94話 お姉さんは魔女
書籍版、発売中です。
こちらともども、よろしくお願いします。
インプ三匹は落とし穴で倒せてしまっていた。
なんで翼あるのに飛ばないかな。翼を動かすには狭いとか?
あとで死体を検証してみるか。
残りはゴーレムが倒したと。量産型より上の種族ランクのインプとはいえ、改良が進むゴーレムが簡単に負けるわけないか。数も多いし。
レッドもゴータローみたいに進化したいって張り切ってるもんなあ。あいつ元々ゴータローたちより上のランクだったのにさ。
ふう。また第一層最奥までたどり着けなかったのね。そりゃ階層ボスのつもりでいるクロスケが退屈で外に出たがるわけだわ。
監視ウィンドウを見張ってるオペレータが増えたので遠隔操作でも作動できる吊り天井や弓矢等のトラップも増設してるのに。
「前回捕獲した時の尋問によれば、このダンジョンを邪神のダンジョンと勘違いしてるっぽいな」
「常若の国が封印したという邪神のダンジョンですわね」
ドーム空間の湖の底にティル・ナ・ノーグがあり、邪神のダンジョンが封印されていることをモルガンにも告げてある。教皇である彼女に専門的な意見を聞きたかったからだ。
モルガンによれば要石となっているディーナシーを数人元に戻しても封印の隙間はそれほど大きくはならないらしい。ただしディアナや側近たちの要石を動かせば封印は解けてしまうだろう、とのこと。
「早くリニアの望みを叶えてあげたいんだけどなあ」
もう眷属になってくれたし、嫁たちとの仲も悪くないようだ。眷属フェアリーの訓練もしてくれているし、うちのダンジョンに必要な眷属となっているリニア。その働きには報いてあげたい。
「あのちっちゃい子があんなに大きくなるなんて、時の流れは早いものですわね」
「モルガンは以前からの知り合いだったわね」
「はい、お姉様。ワタクシはそれこそリニアさんが産まれた頃からの知り合いですわ」
ティル・ナ・ノーグに邪神のダンジョンが出現したことを妖精教国と幻夢共和国に報告した騎士がリニアだから、それで知っているのかと思ったら産まれた頃からですか。
「リニアさんはティル・ナ・ノーグで生まれた唯一のディーナシー。ディアナさんも娘としてとても可愛がっていたのですわ」
「娘?」
「はい。ディアナさんとカリストさんの娘だそうですわ。ああ! ワタクシも許されるのならばお姉様の子を授かりたいですわ!」
「駄目! レヴィアは俺の嫁だから!」
思わず隣に座っていたレヴィアを引き寄せてモルガンから離す。
なんかだんだんこの妖精、あからさまになってきているな。「シスターだから結婚していない」なんて言ってるけど、本当は同性愛者なんじゃないだろうか?
「残念ですわ」
「つうかさ、妖精って女同士でも子供できるの?」
嫌がっていないのでレヴィアを片手で抱いたまま質問する。
「できませんわ。ディアナさんが実は男の妖精でしたか、もしくは自然発生した妖精の子か、どちらかですわね。カリストさんはディアナさん一筋でしたので他の妖精の子ということはありえないのですわ」
「自然発生ってのもあるのか」
実はディアナではなくゼウスの子と知っていながらすっ呆ける俺。自然発生ってのも気になるしさ。
「妖精ですもの」
「そんなもんなのか?」
「ですが、自然発生した妖精は存在がおぼろげな子が多くて儚いのですわ。妖精神様、どうぞ彼らもお守りください」
俺に向かって両手を合わせて祈りを捧げるモルガン。おっさんにそんなこと言われても困るんですがね。
◇
モルガンの祈りがおわるのを待っていたのか、しばらくうっとりと目を閉じて俺に寄り添っていたレヴィアが口を開いた。
「リニアを可愛がっていたとなると面倒かしらね、アルテミスの復活は」
「ああ、眷属にしちゃったもんなあ」
「うちへの嫁入りもよ」
なんか先月のレヴィアとリニアのOHANASHI以来、リニアが俺の嫁になることは決定事項になっているっぽい。コルノもすごい乗り気になっているみたいだ。
「羨ましいですわ、お姉様のお嫁に行くなんて。小さい頃から知っているリニアさんでなかったら呪っているかもしれないのですわ」
「私ではなくフーマの嫁よ」
「呪いってあんた教皇でしょうに」
モルガンってあれだよね、アーサー王伝説に出てくる魔女の名前。もし彼女が前世のモルガンと同じ存在なら呪いも使えそうでちょっと怖い。
姉妹が多いらしいけど、異父弟もいるのか聞いておいた方がいいのかな? エクスカリバーなんて間違いなく聖剣だろうし、勇者だったら困る。
「そうですわ! ワタクシは教皇ですもの。妖精神様の結婚をお祝いしないといけないのですわ!」
「あ、ありがとう?」
「結婚式はお任せくださいなのですわ! もちろんお姉様とコルノさんもご一緒に結婚式をするといいのですわ!」
結婚式かあ。俺たちって、運営に書類を提出しただけで結婚式なんてしてなかったんだよね。
ダンジョンの住人も増えたし、そろそろ結婚式をしてもいいかもしれない。
「レヴィアは結婚式、したいよね?」
「女の子なら当然なのですわ! フーマ様だってウェディングドレスのお姉様たちを見たいでしょう?」
「それはもちろん!」
レヴィアよりも先にモルガンに問われ、つい応えてしまった。おっさんもそうだけどモルガンも見たいんだよね、レヴィアの花嫁衣裳をさ。
「ならば準備を進めなければいけませんわね。結婚式の日は妖精教国もお祭りにしましょう!」
「へ? 大げさすぎるだろ」
「教会の主神のお祝いの日ですもの!」
なんか思った以上に大事にされそうな……。パレードとか考えてなきゃいいけど。
「お待ちなさい」
「お姉様?」
「私たちの結婚を祝ってくれるのは嬉しい。けれど今は先にやることがあるでしょう。式の最中に邪魔をされるのは嫌よ」
そうだよな。ハエやインプが出現したら結婚式どころではないだろう。
大事な結婚式にそんなケチがつくのはたしかに嫌すぎる。
「それに、アルテミスを復活させてからになるわね。可愛がっていた娘の結婚式には参加させてあげないとうるさいわ」
「それもそうか。……俺も前世の両親、参加してもらえたらなあ」
長い間心配かけた俺が可愛い嫁さんもらったのを見せてあげたいよ。嫁さんが一人じゃないのを怒られるかもしれないけどさ。
涙腺の弱いおっさんが泣きそうになったのを気づいたのか、レヴィアがぎゅっと手を握ってくれた。
フェアリーハイエロファントはフェアリーポープに変更しました。




