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109話 エルフのレオンタイン

2巻、発売中です

お買い上げになった方はありがとうございます

オーバーラップ様のページにて読後アンケートにお答え頂いた方にSSを用意させていただきました

詳しくは活動報告をご覧ください

「ねえフーマ。なんだかこの勇者、すっごいなついてない?」


「そうね。いったいなにがあったのかしらね?」


 食事後の休憩中に隙を見つけ、なんとかコルノとレヴィアを迎えに我が家(ダンジョン)に〈転移〉、予想以上にMPを消費していたのでレヴィアからMPを譲渡されてからすぐに二人を連れてトーゲン内部へと戻った。


『〈MP再生スキル〉がLV9になりました』

『〈MP倍増スキル〉がLV8になりました』

『〈転移スキル〉がLV8になりました』


 〈転移〉も魔法系のスキルなのでMPを消費する。その消費量は〈転移〉で運ばれるものや移動距離に比例する。今までは運ばれるのが小さかったり、距離が短くてそんなに気にならなかったけど、大陸から妖精島への〈転移〉だとかなり多くのMPを消費するようだ。

 これっておっさんが鍛えてなかったらMP不足でダンジョンに帰れなかったかもしれない。こんな長距離を転移したの初めてだから使うまで気づかなかったよ。

 まあ、おかげで関連スキルが三つも上がったからよかったけどね。


 で、戻ってきたのはいいんだけど奥さん二人の機嫌が悪い。すぐに迎えに行くつもりが待たせてしまったもんなあ。


「なにがって、すいとんの術を披露しただけだよ」


「桃ちゃんなんて呼ばれてるんだけど?」


「召喚されてからずっと頼る者のいない状況が続いていたみたいだから、心細かったんじゃないかな。そこへ現れたトーゲンが嬉しいんだよ、きっと」


「それだけ?」


 まさかまだ浮気を疑っているんだろうか?

 トーゲンの中に姿を隠してるんだから浮気も何もしようがないでしょうに。


「桃ちゃん、夜の見張り当番は一緒にやろう」


「駄目だ。今のツクシでは桃幻卿と話し込んでしまい、見張りに集中できない。桃幻卿は私とだ」


 上機嫌なツクシちゃんを止めたのはレオンタイン。

 勇者パーティの年長者でリーダー格。王子や勇者のおさえ役っぽい。

 ああ言っているけど、本当は勇者と二人っきりにしたくないのかもしれないな。


「あのエルフもまさか……」


「ボク、エルフって初めて見るんだ。……ふつーだね?」


 コルノもそんな感想を持ったか。

 おっさんからの転写基礎知識やアニメやゲームでのエルフ情報を知ってるからちょっと期待していたのかもしれない。

 レオンタインは美人だけどうちの美少女を見慣れた目には普通、になってしまう。


「おっきくもちっちゃくもないよね」


 って、おっぱいチェックの方でしたか。

 おっさん的には小さい方がエルフらしいと思うんだけどね。



 ◇ ◇



 時間で当番を代わると言いつつ、テントの外、焚き火のそばでずっと座っているトーゲン。

 だって寝ちゃうと中の俺たちも椅子に座ったまま横になっちゃうからね。

 夜。焚き火があるのに周りを妖精が踊ってないのは妙に寂しい。あいつら今頃はやっぱり踊っているんだろうな。


 トーゲンに見上げさせれば満天の星。

 フィールドダンジョンの夜空にも星はあるけど、それより多い。


「ダンジョンの外で夜になるのも初めてだけど、これはすごいな」


「綺麗だねー」


「ええ。流れ星に願いをかけるために一人で見上げた夜空よりもずっと美しいわ」


 こっちにもそんな風習あるんだ。

 レヴィアがどんな願いをかけようとしていたのかは聞かない方がいいだろう。かわりに隣に座る彼女の手にそっと自分の手を重ねる。もちろん、反対の手でコルノの手にも。

 しばし、三人でモニターとなっているタブレットを眺めた。まるでプラネタリウムでデートしている気分だ。


「星座は前世(あっち)とは違うみたいだな。やっぱり地球とは別の星なのか」


「ほんとだ。お月様のもよーもちがうね」


 まあ、大陸の形も違うから逆に地球だって言われた方が驚くかもしれない。自由の女神とかその辺に埋まってないよな?

 トーゲンの視線を周辺へと変更する。FPSゲームやってる感覚だね。三人称視点に変更できればもっと操作しやすいんだけどさすがにそれは無理。

 タブレットモニターに写るのは荒野ばかり。しかも平地とはいいづらい。いくつもの巨大な裂け目が地面にあった。


「気になるか?」


 声をかけてきたのはレオンタイン。いつの間にか見張りを交代していたらしい。


「あれは爪痕だ」


 はい?

 何キロも続く裂け目にズームしていた画面をレオンタインに切り替える。


「遥か昔の戦いの爪痕。この辺は神々とダンジョンが戦った場所だそうだ。コーラクラウン山もその時にできたものだと長老から聞いている」


 勇者パーティと俺たちの目的地を指差しながら教えてくれた。

 マジですか。こんなに地形が変わるようなバトルってどんだけなのさ……。


「神々とダンジョンとの戦いはいたる所で行われ、世界は荒廃した。それが長老の口癖。その頃まだ長老も生まれてないはずなのだがね」


 十二柱とダンジョンマスターの戦いって核の炎レベル?

 驚きと共に隣のレヴィアを見る。


「ここは私じゃないわ。私の主な戦場は大海よ」


 ここは、ってリヴァイアサンも地形を変えるほどの戦い……してそうだなあ。前世のアトランティスみたいに行方不明の頭大陸沈めてたりして。


「世界の荒廃はデメテルが(ころ)されたことも大きく関係しているわ。彼女の加護がなくなり、作物の出来が悪くなったと水精からもよく相談を受けたもの」


 レヴィアの補足に頷く。豊穣の女神を失って地上は大変だけど、実はデメテルの魂はダンジョン“冥府”で暮らしていて、そこはダンジョンマスター向けの一大生産地になっているって前にも聞いたもんな。


「さらに残った植物でさえモンスター化し始めた。食料を手に入れるために多くの者がモンスターと戦うようになり、やがて冒険者ギルドが生まれた」


 冒険者ギルドか。正体を隠して入っているダンジョンマスターもいるみたいだけど、トーゲンも入れるかな?


「なに? 食料を集めるのに冒険者ギルドと呼ぶのか、か。冒険者ギルドの設立には勇者が関係していてね。その勇者が冒険者ギルドと名づけたのだ」


「そうだったのね。いつの間にかできていたから知らなかったわ」


 レヴィアも知らなかったのか。海ならともかく陸地にはあまり干渉していなかったのかな。

 話題に出たのでレオンタインに聞いてみる。


「勇者のことを聞きたい? 詳しく知りたいのならば聖女たち教会関係者に聞いた方がいい。軽くでいい? そうか。世界の荒廃を憂いた神の一柱(ひとり)が、ある(すべ)を人に授けた。それこそが勇者召喚」


 やっぱり勇者召喚にも神が関わっていたのか。ツクシちゃんがエロスの勇者だったから、怪しいと思っていたんだよ。


「召喚された勇者の知識によって少しずつだが大地の傷痕は修復され、作物はゆっくりと実りを取り戻している」


 ここでさらに疑問に感じたことをコックリ表で聞く。

 勇者ってダンジョン絶対殺すマンじゃないの、と。


「勇者はダンジョンを破壊するために呼ばれるのではないのか、か。その一面も確かにある。勇者は召喚時に神の加護を得るのだが、その神にダンジョン攻略を命じられることもあるそうだ」


 また神か。ダンジョンの運営神とは違うグループなのか?

 それともまさかマッチポンプ?

 ツクシちゃんの加護はエロスだから、やはりギリシャ神系っぽいんだけど。


 エロス。日本ではキューピッドの方がわかりやすいかな。

 ギリシャ神話系の神の中でも、危険度の高い神だ。

 よく“恋のキューピッド”って言うけど、それって仲を取り持つ例えに使っちゃマズイんじゃね、ってぐらいキューピッドの矢は不幸を呼ぶ。

 だって幸せになったのって当のエロスだけなんだよね。しかもそれはミスによってだ。

 加護があるってことはこの世界にいるってことだから、おっさんたちもエロスの矢には狙われないように注意しないといけないだろう。

 ……エロスの加護ってなんだろう。まさかツクシちゃん、金の矢とかスキルで持ってないだろうな?


「神の加護? 神ごとに違う。勇者だけでなく人や土地、物にも与えられる。……エルフには与えられないが」


 え、駄目なの?


「人間には加護を与えてくれる多くの神がいる。獣人たちは種族ごとに神に近い祖霊がいる。だが、エルフ、それにドワーフたちを含む妖精には加護を与えてくれる神がいない」


 レオンタインの言葉にポンと手を叩くコルノ。


「だからモルガンはレヴィアちゃんを神としてたんだね」


「今はフーマが妖精教会の主神になってるわ」


 ヤメテ。それ忘れたいんだからさ。

 おっさんは神様なんかじゃないっての。

 なのに、こっちの声が聞こえていないはずのレオンタインからタイミングよく話が続く。


「私はその神を求めて里を出たのだ」


 おっさんには無関係だと思いたい。



現在のスキルレベル

〈MP再生LV9〉

〈MP倍増LV8〉

〈転移LV8〉


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