表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/200

137話 ゴブリンハンター

 ヨウセイの穴メンバー一部の強い希望により、【ゴブリニャ】への進化を検証することになってしまった。

 といっても、おっさんと他数名がゴブリンを進化できるまで育成するというだけのことなのだが。


「そういうわけで特訓ではなく、ゴブリン眷属化を行う」


「了解ですっ、監督!」


「ま、全員で行く必要はないだろう。興味のないやつは各自で訓練をするように」


 このダンジョンならば最下層までおっさん一人でもクリアできるのだから人数は少なくても別に構わない。


「オイラはもちろんアニキについて行くっすよ! 参加するやつは整列するっす。番号ぅ!」


 エージンに従って紳士たちが横に並び、人数を数えるために番号掛けの点呼を始めた。


「イチ!」


「ニー!」


「の!」


「なに間違ってんだ。数も知らないのか」


 サンと続かなかったのでショックを受けてるなマイケル。

 おっさんは思わず拍手しそうになっちゃたけどさ。


「真面目にやれ。そのネタ若い子にはわからんから」


「うぃーっす」


「まずはタマの進化前であるゴブリンスナイパーを狙いに第2層に行くか」


「でも階層(フロア)ボスを眷属化するのって時間かかるっすよ。儀式に失敗することも多いっす」


 失敗もあるのか。よくもまあタマを眷属化できたな、エージン。

 やはり石化して眷属化のコンボは強力だったようだ。

 だからといってコルノを連れてくる気はないけどさ。


「誰か麻痺か石化持ってないか?」


 ついてきた連中は首を横にふる。カニミツ、そこまでブンブンふらないでいいから。首もげちゃいそうだから止めて。


「駄目だったら次にまた試そう。どうせ第2層ボスは1匹しか出ないんだから他のゴブリンも眷属化しよう」


「おう! ついにうちに可愛い眷属が!」


「タイガ、涎垂れてる」


 ウェアタイガーが涎垂らしていたら、食われると勘違いされて儀式に失敗しそうだ。

 こいつの場合、ロリコンというよりは猫科ってことでゴブリニャに惹かれているんだろうけどさ。



 ◇



 途中で遭遇したゴブリンを屠りながら第2層へと到達するゴブ捕獲チーム。

 いくら底辺ダンジョンマスターでもゴブリン程度に後れを取るやつはいない。


「特訓の効果が出てるっすよ!」


「このダンジョンならもう無敵っチュ」


「いや、倒すのが目的じゃないから。ちゃんと手加減して殺さないようにしないと眷属化できないぞ」


「そ、それは盲点だった。幼女予備軍を無駄に失わないように気を配らないと!」


 こいつら強くなったのを実感できるのが嬉しいのか、出てくるゴブリンを一撃でしとめまくりやがって。

 気持ちはわかるが目的を見失ってどうする。


「アンデッドゴブリンが美少女スケルトンに進化してくれれば楽なんですけどねえ」


「すまんメビウス、骨の美少女はわからん」


 その前にアンデッド化の方法も知らん。

 エージンのダンジョン近くの街を調べればわかるかもしれないけど、そこまでアンデッド眷属をほしいとも思えないんだよなあ。妖精たちが怖がりそうだし。

 ……いや、喜ぶか?


 手加減を意識しながら第2層ボス部屋に到達するおっさんたち。

 これまでに眷属化したゴブリンの数はゼロ。

 手加減できなかったわけでも、眷属化の儀式に失敗しまくったわけでもない。


「なんでオスゴブばっかなんだぁ!」


 嘆くポポイノポイ。第2層ではゴブリン、ゴブリンアーチャーともに全てがオスであった。儀式以前の問題である。

 おっさんは既に嫌な予感しかなかった。


「やっぱりゴブリンスナイパーもオスだし」


 ゴブリニャに一番近いはずのゴブリンスナイパーもオスでは意味がない。いや、比較実験という意味はあるのかもしれないが、試そうという気にならない。もし成功してもここにいる誰も喜ばないだろう。


 なんかもうおっさんは帰りたくなっていたが、ゴブ捕獲チームの面々はまだまだやる気だった。

 メスゴブスナがいなかったから「おっさん帰ってもいい?」なんて聞ける雰囲気ではない。


「こうなったらとことん行きましょう、監督!」


「なあに、下の階もゴブばかり。メスはきっといますぜ!」


「ぜんたーい、進め!」


 勝手に進軍しないでくれ。一応、おっさんがリーダーだと思っていたんだからさ。



 ◇ ◇



 悪い予感が的中してしまった。

 第3層、第4層ともにオスしか出てこなかった。

 あれえ、ゴブリンのメスってこんなにレアだったっけ?


「これはアレっすね。みんながメスゴブリンを狙ってギラギラしすぎて、メスゴブリンが怖がって出てこないんすよ」


「普通は逆だろ!」


 物欲センサー搭載か、このダンジョンは。

 だがしかし!


「ふっふっふ」


「ど、どうしたんすかアニキ」


「お前ら忘れたのか? このダンジョン第6層のボスを!」


 おっさんはもう何周もしているからこのダンジョンのマップや出現するモンスターは熟知している。だからこそわかっていることがあるのだよ。

 逃げたくても逃げられない階層ボスのこともさ。


「うーんと、第7層ボスがゴブリン・キングだったことは覚えているっすけど」


「第6層ボスはゴブリンクィーンだ!」


「な、なんだってぇー!!」


 ノリがいいな、みんな。

 そこまで驚かんでも。

 もしかしてマジで忘れてた?


「クィーンだから絶対にメスなはずだ。いくらなんでもゴブリンに男の娘はいないだろう」


「でも監督、人妻、いやゴブ妻じゃないですか」


「キングとクィーンは別居状態だったっちゅか」


 言われてみればたしかに。

 むう。眷属にはしにくいな。


「なにを言う、皆の衆。よく考えるのだ! もし進化に成功すればロリで人妻という上位属性になるのだぞ!」


 いやいや、おっさんは人妻に興味ありませんから!

 可愛い奥さんがいるのになんで揉め事を起こさにゃならんのさ。


「マグロウ。お前は絶対に嫁に会わせん」


 だって嫁さん二人ともその属性ってことになるのだし。

 おっさんの言葉に周囲は騒然となった。


「アニキ、結婚してたっすか! まさかアスカさんっすか!?」


「さすが監督!」


「その大きさで結婚なんて……巨乳に埋もれて溺死すればいいっちゅ!」


 嫁も小さいって考えは浮かばないんだろうか。

 あと巨乳に埋もれたら溺死じゃなくて圧死だと思うぞ。

 その後、どんな嫁かとしつこく聞かれるので咄嗟に思いついたことで誤魔化す。


「あ、でもボスもポップするから種族がクィーンってだけでキングの嫁さんってワケじゃないかもしれないな」


「なるほど」


「監督! あんたに一生ついていくぜ!」


 うっとーしーからやめてー。

 さっさとゴブリンクィーンを捕獲してしまおう。

 それで帰ろう。もう今日は誰か一人が眷属にしてればいいでしょ。


「もしキングの奥さんだったとしても未亡人にしてしまえば……」


「外道」


「いくらなんでも、そりゃないっすよ」


 未亡人ならアリかもしれないが、夫を殺しといてってのはないよなあ。

 クィーンがキングの妻ではないか、他にメスゴブが見つかればいいんだけどさ。

 第6層で追加の雑魚はゴブリンメイドではなく、ゴブリンアサシンだもん。クィーンさん、なんで暗殺者なんて飼ってるの?


「第5層のボスはゴブリンジェネラル。少しは硬いから注意するように」


「将軍かあ。女将軍だったらいいのに。儀式中にくっころやってほしい」


 それを聞いてつい言ってしまった。

 普段なら避けただろうに、やはり疲れていたのだ。


「第7層からは雑魚モンスターにゴブリンナイトが追加されるよな」


「もちろん第7層も行きましょう!」


 しまったぁ!

 言わなきゃクィーン捕獲で帰れたじゃないか!

 テンションがおかしいこいつらの相手はもう疲れたよ……。



 ◇ ◇ ◇



 結局その日メスゴブはクィーンしかおらず、それを捕獲できたのが唯一の収穫だった。

 話し合いの結果ポポイノポイが眷属化の儀式を行い、時間がかかったがなんとか成功する。

 後日、ベアドンが執念でメスゴブリンナイトを眷属にした。がんばって進化させてみてくれ。


 そういや、アキラの眷属ってメスゴブリンばっかりだったよなあ。

 どう進化したか聞いて、まだだったらおっさんに預からせてくれないかな?



《未熟者のダンジョン》の登場モンスターは『妖精神 まとめ』で

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ