135話 水着回
レヴィアのために行った意味の大きいダンジョン改築だったが、その契約の前に彼女が契約できない身体になってしまった。
夜はいつもコルノとレヴィアに挟まれて寝ていたのに片側が物足りない。
だけどレヴィアのところで一緒に寝ようとすると、海は冷えるからと断られている。
海岸の下に温泉を上手いこと通して夜でも暖かくすればなんとかならないだろうか?
ダンジョンの方は悩んだが海のある階層を第1層にすることにした。
レヴィアの強い要望でだ。
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「私を狙ってくる者がダンジョンに迷惑をかけるかもしれないから、それを防ぐためにそうしてほしいの」
「もっと下の階層にしたいんだが。リヴァイアサンを狙うやつなんておっさんたちで排除するよ」
「アナタたちに迷惑をかけたくないの。聞いてくれないのなら、成長するまで私は海で暮らすわ」
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なんて、別居を持ち出されてしまったので泣く泣く折れた。
称号に“ヤンデレ”が追加されるかもしれないが、檻を創ってでも彼女を監禁できればよかったのに。
せめてもの抵抗で新第1層にもゴーレムやトレントを多数配置中だ。
ゴーレムの中にはコルノが新たに造ったサンドゴーレムもいる。うちには珍しいプチではない大型のゴーレム。砂なので防御力はそこまで高くはないが、海岸の砂ですぐに再生するなかなか強いゴーレムだ。
しかも普段は砂浜に潜っているので妖精たちに威圧感を与えてしまうこともない。……妖精たちなら喜びそうだけどさ。
トレントも新しく眷属になった松のトレントたちだ。
海岸線を警戒してくれている。とても和風でいい感じに落ち着く。
眷属になった時の俺からの基礎知識のせいか、枝ぶりをそんなイメージに自分から調整しているし。
だけど俺に枝葉の整形カットを頼まれても困る。
痛くないのかと聞いたら「髪形を変えるようなもの」と返されたけど、やっぱり気後れするから。
植木職人の妖精はいないのか。某パパのような性格でも構わないのだ。
階層を動かす時もちゃんと邪神のダンジョンの入り口が一緒に移動してくれた。
やはりどうやら異次元的な繋がり方をしているようだ。あのダンジョン出身の眷属に聞いたらあっちの1層目は大きなフィールドダンジョンらしい。
向こう側の出入り口も湖の底にあるとのこと。
前は階段状だったんだけど水が入ってくるようになって、そう変更したのだとアシュタロトが教えてくれた。
そんな繋げ方ができるとは。DPがかかりそうだけど、うちでもやってみようかな。
必要なDPは問題なかった。
アシュタロトやディーナシーたち新たな眷属加入の儀式で一気にDPも入ったし、新第1層海底の邪神のダンジョンから瘴気が溢れてくるから今までよりも大きな定期収入もあるのだ。
アシュタロトとの戦闘で壊れた部分もDPで修復した。
壊したのはリヴァイアサンだけど、あの戦闘力は凄まじすぎる。ほしがるダンジョンマスターがいるのも当然だと思う。
他のやつになど絶対に渡さないけれどさ!
修理と階層変更のついでに妖精用の海も追加した。
物珍しさから妖精たちもこの階層によくくるんだけど、海に入りたがるんだよね。
しかしここの海には巨大生物もいるから妖精が食われかねない。
なので海岸を挟んで反対側に浅い海を追加してみた。今は海水だけだけど、そのうちに小魚や安全な貝を放してみるのもいいかもしれない。
「本当の目的は皆の水着姿を見たかったからではないのかしら?」
「それもないとは言わないけど、レヴィアの水着が見れないんじゃ嬉しさ半減だよ」
「ふふふ。楽しみに待ってなさい」
現在、妖精海の安全を点検するという名目で眷属とディーナシーたちが水着ではしゃいでいる。この水着はもちろんハルコちゃんが作ったもの。リオの色とりどりの糸によりカラフルでデザインも様々だ。
「ボクもレヴィアちゃんの水着見たいよー」
普段白衣を脱げばそのままでも泳げそうなボディスーツを愛用しているコルノだが、今日は鮮やかな真紅のビキニを着用している。ううむ。いつもよりも若干胸が大きくなるのは水着マジックだろうか。
「うむ。眼福眼福。目の正月じゃな」
目じりを下げてニヤニヤしているのはディアナ。
彼女はマイクロビキニを選んでおり、その見事なプロポーションを惜しげもなく晒している。
さらに腕組みしているせいで胸を持ち上げるようになっていたり。
「ディアナ、さすがにその格好は破廉恥だと思うのですわ」
桃色がかった金髪の縦ロールを揺らして注意したのは幅広の帽子とパレオで防御を固めた妖精教皇。
モルガンは最近姿を見せなかったのだが、リヴァイアサンの変化を素早く察知してアシュタロト襲撃の翌日にはやってきた。そしてそれからまた毎日くるようになっている。
「なにを言うモルガン。お前こそ肌色が足りぬぞ。もっと脚と尻を見せんでどうする!」
「相変わらずですわね。何百年も石化していたのだからもう少し固くなってもよろしいのですわ」
「かっかっか。ワシはワシ、変わらんよ」
なんて男らしい。マイクロビキニが褌に見えてきそうだ。
後姿はあまり変わらないけどさ。なにあれ、ほとんど紐じゃん!
前世のアルテミスの話だと沐浴を覗いてしまった男を酷い目にあわせるんだけど、おっさんやショタフェアリーたちが見ても大丈夫なんだろうか?
「よくもまあリニアがあんないい子に育ったものですわ」
「ふふん。立派に育ってくれてワシも嬉しいぞ」
「本当に立派に育って」
「二人とも、どこを見て仰っているのですか!」
リニアは赤面し、鎧から解放された大きな胸を両腕で隠す。
だがしかし、見るなというのが無理というものなのだ。
彼女の水着はなぜスクール水着なのだろう。しかも白。
残念ながらリオ特製のクモ糸から作られた水着はたとえ白でも濡れて透けはしないから心配はいらない。
「リニアあねちゃの水着はあんちゃの趣味に合わせただ」
「おっさんの趣味?」
たしかに嫌いじゃないけど!
あれが一番似合うのはロリ体型だと思っていたのだが、リニアを見てその意見がぐらつきそうだ。
「よく似合っているよ、リニア」
「あ、あああ、ありがとう」
さらに真っ赤になった顔を隠すためか、クマフードを目深に被ってしまうリニア。それを見て「これはこれで」とニヤけるディアナ。あんたなんでもありなのか。
ああ、クマ好きだったんだっけ。
「さすがハルコさん」
ハルコちゃんにサムズアップしているオカッパのムリアンはリアン8かな。彼女はセパレートタイプの水着だ。
ムリアンたちも全員が違う水着を着ているのが面白い。
「テリー君にはタンクトップビキニを渡したのに」
「あれはちょっと恥ずかしいのだ」
恨めしそうな視線のリアン10にそう返したテリーが着ているのは半袖膝丈のシマシマワンピース。かなり古いイメージの水着である。
こっちの方が恥ずかしいと思うのだが。
……あれ? テリーにタンキニ?
テリーは男なんだけど。
ああ、リアン10は腐女子だからテリーを男の娘にするつもりなのか。
「これだけ美少女たちが戯れていれば、不埒な妖怪が出てきそうなものですが」
ミコちゃんはなぜか不満そうだ。
彼女は競泳水着っぽいのを着ている。ハルコちゃんの引き出しはスゴイな。
「フラグみたいだから止めてくれ。邪神のダンジョンからそんなのが出てきたら困る」
「妖精にもいますよ。ガンコナーという、女性を口説くだけ口説いてその気にさせておいて姿を消す性質の悪い妖精が」
「頑固親父みたいな名前なのにそりゃ酷いな。うちの子たちにも用心させないと」
そんな迷惑ナンパ妖精は要注意種として入国拒否することも考えておこう。
まあ、この妖精島にはあまり酷い妖精はいないらしいけど、邪神のダンジョンから来る可能性もあるし。
「みんなは大丈夫だと思う」
「そうか。そうだよな、おっさんの眷属はみんなしっかりしてるもんな。そんなナンパになんて引っかからないか」
「皆が引っかからぬのは別の理由だ」
なんでジト目でため息なのさ、アシュタロト。
彼女は水着は恥ずかしいと普段着である。
君さ、初登場時の格好は水着と変わらないよね!?
そうそう、ミーア、ニャンシーとタマは水は苦手だと海エリアにはあまりやってこない。
彼女たちが泳げないからなのだが、タマの場合は水の少ない環境で長いこと暮らしていたから水が苦手になってしまったのじゃないかとも思えてしまう。
そう、あの怪獣になってしまった宇宙飛行士のように。
ムリアンメモ
リアン7 語尾が「です」
リアン8 オカッパ
リアン10 腐女子
リアン11 コギャルっぽい




