくわしく。レヴィアがまさかその身体でもう参戦しているとはのう」


「いいえ。見学だけよ」


「是非ともワタクシもご一緒に見学させてほしいのですわ、お姉様」


 謁見の間に現れたのはまだ小さな姿のおっさんの嫁と、それを抱っこしている桃色がかった金髪(ストロベリーブロンド)妖精教皇(フェアリーポープ)

 モルガンは小さなレヴィアが不自由しないようにと、ほぼ毎日べったりだ。さすがに夜は帰っているけどさ。

 おっさんに横座りするディアナを睨んでいるレヴィアと幸せそうにだらしない顔をしているモルガンが対照的である。


「させるか! あと説明しないでくれレヴィア」


「もちろんよ。夫婦の秘めゴトですもの」


「むう。ワシも覗くべきかのう」


 止めてくれ。ディアナのストーキングなら気づかない内に寝室に紛れ込んでいそうで怖い。

 冗談でおっさんたちサイズの段ボール箱作ったら妖精たちに流行して(はやって)しまったんだけど、ディアナはそれを利用するとマジで発見が困難になる。

 違和感バリバリの段ボール箱なのにディアナが隠れると存在感を感じなくなってしまうのだ。元狩猟の女神の面目躍如かはわからんがアンコが絶賛するほどである。


「リニア殿が司令殿の求婚を断ったのは、階級を気にしてだと思うのでアリますよ!」


 ……わざと無視していた段ボール箱からドヤ顔で出てきたアンコ。

 いや、知ってたから。

 ディアナと違って、かまってオーラが凄い出てたんであえて見なかったことにしていただけだから。ディアナハーレムの妖精たちだって驚いていないでしょ。


「階級、ってうちにそんなのはないんだが」


「司令殿の妻となるにはそれなりの地位が必要なのでアリますよ。手柄を立てるまでは愛人でいいと思っているのでアリますな」


「おっさんの嫁にそんな条件をつけんでくれ」


 なに、ダンジョンカースト最上位がおっさんの嫁なの?


「なるほど。ワシにはよくわからんが、そういうのはあるものなのか?」


「そうでアリます。ぽっと出の弱いやつが司令殿の奥方になったりしたら他の眷属たちもよく思わないのは当然なのでアリます」


 そんなもんか?

 上司の相手が女学生とかだったらたしかにアレだけど、相手の身分まで気になるのか。


「人事関係でよくあることなのですわ。能力だけで抜擢しても周囲の協力が得られない者もいるのですよ」


 教皇さんが言うと説得力あるなあ。

 その辺の力学はおっさん苦手だから困るんだけどさ。


「リニアなら他の者たちも気にすることはないでしょうに」


「リニア殿は真面目すぎるのでアリますな」


「愛人よりも嫁がいいのに」


 愛人っていうのはよろしくないと思うんだけど。それは前世からの価値観のせいなのか?

 でもコルノもメデューサが愛人じゃなかったらって言ってたことあったような。


「ならばリニアが引け目を感じぬよう、活躍する舞台を与えてやるのが甲斐性というものだぞ、婿殿よ」


「そうは言ってもな。うちと繋がっている邪神のダンジョン、暴食の十二指腸を攻めるにはもう少し戦力を整えてからにしたい」


 コルノがダンジョン戦用の特殊なゴーレムを開発中なのでそれを待っているんだけど。

 アスカはさすがGRと言うべきかもうスキルレベルがかなり上がってうちに攻めてきた時とは比較にならないほどに強くなっている。彼女だけなら問題ないが、他の者を行かせるのはまだ不安だ。


「いや、そっちではない。幻夢共和国(ドリームランド)の方だ」


「ドリームランド?」


「うむ。ワシらの復活と常若の国(ティル・ナ・ノーグ)が常世の国として復活したことを告げるために使者を出したのは知っておるな。だが、その者たちが帰ってこん。連絡もつかんのだ」


 もちろん知っている。使者はおっさんの眷属にならなかった数名のディーナシーだった。

 それが未帰還?


「大問題じゃないか」


「腕のたつ者たちだから大丈夫だろうと、報告するのが遅れたのは謝ろう」


「ワタクシのところでもドリームランドの状況が届かなくなっていますわ」


「まさか邪神のダンジョンに制圧されてしまったんじゃ……」


 ドリームランドにはダンジョンが発生しているらしい。そこのダンジョンから出たモンスターが常世の国(うちのダンジョン)妖精教国(シャンバラ)を襲撃している。

 そのモンスターの多くがインプやボギーといった小型のモンスターで妖精たちに化けてやってくる。


「ドリームランドとシャンバラが戦争になりかけていたと聞くが、妖精に化けたモンスターの工作だった可能性がある。それの確認のための派遣だったのだが遅かったか」


「あの子は泣き虫で夢見がちですけれどあれで腹ぐ……いえ、強か(したたか)な妖精です。簡単にやられるはずがありませんわ」


「ワシもそう思っておる。だからドリームランドの偵察をする必要がある」


 あの子ってマブだよな。妖精大統領フェアリープレジデントの。

 ドリームランドで選挙があるかは知らんけどこの妖精島で建国して以来ずっと大統領をしている実力者。ディアナやモルガンと同程度の強さはあるらしい。

 邪神のダンジョンと組んだってことはないよな?


「我ら眷属なら眷属チャットで状況をすぐに報告できるのでアリます!」


「眷属に、リニアに行ってもらえと?」


「リニアならばこの任務、無事にこなせよう」


 うーん。

 危険な目にはあわせたくない。

 だけど放置するのももっとマズいか。帰ってきていないディーナシーもほっておくわけにいくまい。

 リニアの馬ゴーレムもできていたから、長距離移動の運用テストもできるか。

 眷属が行ってくれれば〈地図〉スキルでマッピングもできるし、帰りはおっさんの〈転移〉で安全に帰ってこれる、はず。


「リニアとあと何人か出すしかないか。未帰還のディーナシーの救助を最優先で安全第一、連絡はこまめに……あとなんかある?」


「自分も行きたいでアリますよ! コルノ奥様によって自分のパートナーゴーレムもついに完成したのでアリます!」


 アンコのアリゴーレムも完成したか。

 それを発表するタイミングを狙って段ボール箱に潜んでいたんだなこいつ。



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